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シボレー トレイルブレイザー EXT LTZ(V8)新車試乗記(第312回)

Chevrolet TrailBlazer EXT LTZ(V8)

(5.3リッターV8・4AT・480.9万円)

2004年04月10日

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キャラクター&開発コンセプト

ブレイザーの最新上級モデル

シボレー・トレイルブレイザーは、1969年に登場したGMのオフロード車「ブレイザー」の末裔。小型トラックベースのブレイザー(北米では今も販売中)とフルサイズSUVの「タホ」「サバーバン」の間を埋める、アメリカ基準で言えば中型SUVだ。GMは「GMC」「キャデラック」「ハマー」等の各ブランドでSUVを展開しており、グループ全体で高級からラギッドまで多種多様なモデルを備える。ちなみに「ブレイザー」「トレイルブレイザー」の名は共に、「道しるべを付ける人=道を切り開く人」を意味する。

日本で一番身近なアメリカンSUV?

日本では2001年9月に発売。従来のヤナセなどに加えて、2003年2月からはスズキアリーナ店も取り扱いを始めた。販売店の多さと敷居の低さ?から言って、一番身近な大型アメリカンSUVと言えるだろう。輸入権がスズキに移管したことを受けて装備や価格を見直し、2004年1月9日に改めて発売された。

直6に加えて、ロングボディ、V8モデルを追加

デビュー時は新開発の直列6気筒DOHCエンジン搭載の5人乗りだったが、この2年半で全長とホイールベースを 410mm延長した7人乗り「EXT」やV8エンジン搭載車を追加。今回試乗したのは、7人乗りロングボディ、本革シート、5.3リッターV型8気筒OHV エンジンを備えた最上級モデル「EXT LTZ(V8)」だ。目標販売台数はシリーズ全体で年間2000台。

価格帯&グレード展開

4グレードで376万9500円から

グレードは4種類。4.2リッター直列6気筒・5人乗り・標準モデルの「LT」(376万9500円 ※消費税込み、以下同じ)、それにレザーシートや電動サンルーフなどの豪華装備を追加した「LTZ」(426万3000円)、その7人乗り・ロングボディの「EXT LT」(401万1000円)、そして5.3リッターV型8気筒エンジンを装備した最上級「EXT LTZ(V8)」(480万9000円)。

ライバルはエクスプローラー

宿命のライバルは、フォードの中型SUVであるエクスプローラー。こちらは全車7人乗りで、4.0リッターSOHC・ V6(414万7500円)と4.6リッターSOHC・V8(488万2500円)の2種類がある。欧州勢ならフォルクスワーゲンのトゥアレグ(521万 3250~678万8250円)など、日本勢ならトヨタ、日産、ホンダの北米向け中・大型SUVが競合する。それらはほとんど日本で販売されていないが、数少ない例外としてホンダ・MDX(483~525万円)がサイズ、価格で近い。北米現地では、ダッジ・デュランゴも直接的なライバルだ。

パッケージング&スタイル

410mm延長してフル7シーターに

ロングボディの「EXT」は全長5300mm×全幅1900mm×全高1930mm。7人乗りとするため、全長とホイールベースを410mmも一挙に伸ばしており、そのホイールベースは何とストレッチリムジン並みの3280mmだ。

そのおかげで、標準車ではホイールハウスの上に落ちるリアドアの見切り線が、この「EXT」ではまっすぐ下に落ちている。一方で1900mmという幅は大型アメリカンSUVとしてはかなりスリムな方とも言える。

だから、大きいは大きいが、角のないデザインもあって威圧感はそれほどない。フルサイズのタホやサバーバン、ワイルド感でさらに上手のトラック系(シルバラード、アバランチェなど多種多様)、そしてミリタリーなハマーH2などと比べれば、都会的、近代的なデザインと言えるのではないだろうか。

「パワーアジャスタブルペダル」を装備

アメリカ車らしく、またシボレー車らしいインパネ。室内に高級感はないが、居心地はいい。レクサスやドイツ車の影響を受けて、アメリカンSUVも質感の高さや高級感を目指す流れがあるが、GMの場合はキャデラックにそういうのは任せて、シボレーではカジュアル路線。レストランではなく、「ダイナー」という感じだ。

一方で、機能装備は近代化。LTZに標準装備の「パワーアジャスタブルペダル」は、アクセルとブレーキペダルの高さが電動調節できるもの。オートエアコンは左右独立式。電動シートのスイッチもアストロのように取って付けた感じではなく、欧州車や日本車並みに操作しやすい。

