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トヨタ ランドクルーザー “70”シリーズ ピックアップ新車試乗記(第742回)

Toyota Land Cruiser “70”Series Pickup

(4.0L V6・5速MT・350万円)

10年ぶりにヤツが来る♪
5速MTに、板バネで。
ラダーフレームに染み込んだ♪
昭和の薫りがやってくる!

2014年10月03日

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キャラクター&開発コンセプト

10年ぶりに国内販売を再開。ただし2015年6月までの期間限定


1984年に発売された初代“70”
(photo:トヨタ自動車)

2014年8月25日に発売されたランドクルーザー“70”(ナナマル)シリーズは、国内販売を10年ぶりに復活させたモデル。

もともとは、名車ランクル40(ヨンマル)の後継車として1984年にデビュー。途中から乗用ワゴンモデルとして「プラド」を派生させる一方で、本流の70は30年間にわたり、トヨタきってのクロスカントリー4WD車として世界中で販売。ただし日本国内での販売は、ディーゼルエンジンの排ガス規制などの理由で2004年に終了していた。

 

今回発売された“70”シリーズ
(photo:トヨタ自動車)

その70の国内販売が10年ぶりに再開されたのは、トヨタによれば、まずファンの強い要望に応えるためとのこと。従来70の車齢が10年以上となり、ユーザーや販社からも復活を願う声が上がっていたという。また、トヨタとしても70の誕生30周年を機に、世界各地で活躍している70の良さを国内のユーザーにぜひ知ってもらいたい、という意図もあるという。

さらには環境・安全基準が今後さらに厳しくなる中、海外向け70を国内で販売するのは今が最後のチャンスということもあるようだ。ゆえに国内販売は、発売から約10ヶ月後の2015年6月30日生産分で終了する。

基本設計は以前とほぼ同じ。ピックアップを新たに導入

車体まわりの基本設計は、販売終了前と基本的に同じ。ただし、2007年にフロントまわりをマイナーチェンジしており、外観もヘッドライトが角目になるなど大きく変わっている。また、今回は4ドアバンに加えて、国内では初となるダブルキャブピックアップトラックがラインナップされた。

エンジンは、現行70用で日本の排ガス規制を唯一パスする4リッターV6ガソリンエンジン(1GR-FE型)を搭載。また、AT仕様も海外向けにないため、5MTのみが導入される。海外仕様からの変更点はサイドアンダーミラーの追加や反射板など、わずかとのこと。

 

シャシーは伝統のラダーフレーム構造で、「通常の乗用車をはるかにしのぐ耐久性基準」(小鑓 貞嘉チーフエンジニア)を確保。サスペンションは前後リジッドで、フロントがコイルスプリング(1999年以降)、リアがリーフスプリング。駆動方式はパートタイム4WDで、オプションで電動デフロック(前後)が用意されている。

生産はトヨタ車体(株)の吉原工場(愛知県豊田市)。販売チャンネルはトヨタ店で、月販目標は200台。2015年6月30日までの生産分で終了するため、10ヶ月で計2000台の計画だったが、フタを開けてみれば発表から一ヶ月後の9月24日時点で、受注は早くも約3600台(バンが約2700台、ピックアップが約900台)を突破している。

世界のランクル70 販売状況


左は初めてランドルクルーザーを名乗った25型(写真は1957年式のFJ25)。右は1960年から84年まで販売された40型(写真は1974年式のFJ40)

現在、トヨタのランドクルーザーは、旗艦モデルの200系、150系プラド、そして70系の3シリーズで展開中。約60年の歴史を持つランクル全体の累計生産台数(今回の70発売時点)は約790万台だが、そのうち70は約146万台(ランクル全体の18.5%)を占める。また、2013年の世界生産台数では、ランクル全体の約35万6000台のうち、70は過去最高の7万6827台(同21.6%)が販売されたとのこと。

近年の主力市場は、中近東(2013年は4万4875台)、アフリカ(同1万4411台)、オーストラリア(1万3110台)で、これらが9割以上を占めており、砂漠地帯、鉱山、農漁業等でのワークホースとして、あるいは災害・紛争地域で赤十字や国連などの人員・物資輸送手段として活躍している。

 

70系の世界販売台数推移。国内販売終了後も、世界販売は順調に伸びている

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価格帯&グレード展開

バンが360万円、ピックアップが350万円


“70”シリーズ バン
(photo:トヨタ自動車)

