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日産 ティーダ 15M新車試乗記(第341回)

Nissan Tiida 15M

(1.5リッター・CVT・157万5000円)

 

2004年11月06日

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キャラクター&開発コンセプト

「ちょっとよそ行き」のコンパクトカー

2004年9月30日に発売された「ティーダ」は、マーチ/キューブ系シャシーを使った高級コンパクトハッチバックだ。開発キーワードは「ちょっとよそ行き」、「高密度」、「コンパクト」の3つ。時代は「コンパクトカーのもっとイイもの」を求めており、先に発売されたマツダ・ベリーサやこのティーダはその需要に応えるものだ。日産が想定するユーザーは主に「子供が手を離れた夫婦や、まだ子供のいない若いカップル」だという。

新開発の後方排気エンジン

狙い通り、ティーダ最大の見どころは上級車レベルを目指した内外装の上質さや快適性能。ほかに、トヨタやホンダに続いて前方吸気・後方排気化されたオールアルミ製1.5リッター「HR15DE」エンジン、グラフィックスや操作系を一新して機能性がさらに向上したカーウイングス、ついにコンパクトカーにまで降りてきたサイドブラインドモニターなどトピックは多い。

Compact meets Luxury.


2003年の東京モーターショーには参考出品車として発表された

なぜかI(アイ)が二つある個性的な車名「ティーダ(TIIDA)」の由来は、『自然の調和、時代の潮流という意味を表す英語の「TIDE (タイド)」から発想した造語』という。音は沖縄の言葉で「太陽」を意味するそうだ。広告キャッチフレーズは「Compact meets Luxury.(コンパクトがはじめて出会う上質)」。CMソングはイギリスのロックバンド、ゾンビーズの「Time of the season(ふたりのシーズン)」(1968年)。販売は日産全店で、目標は月間5000台とボリュームは大きい。

価格帯&グレード展開

主力は157万5000円

3つのグレードは、4ATの廉価版「15S」(142万8000円)、CVTの主力グレード「15M」(157万5000円 ※今回の試乗車)、本革/アルカンターラコンビシートの最上級「15G」(172万2000円)で構成。エンジンは全車1.5リッター(109ps)で、もちろんマーチ/キューブ同様にe-4WDが用意される。4ATの「15S」は機能性に優れたカーウイングスやサイドブラインドモニターの設定がなく、便利なリアシートスライド機構も付かないので注意が必要。

サニーの後継車「ティーダラティオ」

なお、ティーダに遅れること1ヶ月後の2004年10月29日に、そのセダン版でありサニーの後継車となる「ティーダラティオ」が発売された。これによって、歴史あるサニーの販売は終了。また、ティーダシリーズには2005年初頭に直列4気筒1.8リッターの新型エンジン(MR18DE)搭載車を追加される予定だ。

パッケージング&スタイル

シャシーはマーチ/キューブ系

全長4205mm×全幅1695mm×全高1535mm(FF車)と、サイズはカローラ・ランクスやシビック5ドアに近い。プラットフォームは資本関係のあるルノーのメガーヌとは全く関係なく、マーチ/キューブ系のBプラットフォームで、そのホイールベース延長版を使用。メガーヌと比べると全長は-10mmでほぼ同じだが、全幅が-80mmと狭く、逆に全高は+75mmと高い。「商品企画もデザインも一切関係なく、意識さえしなかった」と開発スタッフ。5ナンバー幅にしたのは日本の生活や街の中での使いやすさを大切にしたからだという。

フェンダーが大きく張り出すメガーヌに対して、背が高くて細身のティーダは優しく和やか。見応えあるデザインで、夜の街で光を浴びた時のハイライトはたいへん美しい。普通鋼板ではなく「鮮映性鋼板」を使い、中塗りを厚くするなどティアナと同等の塗装品質を確保したという。試乗車のボディカラーはハーベストイエローメタリックだ。

空力にこだわって屋根が後方にスラントするボディはCd値0.29。バンパーの下には欧州車のような樹脂製スポイラーが付き、フロントゼロリフトを誇る。国内専用車とは思えない空力へのこだわり方だ。

フランス車みたいな室内

インテリアは「コンパクトの質をシフトする」の謳い文句通り、品質感は上級車並み。というか、まさにフランス車みたい。上級グレードのアルカンターラ仕様はティアナ風になる。デザインキーワードは「コンフォート&スパイシー」。冷静に見れば特に高級感はないが、統一感あるデザインは見事。マップランプは蛍光灯のように白く明るい光で、実はLED式。

 

シートはティアナ並みの大きさで、座面部分には低反発ウレタンを使用。これがまたルノー車みたいなのだが、縫製も丁寧でデザインもいい。天井内張り、クッションがたっぷり詰め込まれたアームレスト、ダンパーを使いまくった各種リッド類など、作り込みは入念。これでは高価な高級車も立つ瀬なし。

