Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > スズキ ツイン

スズキ ツイン新車試乗記(第258回)

Suzuki Twin

(660cc・49~139万円)

2003年03月01日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

基本はアルトの短縮版、軽初のハイブリッドも

2003年1月に発売された「ツイン」は、アルトベースの二人乗りマイクロカー。エンジンや駆動系、エンジンベイや前後サスなど、見えないところの基本構造はほぼアルト。逆に見えるところの多くが専用パーツだ。

普通のガソリン車に加えて、軽およびスズキ初のハイブリッド車も用意。3気筒エンジンと4速ATの間に、薄型モーターをサンドイッチ、リアには安価な鉛電池を積む。モーターだけの走行は出来ない簡易ハイブリッドだが、10・15モード燃費は32~34km/リッターを謳う。もちろん、世界で最も安いハイブリッドカーだ。

目標販売台数は月間200台。ホイールベースが極端に短いため既存の生産ラインが使えず、大幅な増産は難しいとのこと。特にハイブリッド車は手造り状態で、月産4~5台が限界。5速マニュアル車ともども「採算はぜんぜんとれません(スズキ)」という。つまり、スズキにとっては採算度外視のイメージリーダー。シティコミューターとしてのマイクロカー需要を探る、実験モデルでもある。

アルトとの価格差が少ないため、スズキとしては「そんなに売れないんじゃないか」と懐疑的だったようだが、今のところ受注はバックオーダーを抱えるほど順調なようだ。

価格帯&グレード展開

ガソリンは49~84万円

低価格はツインの大きな魅力。5速マニュアルならなんと49万円だ。オプションのエアコン(9万円)さえ付ければ、58万円で何の不足のないコミューターが手に入る。もちろん販売主力は3ATの84万円で、リモコンキーなどの装備も付く。オーディオは全車オプションだ。

現行アルトで一番安いモデルは55.5万円(バン仕様・5MT・エアコン標準)だが、専用パーツと手間の多さ、生産台数を考えれば、この価格はバーゲンだろう。

ハイブリッドは129万~139万円

一方、ハイブリッド版は、ガソリン3AT車より一気に50万円ほど高い129万~139万円。10・15モード燃費が22kmから32~34km/リッターに向上するが、減ったガソリン代で価格差を埋めるのはまず無理だろう。ハイブリッドならではの付加価値を重視する人向けだ。

129万円(ハイブリッドA)の方は、エアコン・パワステを省いた「燃費スペシャル」ゆえ、主力は139万円の「ハイブリッドB」。ちなみにツインのライバル?となる「スマートK」は、普通のガソリンエンジン車でも131万円する。

パッケージング&スタイル

良い意味で、おもちゃみたい

1999年の東京モーターショーの「Pu-3コミュータ」譲りの外観はひたすら丸い。シャープなラインが交差するスマートとは正反対だ。スマートはあくまでも「マシン」を感じさせるが、ツインはなごみ系、あるいはファンシーグッズ系。

四隅で踏ん張った細い135タイヤの存在感や、前後対称デザインなど、なかなか見ごたえあり。写真より実車の方がずっと印象が良い。1週間の試乗中、老若男女を問わず方々で声をかけられるなど、注目度は異様なまでに高い。このあたりはスズキの読みが外れた? かも。

内外装パーツの大物は専用パーツだが、ステアリングやスイッチ類はアルト、ドアミラーはカプチーノから拝借。ただ、そのドアミラーがちょっと見づらいのは気になった。

Uターンで感動できる

全長2735mm×全幅1475mm×全高1450mmは、アルトより660mm短い。ホイールベースは560mm短い1800mm。スマートKと比べるとホイールベースはほぼ同じなのに、全長は意外?にも195mm長く、100mmも背が低い。つまり、ツインはオーバーハングが長いということだ。

ただし、最小回転半径はスマートより0.5メートル小さい3.6メートルで、見た目どおりの劇的小回り性能を誇る。Uターンは笑ってしまうほど自由自在。車庫入れ、縦列駐車の簡単さもこれまた劇的だ。

割り切りと工夫で、ゴルフバッグも積める

室内はスズキ初のセンターメーターで広々感を演出したもの。同じ理由でフロントガラスは前方に移動させている。圧迫感はまったくなく、立派なシートも手伝って居心地はなかなか良い。

剥き出しの鉄板など、コスト削減の工夫も逆に楽しいところ。全車パワーウインドウだが、スイッチは運転席ドア側のみ。助手席はスライド無しだが、3段階でリクライニング可。スピーカーはドアではなく、一体成型のダッシュボード左右に配置する。

