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スバル トラヴィック新車試乗記(第195回)

Subaru Traviq

 


2001年11月13日

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キャラクター&開発コンセプト

設計・開発はドイツ、生産はタイ、販売は日本のスバルというグローバルなミニバン

スバル初の7人乗りミニバンとして登場したトラヴィック。コンセプトは「1人で乗っても7人で乗っても楽しい7人乗り」。実はこのクルマ、日本でオペル・ザフィーラとして売られている車両(タイGMで生産)を、オペルの親会社であるGMからOEM供給を受けたもの(ザフィーラはヨーロッパ製)。スバルは99年12月からGMと戦略提携を結んでおり、その具体的成果の第1弾がトラヴィックというわけだ。

というわけで基本的なシャシー、ボディはザフィーラと共通となる。が、細部にはスバルならではのこだわりが数多く込められており、単純にザフィーラのフロントグリルを変えて、スバルのエンブレムをくっつけたというものではない。エンジンは専用の2.2リッターを搭載。この2.2リッターというのは、欧州仕様も含め、ザフィーラには搭載されていないもの。ダンパーを中心としたサスチューンもスバル・オリジナルだ。駆動レイアウトは2WD(FF)のみで、ミッションは4速ATが組み合わせられる。

価格帯&グレード展開

排気量アップなのに大幅値下げ

グレードは「ベースグレード」を基本に、スポーティ仕様の「Sパッケージ」、豪華仕様の「Lパッケージ」の3タイプ。パワートレーンは2.2リッターエンジン+4ATのFFのみ。Sパッケージでは205/55R16タイヤ&アルミホイール、スポーツサス、エアロパーツなどが装備され、見た目にも実際の走りにもスポーティな演出がなされている。一方、Lパッケージでは15インチアルミホイール、ヘッドライトウォッシャー、マルチインフォメーションディスプレイ、ルーフレールなどが標準装備される。

気になる価格だが、ヤナセの「ザフィーラCDX」が1.8リッターエンジンで289万円に対して、トラヴィックは2.2リッターで199.0万円からと、思いきった安さを提示している。排気量がアップしているのに、価格は逆に安いというのはあまり聞いたことがない。装備的には確かにトラヴィックのベースモデルのほうが若干見劣りするものの、それでもトラヴィックで一般的な装備でオプション装着の必要性があるのはオーディオくらい。224.0万円のSパッケージか234.0万円のLパッケージのいずれかならMDデッキを中心としたオーディオシステムも標準装着されている。ザフィーラならではといえるのはサイドエアバッグが標準化されていることぐらいだろう。タイ工場生産というユニクロ方式が効いている。さて、ヤナセはどうする?

パッケージング&スタイル

エアロは単なる飾りじゃない、Cd値は0.32から0.30に向上

ボディサイズはザフィーラと同じ全長4315mm×全幅1740mm×全高1675mm(ルーフレール非装着車は1630mm)、ホイールベース2695mm。全体としては全長はプレマシー、全幅はイプサムといった感じで、これまでの国産ミニバンにはないサイズだ。外観上、ザフィーラとの主な違いはフロントグリルぐらいで、グリルは横バーからメッシュタイプに変更され、スバルのアイデンティティ六連星エンブレムが装着される。

もとが99年4月に登場したクルマだけに新鮮味には乏しいものの、Sグレードにはスバルがデザインしたリップスポーラー、サイドステップといった専用エアロが装備され、モールディングやバンパーはすべてボディ同色で統一される。オリジナルのラインを尊重しながらも、カチッとした重厚感が巧みに表現されており、日本人の好みに合った仕上がりだ。しかもそこから導かれたCd値はザフィーラの0.32から0.30まで向上している(Sパッケージの場合)のだと言う。前後揚力もゼロだ。トラヴィックには、機能美を追求するというスバルらしい姿勢がしっかりと込められているわけだ。

室内はドイツ車然とした雰囲気

当然、居住空間、シートアレンジにおいてもザフィーラと全く同じだ。シートレイアウトは2-3-2の7人乗り。全長がプレマシー並といっても、パッケージングが巧みなため、サードシートは思いのほか、ゆったりと座れ、エアコンの吹き出し口もある。サードシートは左右それぞれを独立して格納可能。セカンドシートの床下にスッポリと収まる仕掛けは、今、見ても「ウマイ!」と感心させられる。ただし手を挟みがちなので注意が必要だ。

