Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > VW ティグアン

VW ティグアン新車試乗記(第811回)

Volkswagen Tiguan

(1.4L直4ターボ・6速DCT・FF・360万円~)

自称「つながるSUV」!
2代目ティグアンに
クルマの近未来を見た!

2017年03月31日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

「MQB」ベースのコンパクトSUV

VW ティグアン Rラインの画像
新型VW ティグアン(2017年)

「ティグアン」は、2007年にデビューした5人乗りのコンパクトSUV(日本発売は2008年9月)。初代は約8年間で、グローバルで280万台以上、日本では約1万5000台を販売した。

今回の2代目は欧州では2016年、日本では2017年1月17日に発売された。先代がゴルフ5ベースだったように、新型は現行ゴルフ7と同型のプラットフォームがベース。VWグループの生産モジュール戦略「MQB」に基づいて開発されたものとしてはゴルフ7、パサートに続く第3弾であり、同グループのSUVとしては初になる。ゴルフやパサート譲りの走行性能、燃費性能のほか、ワゴンのような室内空間や積載性が自慢のクロスオーバーSUVだ。

 

初代VW ティグアン(前期型)

初代の日本仕様には、1.4LターボのFF車と2Lターボの電子制御フルタイム4WD「4MOTION」があったが、新型ではひとまず1.4LターボのFF車が導入された。JC08モード燃費は16.3km/Lで、先代の1.4L・FFモデル(14.6km/L)に比べて約1割改善されている。

モバイル端末と連携して「つながるSUV」に

VW ティグアン、Volkswagen Car-Netの画像
モバイルオンラインサービス“Volkswagen Car-Net”

新型ティグアンにおいてVWが強くアピールするのは、モバイルオンラインサービス“Volkswagen Car-Net(カーネット)”の採用。これはスマートフォン等と連携してインターネットに接続し、ナビゲーションの検索性能や案内精度、利便性などを高めるもので、すでにVWの多くの現行モデルで採用されている。車載インフォテイメントシステムにおいてGoogleの検索システムや音声入力操作などを利用できるほか、Googleのスマートフォン用アプリ「Android Auto」やAppleのiOS用アプリ「Apple CarPlay」にも対応している。

 

■外部リンク
VW公式サイト>新型「ティグアン」発売(2017年1月17日、PDF)
VW公式サイト>Volkswagen Car-Net

■過去の参考記事
新車試乗記>VW ティグアン トラック&フィールド(2008年11月掲載)

 

価格帯&グレード展開

1.4LターボのFFで、360万円から

VW ティグアン TSI コンフォートラインの画像
新型ティグアン TSI コンフォートライン

今回日本に導入されたのは、1.4Lターボ(150ps、250Nm)・6速DSG(いわゆるDCT=デュアルクラッチトランスミッション)のFFモデルのみ。主に装備の違いで「TSI コンフォートライン」「TSI ハイライン」「TSI Rライン」の3グレードが設定されている。

ボディカラーは新色ナッツシェルブラウンメタリックなど全6色。全車右ハンドルで、価格は以下の通り。

■Tiguan TSI Comfortline 360万円
■Tiguan TSI Highline 433万2000円
■Tiguan TSI R-Line 463万2000円

売れ筋はハイライン(433万2000円)

VW ティグアン TSI ハイラインの画像
ティグアン TSI ハイライン

スタート価格は360万円と一見手頃だが、エントリーグレードのコンフォートラインではオプションとなる装備、例えばLEDヘッドライトやスマートエントリー&スタートシステム、Car-Net対応のVW純正ナビ“Discover Pro”、レーンキープアシストシステムなどを装着すると、車両本体価格が418万3200円となり、ハイラインとの差が15万円ほどになってしまう。また、コンフォートラインは本国発注になりやすく、納期もかかる。というわけで「どうせ買うならハイライン」となるのは、ゴルフなどと同じパターンだ。

 

ティグアン TSI Rライン

その他のメーカーオプションは、ハイライン用に「レザー&パノラマルーフパッケージ」(電動パノラマスライディングルーフ、レザーシートなど、43万2000円)、ハイラインとRライン用に「テクノロジーパッケージ」(ダイナミックライトアシスト、ヘッドアップディスプレイ、パワーテールゲート、アダプティブシャシーコントロール“DCC”、30万2400円)など。

