キャラクター&開発コンセプト
中間グレード「TTクーペ 2.0 TFSI クワトロ」が登場
2008年9月2日、2代目TTに二つの新モデルが追加された。一つは従来からの2リッター直噴ターボを大幅にパワーアップしたエンジンを積むトップモデル「TTS クーペ」。もう一つはFFの「TTクーペ 2.0 TFSI」のフルタイム4WD版である「TT クーペ 2.0 TFSI クワトロ」だ。
今回試乗したのは、いわば中間グレードとも言える後者だが、最新アウディの「三種の神器」である直噴ターボエンジン、デュアルクラッチATの「Sトロニック」、「クワトロ」の3つを兼ね備えた待望のモデルである。
アウディTTのこれまで
初代TTは欧州で1998年にデビュー、日本では1999年に発売されたFFもしくはフルタイム4WDのコンパクトスポーツカー。2006年までの8年間に、世界で約27万台(クーペとロードスターの合計)、日本で9473台も販売される大ヒット車となった。
2006年に登場した2代目は、前半がアルミ製、後半はスチール製のTT専用ボディを備え、エンジンも新世代へ移行。日本仕様の変速機はすべてSトロニックとなるなど、新世代スポーツカーとしての最新メカニズムが与えられた。日本では2リッターターボ・FFの「クーペ 2.0 TFSI」と3.2リッターV6・フルタイム4WDの「クーペ 3.2 クワトロ」の2グレードでスタート。翌年からは2シーターオープンの「ロードスター 2.0 TFSI」(FF)が加わっている。
初代も2代目も、ボディ製造はドイツ・インゴルシュタット本社工場、最終組み立てとエンジン製造は最新鋭のハンガリー・ギュアー工場で行われている。
なお車名の「TT」とは、かつて英国・マン島をはじめ、欧州各地で開催された2輪/4輪の公道レース「Tourist Trophy(ツーリスト・トロフィー)」の略。当時、アウディの前身の一つであるNSU社のオートバイが参戦しており、さらにそれを記念してNSU・プリンツTT(1965年)というスポーツセダンがあったことなどが由来だ。NSUは1969年にアウディの前身であるアウトウニオンと合併している。
■参考(過去の新車試乗記 アウディ TTシリーズ)
・アウディ TT クーペ 3.2 クワトロ (2006年11月)
・アウディ TT クーペ 1.8T (2003年1月)
価格帯&グレード展開
「晴れの日」用は50万円高、「雨の日」用は60万円高
2008年10月現在のラインナップは、以下の通り。439万円のエントリーグレードを基準にすると、「晴れの日」用のロードスターがちょうど50万円高。「雨の日」用の「クワトロ」がちょうど60万円高。さらにエンジンを直4ターボ(200ps)から3.2リッターV6(250ps)にすると、90万円高という具合だ。日本仕様は全車6速Sトロニックで、ハンドル位置はTTS(左ハンドルのみ)を除き、全車右ハンドルとなる。
■「TT Coupe 2.0 TFSI」 2.0L 直4 直噴ターボ(200ps、28.5kgm)・FF 439万円
■「TT Roadster 2.0 TFSI」 2.0L 直4 直噴ターボ(200ps、28.5kgm)・FF 489万円
■「TT Coupe 2.0 TFSI quattro」 2.0L 直4 直噴ターボ(200ps、28.5kgm)・4WD 499万円 ※今週の試乗車
■「TT Coupe 3.2 quattro」 3.2L V6(250ps、32.6kgm)・4WD 589万円
■「TTS Coupe」 2.0L 直4 直噴ターボ(272ps、35.7kgm)・4WD 675万円
TTSは飛び抜けて高い
一方、ターボをハイプレッシャー化したTTS(272ps)は、同じ直4ターボの2.0 TFSI クワトロより、いきなり176万円も高い。このTTSのみ、新型A4のようなLED内蔵のキセノンヘッドライト、4本出しマフラー、磁性オイルを使った電子制御可変ダンパー「マグネティックライド」(TTS専用設定)を標準装備するなど、メルセデスの「AMG」、BMWの「M」に匹敵する「S」の名称にふさわしい扱いとなる。なお、仮想敵であるポルシェ・ケイマン(2.7リッター水平対向6気筒・245ps)の5ATもまったく同じ675万円だ。
パッケージング&スタイル
典型的なスポーツカールック
ボディサイズは全長4180mm×全幅1840mm×全高1390mm、ホイールベースは2465mm。2代目TTに試乗するのは2年ぶりだが、「デザインありきのクルマ」だった初代TTに対し、一回り大きく立派になった2代目が「典型的なスポーツカー」になったという印象は変わらない。新旧TTは車名こそ同じながら、ある意味別種のクルマだ。
質感の高さは相変わらず
ライバル車と比べてワンランク上の質感と思われるインテリア。多少割安な日本製スポーツカーと比べても、価格差以上の開きがあり、某国産メーカーの開発者に「こんなコストが掛かることは、うちでは絶対できません」と言わしめたアウディ・クオリティは相変わらずだ。
標準の内装は黒のファブリックだが、試乗車はオプションのレザー仕様(ただし外装アイビスホワイトと内装マグマレッドの組み合わせはカタログにはない)。この手のバケットシート風レザーは、乗り降りが頻繁だとサイドサポートの擦れが心配だが、まあそんなことは気にせずに乗るのが、伊達というものか。
ナビゲーションは使いやすいのがお好き?