また、セカンドシートは最大300mm前後にスライドできるため、サードシート格納時、最大限に後方にスライドさせればファーストクラスの快適性を味わうこともできる。全幅が1260mmあるため、横方向における開放感もストリームやスパシオといった5ナンバーミニバンでは味わえない魅力と言えるだろう。

インパネもステアリングのエンブレムが異なるだけで基本的にザフィーラと大きな違いはない。ヨーロッパ生まれのクルマらしく、レイアウトや質感こそ質素ながらも機能的だ。フロントシートは全高の余裕から生まれる空間を上手く利用して高めの位置にセッティングされており、視界は良好。ペダルは“前に押す”ではなく、「下に踏む」というレイアウト。座り心地は日本流に味付けされておらず、ドイツ車然とした硬めなものだ。このあたりはスバルのクルマ作りと似ているものがある。初めて乗る人にとっては慣れを要すると思うが、お尻や腰がしっかりと固定されるポジションであることには変わりはない。その恩恵は特に長距離ドライブのときに授かれるはずだ。ただし、身長が欧米人並でないとイマイチしっくりこないのも確か。チルト&テレストピックのステアリングも、小柄な人にはもう少し下げられるといい。

やっぱり日本人の肌に合わない? 細かい部分で不満を感じる

装備面では価格がザフィーラよりも安いということで簡略化が懸念されるところだが、心配ご無用。ザフィーラとほぼ同一だ。7席全てに3点式シートベルト、上下調整機能つきヘッドレストが装備され、低価格モデルといえども安全性の確保に手抜きはない。アウトバーンのスピードレンジでも高い緊急回避性能を確保する4センサー4チャンネルABSも全車に標準装備。また高度なイモビライザー(盗難防止装置)も装着されるなど、トラヴィックがヨーロッパ生まれであることを感じさせる。

とはいえ、全てが手放しで誉められる仕上がりではないのも確か。例えばシフトレバーがやや遠い(純日本人体系である私の手が短いから?)とか、カップホルダーの底が浅いとか、シフトポジションインジケーターがないとか(メータ内にないどころか、シフトまわりにもない)、ウインカーはレバーはステアリング左側とか…。サイドエアバッグがないのもいただけない。1DINスペースのオーディオレイアウトもナビを装着したい人にとっては気になる部分だろう(収納タイプと言う手もあるが、その場合、エアコン吹き出し口と干渉してしまう)。それらはどれも細かい指摘であるが、日本人はそういうところに結構うるさく、それが販売ではかなり大きな欠点になってしまう。改善を求めたい部分だ。

基本性能&ドライブフィール

エンジンは400ccアップの2.2リッターエンジン、ATはニュートラルコントロールを採用

エンジンはザフィーラの1.8リッター(最高出力125馬力、最大トルク17.3kgm)に対して、トラヴィックはGMグループのサターンが開発したオールアルミ製の2.2リッター直4DOHC(147馬力、20.7kgm)を積む。2200rpmから5300rpmという実用的な回転域で最大トルクの90%以上も発揮するのだという。

ミッションは日本の道路事情に合わせた4速AT。エコノミー・スポーツ・スノーの3つの走行モードをチョイスできる。またザフィーラ同様「ニュートラル・コントロール」も搭載される。これは、クルマが停止中にブレーキペダルを踏むと、ギアが自動的にニュートラルような状態となり、放すと再びギアが入るというもの。このシステムの採用により無駄な燃料消費を抑えることができる。

足回りは前/ストラット、後/トーションビーム。形式こそトラヴィックと同じだが、スバルが日本の道路にあったダンパーチューニングで味付け。さらにSパッケージでは16インチタイヤと専用サスが奢られ、よりスポーティー指向としている。

硬い足回りは欧州車のもの。ワインディングが楽しいミニバン

試乗したのはシリーズ中、最もスポーティなSパッケージ。排気量がザフィーラのそれより400cc増しになるだけに、ゆとりの差は歴然。出足は一段と力強く、特にその差がはっきり分かるのが長い上り坂だ。ザフィーラでは非力に感じていた場所でも、トラヴィックはボディの重さが気にならないぐらいに、スイスイ上っていく。実用域のトルクの厚さが堪能できる一方で、吹け上がりはとても軽い。ファミリーユースで使っても重々しさを感じることはないだろう。また、なかなかキックダウンしない、というザフィーラで感じていたイラツキが解消されているのも嬉しい限りだ。