なお、正式発表はないが、フルタイム4WD車も2017年末には日本に導入される模様。搭載エンジンがガソリンかディーゼルかは、今のところ未定のようだ。

 

パッケージング&スタイル

「より長く、より幅広く、より低く」

VW ティグアン、前73の画像

先代はいかにもSUV風に背が高かったが、新型はVW言うところの「ニューエモーショナルデザイン」を採用。ボディサイズ(先代比)は全長4500mm(+40~70)、全幅1840~1860mm(+30~50)、全高1675mm(-35)と、要するに「より長く、より幅広く、より低く」(プレスリリース)なって、スポーティなクロスオーバー風に変身した。理詰めのVWとしては、背を低くしたことで「空力特性も改善」と付け加えている。

 
VW ティグアン、後ろ73の画像

パサート譲りの3本横桟メッキグリル、そのグリルと一体になった鋭い目つきのヘッドライトを採用したところに、2代目ティグアンの上級移行が見てとれる。ボンネットやショルダーラインに入ったプレスラインは鋭く、思わずナイフの切れ味を試すように指先で触れてみたくなる。

 
VW ティグアン、真横の画像

プラットフォームはゴルフ7やパサートと同じMQB。ホイールベースは2675mm(先代比+70)と、ゴルフ7(2635mm)より40mm長く、パサート(2790mm)より115mm短い。真横から見るとオーバーハングが短く端正で、今やFFベースになったBMW X1もライバルであることを思い出させる。サイズ的にはマツダのCX-5も競合する。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
VW ゴルフ7(2013~) 4265 1800 1460 2635 5.2
トヨタ C-HR (2016~) 4360 1795 1550~1565 2640 5.2
アウディ Q3 (2012~) 4385~4400 1830 1575~1615 2605 5.7
メルセデス・ベンツ GLA(2014~) 4430~4455 1805 1495~1505 2700 5.7
初代VW ティグアン(2008~2017) 4430~4460 1810 1690~1710 2605 5.7
BMW X1(2015~) 4455 1820 1600~1610 2670 5.4
新型VW ティグアン(2017~) 4500 1840 1675 2675 5.4
マツダ CX-5(2017~) 4545 1840 1690 2700 5.5
VW ゴルフ オールトラック(2015~) 4585 1800 1510 2635 5.2
レクサス NX(2014~) 4630 1845 1645 2660 5.3~5.7
 

インテリア&ラゲッジスペース

フル液晶メーターを採用

VW ティグアン、インパネの画像

内装質感はパサートほどではないが、ゴルフ7と同等以上。ハイラインから上ではパサートに続いて「デジタルメータークラスター“Active Info Display”」、つまりアウディで言うところの「バーチャルコックピット」のような12.3インチフル液晶メーターを採用している。

 
VW ティグアン、フロントシートの画像

ホイールベースが70mm長くなった分、室内空間、特に後席はニールームが29mm拡大されるなど広くなった。また、先代に引き続き採用された後席用の折り畳み式テーブルは、ロックを解除して格納するタイプで、何かの拍子でバタンと落ちない安心仕様。天井の小物入れも継続採用されている。

 
VW ティグアン、リアシートの画像

後席は当然ながらゴルフより広く、乗降性もゴルフやパサートよりいい。余談だが、北米市場にはホイールベースを115mm伸ばし、3列シートにしたモデルが新型ティグアンとして投入される。

エアバッグはゴルフ同様に、前席フロント(計2個)、運転席ニー、前/後席サイド(計4個)、カーテンエアバッグ(計2個)の計9個を標準装備する。

 
VW ティグアン、天井収納の画像

リアシートを一番前にスライドした状態
 

荷室容量はゴルフ ヴァリアントと同等

VW ティグアン、荷室の画像
写真はトノカバーを外した状態

後席使用時の荷室容量は615Lで、先代(470L)の3割増。容量が大幅に増えた主な要因はおそらくホイールハウス周辺の凹みも有効活用したせいだろう(先代は見た目重視で側壁がフラットになっていた)。