荷室はスーツケース1個がぎりぎりという感じ。コスト削減のため、ハッチゲートではなく、ガラス部分だけ開くようになっており、大物の出し入れや積載は助手席シートバックを前に倒して行う。

シートバックは水平に倒れ、荷室とツライチになるため(ガソリン車の場合)、一人乗りならゴルフバックも積載可能。ゴルフカートのようなこのクルマでゴルフに行くのは、かなりシャレがきいていておもしろいと思う。

不便なのはガラスハッチが鍵が無いと開かないこと。コストとの兼ね合いでスズキも迷ったようだが、やはりオープナーは欲しいところだ。

なお、ハイブリッド車は荷室にバッテリーを搭載するため、グッと上げ底になる。スペアタイヤはパンク修理キットに変更。バッテリーは高価なリチウムではなく、普通の鉛電池で、中型バイクに使用する普通の12Vバッテリーを16個直列に繋いで、合計192Vの電圧を確保したというもの。開発スタッフによると「コンパクトなリチウムならかなり簡単だが、安価な鉛電池でやるところが逆に難しかった」とのこと。

基本性能&ドライブフィール

びっくりするほどよく走る

今回はまず、販売主力であるガソリンB(3AT・84万円)を1週間にわたって乗り回し、450kmほど試乗した。

基本的には、「前を向いてまっすぐ走る限り、普通のアルトです」というスズキ広報の言葉通りだ。車重が600kgしかないので、44psでもけっこう速い。おなじみのK6Aエンジンを3ATで「ウィーーン」とぶん回しながら、キビキビ走る。シフトショックは小さく、二名乗車でも、街中でのパワー不足感はない。高速道路ではメーター読み130km/hでリミッターが作動した(2名乗車)。ただし、110km/hあたりからの加速はかなりキビシイ。ホイールベースが短く操縦性はクイックだが、不得意なはずの高速安定性も十分に確保されている。

制動時の安定性も悪くない。曲がりながらブレーキ、という厳しい状況では一瞬リアが流れるが、そこから姿勢を崩すことは無い(全車ABS標準)。よく出来た小型スポーツカーみたい、というと言い過ぎだが、0.72というトレッド(約1300mm)/ホイールベース(1800mm)比はランチア・ストラトスよりもスクエアだ。交差点からコーナーまで、曲がるのが楽しく、5MT車でジムカーナに出たくなる。

軽ナンバー1?の剛性感

乗り心地は多少凸凹を拾ってヒョコヒョコする。しかし不快でないのは、「ひょっとして軽自動車で一番?」と思えるボディ剛性感ゆえか。ホイールベースを短くした結果、フロア剛性が大幅にアップしたのは間違いなく、さらにコスト削減を理由にリアゲートを廃止してモノコック後部が閉断面となったのは大きいはずだ。操縦性や振動・騒音面でそうとう効いていると思われる。

燃費は半分ほど高速道路を使用、2名乗車、全開走行多用という厳しい条件で、13~15km/リッター。1人で大人しく走れば、もう少し良いはずだ。燃料タンクは21リッターしかなく、警告が出てから余裕がないので、給油は早めにしないといけない。

キビキビ感より重厚感のハイブリッド

ハイブリッド車にも短時間ながら試乗した。主な違いはオートマが4速になる点、モーター・アシストが効く点(モーターだけでは走行しない)、アイドリングストップする点、重量が130kg増える点。

ATが4速になったのは、高いギアを選ぶことで分かる(モーターの手助けゆえ)。静かになった反面、3ATのキビキビ感がなくなったのは意外だった。最高速もメーター読みで120km/hくらいで、モーターのアシストは注意深く観察して分かる程度。トルクにして3.3kgmも増えるので低圧ターボなみのパワーを期待したが、130kgの重量増で相殺された感じだ。

アイドリングストップは、エアコンがオンでも頻繁に作動するので、エコな感じはけっこうする(ウインカー作動時は、右折時の不安を考慮してストップしない)。総じて、重厚感ある乗り心地など快適性は明らかにこちらが高いが、楽しさはガソリン車に一歩譲る、と感じた。

ここがイイ

国産車でついに出た、二人乗りショートボディというコンセプト。軽自動車は小さいことが命のはず。最近の大きく広くなっていく軽自動車は、もはや軽とは呼びたくない。ツインこそが本来の意味での軽自動車だ。

必要十分な走り。1人で乗るには十分広い室内。さらりとした内装&シート生地。センターメーターのため、運転席正面にカーナビをおくスペースがあること。必要十分な荷室。全車ABS標準装備であること。

