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トヨタ iQ 100G “レザーパッケージ”新車試乗記(第539回)

Toyota iQ 100G “Leather Package”

(1.0リッター・CVT・160万円)

大不況前夜に花開いた
プラットフォームの大革命。
トヨタ渾身のマイクロカーに試乗!

2008年12月20日

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キャラクター&開発コンセプト

4人乗車が可能な「マイクロプレミアムカー」


2008年10月15日の発表会にて。新型車「iQ」と渡辺 捷昭 トヨタ社長

「iQ」は全長3メートルを切る超小型ボディで4人乗車を可能とする「超高効率パッケージ」をうたった「マイクロプレミアムカー」。市販型は2008年10月15日に正式発表され、11月20日に発売された。

生産はトヨタ自動車の高岡工場(愛知県豊田市)、販売は全国のネッツ店で行われる。月間目標台数は2500台だが、発売から1ヶ月の現時点でかなりのバックオーダーを抱えるようだ。2009年からは欧州でも販売をスタート。目下のところ北米での販売は未定となっている。

トヨタ自動車>プレスリリース>新型車「iQ」を発売 (2008年10月15日)

価格帯&グレード展開

140万円、150万円、160万円の3グレード


ボディカラーは全9色を用意。試乗車はホワイトパールクリスタルシャイン(3万1500円高)

■「iQ 100X」   140万円
■「iQ 100G」   150万円
「iQ 100G “レザーパッケージ”」   160万円 ★今週の試乗車

ベースグレードとして「100X」(140万円)、それにレザーステアリング、スマートキー、イモビライザー(盗難防止装置)、オートエアコンを追加した「100G」(150万円)、さらにアルミホイールとハーフレザーシートを装備した「100G “レザーパッケージ”」(160万円)という3グレードを設定する。

メーカーオプションとして全車にディスチャージヘッドランプ+オートライト(5万5650円)を、下位グレードにはアルミホイール(5万2500円)を用意する。

標準オーディオは完全インパネ一体型

オーディオはCDプレーヤー+AM/FMラジオ(外部入力付き)が全車標準だが、これは1DINサイズではなく、インパネと一体になったもの。しかも一般的な操作パネルはなく、ステアリング上のジョイスティックのみでCDとラジオを操作するという斬新なものだ。

さらにトヨタ車として異例なのが、ナビゲーションシステムが販売店オプションとなること。特に純正HDDナビを装着する場合は、あらかじめオーディオのレスオプション(-1万9950円)を選び、ワイドモニター内蔵可能な専用インパネクラスターを装着した車両を注文しておくことになる。

パッケージング&スタイル

短くてワイド。スマートより一回り大きい

全長2985mm×全幅1680mm×全高1500mmのボディは、軽自動車(全長3.4メートル未満、全幅1.48メートル未満)よりもかなり短いが、幅はほぼ普通車の5ナンバーサイズ枠一杯というもの。とにかく全長が短いのはもちろん、その全長に対して極端にワイドなボディで、まるでサイコロのような形になっている。

なお、「マイクロカー」というジャンルの先駆者であり、2人乗りであるスマートとの比較は以下の通り。iQは全長も全幅もスマートの一回りは大きく、全高以外をちょうど1割ほどスケールアップしたような感じだ。

スマートより低いが、ボリューム感あり

なお、実際にiQとスマートを並べてみると、まずはスマートの背の高さが印象的だ。それに比べるとヴィッツ並みでもあるiQの全高は常識的と言える。一方、iQはフロントにエンジン、リアに2人分のスペースを確保するため、スマートより全体にボリューム感はある。初代に比べてぽっちゃりした2代目スマートですら、iQに比べると引き締まって見えるのが面白い。

なお、iQは日本産業デザイン振興会が主催する2008年度グッドデザイン賞で大賞を獲得している。トヨタ車がグッドデザイン大賞をとったのは2003年の2代目プリウス以来、2度目だ。

トヨタ自動車>プレスリリース>「iQ」がグッドデザイン大賞を受賞(2008年11月6日)