また、新型では後席の前後スライド量も180mmに増えた。ただし、後席を一番前に寄せると、後席のフットルームはほとんどなくなってしまうが。

 
VW ティグアン、ラゲッジスペースの画像

荷室の最大容量はクラストップレベルの1655Lで、先代(1510L)の1割増。数値的にはゴルフ ヴァリアント(1620L)と大差ないが、ゴルフ ヴァリアントでは後席の背もたれが斜めになってしまうところ、ティグアンではフラットに畳むことができる。

さらにティグアンでは先代同様に、助手席の背もたれも畳めるし、荷室には大容量の床下収納スペースもある。また、後席背もたれが40:20:40の3分割で畳めて(ゴルフのヴァリアントやオールトラックは60:40の2分割)、背もたれの垂直固定もできるなど、なかなかの芸達者だ。

 
VW ティグアン、床下収納スペースの画像

荷室の左壁にはAC100V電源を全車に標準装備。パワーテールゲートはハイラインとRラインにオプション設定されており、リアバンパーの下で足を動かすと自動で開く“Easy Open & Easy Close”機能も採用されている。

 

基本性能&ドライブフィール

1.4Lでも動力性能は十分

VW ティグアン、エンジンの画像

試乗したのは中間グレードの「TSI ハイライン」(432万円)にセーフティパッケージ(30万2400円)を装着したもの。

ゴルフ7 TSI ハイラインやパサートの1.4L TSIモデルと基本的には同じエンジンは(チューンは多少異なる)、低負荷時に4気筒のうち2気筒を休止させて燃費を稼ぐ「アクティブシリンダーマネジメント(ACT)」やブレーキエネルギー回生システムといった省燃費技術「ブルーモーションテクノロジー」を備えたもの。DSGは7速ではなく、6速になる。

 
VW ティグアンの画像

この1.4Lターボエンジが相変わらずいい。アクセルを踏み込めば、いかにも過給圧かけてまっせ、という感じで最高出力150ps、最大トルク250Nm(25.5kgm)を発揮し、1540kgのボディを軽々と加速させる。その意味では「自然吸気みたいにナチュラル」ではないし、ゴルフなどと比べると車重の重さも感じないではないが、たかだか1.4Lとは思えないほどよく走る。動力性能は十分だ。

気筒休止システムのACTは、巡行時など負荷の少ない状況で、1400~4000rpm、130km/h以下であれば、2気筒分の燃料噴射やバルブ駆動を休止して燃費を稼ぐ。作動中にはメーター内に表示が出るが、体感上はまったく分からない。もちろん気筒休止と言っても、ピストンは4つとも動き続けているので誤解なきよう。

乗り心地は素晴らしくスムーズ

VW ティグアンの画像

ゴルフとの違いは目線が高いこと、そして車重が増えた分、重厚感が増したかな、といったところ。SUVの場合、乗り心地が硬めになることが多いが、ティグアンの場合は重量増などに相殺されてか、ほとんどそんな感じはしない。乗り心地はとてもいい。

ゴルフより一回り大きなクルマという感覚はあるが、狭いところでも大きさはそんなに気にならない。最小回転半径は先代だと5.7mもあったが、新型は5.4mになり、小回りも普通に効く。ちなみにゴルフやC-HRは5.2m、BMW X1は5.4m、メルセデスのGLAは5.7mだ。

ハンドリングより“安全第一”

山道も走ってみた。丁寧にステアリング操作している分には、素晴らしく気持ちよく走るが、意外だったのは意図的にステアリング操作を素早く行う、つまり「急ハンドルを切る」と、ESPのブレーキ制御が強く入ること。主にリアブレーキがギギギギと掛かって、車両を落ち着かせる印象だ。

それはもちろん、アンダーステアやオーバーステアを抑制して、万一の横転なども防ぐためだろうが、ゴルフのようにスポーティなハンドリングを期待する向きは「えっ?」という感じになる。これはドライビングプロファイル機能で走行モードを「スポーツ」に変更しても変わらない(少なくとも試乗した18インチタイヤの電子制御ダンパーDCC非装着車の場合)。楽しいハンドリングより安全第一と考えるなら、これもありか。