理想主義的なスマートに対して、ツインには汎用性という点で大きなメリットがある。「トリディオンセル」と呼ばれるスマートのモノコックは、そのままではほとんど発展性は無い。エンジンも専用だ。一方、ツインはスズキのFF軽自動車のエンジンなら何でも搭載可能。ツインワークスとか出たら笑ってしまいそう。

ハイブリッドシステムもその気になれば明日からでも?ワゴンRやMRワゴンに転用可能だ。市場の反応次第で、ツインの技術は大きな展開を見せる可能性がある。

ここがダメ

販売主力のガソリンBはやや過剰装備。特にホイールキャップ、キーレスエントリーあたりはオプションでもいいのでは。ATは確かに3速で十分だが、優秀な4速があることを知っている以上、やはりそれが欲しくなる。120km/h巡航がもっと楽になり、さらなる遠出が可能になるからだ。

またバンパーがモノトーンなのは我慢するとしても、ボディーカラーが赤青黄の3色(ガソリンAは白だけ)しかないのは、目立ちすぎてつらい。シルバーとダーク系カラーの新設を強く望む。購入者の層がグッと広がるだろう。

総合評価

クルマが運転者の手足になるという意味では、ここまでマン・マシーン一体感を感じられるクルマは初めて。小さいゆえ、ボディの隅々までドライバーの感覚が伝わり、またクルマがインフォメーションを伝えてくれる。クルマはやがてドライバー内蔵のロボットになると思うのだが、ツインは現状でそれに最も近い。ここまで小さいと、クルマに乗っているというより電動車椅子に乗っている感覚に近く、それでいて交通の流れに乗れ、100km程度の遠出も苦にならないわけで、どこへ行くにもクルマという生活をしている人にとっては、「原付」感覚で乗れるスーパーカーだ。

走りやパッケージングに関してはほぼ手放しに絶賛してしまうので、こうなるとラインナップの充実を望みたいところ。ガソリンA・ガソリンBのラインナップ間が広すぎるため、4速ATのエアコン付きベース車(65万円位)があればベスト(もちろんボディーカラーもシルバーが欲しい)。これに若干のオプションを追加した上で、アルミとタイヤを変更する(スマートに負けないよう15インチにすれば、ルックスは激変するはず)。さらに昨年の商用車モーターショー展示車のように、助手席シートバックにテーブルをつけてパソコンデスクとし、100V電源を用意。運転席正面にはHDDカーナビをセットして、ハンズフリーフォンを用意すれば、これこそが今最も欲しいクルマだ。

ツインが出て改めて思うが、軽自動車は何処かで方向を間違ったと思う。国民車構想の中で高度成長期に登場した軽自動車は、かつての日本人の志向性同様、立派になることを目指してきたのだが、その結果、立派すぎるほどのクルマになってしまった。そして現在もさらに立派になることを目指している。しかし肝心の国民の多くは、衣食住足りて、立派になることなどすでに忘れてしまったかに見える。それより、等身大のゆるいモノに囲まれ、エコに生きていきたいと願い始めているようだ。ツインはそこにはまる、と思う。ツインを新しい時代のフォルクスワーゲン(国民車)に育て上げるべきだろう。

例えばカローラクラスの、無自覚に乗られている多くのクルマがツイン(のようなもの)に変わると、街は一気に「楽」になる。ロンドンで行われているような市街地に入ってくるクルマから料金を取る制度は今後日本でも導入されそうだが、それより今からこういうクルマに乗り換えさせる、あるいは優遇する措置をとるべきだ。軽自動車の制度を変え、ツインをさらに優遇すべきだろう。スズキにも量産体制をぜひ整えて欲しい。そんなわけでツインは現時点でデイズにとっては今年のカー・オブ・ザ・イヤー。残り10ヶ月でよほどのクルマが出てこない限り、このままイヤー・カーとなりそうだ。

試乗車スペック
スズキ ツイン ガソリンB (【】はハイブリッドB)

●形式:UA-EC22S【UA-EC22S改】●全長2735mm×全幅1475mm×全高1450mm●ホイールベース:1800mm●車重:600kg(F:400+R:200)【730kg(F:450+R:280)※参考値】●エンジン型式:K6A●658cc・DOHC・4バルブ・直列3気筒・横置●44ps(32kW)/5500rpm、5.8kgm(57Nm)/3500rpm【モーター:5kW/1,500~4,500rpm、3.3kgm(32Nm)/0~1500rpm】●10・15モード燃費:22km/L【32km/L】●タイヤ:135/80R12(ブリヂストン B381)●価格:ガソリンB:84万円【ハイブリッドB:139万円】

公式サイトhttp://www.suzuki.co.jp/dom4/index.html

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

スズキ 最新の試乗記10件

最近の試乗記一覧

関連コンテンツ一覧