全車HDDナビが標準装備なのは従来通りだが、ハードディスクは30GBから40GBへ強化されており、さらにテレビはアナログ式から地上デジタル対応(12セグ/1セグ自動切替式)へと進化している。こうした対応の早さも、勢いのあるアウディらしいところ。
とはいえ、そんな柔軟な対応が可能だったのも、TT用のオーディオ・ナビ一式が新型A4のようなMMI(マルチ・メディア・インターフェイス)対応の本国開発品ではなく、日本製の汎用品ベースだったからだろう。A4のDVD式ナビも性能がいいので、HDD式に特段のメリットはないが、少なくともTTのタッチパネルやボタンによる操作の方が初心者には分かりやすい。
実質2シーターだが、積載性は高い
大人なら一刻も早く降りたくなるリアシートは、あくまで子供用だが(身長150cmくらいまで)、荷物置きとしては十分。完全な2シーターだと、脱いだコートさえ置く場所に困るものだが、その点2+2は問題ない。
ハッチゲートがガバッと開くラゲッジルームも実用的だ。通常時の容量は290Lだが、後席の背もたれを倒すと700L(初代TTの約1.4倍)にもなり、ゴルフバッグが2つ、もしくはホイールを取り外したスポーツ自転車すら積めるなど、普通の小型ハッチバック車並みの空間が現れる。
基本性能&ドライブフィール
度肝を抜かれる完成度
試乗したのは「TT クーペ 2.0 TFSI クワトロ」。FFだった2リッターターボモデルに新しく加わった待望のクワトロ、つまりフルタイム4WDモデルだ。エンジン縦置のA4では、トルク感応式のセンターデフで駆動力を前後に分配するが、エンジン横置のTTでは、初代TT同様にハルデックス社の電子制御多板クラッチで前後配分をコントロールする。名称は同じクワトロでも、機構的にはまったくの別物となる。
エンジンはVW/アウディ車で定番の2リッター直噴ターボ(200ps、28.5kgm)。最近は同グループから燃費志向の直噴ターボが続々と登場しているが、このTT用の2リッターターボはその前段階となったパワー志向のユニットだ。
それにしても乗ってすぐに度肝を抜かれるのがその完成度の高さだ。高いというか、もはや完璧。Sトロニックは2年前に比べてさらにギクシャク感がなくなり、もはやトルコンATなど過去の技術だ、と言わんばかりに、ダイレクトで素早い変速を見せる。以前は時々あったマニュアルシフト時の変速遅れも、もうほとんど無い。そしてシフトアップする度に「ボン!」とアフターバーン?らしき手拍子が入るのが、いかにも「マシン」であることを主張してくる。「(1速)ボーン、ボン! (2速)ボーン、ボン! (3速)ボーン、ボン!」という感じだ。
なお、デュアルクラッチ式ATの場合、2セットのギアが常時つながっているので、変速時にパワーの伝達が途切れるということはない。また、例えば2速と3速がつながった状態なら、2速→3速もしくは3速→2速への変速は一瞬で終了する。次につなぐギアを上か下か判断するのはコンピュターだが、仮にその予測に反したマニュアル操作をしても、変速にかかる時間はどんなプロドライバーが操るマニュアルギアボックスより短いはずだ。
パドルシフトはステアリングと一緒に回るタイプで、パドル操作で「D」モードからマニュアルモードに移行、しばらく放っておくと「D」に復帰する点も従来通り。
ドライのように走り、曲がり、止まる
この「完璧感」をさらに完璧とするのが、クワトロによる盤石のグリップ感とトラクション性能だ。今回の試乗は大雨にたたられてしまったが、「クワトロ日和」という言葉に思わず納得してしまうほど、その性能は絶大。車重はクワトロ化でFFより60kgほど重い1400kgだが(4WDとしては非常に軽い)、200psと28.5kgmのターボパワーを体感的に100%、もうほとんど一滴も余すことなく路面に伝えてくれる。まるでタイヤが雨の路面に「べったり」貼り付いているみたい。土砂降りの雨の中を、まるでドライのように走り、曲がり、止まってしまう。正直、ため息が出るほどこのグリップ感はすごい。
逆に言えば、あり余るパワーをテクニックでねじ伏せる、限界を超えたところまで追い込む、といった古典的スポーツカーの風味は味わいにくいので、そういったマニアックな要望を満たすなら、272psのTTSがある、ということだろう。確かにこのシャシーなら、272psでも十分に吸収してしまいそうだ。
なお、サスペンションは全車「スポーツサスペンション」が標準。これはその名の通り、かなり硬めだが、もちろん不快なレベルではない。ツギハギだらけの舗装ではそうとう揺すられるが、助手席から不満が出ることはないだろう。