CVTを反転し、出力軸をエンジン前方に変更


この図から出力軸がトランスミッション前方に移動した点、独自のステアリング機構、エアコンユニットの中央配置、そして燃料タンクの床下配置が分かる
(photo:トヨタ自動車株式会社)

iQがこのサイズで4人乗り、正確に言えば大人3人+子供1人乗りとできたのは、助手席の足もとを前方にえぐり、助手席シートを前方にずらせるようにしたからだ。通常の小型FF車でそうする場合、最初に邪魔になるのはタイヤハウス。そこでタイヤハウスを前方に追いやるには、出力軸、つまりフロントデフを前方に移動させればいい、ということになる。

iQの場合、ここでどうしたかと言えば、構造を完全に前後反転させたCVTを新開発。これにより出力軸をエンジン前方に移動させている。この結果、エンジンはオーバーハング上からちょうど車軸とほぼ同位置まで後退し、いわゆるフロントミッドシップに近いレイアウトとなっている。また同時にエンジンから乗員までの距離も短くなっている。

 
    全長 全幅 全高 ホイールベース
トヨタ iQ 2985mm 1680mm 1500mm 2000mm
2代目スマート クーペ(2007年-) 2720mm 1560mm 1540mm 1865mm
初代スマート クーペ(1998-2007年) 2540mm 1515mm 1550mm 1810mm
 

インテリア&ラゲッジスペース

マイクロカーに乗っているという気がしない

エイの一種である「マンタ」をイメージしたフローティング形状のセンターコンソール、同様のメーターカバー、2代目ラウムを思わせる楕円の小径ステアリング、そして助手席前が大きくえぐれたダッシュボードなどなど、いくつか特徴のあるiQのインパネまわり。ただし初代スマートのように、「いやあ、変わってる」という衝撃はない。

むしろ全幅が1680mm、室内幅が1515mmもあるため、「マイクロカーに乗っているという気がしない」というのは、iQにとって褒め言葉になるだろうか? 例えば同時期に試乗したスズキ・スプラッシュの全幅はiQとまったく同じ1680mmで、室内幅は1375mmしか?ない。ちなみにヴィッツですら全幅は1695mm、室内幅は1390mmに過ぎない。とにかくiQは、異様なほど室内幅を広くとっているわけだ(もちろん室内幅はドア内張りの形状にも左右される)。

とりあえず助手席の前後には無理なく2人座れる

助手席は一般的な位置なら、もちろん広々。後ろに大人が座れるよう前にスライドすると、多少足もとが窮屈になり、ダッシュボードからの圧迫感も出てくるが、加減すれば大丈夫。大人でも前後にまずまず快適に座ることが出来る。また、その状態でもパッセンジャーの頭がドライバーの視界を妨げる感じはあまりしない。

なお助手席のフットルームを拡げるため、普通ならその前方にあるエアコンユニットの一部(主にブロアモーターなど)をセンター上部に移動。ついでにグローブボックスも省略されている。取扱説明書や車検証などは、ドアポケットか(いちおうすっぽり入る)、リアシート下のシークレットスペースに収納することになる。

助手席の後ろは意外に快適。実質スリーシーター


(photo:トヨタ自動車株式会社)

リアシートはホイールハウスを避けるように車体中央に寄せられており、おかげで前方視界が開けているのがいい。これは全幅1680mmを活かして、左右フロントシート背もたれの間隔が離れているのも効いている。

前述の通り、助手席の後ろは大人でも快適に過ごすことが可能。特にフットルームには余裕があり、膝まわりが広いのはちょっと驚くほど。足のつま先もしっかりフロントシートの下に入る。またセンターコンソール後方にはちょうど靴一つ分くらいのスペースが切り欠いてあり、そこへ右足を置くこともできる。

 