 

面白いのは天井に備わる「ボイスレコーダー」。最長4分間の音声メモの録音・再生が可能だ。

7人乗りで、後席の快適性にも配慮

セカンドシートは65:35の分割可倒式。シート全体を跳ね上げることも可能。LTZは後席用にオーディオ&エアコン操作パネルを備える。大型サイドステップがつくので、乗り降りは割に楽だ。

 

3280mmという超ロングホイールベースは、このサードシートのため。シートは小振りでクッションも薄いが、窮屈な感じはない。電動で開く3列目のサイドウィンドウやエアコン吹き出し口を天井後端に備えるなど、快適性にも配慮している。

 

サードシートへ乗り降りは、セカンドシートをタンブルフォールディングして行う。操作はやや面倒だが、その分開口部は広い。ミニバンではなく、あくまで本格的な走破性を備えたSUVのものとしては一般的な方法だ。

ガラスハッチを備えるなど便利な荷室

3列目使用時でも、十分な荷室スペースを確保。3段階に高さを変えられるアジャスタブルリアパネルを備える。

 

リアゲートはガラスハッチだけの開閉も可能。 160cm程度の身長でもちゃんと荷室の荷物が出し入れできるし、ゲートを降ろすときも手が届く。そうはいかないクルマが、欧州車には意外と多いのだ。

基本性能&ドライブフィール

都内でも乗りやすい

最上級グレード「EXT LTZ(V8)」のエンジンは、GMのSUV、ミニバン、トラックでおなじみの5.3リッターV型8気筒OHV「ヴォルテック」(289ps、 45.0kgm)。V8の滑らかさ、OHVのおおらかさ、大排気量の大トルクで、2340kgのヘビー級ボディを軽々と引っ張る。それでいて高回転までシュンシュン回る近代的なユニットだ。今回試乗したのは、都内の渋滞路、首都高速、そして郊外の空いた一般路だったが、パワー不足やボディの重さは一切感じない。

アストロ同様、トレイルブレイザーはこのロングホイール版でも想像するよりずっと乗りやすい。小回りもよく効き、切り返し覚悟のUターンも、すんなり曲がれることが多かった。最小回転半径は6.2メートルと数字上は小さくない。ハンドルがよく切れるのと「小回りは苦手なはず」という期待の低さを、良い意味で裏切るからだろう。もちろん、先がどうなっているか分からない裏道に入って行く勇気はないが。そういう意味で、道幅のガイドもしてくれる賢いナビやバックソナー、バックモニターなどの装備が欲しいところ。

洗練された「クロカン四駆」

フレームボディ(シボレー得意のハイドロフォーム・スチールフレーム)、リア:5リンクリジッド、パートタイム4WDというクロカン四駆の王道を行くが、操縦性や快適性は近代的。設計が新しいだけにユサユサ感やハンドリングの曖昧さはあまり感じられない。パワーがあるので振り回せばそれなりに暴れるが、ヒヤッとする動きは常識的な操作をする限りは出なかった。

乗り心地がとても良いのは、柔らかいサスペンションとロングホイールベース、ワイドトレッド、車重などの相乗効果だろう。オンロード指向のミシュラン・パイロットも貢献しているはず。とにかくどこを走っても乗用車感覚で走れるという点で、まさにSUV。トラックベースのクロカン四駆でなく、内外のライバル車に対抗しうるアメリカ製のSUVである。

ここがイイ

乗り心地、快適性、ユーティリティ、上質感(高級感ではない)など、何の不満もなく7人の人間が乗れる点で、「今の四駆」と感じることができる。加えてV8という記号性は、アメリカンであることを際だたせている。実際のエンジンフィールはV6的で、かつてのドロドロ回る V8とはほど遠いが(その意味でも近代的)、やはり余裕がある分、直6よりクルマの性格にはマッチしている。走りから装備まですべてがまさに今のクルマで、古くさいところがない。安心して毎日使える、生活の道具になるだろう。

便利だったのは荷室にあるアジャスタブルリアパネル。丈夫なハードボードのトノカバーだが、セット位置により荷室を上下に区切ることができて、なかなか使い勝手がいい。前述したボイスレコーダーなんてのも、電話番号をメモしたりするのに便利だ。またアジャスタブルのペダル類も素晴らしい。これがあるクルマは世界中探してもずいぶん少ないのだ。