なお、試乗車が履いていた235/55R18のピレリ スコーピオン ヴェルデはSUV用のタイヤだが、いわゆるオールシーズンではなく、100%オンロード向けのサマータイヤであり、グリップやロードノイズ、乗り心地の面でも特に不満はなかった。

先進安全装備も完備(パサート並み)

VW ティグアン、VWオールイン・セーフティの画像

100km/h巡行時のエンジン回転数は約2000rpm。ゴルフやパサートより重心は高いし、高速域での直進安定性はどうかな……と思っていたが、実際のところ高速スタビリティは惚れ惚れするほど高く、さすがフォルクスワーゲン。中間加速もけっこう速い。最高速はUK仕様の1.4Lターボ・6MTで125mph(約200km/h)とあるが、日本仕様は車重もあるので、そこまでは伸びないだろう。

車速が上がれば上がるほど、静かになるような錯覚を覚えるのは、ノイズレベルが高まらないからだろう。静粛性はゴルフの上級グレードやパサートに遜色ないと感じた。このあたりもMQBならではの性能だ。

全車速追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)や自動ブレーキは言うまでもなく標準装備。さらにハイライン以上にはレーンキープアシストシステム(Lane Assist)も標準装備される。カタログ等にははっきり書かれていないが、ティグアンのレーンキープアシストは、パサート同様に車線の中央をトレースするように操舵アシストしてくれるもの。中央高速のように高速コーナーが連続するところでも、ステアリングに手を添えているだけでスムーズに走ることができる。これに慣れてしまうと、ACCやレーンキープアシストはもはや高速ドライブに必須と思えてくる。

試乗燃費は10.5~15.0km/L。JC08モード燃費は16.3km/L

VW ティグアン、給油中の画像

今回はトータルで約270kmを試乗。参考までに試乗燃費は、いつもの一般道と高速道路を主に「ノーマルモード」で走った区間(約90km)が10.5km/L、「エコモード」で一般道を大人しく走った区間(約30km)が13.0km/L。高速道路を80~100km/hで巡行した区間(約90km)が15.0km/Lだった。燃費重視で走るなら「エコモード」の方が明らかにいい。

JC08モード燃費は16.3km/L。ちなみにパサートの1.4 TSIモデル(同1460kg、ヴァリアントは1510kg)のJC08モード燃費は20.4km/Lだが、モーターデイズでの試乗燃費は9.8~16.3km/Lだったので、条件によっては実燃費に大差はないように思われる。

燃料タンク容量は60Lだから、航続距離は少なくとも600km以上と考えていいだろう。指定燃料はもちろんハイオクになる。

「つながる SUV」……Volkswagen Car-Net

VW ティグアン。Android Autoの画像

今回強くアピールされているモバイルオンラインサービス“Volkswagen Car-Net(以下、Car-Net)”も試してみた。新型ティグアンの、というか、マイナーチェンジを含む最新VW車で売りとなっている機能だ。

Car-Netは、アウディなどのようにデータ通信モジュールを標準搭載するのではなく、ユーザーが所有するスマートフォンなどを使ってデータ通信を行い、車載インフォテイメントシステムで各種webサービスを利用したり、スマートフォンのアプリを操作できるようにしたものだ。その機能は「Guide & Inform(ガイド&インフォーム)」と「App-Connect(アップコネクト)」の二つに大きく分けられる。

「Guide & Inform」……Wi-Fiでネットに接続し、Google検索等を利用

VW ティグアン、Android Autoの画像

「Guide & Inform」は、スマートフォンのテザリング機能やWi-Fiルーターを使って専用サーバーとデータ通信し、ナビゲーションの検索性能や案内精度を高めるもの。ナビゲーション自体は、純正インフォテイメントシステム“Discover Pro”の地図を使用するが、それにあわせてGoogleの検索サービス、オンラインVICS交通情報、NAVITIMEが提供するガソリンスタンドや駐車場情報、Google ストリートビュー、Google Earthなどを利用することができる。詳細は総合評価にて述べる。

なお、Guide&Inform機能は、新車購入時から3年間無償(通信費はもちろんユーザー負担)とのこと。以降は「専用ポータルサイトで有償更新可能」とパンフレットに記載されている。