一方、気になるのは、身長165~170cmくらいから頭が天井に触れてしまう点。そして座面や背もたれのクッションが小さくて薄い点だ。しかし小一時間ほど、この後席に一般道から高速道路まで座ってみた感想は、見晴らしが良く、静かで、乗り心地も良いため、意外なほど快適、というものだった。圧迫感がなくて振動が少なければ、多少狭くても人間はけっこう快適と感じる、という見本のようだった。

一方、運転席の後ろ側は、写真を見て分かる通り、大人ではフットルームの点でNGとなる。なにしろその足もとは、ちょっとした手荷物さえ置けないくらい狭いからだ。ただ、逆に言えば、座面から上の空間は一人前なので、チャイルドシートを使う幼児用としては十分かも。その点ではポルシェ911などの「+2」シートより使えるスペースだ。

エアバッグは9個を装備

iQはこの小さなボディで、計9個ものエアバッグを標準装備している。前席フロント(2個)、前席サイド(2個)、前・後席カーテンシールドエアバッグ(2個)、運転席ニー(1個)の他、目新しいのが後席乗員を追突から守る世界初の「リアウインドウ カーテンシールド エアバッグ」(1個)および助手席のシート座面クッション内にある「シートクッションエアバッグ」(1個)だ。後者は前面衝突時に膝を持ち上げて腰が前方に移動するのを抑制するというもの。3名ないし4名乗車時に助手席の傷害リスクを軽減するための対策だろう。

2人乗りもしくは3人乗りなら荷室は初代ヴィッツ並み

4人乗車を前提とした場合、荷室容量は32リッターで、ご覧の通り皆無に等しい。ブリーフケースや傘くらいは入るが、買い物袋は難しいという感じ。とはいえ、燃料タンクを後席の床下に配してまでリアオーバーハングを短縮したクルマなので、ここは仕方ないところだろう。

 

もちろんスリーシーター、さらにはツーシーターとして後席を畳んだ場合、容量は232リッターまで増える。数値的にはおおむねパッソ並み、あるいは初代ヴィッツ並みで、ゴルフバッグなら最大2つまで積めるようだ。

なお、スマートの場合は後席がないため2代目なら220リッターあり、さらに助手席の背もたれを折り畳んで拡大することもできるが、iQにその機能はない。この手のクルマに長尺物を積む機会は多くないと思うが、逆に短い室内ゆえに、そうした工夫があるという点ではスマートに軍配が上がる。

 

ここまで切り詰めたクルマゆえ、スペアタイヤは当然なく、代わりにパンク修理キットを荷室床下に備えている。またリアシートの座面が実はフィットのリアシートのように跳ね上がり、その下に小さな収納スペースがあるほか(車検証くらいしか入らない)、その状態で固定すれば鉢植えのように高さのあるものも積むことができる。

基本性能&ドライブフィール

試乗したのは1リッター3気筒+CVT車

1.3リッター直4エンジン車の発売も噂されるが、今回試乗したのはパッソやヴィッツでおなじみの1リッター直列3気筒「1KR-FE」搭載車。グレードは最上級の100G“レザーパッケージ”だが、走りに関係する部分はほぼ全車共通だ。

71.0×83.9mmというロングストロークはそのままだが、iQ用に低回転・燃費重視に改良された「1KR-FE」は、68ps/6000rpm、9.2kgm/4800rpmを発揮する。変速機もヴィッツ同様のトルコン付CVTだが、iQ用に新開発された前後逆配置型だ。

車重はヴィッツより100kg軽く、パッソと同等の890kg。パワーウエイトレシオはヴィッツFが約14kg/ps(990kg/71ps)なのに対して、約13kg/psとちょっとだけ優れる。パッソは900kg/71ps=約12.7kg/psだが、4ATしかない。10・15モード燃費はiQ(23.0km/L)が一番優秀で、以下ヴィッツ(22.0km/L)、パッソ(21.0km/L)と続く。