タイヤは2年前に乗った3.2クワトロと同サイズの245/40R18だったが、当時気になったワンダリング(轍にハンドルが取られる現象)は今回はもうまったく消えていた。アウディというメーカーのマイナーアップデートの早さを考えれば、これも当然か。
なお、試乗燃費は高速主体で8.8km/L。雨天ゆえ渋滞もあり、ペースがそれなりだったこともあるが、やはり最新の直噴ターボとDSGの組み合わせは燃費がいい。10・15モード燃費は12.4km/Lとある。
ポルシェに食い込む大金星
参考までに、最大のライバルである(そして今や筆頭株主でもある)ポルシェとの動力性能(最高速、0-100km/h加速)の比較を以下にピックアップしてみた(ついでに日産GT-Rも)。TTに関しては海外仕様である6MTのスペックも並べてある。一種の数字遊びではあるが、いくつか面白い事実も発見したので、それも挙げておく。
【TTシリーズに関する発見】
・クワトロはFFに対して最高速で2km/h劣るが、0-100km/k加速では0.2秒速い。
・6速Sトロニック(もしくはポルシェの7速PDK)は、6MTより0-100km/h加速で0.2秒速い。
・2代目TTクーペ全車は、0-100km/h加速でケイマン(5AT)より速い。
【TTSに関する発見】
・675万円のTTSクーペは、同価格のケイマン(5AT)より1.8秒も速い。
・675万円のTTSクーペは、828万円のケイマンS(5AT)より0.9秒、1100万円超だった先代911カレラ(5AT)より0.3秒速い。
・しかし現時点でポルシェの911シリーズは、すでにトルコンAT(ティプトロニック)をデュアルクラッチAT(PDK)に切り替え、タイム的には逃げ切りを図っている(つまりヒエラルキーは守られている)。
■アウディ TT クーペ 2.0TFSI(2WD・6MT) 240km/h 6.6秒 ※日本未導入
■アウディ TT クーペ 2.0TFSI(2WD・6-Stronic) 240km/h 6.4秒
■アウディ TT クーペ 2.0TFSI quattro(6-Stronic) 238km/h 6.2秒
■アウディ TT クーペ 3.2 quattro(6-Stronic) 250km/h ※リミッター作動 5.9秒 ※日本未導入
■アウディ TT クーペ 3.2 quattro(6-Stronic) 250km/h ※リミッター作動 5.7秒
■アウディ TTS クーペ(6-Stronic) 250km/h ※リミッター作動 5.2秒
■ポルシェ ケイマン(5MT) 258km/h 6.1秒
■ポルシェ ケイマン(5AT) 253km/h 7.0秒
■ポルシェ ケイマン S(6MT) 275km/h 5.4秒
■ポルシェ ケイマン S(5AT) 267km/h 6.1秒
■ポルシェ 911カレラ(6MT) 285km/h 5.0秒 ※997前期
■ポルシェ 911カレラ(5AT) 280km/h 5.5秒 ※↑
■ポルシェ 911カレラ(6MT) 289km/h 4.9秒 ※997後期(2009年モデル)
■ポルシェ 911カレラ(7-PDK) 287km/h 4.7秒 ※↑
■ポルシェ 911カレラ S(6MT) 302km/h 4.7秒 ※↑
■ポルシェ 911カレラ S(7-PDK) 300km/h 4.5秒 ※↑
■日産 GT-R(6-DCT) 310km/h 3.6秒
ここがイイ
完璧な走り、衝撃的な安定感
あり余っていなくて、まったく不足もないパワー感。エンジンをフルに回して走れる快感。それを支える完璧な走りと衝撃的な安定感。妙な汗をかくこともなく、最高に気持ちがいいクルマ。
ここがダメ
特になし
ドアが長く、重く、ルーフは低いため、狭い場所での乗り降りがたいへん。それ以外は特になし。
総合評価
このクワトロがベスト・オブ・TT
TTSにはまだ乗っていない。それなのに結論じみたことを言うのもなんだが、このクワトロがベスト・オブ・TTだと思う、たぶん。2年前に乗った3.2クワトロはかなり、いや、もうほとんど買おうと思ったほどのすばらしさだった。旧型に比べて、スタイリングやパッケージングがちゃんとスポーツカーになったし、Sトロニックやクワトロが先進性を感じさせたし、さすがに3.2ともなるとパワー感も、実際の速さも十分。ただ、初期もののSトロニックのギクシャク感やボディ前端に積むV6エンジンの重さ感は気になった部分(あくまで感覚的なものではあるが)。このサイズのクルマには重厚感よりライトウェイトスポーツな軽快感がやはり欲しいと思ったものだ。