今回発売されたのは、4リッターV6ガソリン、5速MTのパートタイム4WD仕様。ボディタイプは4ドアバンに加えて、海外では2012年から販売されているスーパーロングボディのダブルキャブピックアップ(国内初導入)をラインナップする。

 

“70”シリーズ ピックアップ
(photo:トヨタ自動車)

価格(消費税8%込)はバンが360万円、ピックアップが350万円。いずれも乗車定員は最大5人で、商用車(1ナンバー)登録になる。また、今回のモデルには、30周年記念の専用エンブレム(ボディサイド両側)や専用本革キーボックス、専用本革車検証入れなどが備わる。ボディカラーはバンとピックアップ共通で全7色。

 

オプションの電動ウインチ
(photo:トヨタ自動車)

全車、オーディオやナビは販売店オプション(スピーカーと電動アンテナは標準装備)。メーカーオプションとして、前後の電動デフロック(5万4000円)、フロントバンパー内にビルトインできる電動ウインチ(18万6840円)、寒冷地仕様(4320円)を用意している。

 

パッケージング&スタイル

全長はバンが約4.8m、ピックアップが約5.3m

試乗したのはピックアップ。セミロングボディの4ドアバンに対して、こちらは全長が460mm長く、ホイールベースが450mmも長いなど、文字通りのスーパーロングボディ。そこに最大5人乗りのキャビンと最大積載量600kgの荷台を備えるほか、商用車用スチールホイールとチューブタイヤを履く超ヘビーデューティな仕様になっている。ただし、全幅はオーバーフェンダーがなく、バンより100mmナロー。

 

前述のように、2007年のマイナーチェンジでフロントまわり(ボンネットも含む)のデザインが一新されているが、全体の雰囲気は1984年に70が登場した時から、そんなに大きく変わっていない。

また、ピックアップの場合、ボディサイズはかなり巨大だが、似たような寸法のディフェンダーやハマー、ラングラーが街中でそれなり人目を引くのに対して、こちらはまったくと言っていいほど注目を浴びない。要するに見た目が小型トラックっぽいからだと思うが、これはちょっと意外だった。

 

発表会場にあった白のピックアップ。かなり貨物トラックっぽくなる

右のバンと比べると、後輪がリアドより後ろに移動しているのが分かる

こちらはバン。色はベージュマイカメタリック
(photo:トヨタ自動車)
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
トヨタ FJ クルーザー (2010~) 4635~4670 1905 1840 2690 6.2
ジープ ラングラー アンリミテッド
(3代目JK型、2007~)
4705 1880 1845 2945 7.1
トヨタ ランドクルーザー 70 バン (2014) 4810 1870 1920 2730 6.3
トヨタ ランドクルーザー 70 ピックアップ (2014) 5270 1770 1950 3180 7.2
 

インテリア&ラゲッジスペース

近代化されつつ、随所に80年代テイストも残る


2007年にマイチェンされたインパネ。デザインはオフロード走行時に車体の姿勢を把握しやすいように水平基調になっている

インパネも現代的にアップデートされており、今やダブルエアバッグ、パワーウインドウ(前後)、電動リモコンドアミラー(電動可倒はしない)も標準装備。シフトレバー横の無骨なドリンクホルダー(正式名はフロントコンソールボックス)も便利そう。

一方で、各部のレイアウトは昔とよく似ているし、マニュアルエアコンの操作パネルやゴム製ブーツに包まれたシフトレバー、そして灰皿などは昭和レトロな感じ。

 

ナビ(販売店オプション)は最新だが、空調パネルや灰皿はレトロ。その右はアンテナの昇降スイッチ

別体式のリモコンキーが付属する。ボタンが大きいのは手袋対策だろう。もちろん集中ドアロック連動

かなり乗用車っぽくなったシート。シートリフターはないが、ステアリングにチルト&テレスコ調整が付く
 

使える後席。乗降性も意外に良好


意外に座り心地のいい後席。ここのドア内張りにも灰皿が備わる

ピックアップで意外に良かったのが、後席の座り心地。足下は広いし、背もたれの角度はちょうどいいし、視界はいいしで、けっこうリラックスして座れる。また、パワーウインドウもほぼ全開。乗り心地はかなりバスっぽいが、空間としては不満がない。

乗降性もフロント、リア共に意外に良好。ドア開口部が広い上に、幅広のサイドステップがあるので、両手が塞がっていても、大人男性ならすんなり乗り込める。もちろん、片手でピラーのグリップに捕まれば、小柄な女性でも乗り降りは普通にできそう。