マイクロカーとは思えない快適性

乗り込んで例のスタートボタンでエンジンを始動すると、聞いたことのあるスターター音と、それに続く3気筒エンジンの音が響く。なまじ外観が未来的なので、ちょっとがっかりするところだが、気を取り直して走り出せば、すぐに気付くのがヴィッツの1リッターより明らかに静かなことだ。エンジン音や振動もそうだが、とにかく静粛性が2ランクは高い感じ。感覚的にはカローラやヴィッツの1.5リッタークラスに相当するレベルだ。

また電動パワステの手応えは意外なほどしっかりしており、レザー巻き(100Gのみ)の小径・楕円ステアリングの操作感もいい。乗り心地もよく、特にピッチング(縦揺れ)の小ささは2000mmの超ショートホイールベース車とは思えないレベルだ。これらの印象と横方向に広々した室内の眺めが相まって、少なくとも直線を走る限り、iQの運転感覚はとにかくマイクロカーとは思えないものに終始する。

ただし、惜しむらくは、というか、現状の(1リッター3気筒の)iQで唯一の弱点と言えるのが、3気筒の宿命とも言える独特の振動だ。これについては「ここがダメ」で触れる。

クイックかつ安心感のある操縦性、最後はS-VSCでカバーする

街乗りではまったく普通に安定して走ってしまうiQだが、ワインディングでも安定感はなかなかのもの。超ショートホイールベースがもたらすクイックな動きは隠しようもないが、それでも不安なく走れてしまうのは、パワー(スロットル)制御と4輪それぞれのブレーキ制御、さらにステアリング制御も協調させるS-VSCを積極的に介入させているからだろう。ちょっと飛ばすくらいなら介入を意識することはないが、それに気をよくして、ポーンとフロントに荷重移動させながらステアリングを切る・・・・・・というようなことをすると、S-VSCのブレーキ制御が「ギギギギギ・・・・・・」と働き、リアのスライドを防ぐのが分かる。ABSの作動音を聞いたことがない人は、けっこうびっくりするかもしれないが、こうやって走らせてもまったく嫌な「ドキドキ感」もなく失速感もなく、安心してミッドシップ車のようなクイックな走りが楽しめる。サスペンションは前がマクファーソンストラット、後ろがトーションビームとトヨタFF車の定番形式だが、そうとう吟味してチューニングしたのは間違いないところ。もちろんS-VSCが無かったら、この軽快なハンドリングは成り立たなかったはずだ。

外観からは想像できない直進安定性

素晴らしいのが高速走行時の直進安定性と快適性だ。今回は200kmほど高速道路を走行したが、安定性、乗り心地、快適性、静粛性に関しては、まったく不満なし。軽量・ショートホイールベース車にあるはずの縦揺れ、横揺れもほとんどなし。特に後輪からの突き上げ感のなさは不思議なほど。逆に言えば「やろうと思えばここまで出来るのか・・・・・・」と感心した。

100km/h巡航では2200~2300回転ほど。おかげでこの速度域なら3気筒独特の振動が出ることはないし、高回転時のエンジン音もたいへん静かだ。ロードノイズや風切り音の低さも「うーん、参りました」という感じ。最高速は2名乗車でもメーター読みで160km/hくらい楽に出そうな感じだった。この1リッターでも、日本の高速道路でパワー不足を感じることはまずないと思う。

なお、RR(リアエンジン・リア駆動)のスマートも高速では重厚な走りが味わえるが、快適性、直進安定性(安定感)、静粛性といった点では、iQの圧勝、というのが、フェアな評価だろう。特にiQは横風を受けた時の安定感が抜群で、大型トラックの横を追い抜く時でも、修正舵の必要はほとんどない。このあたりは前輪駆動ならではの安定性に加えて、良好な前後重量バランス、空力バランス、そしてS-VSCのおかげだろう。

試乗燃費は高速主体で13.5km/L

最後に、あくまで参考値ながら恒例の試乗燃費(トヨタ車ならではの「給油後の平均燃費」表示)は、街中から高速道路まで走った区間(約180km)が12.4km/L。そこからさらに高速道路を120kmほど走り、トータル約300kmで13.5km/Lだった。満タン法でも(当然ながら)ほぼ同様の数字だ。印象としては、街中にしても高速にしても、燃費を意識して大人しく走っても、思ったほど平均燃費計の数字が上がってこない、という感じを受けた。なお10・15モード燃費は23.0km/L、JC08モード燃費は21.0km/Lだ。