乗り心地はザフィーラに通じるドイツ車然とした硬さを残したもの。スバルがチューニングしたというが、見事に硬い足だ。16インチタイヤとスポーツサスを唯一装着しているだけに、走りのしっかり感は申し分なく、ステアリングを通してボディ剛性の高さがハッキリと伝わってくる。まるでドッシリしたセダンのような感じ。例え、急激なレーンチェンジであっても、不安のない挙動とトレースを発揮するのだから頼もしい。ミニバンにありがちな、「リアの追随が遅い」とか「ステアリングを切っても前輪の向きが把握しにくい」といったところがまるでない。それほどハンドリングは正確で俊敏。フットワークはミニバンとしてはそうとうスポーティな方向に振られている。「ミニバンの後席は酔いやすい」という定説を覆すかも。

ただ、この硬質な乗り味も、実用面となると疑問符が付く。運転車は満足しても、乗員である奥さんや子供から「お尻が痛い」と言われる可能性大。このあたりの関係がミニバンの難しいところ。ましてトラヴィックはスバルにとっては初の本格的ミニバン。他のグレードなら、印象ももっと変わっていたと思うが、Sパッケージに乗る限り、スポーティに振り過ぎなのでは、という感じを受けてしまう。

まあ、それでもドイツ車風の乗り味が好きな人には十分満足できると思うし、(ザフィーラと比べて)圧倒的に安い価格からしてもオススメできる。国産ミニバンとは一線を画す、ひと味もふた味もクセのある玄人好みのミニバンと言っていいだろう。

ここがイイ

タイ生産といえども質感に変化はない。もともとオペルはそう質感が高い方ではないから、それが幸運とも言えるが。戦略的な価格はたいしたもの。輸入車といえども、やり方次第ではこういう値段でも売れるんだ、と感心。確かザフィーラの現地(ドイツ)価格はここまで安くないはず。個性的なミニバンを求めているなら、200万円の価格はズバリ安い。買ってもいいと思う。

ここがダメ

やはり作りは欧州車のまま。身長が低い日本人だと、今ひとつポジションがしっくりこない。しかもチルト用のレバーがステアリング下にきれいに隠されており、取説を読まないとみつけられないだろう。

運転席上のライトに手動点灯スイッチがないのもとても不便。また前述のようにポジションランプがないからシフト位置がわからないのはまいった。ニュートラルから一段下げるとロックしてD、ボタン押しながら下げると3-2はフリーで、1へはまたボタンを押して下げることになる。つまりD(4)-3間はポンと落とせない。代わりにスポーツモードボタンがあってこれを使うことになる。マニュアル操作は大変しにくいATだった。

総合評価

オペルザフィーラに乗ったときに、もうちょっとパワーがあればいいクルマなんだけどな、と思ったが、トラヴィックではそれをみごとに実現しており、硬めの足が好きな、走りを忘れたくないお父さんにはいい選択だ。ただし、ザフィーラが出た頃と状況が違うのは、走りのいいミニバンが増えていること。あえてトラヴィックを選ばなければならないというわけでもなくなっている。走りのミニバンで思い出されるのはホンダのストリームだが、サイズ的にもサードシートのコンセプト的にもたいへん近いクルマだ。でどっちがいいか。個人的にはトラヴィックがいい。カチッとした欧州車風の乗り味が好ましいのだ。しかしハードウェアとしてはストリームだろう。何につけ、ちょっとトラヴィックより気がきいている。スバルというメーカーは、マイノリティを味方に付けてここまで来た会社だ。トラヴィックもその意味では、バカ売れしないけれどスバル的にはいい規模のビジネスになるのだろう。

しかし、タイで作って安く日本へ入れるなんて、まるでユニクロだ。それによってこの価格が実現できているわけで、しかもユニクロ同様、品質にも大きな問題はない(“そういいものでもない”のもユニクロ同様)。世の商品は世界中のどこで企画しても、生産しても、特にかまいはしない。ブランド力と品質がそこそこ保たれていれば基本的にOKだ。今後はクルマもその方向へいく。トラヴィックはクルマ作りがいよいよユニクロ化してきたことを示す最初の例といえるだろう。

●車両協力:名古屋スバル自動車株式会社

公式サイトhttp://www.subaru.co.jp/traviq/

 
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