ここがダメ

これじゃなきゃ、という強い個性が感じられないこと。SUVとしては今風でそつなくまとまっているだけに、逆に没個性だ。もちろん、日本国内では少数派ゆえ、十分個性的に見られるはずだが、乗ってみるとこのクルマならではという味はあまり感じられなかった。キャデラックのようなブランド性もないだけに、もし乗るならノーマルのままでなく、ラグジーに改造してもっと個性を出したいと思ってしまう。

総合評価

新型車が氾濫するSUVの中で、トレイルブレイザーはアメリカの道具感をうまく出している。V8が載ってさらにそれが強調されたと思う。サバーバンなど上級車があるだけに、トレイルブレーザーはミニバンならぬミニSUVといった趣だから、日本でアメリカンライフに憧れる人には、手頃な買い物だと思う。日本の日常で使いこなせるサイズだし、10・15モードで6km/Lの燃費も、レギュラーガソリンでいいから許容範囲だろう。

ところで、最近の世界SUV大戦争だが、かつて日本のクロカン四駆ブームを体験した目で見ると、たいへん奇妙に映る。最近のSUVは悪路から高速まで道を選ばず走れ、快適でハンドリングも悪くないわけで、昔のオフロード四駆やトラックベースの四駆と較べれば、乗り物として理想的な形に進化しているが、クロカン四駆ブームの時に感じた、ムダの多い乗り物だな、という感じは今も否めないのだ。こうしたクルマがなぜまた今ブームなのだろう。トレイルブレイザーにしても、一人二人で乗るだけなら、いかにもムダな感じは否めない。

と思っていたら、米国でも『SUVが世界を轢きつぶす--世界でもっとも危険なクルマが売れるわけ』という本がベストセラーになっているという。ニューヨーク・タイムズの記者が書いたもので、日本語版も出ている(http://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN4-8067-1280-9.html)。残念ながらまだ読んでいないが、「アメリカ製造業の屋台骨を支える自動車産業の主要製品であるSUVを真っ向から欠陥商品であると告発した」内容だという。目次を見ると「燃費・税制・大気汚染の政治学、『威圧的で凶暴』を売るSUVマーケティング、コンパティビリティの低さ、街の迷惑者」など刺激的な言葉が並ぶ。

確かにSUVに乗っていると、クルマによって自己が肥大する傾向がある。この場合はSUVが悪いのではなく人の問題なのだが、伝統的にマッチョなイメージがウケる北米で売れる理由はそこにあるのだろう。

とはいえ、安全で経済的、しかも環境に優しいのであればクルマは大きい方が便利だ。同じ性能であれば大は小を兼ねるのは実感としてわかる。2人乗りより7人乗りの方が、何かにつけて使い勝手がイイのは間違いないのだ。つまりたくさん乗れ、どんな道でも走れ、走りもイイ、しかも丈夫。そんなSUVはクルマの理想をかなりいいところまで実現している。あとは燃費など環境性能を飛躍的に向上させることができれば、道具としてかなり欲しいものとなる。

またトヨタの燃料電池車がSUVのハリアーベースであるように、SUVのパッケージングやコンセプトには将来性があると思う。つまり、できあがってしまった感のあるセダン系に較べると、SUVはまだまだ自在に進化する可能性を秘めたクルマだ。北米のSUVブームは世界に広がりつつあるが、その大きな需要を背景に、理想的なSUV=どこでも走れる、環境にも優しいユーティリティー・スーパーカー、の開発競争が進むことを期待したい。

試乗車スペック
シボレー トレイルブレイザー EXT LTZ(V8)
(5.3リッターV8・4AT・480.9万円)

●形式:GH-T370V●全長5300mm×全幅1900mm×全高1930mm●ホイールベース:3280mm●車重(車検証記載値):2340kg (F:1280+R:1060)●エンジン型式:5F●5327cc・V型8気筒・縦置●289ps(213kW)/5200rpm、45.0kgm (441Nm)/3600rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/96L●10・15モード燃費:6.0km/L●駆動方式:パートタイム4輪駆動 ●タイヤ: 245/65R17(Michelin Pirot LTX) ●乗車定員:7名●価格:480.9万円 (試乗車:480.9万円 ※オプション:なし)●試乗距離:約100km

※2004年4月1日以降のMOTORDAYS試乗記の表示価格は、すべて消費税込み価格です。

公式サイト http://www.chevrolet.co.jp/

 
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