ここがイイ

斬新なプラットフォーム、高い快適性、スポーティな操縦性

前後逆転した変速機を新設計するなど、常識外れながら理にかなったプラットフォームを新開発したこと。未来へつながる斬新な技術開発はやはり感動的なものだ。

素晴らしい高速巡航性能。このマイクロカーで一日に何百kmでも快適に走れるということは、どこへでもこのクルマで行ける、つまりこのクルマだけあればいい、ということになる。

小排気量車のCVTにありがちなスリップ感の少ないCVT。先週乗ったスプラッシュあたりとは大違い。違和感のない、またクイックかつ安定したハンドリングもいい。手応えのあるパワーステアリングと操作感のいい小径ステアリングは、スポーティですらある。

静粛性の高さ。参りました>スマート。3人ちゃんと乗れるパッケージング。同じく参りました>スマート。

というあたりを総合的に見ると、小さいくせに一家に一台として必要なことをすべて満たせるクルマだ。都会に住む核家族(3人)なら、これ一台で多分何一つ不満がないだろう。3メートルという全長は奇しくも初代軽自動車と同じ。プレミアムミニではなく、「国民車」として売り出したいくらいだ。

ここがダメ

コンセプトのうたい方、3気筒の振動、シートリフターとルームランプの不備

3人しかちゃんと乗れないのに、4人乗りをうたうのはいただけない。プレスリリースには「大人3人と子供1人、もしくは荷物」となっており、4人乗りとするのはちょっと誤解を招く。潔くスリーシーター+1を標榜したほうがクールだった。また横幅が普通の5ナンバー枠いっぱいということにより、マイクロカーであることのメリットがほとんど感じられない。全幅がここまで大きいのは今後のプラットフォーム展開が理由だが、少なくともiQに関してはそのコンセプトを曖昧にさせる要因となっている。またプレミアムとかファッショナブルとかいう訴求方法にも、かなり無理があるとも思う。つまりもうちょっと別の訴求方法があるように思う。

現状の(1リッター3気筒の)iQで最大の弱点と言えるのが、3気筒の宿命とも言える独特の振動。高価な電子制御式の液体封入エンジンマウントを使って、確かにアイドリング中の振動は「3気筒にしては」よく抑えられているが、エンジン回転が1500回転ほどまで落ちる50~60km/hくらいの巡航時にブルブルと低周波の振動が出てしまうのは、常用域だけにたいへん気になるところ。おそらくは10・15モード燃費:23.0km/Lをたたき出すために、この低回転走行が必要だったのだろうが、たとえそれが22.0km/Lに落ちても、この振動は抑えるべきだったと思う。なお、これは例えばシフトレバーをSモードにするか速度を上げるかして、エンジンを2000回転くらいまで回せばすんなり収まるレベルなので、CVTの変速プログラムや電子制御マウントの改良次第で軽減される可能性はある。

とはいえ、エンジン音の質感もそれなりで、3気筒の弱点がやはり出てしまっている。逆に言えば、近い将来に出るはずの1.3リッター4気筒エンジン車こそが「プレミアムマイクロカー」たるiQの本命だろう。ただ、いきなり1.3ではマイクロカーらしからぬということで、ありネタである1リッター3気筒を苦労して載せた、というあたりが真相かもしれない。

もう一つ大きな弱点が運転席にシートリフターを装備しなかったこと。身長170cmくらいならまったく問題ないが、小柄な人はポジションが決まらない。女性が乗ることが多いはずのiQであれば、身長150cm台でも適正なアイポイントが取れるようにすべきだったはず。これはメーカーも認識しているようで、おそらくいずれ改善されるだろう。