 

ピックアップの最大積載量は600kg

ピックアップの荷台長は1520mmで、軽トラック(だいたい2000mm弱)より短めだが、荷台幅は1600mmと、それより200mmほど幅広。また、最大積載量は5名乗車時でも600kgあり、軽トラック(350kg)よりかなり余裕がある。

 

バンの荷室。後席タンブル格納時の荷台長は1365mm。最大積載量は5名乗車時が350kg、2名乗車時が500kg
(photo:トヨタ自動車)

リアウインドウは襖のように左右にスライドして開く

後席は背もたれが水平に倒れるほか、タンブル格納も可能(バンとピックアップ共通)
 

基本性能&ドライブフィール

日本仕様は4リッターV6ガソリン


カバーがないため、Vバンクがよく見える。ボンネットはすごく重く、かなり頑丈そう。海外向けはここに4.5リッターV8ターボディーゼル(1VD-FTV型)等が押し込まれる

試乗したのはピックアップ。クラッチペダルを一杯に踏み込んでキーを回すと、4リッターV6・DOHC「1GR-FE」型エンジンに、クククク、グォーンと火が入る。トヨタのガソリンV6と言えばこのGR系だが、4リッターは現行のFJクルーザーや150系プラドと同じで、排気量としてはGR系で最大。ただし仕様はFJクルーザー/プラド用とは異なり、VVT(可変バルブタイミング機能)が吸気側のみになるほか、最高出力はFJクルーザー/プラドの276ps/5600rpmに対して231ps/5200rpm。最大トルクは38.8kgm/4400rpmに対して36.7kgm/3800rpmと、より低回転型になっている。

クラッチは特に重くないが、それなりに踏みごたえがある。運転姿勢はややアップライトで、見晴らしは良好。視点の高さはちょうどハイエースや小型トラックと同じくらいで、宅急便のドライバーとすれ違う時には思わず、ご苦労さんです、と目で挨拶しそうになる。

1400回転くらいがスイート

ストロークの大きな、しかしゲート感覚は明瞭なシフトレバーを1速に入れてクラッチペダルから足を浮かすと、70はあっけなくユルリと発進する。エンストさせる方が難しいと思うくらいよく粘り、アイドリングを下回る700回転からでも車体を前に押し出す。

ただし1速で引っ張ると変速時にギクシャクするので、早めにシフトアップした方が何かとスムーズ。2000回転まで引っ張ってシフトアップすると1400回転にポトリと落ちる感じで、すぐに4速までシフトアップ。特に4速で1400回転、50km/hくらいでユルユル走るのが一番楽でいい。5速の1000回転(約40km/h)でもスムーズに走る。

2000~3000回転をキープすれば交通の流れをリードできるし、必要とあらば231psを発揮する5200回転まで一気に引っ張ることも出来る。ただ、3000回転を超えると、大排気量V6のエンジン音と、ウォーンというギアノイズ(懐かしい)が高まり、少々うるさくなってくる。トラックとかバスほどではないが、音質としてはあんな感じに近い。

リーフリジッドの乗り心地

乗り心地は50km/hくらいまでなら滑らかで、昔のランクルやクロカン4WD車と比べれば、ずいぶん乗用車っぽくなったと言えるかも。アッパーボディの剛性感はかなり高く、ボディがガタガタ震えることはほとんどない。

ただし、やはりサスペンションは前後リジッドで、特にリアはリーフスプリング(板バネ)のスタビライザーレスということもあり、舗装が荒れたところや、高い速度域では、それなりにユサユサ、縦揺れ、横揺れが出てきて、バスっぽい乗り心地になってくる。ユサユサ感は、明らかに先週試乗したラングラー(前後コイルスプリング)より大きい。

操縦安定性は、普通に走る分には問題ないが、リサーキュレーティングボール式のステアリングがかなりスローで、コーナーや交差点に乗用車のような感覚で入ってしまうと、ステアリング操作が追いつかずに慌てることになる。また、路面の凹凸に律儀に反応してステアリングがとられるので、それを適当にいなして走るというテクニックも、当たり前に要求される。

小回りは苦手。ピックアップはウエットグリップに注意


ピックアップはスチールホイール&チューブ式タイヤが標準(バンはアルミホイール&チューブレス)