「App-Connect」……USB接続でスマホのアプリ(AppleCarPlayやAndroid Auto)を利用

VW ティグアンの画像

「App-Connect」は、スマートフォン内のアプリを車載インフォテイメントシステムで利用できるようにするもので、要は他の自動車メーカーでも対応が始まっているApple CarPlay(iOS端末用)もしくはAndroid Auto(Android端末用)のことだ。Car-Netの場合はもう一つ、Sony(Xperia)やSamsung(Galaxy)、HTCなどの一部Android端末で利用できるMirrorLinkにも対応している。

「App-Connect」に関しては、他の自動車メーカーと同様、スマートフォンと“Discover Pro”をデータ転送用USBケーブルで(つまり有線で)つなぐ必要がある。

 
VW ティグアン、Android Autoの画像
Android Auto(のGoogle Play Music)使用時のディスプレイ

これにより、例えばAndroidの場合は、Googleの音声検索・操作システムを使って、Googleマップの地図やナビゲーション、Google Play Music等をタッチパネル式の車載ディスプレイで利用できる(ただしメーター内のディスプレイにはGoogleマップではなく、車載ナビの地図しか表示できない)。

 
Volkswagen Car-Net、Apple CarPlayの画像
Apple CarPlay 使用時のディスプレイ

また、iPhoneの場合は、Siri(Appleの音声システム)を使って、Appleの標準マップ、音楽などを利用することができる。

ここがイイ

特に死角なし。ナビがネットに「つながる」こと

VW ティグアンの画像

外身も中身もすっかり洗練されて、カッコよくなった。カチッとしたデザインと質感で統一されたVWラインナップの中で、先代ティグアンは少々異質な印象があったが、新型はすっかり今どきのクロスオーバーに変身してきた。走りも洗練され、先進安全装備も充実し、燃費も良くなった。クルマ好きから見れば「SUVなのに四駆がない」とか「ディーゼルはまだか」といった部分が気になるだろうが、「ゴルフではちょっと面白くない」と思っているVW好き(クルマ好きとは限らない)にとっては、死角のないクルマだと思う。

そして「つながる SUV」を前面に打ち出してきたこと。同じグループ傘下のアウディと比べて、IT装備については保守的な印象があったVWブランド車だが、今回のVW Car-Netは世の中の方向性が見えたところでの満を持しての動きという感じだ。

ここがダメ

車載ナビの地図や音声操作。ESPの介入。

VW ティグアンの画像

Car-Netに関しては、とりあえずデジタル系が得意な人なら使いこなせそうなレベルまで来ており、高く評価したいが、それに対して純正車載ナビの地図や音声操作システムは旧態依然。地図は見にくいし、施設情報も少なく、GoogleMapに完敗している。音声操作システムも特定のコマンド(命令用の言葉)以外は受け付けない。車載ナビがいずれ「ディスプレイだけ」になる日は近いのだろうか。

一概にダメとは言えないが、速いステアリング操作(急ハンドル)に対して、強いブレーキ制御で介入してくるESPのセッティングは、評価が分かれるところでは。もちろん、自分以外の家族が運転するクルマとして安全第一でクルマを選ぶなら、これはありだし、この方が安心だと思う。一方で、ハンドリングを楽しもうとしても危ないと言わんばかりに制御してくるセッティングは、いわゆるクルマ好き、運転好きが自分で運転するクルマとして考えると、ちょっとお節介に感じられると思う。

総合評価

安全こそ最優先という方向へ

VW ティグアンの画像

フォルクスワーゲン車はどの車種でも乗った印象が近い。クラスが違っても、走りの質感が似ているのだ。操作系も理詰めでカチッと作られ、同様にカチッとした走りも共通だ。それは初代ゴルフから続いているのではないかと思うくらい、一貫したVWの味がある。それを良しとする人には、これほど感覚的にフィットするクルマはない。そしてこの新しいティグアンにも同じ味がある。個人的に乗っているザ・ビートルカブリオレから乗り換えても、まったく何ら違和感がないと言ったら言いすぎだろうか。