車内全体を照らすルームランプがないこと。あるのは角度調整機能付のLEDマップランプだけで、いかんせん暗すぎるし、LEDなので光が拡散せず車内全体に回らない。オプションカタログにも足もとを照らすフットランプ等はあるが、ルームランプはなし。夜間、車内で物を落とした時は、そうとう困るはずだ。またナビが標準装備ではないことも、いただけない。さらにこの手の斬新なクルマには、もう少しトヨタお得意のインテリジェント装備を盛り込んで欲しいものだ。

試乗した車両は、助手席側リアシートのシートベルト引き込み機構あたりから、走行中に「カタカタカタ」と異音が発生していた。内装の裏側からなので原因ははっきり特定できなかったが、耳元で鳴る音だったので、ちょっと気になった。

総合評価

iQはマイクロカーではない

この総合評価を書いているデイズの水野は新型スマートを買って、毎日乗っている。初代スマートに比べて乗り心地をはじめ、すべての点で進化したマイクロカーである、と確認したので購入したのだ。これならチョイ乗りだけではなく、普通の乗用車として使えるという判断だ。実際、本当に満足している。ボディの小ささはまるでクルマが自分の手足になったかのようだ。アイポイントが高いから、まるで路上を歩いているようにも感じられるし、小さなクルマに乗っているという感覚もない。その昔、ポルシェ911を操ることをポルシェを着るといったものだが、スマートはまさに着るといった感覚。ボディスーツというか、操縦型ロボットに近い感覚だ。反面、長距離は無理ではないが、ちょっと辛い。「普通の乗用車として使える」と断言はできないのだ。

iQはまったく違う。「普通のクルマ」であることを強く感じさせられる。というか、あまりに個性がなく、強い印象もない。アイポイントは低く、室内幅も広いから、運転席ではヴィッツあたりに乗っている感覚と何ら変わりない。振り向けば確かに短いのだが、それは駐車する時くらいしか実感できない。横幅はカローラサイズなので、例えば軽自動車オーナーだと、乗り替えたときにかなり気を遣うだろう。こんなに小さいのに、けっこう大きなクルマに感じてしまうのだ。それが実感である。

ということでさっそく結論から言うと、iQはマイクロカーではない。これは「ショートカー」だ。普通のクルマが短いだけである。普通のクルマだから走りも普通。乗り心地も普通。そしてもちろん横幅も普通。ゆえに乗車人数も普通(4人)。つまりiQは「この短さで普通を実現した」ことがすごいといえるだろう。この普通を成し遂げるために、すべてを変えた。パッケージングの大革命を成し遂げたのだ。容積の小さなクルマ(環境に効率的なクルマ)を実現するために、パッケージングの一切合切を変えてしまったという点で、確かにiQは10年前のプリウス並みに革命的な新型車といえるだろう。

ハイブリッドに続く革命

プリウスはドライブトレーンの大革命だった。そのハイブリッドが10年を経て様々なバリエーションに進化し、今やクルマの生き残りをかけた生命線になりつつあるように、iQのパッケージングは今後進化することで、より容量質量の小さい、その分環境に優しいクルマを多く生み出していくことになるだろう。すでに噂されているように、このパッケージングを用いた全長4m未満の3列シートミニバンはいずれ出てくるだろうし。当然それは軽くて燃費がいいはず。また発想を変えてiQの後半部分を5ナンバー枠一杯(4.7メートル)まで伸ばして荷室としたクルマにすれば、次世代ハイエースともいうべきコマーシャルカーが作れるのではないか。

今のところiQには少なくともプレミアムとは言いにくいパワートレーンが載っている。そこがつくづく残念なのだが、もしiQ用のハイブリッドが開発されたら、それこそとんでもない燃費のクルマになるだろう。リアシート下の空きスペースは、新開発されたリチウムイオン電池を置くには手頃だし、エンジンルーム自体は十分余裕がある。そんな未来への大きな可能性を秘めているという点で、iQはすごいクルマと認めるしかない。今の販売目標台数は月間2500台とたいしたことはないが、それは初代プリウスも同じだった。プリウスが現在の大不況の中でも前年比を上回っているように、iQもやがてそうなるだろう。

