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アウディ TT クーペ 3.2 クワトロ新車試乗記(第440回)

Audi TT Coupe 3.2 quattro

(1.8L・6AT・574万円)

あの衝撃から8年。
アルミ/鉄の混成ボディを得た
新型はリアルスポーツを目指す!

2006年11月18日

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キャラクター&開発コンセプト

アルミ/スチール混成ボディで軽量化

日本では2006年7月12日に予注が始まり、10月からデリバリーが始まった2代目アウディTT。注目すべき点は車体前半をアルミ製、後半をスチール製として軽量化と重量配分の改善を狙った新しいボディだ。磁性オイルを用いた可変ダンパーシステム「アウディ マグネティックライド」の採用もアウディ初である。

一方で、2リッター直4直噴ターボ(200ps)と3.2リッターV6(250ps)という2種類のエンジンは既存のもの。「S-トロニック」とアウディが呼ぶツインクラッチ式 6速ATも、「DSG」として既にお馴染みのものだ。

新型のボディ製造はインゴルシュタットのアウディAG本社が行ない、最終組み立てとエンジン製造は先代のTT同様、ハンガリーにあるアウディAGの100%子会社「アウディ・ハンガリア・モーターKft.」のギュアー工場が行なう。2007年初めには「TTロードスター」も加わる予定だ。

初代は世界で27万台、日本で1万台のヒット作に

衝撃的なデザインで登場した初代TTの総生産台数は約27万台(クーペとロードスターの合計。1998~2006年)。日本でも途中からAT車が加わって9473台を販売している( クーペ:8410台、ロードスター:1063台 ※1999年10月~2006年6月末)。初代TTは500万円前後の輸入車クーペとしては異例のヒット作となった。

価格帯&グレード展開

440万円と574万円

今回、国内に導入されたのは以下の2モデル。

■「TT Coupe 2.0 TFSI」(440万円) 2リッター直4ターボ(200ps)・FF
「TT Coupe 3.2クワトロ」(574万円) 3.2リッター(250ps)・4WD ※今週の試乗車

いずれも右ハンドル・6速Sトロニック(現地にはもちろん6MTもある)で、30GBのHDDナビを標準装備。先代のFF・6AT車がナビ無しで399万円(消費税抜き)だったから、新型のお買い得感は高い。オプションで可変ダンパー「マグネティックライド」(20万円)、フルレザーシート(2.0T:35万円、3.2:13万円)を用意する。

パッケージング&スタイル

常識的なカッコ良さ

ボディサイズ(先代比)は全長4180mm(+120)×全幅1840mm(+75)×全高1390mm(+50)。ホイールベースは2465mm(+40)。数字では先代より一回り大きな新型だが、実車は同じくらいコンパクトに見える。先代で大きな魅力だった、オブジェのような潔癖さ、異物感が排除されてしまったのは淋しいが、新型は代わりにスポーツカーの文法に則った常識的なカッコ良さを得た。例のシングルフレームグリルも違和感なく収まっている。

空力は電動リアスポイラーで解決

リアエンドには、ポルシェ911と似た自動開閉式のリヤスポイラーを採用。120km/hで上昇、80km/h以下で格納されるが、写真のようにスイッチで任意に上げることも出来る。初代TTはコストとデザインの兼ね合いで当初はスポイラー無しで発売されたが、結局のところ高速域の揚力を抑えるため、後から固定式ウイングを追加することになった。しかし、新型TTにとってそんなディレンマはもう過去の話だ。

HDDナビを標準装備

アルミなどの素材感が生々しかった先代に比べて、ずいぶん洗練されたインテリア。室内幅はかなり広くなり、それを証明するかのようにダッシュ中央のベンチレーターは2個から3個に増えている。標準の内装はブラックだが、試乗車は3.2用のフルレザーオプション仕様で、外板色(コンドルグレー)/内装色(ミネラルグレー)という個性的なコーディネイトだ。標準装備のHDDナビはアウディでおなじみのMMI(マルチ・メディア・インターフェイス)ではなく国産の汎用タイプで、操作はごく簡単だ。

プラス2の後席。ラゲッジはヴィッツ並み

先代より少し広いリアシート。形状はポルシェ911似だが、空間自体はTTの方が若干狭い。どちらも座るのは辛いが、荷物置きとしては申し分ない。

通常時は290L、後席の背もたれを倒すと700Lの荷室は、天地の浅さを除けば、ヴィッツ並みの収納力が期待できる。ミッドシップのポルシェ・ケイマン(185L、ルーフまで満載して260L)やリアゲートの開かない911(996/997型タルガは開くが)を上回る部分だ。床下にスペアタイヤは無く、小物スペースと工具、バッテリーが収まる。