ただ逆に、まったく同じゆえ面白みがないとも言える。使い勝手や運転席のアイポイントはゴルフなどと違うが、VWに乗っている感覚は同じなので、つまらないとも言える。ただ、最新のVWであるティグアンが他のVWと大きく違うのは、スタビリティコントロール(ESP)の介入が驚くほど早いことだ。ガリガリというショックをちょくちょく体感できるので、これがスタビリティコントロールというものか、これ以上は危険ということか、と一般的なドライバーでも実感できる。

 
VW ティグアンの画像

ティグアンはおとなしくて実用的なSUVという立ち位置のクルマだ。であれば、とにかく安全第一でかまわない。特に試乗車はFFでもあり、これくらい分かりやすくスタビリティコントロールが効きまくった方が予防安全になるし、過信もしないはず。先進安全装備を含めて、走りより安全をひたすら求めたクルマと言えそうだ。それはもしかすると、クルマの今後の方向性を先取りしているのかも。スポーツカーではないクルマであれば、安全こそ最優先という方向へVWのクルマ作りが向かっているとするなら、それは正解だと思う。どんなクルマにもスポーティさを求める時代はもう終わったということだ。走りたい人はスポーティモデルを買えばいいだけの話だから。

「走る」より「つながる」こと

VW ティグアンの画像

そんなクルマゆえ、このティグアンでは走りより「つながるクルマ」(いわゆるコネクテッドカー)であることが重視されている。というか、そこを重視しないと、走りの良さを謳わない(謳えない)今後のクルマには売り物がなくなってしまう。燃費が良くて安全なのは今後ますますデフォルトとなるのだろうし。で、ウリのVolkswagen Car-Netだが、進んでいる部分がある一方、ツッコミどころも満載だった。

まずディスプレイだが、メーター部分とナビ位置のツインディスプレイは理想的なものと評価したい。クルマには複数のディスプレイをつけるべき、とずいぶん前から書いているが、ナビ画面で何らかの情報を見ながら、経路案内はメーター部分でやるというのは実に理にかなっている。国産メーカーの出遅れが気になるところだ。メーター位置にナビ画面を表示することは、警察のいう注視にも当たらないだろう(なにせ昔からメーター類があるところなのだから)。ただ、ここにはAndroid AutoのGoogleマップを表示できないのが残念なところ(後述)。

ユーザーインターフェースは複雑

VW ティグアンの画像

そして接続だが、新車は最初に認証登録作業が必要なようで、あるユーザーに聞いたところ、これがまず面倒なようだ(試乗車は登録済みだった)。そしてスマホをBluetooth(無線)でつなぎ、さらにはUSB(有線)でもつながないといけない。そのあたりの設定もなかなかマニアック。乗るたびにスマホをつながなくてもいいようにするためには、月額1000円くらいの安いsimを入れた2万円以下のsimフリースマホ等を車内に常備しておくのが一番だが、そんなことにホイホイと対応できる人はそう多くないだろう。いったんつないでしまえば、かなり快適に色々動くのだが。

ただ、ユーザーインターフェースはそうとうに複雑で、頭で理解して、どのボタンを押せばいいか分かるには、かなりの学習を要する。適当に押していると、わけが分からなくなるあたりは、ドイツらしい理詰めの作りということだろう。ステアリングのボタンが対応してたり、してなかったリすることもあるし。

あと、Car-Netとは別の話だが、ゴルフ7あたりから新デザインになったACC(アダプティブクルーズコントロール)用ステアリングスイッチの操作方法なども慣れるまではとにかく分かりにくい。ステアリングスイッチ類だけでも、もう少し整理してもらいたいものだ。

皮肉にもGoogleの音声検索は優秀

VW ティグアンの画像

Guide & InformのメニューからオンラインVICS交通情報を見てみたが、それによる文字や図形情報はもはや、あまり使い物になるとは思えなかった。VICSもスタートから10年以上の時を経て、そろそろ根本的な見直しが必要な時ではないか。

NAVITIMEが提供する駐車場やガソリンスタンドの情報はまあ悪くないが、天気予報や文字ニュースは今さら感が強い。こうした通信でどれくらいのデータ量を使うのかわからないが、渋滞も天気予報も、さっと手元のスマホで検索したほうが手っ取り早い気がした。ただし音声検索はGoogleにつながり、これが皮肉にも優秀だ。そしてストリートビューとかGoogle Earthが見られるのは大きなメリットだろう。