さらに進化したカーウイングス。サイドブラインドモニターもあり

カーウイングスは過去の統計交通情報(渋滞情報など)を考慮して案内する「最速ルート探索」機能やブルートゥース(Bluetooth)ハンズフリー機能が与えられたほか、操作パネル中央にダイアルを追加して(従来はここが回らなかった)バージョンアップ。実際の道幅や風景を反映した新しいグラフィックなどナビ本来の機能も優れており、操作も説明書要らずで出来る。オプションで30万円近くするが、サイドブラインドモニターなども付けられるし、かなり欲しいと思わせる出来だ。

ロングスライド機構で容量を簡単アップ

室内も十分に広い。240mmのロングスライド機構でシートを最後端にすれば、後席でも「シーマ並みの広さ」。後席背もたれは40度、10段階のリクライニング付き。座り心地もいい。アームレストのカップホルダーにもちゃんと蓋がある。

 

スライド機構が便利なのは、荷室を手っ取り早く拡げたい時だ。背もたれを倒すより、ずっと簡単で、「ウイングロード並み」のという荷室長(973mm)、463Lという荷室が作れる。しかもその状態で運転席・助手席はリクライニング出来るし、子供なら後席に座ることも出来る。折り畳む時は、背もたれが倒れるだけ。積載性より快適性重視だが、通常時でも289Lと十分な容量がある。

基本性能&ドライブフィール

4ATより上質なCVT

試乗したのは主力の15M(1.5リッター・エクストロニックCVT)。トルクコンバーターが付いているので発進は普通だが、走り出せばこのクラスのCVT車に共通した感覚の走り。つまり普通の加速時、巡航時は静かだが、フルスロットルだと回転が上がってややノイジーだ(おそらく金属ベルトノイズ)。そうは言っても、トルク感は十分で、過激な走り方をしないなら4ATより静か。こちらの方が「いいクルマ」という感じがするのは間違いない。

2.0リッタークラスの走り

シャシー面での走りもなかなかいい。マーチ/キューブ系のシャシーとは思えない、2.0リッタークラスの落ち着きがある。剛性感はそれほど感じないが、前後スタビライザーやビームの剛性アップが図られた足まわりはやや固め。それでいてフェアレディ/スカイラインなど上級車で使う「リップルコントロール・ショックアブソーバー」のせいか、乗り心地は柔らかく感じられる。重心がうんと低い分、そのあたりのセッティングはキューブより相当やりやすかったはずだ。

「快適なロングツーリングが楽しめる」

アクセル開度が少ないときは極力、回転数を下げるCVTの利点もあって、100km/h程度の高速巡航は中型セダン並みに静かで快適。エンジン回転は2100から2200というところだから、平和そのものだ。コンセプトにある「快適なロングツーリングが楽しめる」という狙いに沿った性能といえるだろう。追い越し加速でややノイジーなのは短所だが、燃費の良さや巡航時の静かさを天秤に掛ければ、1.5リッター+CVTという組み合わせは納得できるところだ。

ここがイイ

ステッチの効いた内装、触れると柔らかなアームレスト類、ゆったりと体を包む、日本車では初めてのシート、ダンパーで静かに動く様々なフタ、広い室内と荷室など、インテリアに関してはいうことなしにイイ。さらに細かい点でも、左側にあって使いやすいシートリフター、ちょっと突き出していて差し込みやすいシートベルト受け部、足踏みで掛けるのも解除もできるパーキングブレーキ、(オートバックスにはいっぱい売っているのに)何で今まで付かなかったんだろう、という新鮮な感覚のLEDマップランプ、さらにダッシュボード上面にある大型のエア吹き出し口(冷気を優しく出せるとのこと)と実に気の利いた工夫が多い。また、本文にもあるように塗装の質、CVTのフィーリングも素晴らしい。

カーウイングス対応DVDナビはタッチパネルでなくコマンダー系だが、行き詰まったり、間違えたりしたら「戻る」ボタンを押せばいいので、大変使いやすい。これがないコマンダー系ナビは多いのだ。操作開始は白い6つのボタンを押せばいいというのも便利。音声対応は音声コマンドをいくつか覚える必要があるが、読みとり自体は大変優秀で、今まででベストのものだった。普通の声の大きさでも認識してくれるので、自然に話しかければいい。地図のグラフィックも大変きれいだし、行く方向が看板のように浮かび上がって表示されるのも新しい。もちろんサイドブラインドモニターを採用したのも英断だ。

インテリジェントキーが全車標準で、しかもキー無しで始動できるのは理にかなったところ。ドアロックはリモコンで行った方が心理的に安心感があるが、大きめのリモコンキーのためこの操作はしやすくくていい。

ここがダメ

内装にはほとんど不満がないが、強いて言えばアルミ風のパネルは好みが別れるだろう。木目パネルに代えた方が高級感は増すと思う(ラティオとの差別化だとは思うが)。ティッシュボックスの常設置き場、ゴミ箱も標準装備して欲しいところだ。