クルマ好きが楽しめるのはスマート

とはいえ、現スマートオーナーとしては、乗って楽しいのは絶対にスマート! と強調しておく。iQはトヨタらしくよくできているが、まじめすぎて楽しくはない。フロントタイヤを軸にしたiQならぬチョロQのようなコーナリングの挙動はかなり独自で、楽しいと言えなくはないが、クルマ好きが普通に走りを楽しめるのはスマートの方だと思う。逆に言えばクルマ好きでもない人には当然iQの方が向いているし、絶対的に多い台数が売れるだろう。

しかしこのiQも販売的には前回スプラッシュで書いたように、「小さいクルマは女性向き」という固定概念から逃れられないようだ。なんだか妙にファッショナブルな今の広告展開は、どうにも心ある男性を遠ざけているように思われる。また、プレミアム感を強調する広告展開に関しても、的を射てはいない。スマートは乗っている本人が言うから間違いないが、相当にチープでプレミアム感のかけらもない。しかし購入者の半数以上が年収1000万円超の人々だという。販売店がメルセデス・ベンツと同じという事実はあるにせよ、メルセデスのエンブレムのない変なクルマがそういう人々に買われているわけで、レクサスの展開同様、トヨタはそのあたりをもう一度考え直す必要があると思うのだ。

2008年のイヤーカーは・・・・・・

さて、今年最後のこの時期には、いつも今年のイヤーカーを選んでいるのだが、個人的には新型スマートを推したいところ。しかし上記のようなiQの将来性を鑑みるにつけ、やはりiQとするしかないだろう。トヨタまでが赤字に転落するという未曾有のクルマ不況を救うのは、iQやハイブリッドの技術となるはず。ホンダもF1を止めて、環境車開発へ大きく方向転換したようだし。とはいえ素晴らしい完成度のワゴンRはイヤーカーとして捨てがたい。大不況である今現在の日本においては、ワゴンRの存在意義はiQを凌ぐ。クルマなんかもうiQでいい、とはちょっと言えないが、ワゴンRでいい、とは言えるのだから。以前も書いたように、ワゴンRを真ん中で切って二人乗りにしたスマートのようなクルマ(希望価格はズバリ98万円)がもし出ていたら、それこそがイヤーカーなのだが。

追記:日産がGT-R、そしてフェアレディZという素晴らしいスポーツカーを連発したことはクルマ好きとしては感涙。がんばれ日産。

なお、現在の自動車不況に関しては、編集長コラム(http://www.motordays.com/mizunostalk)をごらんいただきたい。

試乗車スペック
トヨタ iQ 100G “レザーパッケージ”
(1.0リッター・CVT・160万円)

●初年度登録:2008年11月●形式:DBA-KGJ10(-BGXNG(L)
●全長2985mm×全幅1680mm×全高1500mm
●ホイールベース:2000mm ●最小回転半径:3.9m
●車重(車検証記載値):890kg( 550+340 )
●乗車定員:4名
●エンジン型式:1KR-FE
●996cc・直列3気筒・DOHC・4バルブ・横置
●ボア×ストローク:71.0×83.9mm ●圧縮比:10.5
● 68ps(50kW)/ 6000rpm、9.2kgm (90Nm)/ 4800rpm
●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/32L
●10・15モード燃費:23.0km/L ●JC08モード燃費:21.0km/L
●駆動方式:前輪駆動(FF)
●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット/後 トーションビーム
●タイヤ:175/65R15( Bridgestone Ecopia EP25 )
●試乗車価格:184万3705円( 含むオプション:ボディカラー<ホワイトパールクリスタルシャイン> 3万1500円、オーディオレス、HDDナビゲーションシステム G-Bookレスモデル 21万5250円、ETC車載器 ナビ連動タイプ 1万6905円)
●試乗距離:300km ●試乗日:2008年12月
●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
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