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マツダ トリビュート新車試乗記(第150回)

Mazda tribute

 

2000年12月01日

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キャラクター&開発コンセプト

米国フォードと本格的に共同開発、マツダにとって初の世界戦略SUV

'99年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカー「アクティブビークル」の市販化モデル「トリビュート」は、プラットフォームも含めてマツダが初めてグローバルに開発したライトSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)だ。悪事走破性を確保しながら、オンロードでの快適性を従来のSUVにない高いレベルで実現。「ドライビング・エンタテイメントSUV」というSUVの新しい価値観を提供する。

一番の話題は、初めて親会社である米国フォードと本格的な共同開発をしたということ。これまで両社のクルマはOEM供給の関係であって、ゼロから共同でプロジェクトを立ち上げたのは今回が初。パーツの47%近くが日本以外から取り寄せられ、右ハンドル車は広島にあるマツダの工場で、左ハンドル車はアメリカにあるフォードの工場で生産が行われ世界各国で販売されるという、まさにグローバルカーだ。最近、ライトSUVの市場は世界的に増殖傾向にあるだけに、トリビュートはマツダとしてもフォードとしても、企業の将来展望を示唆する重要なモデルといえよう。同時に、メーカーの系列下による新商品開発という、これからの自動車産業の方向性を示す好例ともいえる。

ボディ構造は当然ながら全体で応力を受けるモノコック。4WDシステムもヘビーデューティーな副変速機付きのパートタイム式ではなく、FFベースのスタンバイ(オンディマンド)方式を採用する。搭載されるエンジンは2リッター直4と、3リッターV6の2種。乗車定員は5名。

価格帯&グレード展開

179.8~254.8万円。破格の安さに加えて、V6がチョイスできるのも大きな魅力

グレードはベーシックな「LX」と内外装の装備を充実させた「GL-X」の2タイプで、後者はV6モデル専用グレードとなる。価格は最も安いのが直4・FFモデル「LX」の179.8万円。次に安いのがその4WDモデルの199.8万円。この価格は、破格の安さで話題となった日産・エクストレイル(グレードでいえば「S」にあたる)よりも2000円! 安い。もちろんパワートレーンは同じという条件下でだ。

また、「LX」にはサイドエアバッグ、スモークガラス、リモコンキー、アルミホイールをセットにした「Gパッケージ」(16.3万円高)も用意されており、こちらも、ほぼ同じ装備を持つエクストレイルの「X」より4万円ほど安い。他にライバルとして挙げられるのは、トヨタ・RAV4、ホンダ・CR-V、三菱・パジェロイオと、スズキ・エスクード。

一方、V6+4WDの組み合わせのみとなる「GL-X」は、「LX-Gパッケージ」の装備に加えて、フォグランプ、オーバーフェンダー、サイドクラディングパネル、大径タイヤ、本革ステアリングなどが専用アイテムとして追加される。価格は254.8万円。このクラスでV6が選べるというのが大きな魅力だ。とりあえずのライバルは、コンセプトは違うもののいすゞ・ウィザード。同じV6+4WDを搭載した価格は265万円。10万円ほど高くなるが、ウイザードの排気量はトリビュートの+200ccあり、パワーも10馬力ほど上だ。

パッケージング&スタイル

アメリカ市場をメインに考えたワイドなボディ

トリビュートは今やライトSUVの新文法となる「FFベース」「モノコックボディ」を採用するものの、共用化が進む昨今ながら、ぜいたくにもそのプラットフォームは専用開発。デザインはマツダ流「コントラスト・ハーモニー」を表現したもので、張りのある曲面を特徴としている。5角形グリルが特徴の洗練された顔つきは確かに都会的なイメージがあるが、一方でデミオにクリソツ…というか最近のマツダ車は皆これ。アイデンティティは統一されているが、全部同じというのも少し不気味というか、味気ない。かといって、下手なグリルで失敗するより無難か。

オーバーフェンダー+サイドクラディングパネルが付き、ボディカラーが2トーンとなる最上級グレード「GL-X」のボディサイズは全長4395mm×全幅1825mm(LXは1790mm)×全高1760mm。ホイールベースは2620mm。最低地上高は205mm(LXは195mm)。

全幅が40~75mm広いことを除けば、ほぼCR-V(背面タイヤのないモデル)と同等となる。したがってライトSUVなのだが、全幅は裕にライバルを越すばかりでなく、ワンランク上のトヨタ・ハイラックスサーフをも凌ぐ。そのワイドさゆえに、SUVらしいたくましさを演出する決め手となっているのも確かだが、国内の取り回しにおいては、かなりデメリットとなりそうだ。「メインターゲットは日本よりもアメリカ」ということが明確に伝わってくる。