最小回転半径は4ドアバンなら6.3メートルだが、ピックアップは7.2メートルもあり、小回りははっきり言って効かない。これは先週のラングラー アンリミテッド(最小回転半径7.1メートル)より0.1メートル大きいだけだが、70ではステアリングがスローで切り遅れがちになり、2回くらい切り返すことが多かった。慣れてくると、しっかり速度を落とし、一呼吸早めにステアリングを切るようになる。

また、ピックアップの場合は、ライトトラック用のチューブタイヤ(7.50R16LT TG21、ダンロップのSPクオリファイア)を履くため、ウエットグリップの低さには要注意。当たり前かもしれないが、これは乾燥路なら普通にグリップする一方で、ウエットグリップは極端に低く、特に白線の上では全くと言っていいほどグリップしないので、ABSが作動して制動距離が伸びてしまう。慣れるまでは余裕を持って減速しておく必要がある。

 

なお、バンの方は、アルミホイールと一般的なチューブレスの265/70R16 (ダンロップ・グラントレックAT20)を履くので、グリップだけでなく操安の印象もそれなりに違うと思われる。

80km/h巡航時のエンジン回転数は約1900回転で、100km/h巡航なら約2400回転。2000回転を越えるとエンジン音やギアノイズで騒々しくなるし、また乗り心地もバタバタし始めて、直進安定性にも気を使う。平穏に走るなら80km/hくらいがいい感じ。

ただ、馬力は231psもあるので、その気になれば速度計の上限である200km/hは無理にしても、けっこうスピードは出そう。ちなみに海外の紛争地域では安全確保のため、ある程度のトップスピードは必要らしい。

前後デフロックを装備可能。悪路走破性はFJクルーザーより上?

悪路走破性については、スペックでチェック。まず駆動方式についてはパートタイム4WD、つまり通常時はトヨタ流の表記で言うとH2(ハイモードのFR)で走り、悪路でのみ前後直結のH4もしくはL4に切り替えて走るというもの。ローモードの副変速比は2.488:1となる(ちなみにFJクルーザー/プラドは2.566:1、ラングラーは2.717:1、同ルビコンは4:1)。

 

さらに70にはメーカーオプションで前後アクスルに電動デフロックも5万4000円で装備できる。これがあるとないとでは走破性が大きく違ってくるので、極悪路を走る可能性があるなら装着しておくべきだろう。

最低地上高はバンが200mm、ピックアップはホイールベースが長い分、ランプブレークオーバーアングルを稼ぐためだろう、5mm増しの225mm。対地障害角(バン/ピックアップ)は、アプローチアングルが33度/35度、ランプブレークオーバーアングルが26度/27度、ディパーチャーアングルは23度/25度。参考までに、この項目で優秀なFJクルーザーは、それぞれ34度、28.5度、27度だ。

 

ちなみにFJクルーザーも副変速機付のパートタイム4WD車であり、オプションでリアデフロックや、電子制御デバイスのA-TRAC(アクティブトラクションコントロール)、そしてクロールコントロールも装備できる。一方、70にはABSはあるが、電子制御デバイスは一切ない。なので開発者に「FJクルーザーの走破性も(70に負けないくらい)高いのでは」と尋ねたが、「いや70にはフロントにもデフロックが付けられる」と強調された。

また、70には工場オプションで、フロントバンパー内部にビルトインできる電動ウインチ(18万6840円)も装着できる。ワイヤー長は約34メートルで、付属のリモコンで車内からの操作も可能。3本掛けなら3トンまで対応するとのこと。スタックした時にも、これで自車を引き上げることが出来る。

プレミアム指定で、試乗燃費は6.7km/L。JC08モード燃費は6.6km/L

今回はトータルで約250kmを試乗。車載燃費計がないため、満タン法で計測した試乗燃費は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が6.9km/L、そして撮影を含めたトータルでは約42リッターを消費して約6km/Lだった。JC08モード燃費はだいたい同じで、6.6km/L。

タンク容量はバンとピックアップ共に130リッターもあるので、実質6km/Lだったとしても航続距離は700km程度にはなるはず。

 

ピックアップの場合、給油キャップは鍵式でむき出しのタイプ。キャップが閉まっていなくても鍵が抜けるので、締め忘れに注意

なお、同じ1GR-FE型のFJクルーザー/プラドはレギュラーガソリン仕様だが、70はハイオク仕様になる。これは70用のエンジンが海外仕様のままだからだ(特にガソリン車の需要が多い中東向け)。カタログには「レギュラーガソリンをお使いになることもできます」とあるが、「その場合、エンジン性能を十分に発揮できません」と但し書きがつく。