そしてついに2リッタークワトロの登場。まずは身の丈というか、ボディ丈にあった不足のないパワー感がいい。もちろんモアパワーがあればもっと速くなるのは自明の理だが、そこまで攻めることのできる道路とウデのある人はそうはないのだから、ロードカーとしてはこれで十分。エンジンを回して気持ちよく走る、という上でのパワーは申し分ないし、チョイ乗りに使うのにも十分な「日常的に使えるパワー感」でもある。
またクワトロがもたらす絶対的な安定感は、クルマが4本のタイヤで走っている以上、その4本をすべて駆動することが自然という、これまた自明の理を知らしめてくれる。これで曲がらないのであれば問題だが、その身のこなしは軽快そのもの。3.2リッターのような頭が重い感じは全くなく、ライトウェイトスポーツ的感覚がたっぷりある。内装のクォリティもライバルより上と言い切れるし、もう完全にベストバイだ。
500万円という微妙な価格
しかし、499万円である。二人乗りでもあり、古典的なスポーツクーペというボディ形状に、このご時世、この価格を出せる人は少ないのでは、とも思う。絶対的速さではなく、走りの気持ちよさという点では、340万円のゴルフ・ヴァリアント 2.0TSIスポーツラインあたりでも結構楽しめるし、実用性ではヴァリアントが圧倒的だ。また500万円前後といえばIS350とかメルセデスのCクラスとか、アウディでも新型A4といったセダンが買えてしまう。一家に一台がやっと、というこのご時世では、どうしてもTTは敷居が高いところ。前モデルのTTはお金持ちの奥さんや娘さん用のクルマという側面もあったが、新型はもう本格的なスポーツカーだから、それにもちょっと向かないかも。
500万円が気にはならないという、ちょっとお金のあるスポーツカー好きだったら、ケイマンはもちろん、777万円のGT-Rあたりだって買えてしまうわけで、そうなるとこれまた微妙。当然そんな人は675万円のTTSという選択肢も出てくるはずだから、この2.0クワトロはますます微妙な立場だ。つまりイイと思うクルマは売れない、といういつものパターンにこのクルマもまた、はまってしまうのか。今のところ今年のイヤーカーにしたいくらいの大絶賛車なのだけど。
試乗車スペック
アウディ TT クーペ 2.0 TFSI クワトロ
(2.0Lターボ・6速DSG・4WD・499万円)
●初年度登録:2008年8月●形式:ABA-8JCCZF ●全長4180mm×全幅1840mm×全高1390mm ●ホイールベース:2465mm ●最小回転半径:5.2m ●車重(車検証記載値):1400kg( 830+570 ) ●乗車定員:4名●エンジン型式:CCZ ● 1984cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・直噴・ターボ・横置 ●ボア×ストローク:82.5×92.8mm ●圧縮比:9.6 ● 200ps(147kW)/ 5100-6000rpm、28.5kgm (280Nm)/ 1700-5000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/60L ●10・15モード燃費:12.4km/L ●駆動方式:電子制御式フルタイム4WD ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット/後 4リンクサスペンション ●タイヤ:245/40R18( Continental SportContact2 )●試乗車価格:534万円( 含むオプション:レザーパッケージ1<本革シート(ファインナッパ)+シートヒーター+本革ハンドブレーキグリップ/センターアームレスト/ドアプルハンドル/インストルメントパネルフード/センターコンソールトリム/ドアアームレスト> 35万円 )●試乗距離:約125km ●試乗日:2008年9月 ●車両協力:アウディ名古屋中央
車両協力:アウディ 名古屋中央
アウディ名古屋中央は、全国トップレベルの販売実績を持つアウディ正規ディーラー。ヤナセネットワークを最大限に活用したサービス体制、ウェイティングラウンジを用意するなど販売サポートやアフターサービスも充実している。
名古屋の中心部というアクセスに便利な場所にあるのも魅力。
ヤナセオートモーティブが運営。
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