そこでApp-ConnectのAndroid Autoに切り替えると、いつものスマホのように使えるのがやはり便利だ。MirrorLinkも選べるが、この規格はすでに過去のものと言ってもいい。ふだんスマホでナビをしてる人、Google Playとかで音楽を聞いている人なら、Android Autoがやっぱり便利だ。ただ、ストリートビューとかGoogle Earthは、Android Autoでは表示できないから、その場合はGuide & Informにすればいい。すればいいとは言うものの、それぞれは独立しているので、行き来するのはどうにも面倒だが。

リニア新幹線が先か、自動運転が先か

VW ティグアンの画像

また、Android Autoは、ナビ画面で使うもので、メーター画面には表示できない。理想としては、渋滞情報なども表示されるGoogleナビをメーター画面に映して道案内させながら、ナビ画面ではテレビでも見たいのだが、それは無理だ。こういったあたり、技術の過渡期であることを感じてしまう。Android Autoがアップデートされることで、どんどん良くなっていくといいのだが、これまでの例を見ると、クルマの寿命が尽きる前に、こうした車載デジタルデバイスが陳腐化してしまうのは必至。このあたりはクルマと電子機器の進化速度の違いという難しい課題が顕在化するところだろう。

しかしともかくティグアンというか、フォルクスワーゲンはこの方向でスタートした。すでに現在販売中のVW車の8割が対応しているという。そこは高く評価したいところだ。

 
VW ティグアンの画像

走る曲がる止まる、乗り味、環境性能、衝突安全というあたりは、デッドエンドに近づいてきている。となればメーカーはIT装備で差別化して先を走るしかないのだが、スマホの進化スピードにクルマのハードウエアがついていくのは至難の業だ。2007年のiPhone登場から10年で、世の中は激変したが、10年前のクルマは今でも中古車で流通し、特に問題なく走っている。しかし初期のiPhoneやAndroid機はもはや、ただの「ゴミ」だ。そういった差をどう埋めるかが、もうちょっと見えてこないと、つながるクルマどころか、自動運転など夢の夢のように思えてくる。Car-Netを積極的に採用しているフォルクスワーゲンですら、この状態だ。10年後、2027年はどうなっているのだろう。リニア新幹線が先か、自動運転が先か。これまでのクルマの進化速度を考えてみると、これはもう残念ながらリニアとしか思えないのだが。

 

試乗車スペック
フォルクスワーゲン ティグアン TSI ハイライン
(1.4L直4ターボ・6速DCT・FF・432万円)

●初年度登録:2017年1月
●形式:ABA‐5NCZE
●全長4500mm×全幅1840mm×全高1675mm
●ホイールベース:2675mm
●最低地上高:180mm
●最小回転半径:5.4m
●車重(車検証記載値):1540kg(880+660)
●乗車定員:5名

●エンジン形式:CZE
●排気量:1394cc
●エンジン種類:直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・ターボ・ガソリン・横置
●ボア×ストローク:74.5×80.0mm
●圧縮比:10.0
●最高出力:110kW(150ps)/5000-6000rpm
●最大トルク:250Nm (25.5kgm)/1500-3500rpm
●カムシャフト駆動:タイミングベルト
●アイドリングストップ機能:有り
●使用燃料:プレミアムガソリン
●燃料タンク容量:60L

●トランスミッション:6速DSG(DCT)
●JC08モード燃費:16.3km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):4リンク+コイルスプリング
●タイヤ:235/55R18(Pirelli Scorpion Verde)

●試乗車価格(概算):462万2400円
※オプション合計(概算):30万2400円
※オプション内訳:セーフティパッケージ(レーンキープアシストシステム、レーンチェンジアシストシステム、リアトラフィックアラート、渋滞時追従支援システム) 30万2400円

●ボディカラー:タングステンシルバーメタリック
●試乗距離:約270km

●試乗日:2017年3月
●車両協力:フォルクスワーゲン本山・小牧

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 
フォルクスワーゲン 本山

フォルクスワーゲン 最新の試乗記10件

最近の試乗記一覧

関連コンテンツ一覧