 

ここがイイ

新車で買える本物のレトロ車。圧倒的な信頼性、一生モノ感など

新車で手に入るヴィンテージ。先週試乗した現行の3代目ラングラーは今どきのSUVに進化していたが、こちらは依然ワークホースそのもの。「昭和」の質実剛健なメカニズムと雰囲気を備えたクルマが、しかも「信頼の」トヨタ車で新車で買えるというのは、ほとんど奇跡。また、商品企画としても示唆するところは大きい。

今や国内では絶滅寸前のトルクフルなV6エンジン。今どき4リッターのV6ガソリンで、しかもハイオク仕様。そのリッチな低回転トルクを5速マニュアルで引き出して1500回転くらいで楽しむのは、ある意味、かなり贅沢では。トルクがあるので、ギアの一速とばし変速も可能。

 

意外に快適なリアシート。クッションを長くしたり、低反発パッドを採用するなど、シートは前席を含めてかなり改良されているようで、このあたりはちゃんと最新の基準になっている。

1ナンバーということで毎年車検にはなるが、自動車税などは安いし、耐久性と信頼性でこれ以上のクルマはそうそうない。そしておそらく純正パーツの価格も高くないはず。そして、まだ生産中のクルマであり、海外向けは当分絶版にもなりそうにないから、欠品が出るのは当分先だろう。熟年層はもちろん、20代の人が買っても、一生モノとして無理なく維持できるのでは。

ここがダメ

当然ながら、今どきのSUVには快適性、操安、乗りやすさで及ばない

あくまでも今どきのSUVを基準にすると、本文でも触れたように乗り心地や操縦性は全体的にトラック的。昔の前後リーフリジッド車より洗練されているはずだが、ユサユサ感は確実にある。また、高速道路の追越車線を走るのは性能的には無理ではないが、やはり今どきのSUV的な余裕はない。

ステアリングがスローなせいもあり、曲がる度にクルクル回していると、だんだん疲れてくる。意識的に戻す作業が必要だし。ついでに言えば、5MTのシフトレバーはストロークが長くて、だんだんメンドくさくなる。そしてクラッチも最初はそんなに重くないが、これも渋滞にはまってしまうとボディブローのように効いてきそう。

ピックアップの場合、ダブルキャブゆえ荷台は軽より狭いし、荷台が高いので荷は積みにくい。ボディサイドは出っ張りがないので、ほぼ見切り通りだが、小回りが効かないから日本の狭い道では持て余すと思う。ゆえに(北海道などでは別だが)一般的な「日本の」農作業向けではない。

本文でも触れたように、ピックアップの標準タイヤは、ウエット路面では(乗用車感覚で言うと)驚くほどグリップしないので要注意。まぁ、70のピックアップを買うようなマニアなら「分かってる」話だと思うが。

総合評価

笑いが止まらない、なんてことはたぶんない

新たに開発するまでもないが、わずかながら需要がある。であれば一旦販売中止したものを復活させてしまえ。これは中小企業ならありそうな話だが、いまや巨大企業である日本の自動車メーカーがやるなど、ほぼありえないことだ。トヨタの場合、販売復活車としてはシエンタという先例がある。2003年に発売されたシエンタだが、2010年に一旦生産と販売を終え、翌年に復活した。こういう例はあるものの、販売終了後10年もたって復活するなんてことは、普通はありえないこと。その点で70は奇跡のクルマといえそうだ。ランクルの開発生産母体であったアラコがトヨタ車体と合併してちょうど10年。もしかするとこの復活劇には、そのアニバーサリー的な意味あいもあるのかもしれない。

70は国内では販売されていなかったが、海外では継続していたわけで、その間に少しずつ進化もしていた。日本で走っている70は、新しくても10年前のクルマであり、最も古いものはすでにポンコツの域に達しつつある。それゆえ、70にずっと乗り続けたいから、新車があったらまた欲しい、というマニアが2000人くらいいるはず。そんなマーケティングを誰かがしたのだろう。そして今の海外仕様なら、ほとんど手を加えなくても国内販売が可能だから、トヨタとしてもそれならば、ということになったのだろう。実際に発売してみたら想定の倍近く売れて、これは笑いが止まらない、なんてことはたぶんない。マニアックな古いクルマゆえ、売るにはそれなりに面倒が伴うはずだから。それでもマニアの手に渡るよう、手間ひまかけて再び発売してくれたことは、クルマ文化の復権を願う豊田章男社長の意思が、何らかのカタチで反映しているはず。ありがたいことだと思わねばなるまい。