基本性能&ドライブフィール

アルミと鉄のハイブリッドボディ

試乗したのは3.2クワトロ。エンジンは先代TTや他のVW・アウディ車でお馴染みの3.2リッターV6(250ps。32.6kgm)であり、「DSG」あらため「S-トロニック」ツインクラッチ6ATや、ハルデックス電子制御式4WDも先代と同じだ。

異なるのはボディ全体の69%(主に前半部分)をアルミ製スペースフレームとした点で、1470kgの車重は先代3.2クワトロ比で80kgも軽く、現行A3の3.2クワトロより170kgも軽い。さらに前後の重量配分は、59:41(890kg:580kg)に改善されている。FF車の場合、フロントが軽過ぎるとトラクションに支障が出るから、このあたりが落としどころだろう。パワーウエイトレシオは5.88kgで、「素の」ポルシェ・ケイマン(5.67kg/ps=1390kg/245ps ※5AT車)とほぼ互角。0-100km/h加速の5.7秒は、ケイマンSの5AT車(6.1秒)より速い。最高速度は250km/hを謳う。

ボディの軽さは走り出した瞬間にすぐ体感できる。V6ユニットは低回転から「バオン!」と抜群のレスポンスで吹け上がり、レブリミッターに一瞬で到達。すかさずS-トロニックによって自動シフトアップが行なわれ、途切れることのない加速が続く。パドルシフトでも可能なこの変速の素早さ(0.2秒だそうだ)は、F1のセミAT並みか?と思えるほど瞬間的で、しかも当然ながらマニュアルに匹敵するダイレクト感がある。また、エンジンのメカメカした回転フィーリングや、ガッ!と路面を捉えて猛然と飛び出す感じが、いかにも「ポルシェ911を生んだ国」のスポーツカーらしい。

極めてクイックな操縦性

新型TT用にアップデートされたハルデックス電子制御4WDは通常時は前輪主体で駆動し、走行状況によってリアに最大50%までトルク配分を行なう。しかし今回のようなドライ路面なら、前輪も後輪もグリップを失うことはほとんどなく、操縦性は一貫してニュートラル。 前軸890kgというフロントの重さもウソのようだ。高速安定性ももちろん抜群。ただ、245/40R18の太いタイヤのせいかワンダリング(轍にハンドルが取られる現象)が多少出る傾向があり、速度感応式電動パワステもクイック過ぎる嫌いがある。グリップ走行の範囲で十分に速いが、限界域に挑戦しようという気にはなりにくい。

サスペンションのバネレートもハードで、決して不快ではないが舗装が荒れたところではそれなりに揺すられる。しかし、ボディは固い殻のように強固で、頼りなさは一切ない。GMのキャデラックやコルベットが使うものと同様の「マグネティック・ライド」(20万円)の効果は顕著に感じられなかったが、乗り心地は快適と言ってもいい。ただしこの点は、車重が130kg軽く(サスペンションもソフトになる)、幅で2cm、径で2インチ小さいタイヤ(225/55R16)を標準で履く2.0TFSIの方が、評判を聞く限りは、好ましいようだ。

総じて「先進性」を全力で訴えてくる走り、大柄になっても高いボディ剛性のおかげで失われていない一体感、現代のポルシェ911が失ったシティランナバウトとして手頃なボディサイズ、DSGの素晴らしい完成度など、新しいTTはクルマ好きの心を揺さぶるスポーツクーペとなっている。

ここがイイ

まず走りがとても楽しい。試乗モデルではパワー感が十二分にあり、0-100km/h加速5.7秒のリアルスポーツカー感覚が味わえる。クワトロは高速安定性も素晴らしく、おそらく200km/hオーバーでもまったく不満はない。超高速コーナーでもピタリと姿勢を安定させて難なく曲がっていく。ワインディングに持ち込めば、ストロークが短いパドルシフトを用いたシフト操作とシャープな回頭性、あまり効果が体感できなかったがたぶん有効なマグネティックライドによって、速く、楽しく駆け抜けられる。洗練されたスポーツカーの姿がここにある。

またそうしたスポーツカーでありながら、快適な乗り心地、一応4座、大きなハッチゲート下の荷室など、日常的に利用しても不満がない。やや大柄になったとはいえサイズも手頃であり、総合的には先代より実用性が高まっている。スポーツ性、実用性の両面が高まったのは、8年ぶりのフルチェンジの意義だ。