アメリカを感じる大雑把なインテリア

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アメリカ市場を視野に入れただけあって、室内はかなり広い。頭上空間、後席の足元空間、そしてワイドな全幅による横方向のゆとりはトリビュートならではのアドバンテージだ。平らなフロア、広いキャビンをさらに有効活用しようと、SUVの世界にミニバン的な価値を日本に浸透させたCR-Vと同じくコラムATを採用した点も見逃せない。前後左右のサイドスルーが楽々でできるのは、レジャーカーであるだけにやはり有り難いものだ。

座り心地はソフト。乗降性の善し悪しを判断する目安となる前席ヒップポイントは735mm。ライバルが700mmあたりに落ち着いているのに対してやや高めの設定だ。このため、Aピラー部にはアシストグリップも付く。高いとはいえ乗りにくいほどではない、というのが試乗しての感想だ。

シートアレンジで注目したいのが最大40度まで倒せる後席のリクライニング機構。最大90度まで倒せる助手席の背もたれとあわせて使うと、足を前に投げ出してリラックスした姿勢が可能となる。

荷室は後席のクッションを外すと、荷室長が前席の背もたれ直後、1640mmまで、容量にして1820リッターまで拡大できるというのがウリ。横幅がリアゲート開口部と同じ1230mmもあるガラスハッチは、特に使い勝手に優れる。

以上のように積載面では大きな不満はない。しかし小技になると「これは」というものもない。特に後席にドリンクホルダーや収納スペースがないのは不満だし、インパネに設けられた灰皿と一体化したドリンクホルダーも大振りで、汎用性がなく、使い勝手に劣る。さらに気になるのが質感だ。インパネが樹脂素材なのは仕方ないとしても、その処理がかなり雑に映る。シボは粗く、特にシート表皮は見栄え、感触ともにかなりチープな印象。頻繁に使うパワーウインドウスイッチもしかり。おそらくフォード車との部品の共用化を図ったのだろうが、こういう細かい部分の質感の仕上げは、まだマツダのほうが得意のはず。「アメリカンなイメージを再現した」とでも多少は聞こえは良いが、アメリカ大衆車的安っぽさが感じられなくもない。

ただ、SUVであるだけにそれがマイナスとばかりはいえない。道具としてのSUV、価格相応の思い切り使えるクルマとして考えれば、高級感は必要ないはず。何より良くも悪くも全体にアメリカンなおおらかさがある。マツダのクルマだが、フォードのクルマでもあり、それを買う人が良しとするなら、このクォリティは許容範囲だろう。

基本性能&ドライブフィール

フォード製のエンジン+マツダ製のサスペンション&4WDシステム

用意されるエンジンは2リッター直4DOHC(129馬力/18.7kgm)と3リッターV6DOHC(203馬力/27.0kgm)の2種で、それぞれ横置きにに搭載され、前輪駆動を基本としている。このエンジンはどちらもフォード製で直4はフォーカス、V6はトーラスのものを改良したもの。組み合わせられるミッションは4速ATで、これはヨーロッパのZF製。前ストラット式、後マルチリンク式の足回りは基本的にマツダが開発を担当している。すなわちパワートレーンは日・米・欧の合作だ。

低排出ガスレベルは直4が★1つ、V6が★2つで、高まる環境ニーズに対応する。しかし、肝心の燃費は…… ライバルがおよそリッター12~15kmとなっているのに、トリビュートはリッター8.4km。FFモデルでも9.8kmとなる。後発組でこの燃費の悪さは、大きなマイナスポイントだ。ここもまたアメリカンなのである。

4WDシステムはマツダ独自のRBC(ロータリー・ブレード・カップリング)を採用する。これは基本的に通常は前輪のみで、必要に応じて後輪にも適切な駆動力を配分する、いわゆるスタンバイ方式なのだが、他のスタンバイ方式よりも伝達ロスが少ないというのが強み。また、スイッチひとつで前50:後50の直結4WD状態に切り替える電磁ロックメカも備えており、アイスバーンやぬかるみからの脱出といった過酷なシーンでも、四駆に相応しい走りをしてくれる。

ワインディングが得意な、スポーティーな脚

まず最初に試乗したのはV6モデル(4WD)。モノコック構造を採用しているために、フレーム構造のウイザードよりも300kg近く軽い1510kgを実現している。確かに同じモノコックを採用するライバル車と比較すれば100kg以上のハンデがあるものの、大排気量のパワーがそれを補っており、加速に不満はない。パワーウエイトレシオからいっても、同排気量の4ドアセダンと同じぐらいの感覚と思っていいだろう。低速から立ち上がる分厚いトルク感は、ライバル車では味わえない魅力だ。