電動パワーステアリングはやや違和感が残る。低速時は適当なフィールだが、高速時やコーナリング時にやや軽く、頭の中のちょうど良いイメージとズレが生じてしまう。急加速時のCVTノイズももう少し押さえられるといい。

総合評価

小さな高級車、というと過去、欧州には色々あったが、その代表の一つがルノーサンクのバカラだろう。プラスチッキーな内装の大衆車サンクに、革の豪華シートを据え付けたバカラは欧州の「妙齢のお金持ち女性のための足グルマ」として登場。当時日本にはこうしたクルマがなく、小さなクルマが好きだったこともあってすごく欲しいクルマの一台だった。このサンクバカラが出た当時(20年くらい前)、日本では小さな高級車など誰も考えもしなかったものだ。しかし今、ティーダという小さな高級車が目の前にある。

ここまで来るのには時間がかかった。バブルが崩壊し、RVが蔓延し、コンパクトカーが見直されてブームとなり、そのコンパクトカーにも何か「色」を付けないと売れない時代となって、やっと登場したわけだ。その間に日産はサンクを作ったメーカーと同じグループになった。ティーダが使うプラットフォームはルノーと共同開発で、サンクの後継である新型クリオにも使われる。サンクバカラとティーダはあながち他人ではないわけだ。

つまり日本の「妙齢の小金持ち女性向けの足グルマ」がティーダということになる。小金持ちでない女性は軽自動車にのるし、大金持ちの女性は外車(けしてルノーではない)に乗るから、ティーダは日本のマジョリティである小金持ちの女性さんにジャストフィットするわけだ。そのためにありとあらゆる高級感が演出され、それでいてものすごく割安感、お値打ち感がある。

ティーダの内装はけして高級ではない。試乗車の一見革風のシート素材は触ればすぐわかるがカブロンという合成皮革だし、木目パネルといった高級な素材はまったく使われていない。それでもステッチを効かせたシートの作りは高級に見えるし、フカフカしたアームレストも他のクルマにはなくて、差別化がうまく効いている。本革シートなど高級素材を使わなくても高級風に見せるテクニックを日産は開発した。マツダのベリーサもなかなかうまかったが、フランス車的な柔らかさでうまく個性を演出したという点で、ティーダの方が巧妙だ。女性ばかりでなく男性でもこの内装には惹かれるはず。

実際のところ、ティーダに乗ったMOTORDAYSスタッフは口をそろえて「フランス車みたい」という。ホントにプジョー307よりフランス車っぽい。ルノーは今や最もフランス車っぽいクルマを作るフランス車メーカーで、そこと同じプラットフォームであればフランス車っぽくなるのも当然と言うことか。ティーダが売れるとますます日本ではルノーが売れなくなる? いや、これをきっかけにフランス車が売れ出さないともかぎらない。優しい乗り味のフランス車は今こそ見直されるべきだろう。

ともあれティーダで割安に高級感が、そしてフランス車っぽい味が楽しめるなら、何も文句はない。「本当に高級なもの」は割高だ。高級車はやはり本木パネルや上級な革、ふんだんにコストをかけた設計でなくてはならない。お金のある人はそれを買うべきだ。しかし「高級感のあるもの」であればそれは割安にできる。実際のところ、毎日使うならこちらで十分。特に日本では、クルマは一生ものではなくせいぜい7年ほど使うだけのものなのだから。

ということでティーダは日本人に圧倒的に支持されるだろう。現に10月の販売台数では一気に3位に躍り出ている。1位がカローラ、2位がフィットだが、サニーの後継車であるティーダが3位というのはかつてのカローラVSサニー戦争の再現。これでセダンのティーダ・ラティオが加われば、トップに躍り出る可能性も高い。日産も溜飲が下がるはずだ。クルマの方はカローラシリーズより明らかに商品性が高いのだからこれも納得。前述のように内外装・走りにこれといった不満がないのだから、セダンが加わればオジさんにも売れるだろう。フランス車っぽいクルマで高級感があって、しかもコンパクトな5ドアハッチバックが日本でベストセラーになるなんて、かつて誰が想像できただろう。時代は確かに変わっていくものなのだ。

試乗車スペック
日産 ティーダ 15M
(1.5リッター・CVT・157万5000円)

●形式:DBA-C11●全長4205mm×全幅1695mm×全高1535mm●ホイールベース:2600mm●車重(車検証記載値):1140kg(F:ー+R:ー)●乗車定員:5名●エンジン型式:HR15DE●1498cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●109ps(80kW)/6000rpm、15.1kgm (148Nm)/4400rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/45L●10・15モード燃費:18.2km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:185/65R15(TOYO J50)●価格:157万5000円(試乗車:195万5100円 ※オプション:カーウイングス対応ナビ&オーディオシステム 32万7600円、インテリジェントキー 5万2500円)

公式サイトhttp://www2.nissan.co.jp/TIIDA/C11/0612/CONCEPT/main1.html

 
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