ペダル位置があまり深すぎないため、小柄な女性でもスマートなドライビングポジションがとれる。マニュアルモードでパドルを操作しなくても、シフトポジションをSにすれば、エンジンは高回転が維持出来て、イージーにスポーツライクな走りが楽しめる。一般的なワインディングなら、このモードに入れっぱなしでも気持ちよく走れるはずだ。また街中でもこのモードに入れておけば、シャキッと元気になれる(燃費には辛いが)。新型レガシィほどではないが、DとSで2つの性格が楽しめる。

カーナビゲーションはごくスタンダードなHDDタイプだが、それゆえ何の抵抗もなく使えるのが良い。上級車に搭載されるMMIを搭載しなかったのは、おそらく本国でこのクルマに乗る人がナビを欲しないという判断なのだろう。その結果として日本仕様にHDDナビが搭載されたのは、このタイプのクルマでもナビを欲する日本人には幸運だった。

ここがダメ

DSGは素晴らしい完成度だが、超低速域のわずかなギクシャク感は、気になる人には気になるだろう。またパドルを使ってシフト操作をすると、シフトダウンでは時に反応が遅れることもあった。パドルの操作感は良いが、ポルシェのようなステアリング上のスイッチの方が使いやすいと思う。ステアリングは下部がフラットなタイプで、見てくれの良さや乗降時に寄与するとはいえ、操作感自体はあまり良いものではない。踏み込むと急にグッと効いてくるブレーキもフィーリング的には改善を求めたい。

総合評価

先代のTTは、もともとパイクカーだったと思う。スポーツカーというより、ファニーなカタチとリッチな雰囲気を楽しむスポーティカーだ。それゆえ若者や女性に向いていたと思うが、オジさんにはちょっとばかりカワイすぎた。

しかし新型の小さいながらもマッチョなスタイルは、シングルフレームグリルと相まって、女性よりオジさん向けのクルマになったように思える。車格も一ランク上がって、ケイマンなどのライバル車と正面切ってぶつかることになり、それに伴って走りも硬派になった。クルマ好きが少し乗れば、思わずにんまりとしてしまう走りは、アウディの推し進める全車スポーツ路線の方向性に沿ったものだ。

クワトロ、DSGというのは先代にもあったが、いかんせんボディがついてこない。理想のスポーツモデルとするには、フルチェンジが必要だったわけだ。とはいえ、10年前に出たボクスターをベースにしたケイマンがリアルスポーツカーを標榜しても非難されないが、TTはVWゴルフやパサート、アウディA3といったエンジン横置・FF車とメカニズムを共有する以上、リアルスポーツカーとしての素性を問い詰められると苦しい。ここがアウディの辛いところだ。

しかし、走ってみるとTTの走りはケイマンに負けていない。何よりクワトロでも574万円という価格は、(素の)ケイマンの675万円(5速Tip)と比べても圧倒的に安い。ケイマンには無いナビも装着されているし、内装などの質感もケイマンより上だ。リアルスポーツカーと言えるケイマンだが、TTとの差はこんなにもあり、実情を考えるとTTのコストパフォーマンスは圧倒的に良いと思う。

旧TTの立ち位置を捨てて、リアルスポーツを目指すアウディの姿勢はドイツらしく急進的だ。これでアウディブランドは「プレミアムカーはスポーティ」という路線をさらに突き進むことになるのだが、女の子にも愛される可愛いアウディ、奥さんにも気にされるオシャレで快適なアウディ、フツーのオジさんにも喜ばれるジェントルなアウディも、ことに日本市場においては欲しいと思う。

試乗車スペック
アウディTT クーペ 3.2 クワトロ
(3.2L・6AT・574万円)

●形式:ABA-8JBUBF ●全長4180mm×全幅1840mm×全高1390mm●ホイールベース:2465mm●車重(車検証記載値):1470kg(F:890+R:580)●乗車定員:4名●エンジン型式:BUB●3188cc・V型6気筒・DOHC・4バルブ・横置●250 ps(184kW)/6300rpm、32.6 kg-m (320Nm)/2500-3000rpm●カム駆動:チェーン●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/60L●10・15モード燃費:10.8km/L ●駆動方式:電子制御4WD●タイヤ:245/40ZR18 ( Michelin Pilot Sport )●試乗車価格:607万円(含むオプション:アウディ マグネティックライド 20万円、レザーパッケージ 13万円 ) ●試乗距離:約200km●試乗日:2006年11月 ●車両協力:アウディ名古屋中央

公式サイト
http://www.audi.co.jp/audi/jp/jp2/new_cars/tt.html

 
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アウディ 名古屋中央

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