ただ、203馬力というスペックから読みとれる豪快さは希薄。V6の持つ滑らかな上質感も今ひとつ。エンジンの回り方が鈍く、回すほどに雑味が目立つ。良くも悪くもアメリカンな印象だ。

最も感心させられたのが軽快なハンドリングだ。パワステはかなり重めの味付けで、それと連動してフットワークは、SUVとして異例に鋭いもの。「マツダのダイナミックDNA(走りのDNA)である意のままに操れるドライビングプレジャーの具現化を図った」とマツダが自負するだけのことはある。ロールを全くというほど感じさせない引き締まった足回りがSUVに相応しいのか、ということは抜きにして、従来のSUVとは一線を画す自己主張を強く感じる。高速コーナーでも、幅広タイヤ&ワイドトレッドの恩恵によって、何事もなかったように安心して駆け抜けることができる。まさに乗用車感覚。反面、やや硬さの目立つ乗り心地の快適さは、ライバル車同様のレベルに止まっている。柔らかめを好むアメリカ(最近ではそうでもないようだが)で、この味付けはが支持されるとは思えない。恐らくアメリカ仕様ではもっとソフトな味付けとなるだろう。

次に試乗したのが直4のFFモデル。先に試乗したV6よりも110kgも軽く、ミッションのファイナル比はV6の3.776から4.230とローギアード化されている。また、馬力、トルクのマックス値がV6より低回転側に振られている(正確にはV6が単に高回転指向)。これらの展開によって、発進加速だけはV6モデルと比べても明確な差は感じられない。市街地だけならまずまずの走りはしてくれる。ちなみにパワーウエイトレシオは10.8kg/馬力。1.5リッタークラスの小型セダンと同等と考えていいだろう。でも、さすがに時速60kmあたりからは、明らかなパワー不足感を覚える。加えてATの制御がイマイチで、キックダウンもなかなかしてくれない。したところでエンジン音が高まるだけ。高速巡航からの追い越しは期待できず、ストレスがたまるばかりだ。走りを気にするなら迷わずV6だろう。

V6、直4モデルに共通していえることは、エンジンと足回りの性能の差があまりにも大きすぎることだ。現状のままでもオンロードの性能はクラストップで自己主張の感じられる走りであるが、エンジンがもっと洗練されれば、より積極的にワインディングを楽しめる、ジャンルを超えたSUVになるに違いない。

ここがイイ

ハンドリングにはマツダの心意気が感じられる。ワインディングを走って楽しいSUVというのもこれからの一つの方向だろう。室内や荷室の広さはアメリカンで文句なし。特に室内高は1230mmあり、シートの間も離れている(170mm)ので、ウォークスルーのしやすさは絶品。全車オートACというのもリーズナブルだ。ガラスハッチも便利。

ここがダメ

4気筒はちょっとパワー不足。V6でちょうどいい感じだ。エンジンに関してはもう少し頑張らないとライバル車にひけをとる。フォードのものを使うという大前提が大きな足かせなのだろう。全体の質感、幅の広さなど、アメリカンなムードは日本ではマイナス要因かもしれない。反面、それが個性ともいえるのだが。

総合評価

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今後、世界のクルマ作りはこうなっていくという典型的な商品だろう。フォードとマツダのいいところがくっついた結果、価格がお手ごろでそこそこ文句ない製品ができあがった。逆にエンジンなどアリモノを使った部分はちょっと気になる、というのが合作の弊害か。でもマツダが新開発したエンジンを搭載したらこんな価格では出せまい。クルマの価格はどんどん下がっているため、そうすれば必然的に失敗となってしまう。ユニクロの洋服と高級ブランドの洋服のように、安くてそこそこいい商品と、高くてむちゃくちゃいい商品という2極化がすべての分野で進んでおり、量販されるライトSUVはユニクロ路線が正解で、その意味でトリビュートは正しい。あとはユニクロで買うか、ライトオンで買うかの違い。そこのところが実は今後、最も難しいのだが。

トリビュートの走りがいいのは誰しもが認めるはず。ここだけはマツダが深く介入する余地があったともいえそう。逆にいえばこの足回りにこそマツダの意地がある。走りが楽しいSUVなら個人的にはちょっと魅力的。セカンドカーとして一台あると言うことないだろう。家族で複数台を所有するアメリカなら、こういうクルマは一家に一台は必要。日本でも郊外に住んでいれば状況は同じだ。この走りと、V6で254万8000円の価格なら悪い選択ではない。

 

公式サイトhttp://www.mazda.co.jp/home.html

 
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