本当の自由とはこういうもの

ただ一方で、来年になったら各種規制に合わなくなるから、今のうちに売ってしまえという側面をもつ商品でもあるわけで、それをどう考えるかだ。思うに、一律に規制して、こういうクルマを売れなくしてしまうことの方に問題があるのではないか、と。古いクルマが一概に全て危険ではないだろうし、排ガス問題にしても、こういうクルマの数はたかが知れている。新車優遇のためか旧車に高い税率をかけ、ディーゼルとなればヒステリックに規制する。そんなことより、こういう趣味のクルマを寛容して多彩なクルマ文化を持続させる、そんな日本でありたいと思う。

実際、この70、乗りやすさとはまったく無縁で、とにかく古臭い。久々に乗りにくいクルマだと思った。もちろんMTだし、ハンドリングにはいわゆるオツリがあるから、必要なだけ切って、必要なだけ戻すという作業をしないといけない。昔のクルマを知っていれば何とか乗れるが、若い人が初めて乗ると、そうとう厳しいのでは。それゆえ、そういうクルマを乗りこなし、オフロードでも自在に操れるようになれば、これは面白いだろう。20年も前の四駆ブームの頃、当時の70やパジェロなどの、今思えば古臭い四駆でオフロードを走るのはずいぶん楽しかったものだ。クロールコントロールの付いたランクル200なんかでは味わえない、自分でクルマを動かしてるという達成感を得られる。その分、リスクもなくはない。そんなクルマを買うのであれば、それはまさに自己責任。本当の自由とはそういうものだろう。

実用車というか、生活道具

とはいえ、実際にオンロードを走っていると、やっぱりトヨタ車だなと思うことも事実。走りにはほとんど刺激がなくて、無味無臭な感じ。この感覚はやはり70年代、80年代のトヨタ車のものだ。ジープ ラングラーやランドローバー ディフェンダーのような、良い悪いを越えた個性みたいなものは感じられない。逆に言えば、それゆえ世界で今も「実用車」として使われ続けているのだろう。世界の辺境地域では、クセがなくて乗りやすく、丈夫で、壊れてもメンテがしやすいランクル70は、実用車というか、生活道具そのもののはず。壊れたとしても取っておいた廃車からパーツを外して移植すれば、また問題なく動き出す、といったタフさが、今だに過酷な環境下の世界中で使われ続けている理由のはずだ。

先週のジープ ラングラーには軍用車的なイメージがあったが、ランクルは赤十字車両に象徴される平和な道具の印象が強い。しかしひとたび戦争となれば、丈夫で乗りやすいランクルは、十分に戦力の一つとなるのかも。そんな使われ方など、日本では将来にわたってありえないと思いたいのだが。

 


試乗車スペック
トヨタ ランドクルーザー “70”シリーズ ピックアップ
(4.0L V6・5速MT・350万円)

●初年度登録:2014年8月 ●形式:CBF-GRJ79K-DKMNK ●全長5270mm×全幅1770mm×全高1950mm ●ホイールベース:3180mm ●最低地上高:225mm ●最小回転半径:7.2m ●車重(車検証記載値):2230kg(1120+1110)※オプションの電動デフロック(+10kg)を含む ●乗車定員:5名

●エンジン型式:1GR-FE ●排気量・エンジン種類:3955cc・V型6気筒DOHC・4バルブ・縦置 ●ボア×ストローク:94.0×95.0mm ●圧縮比:10.0 ●最高出力:170kW(231ps)/5200rpm ●最大トルク:360Nm (36.7kgm)/3800rpm ●カムシャフト駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/130L ●JC08モード燃費:6.6km/L

●駆動方式:パートタイム4WD ●サスペンション形式:前 リジッド+コイルスプリング/後 リジッド+リーフスプリング ●
タイヤ:7.50R16LT TG21 ※チューブタイヤ(Dunlop SP Qualifier)

●試乗車価格(概算):-円 ※オプション:電動デフロック(前・後) 5万4000円、トヨタ純正ナビ・オーディオ -円 ●ボディカラー:ブルー(8H6)

●試乗距離:約250km ●試乗日:2014年9月 ●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
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