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ルノー トゥインゴ新車試乗記(第797回)

Renault Twingo Intens

(0.9L直3ターボ・6速DCT・189万円~)

4CVの再来か?
はたまたサンクの現代版か?
愛せる“RR”に試乗! 

2016年10月07日

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キャラクター&開発コンセプト

ダイムラー社のスマートと共同開発


新型ルノー トゥインゴ(2015 東京モーターショー2015)

欧州では2015年、日本では2016年9月16日に発売された新型「ルノー トゥインゴ」は、全長約3.6mの4人乗りコンパクトカー。欧州市場の最小クラスであるAセグメントに属する。初代(1993年~)、2代目(2007年~)は一般的なFF(フロントエンジン・前輪駆動)車だったが、3代目の新型は、RR(リアエンジン・後輪駆動)を採用している。

 

新型スマート フォーフォー (2015 東京モーターショー)

新型はダイムラー社と共同開発され、これにより新型トゥインゴは新型(第3世代)スマートと兄弟車の関係になった。生産についても、トゥインゴとスマート フォーフォーは共にルノーのスロベニア工場で行われる(2人乗りのスマート フォーツーは従来通りフランスのハンバッハ工場で生産)。

■過去の参考記事
新車試乗記>スマート フォーフォー (2016年1月掲載)
新車試乗記>2代目ルノー トゥインゴ (2009年1月掲載)
新車試乗記>初代ルノー トゥインゴ (1999年3月掲載)

 

価格帯&グレード展開

189万円で、プラス10万円でキャンバストップに

まず日本発売記念車として、1.0L3気筒・自然吸気エンジン(71ps、91Nm)・5MTの「5S(サンク・エス)」(169万円)と0.9L 3気筒ターボエンジン(90ps、135Nm)・6速DCTの「Pack Sport(パック・スポール)」(199万円)が各50台限定で先行発売されたが(即完売)、カタログモデルとして今回日本に導入されたのは、0.9L 3気筒ターボエンジン・6速DCTの「インテンス」(189万円)と「インテンス キャンバストップ」(199万円)の2モデル。後者には電動キャンバストップが装備される。

価格の割に装備は充実。オートエアコン、オートワイパー、オートライト、クルーズコントロール、アルミホイール等は標準装備だ。

なお、2017年には再び5MTモデルが導入される予定。

【ルノー トゥインゴ 】
■インテンス 189万円
■インテンス キャンバストップ 199万円

ボディカラーは6色、内装色は3通り


2015 東京モーターショーのルノーブース

ボディカラーは全6色とカラフル。ブルー ドラジェ(ドラジェ=砂糖でコーティングしたお菓子の水色)、ルージュ フラム メタリック(炎の赤)、ジョン エクレール(エクレアの黄色)、ブルー メディテラネ メタリック(地中海の青)、カプチーノメタリック(カプチーノ色)、ブラン クリスタル(水晶の白)と、色名がいちいちオシャレなのがニクい。メタリックは3万2400円高。

内装色は3通りで、外装色がブルードラジェの場合は「ブルー」(シート地はホワイト、アクセントカラーは水色)、外装色がルージュ フラムの場合は「ルージュ」(シート地はブラック、アクセントカラーはレッド)、それ以外の外装色は「ブラン」(シート地はブラックで、アクセントカラーはホワイト)になる。

 

パッケージング&スタイル

デザインモチーフはサンク?

コンパクトで、丸みがあって、胴長(ホイールベースが長い)というのが第一印象。ルノーによれば、往年の名車5(サンク)や初代トゥインゴのデザインエッセンスを採り入れたもの、らしい。さらに張り出したリアフェンダーのあたりはグループB時代のWRC参戦用ミッドシップマシン、5ターボへのリスペクトだと主張する。5はともかく、5ターボはちょっと無理があると思うのだが。

いやいやそれ以上に、同じRR(リアエンジン・リア駆動)の4CVに似ていると思うのだが(日本ではノックダウン生産された日野ルノーが有名)、なぜかルノーはそこに言及していない。クラシック過ぎるからか?

 

ディテールを見ていくと、独特のカーブを描くショルダーライン(ステッカーで強調されている)、表情豊かなボディサイド、大型一枚ガラスのリアゲート、リアのドアハンドルをサッシュに隠して3ドア風に見せる工夫など、なかなか凝っている。ちなみにボンネット(中にエンジンはない)とフロントフェンダーは軽量化と歩行者保護のためポリプロピレン製だ。

小回りは軽並みに効く

ボディサイズはトヨタ パッソやスズキ イグニスと同程度だが、タイヤがボディの四隅で踏ん張っているため、安定感がある。ホイールベースは先代より125mmも伸びて2490mmになった。

一方で、最小回転半径はスマート フォーフォー同様、4.3mと軽自動車並みに小さい。フロントにエンジンがないため、前輪切れ角は同セグメントの平均である30度を大幅に上回る49度を実現している。

 

ルノー 4CV(1947~61年)

ルノーは「5ターボへのリスペクト」と主張するが……
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
新型スマート フォーツー (2015~) 2755 1665 1545 1875 3.3
トヨタ iQ (2008~) 2985 1680 1500 2000 3.9
スズキ アルト (2014~) 3395 1475 1475~1500 2460 4.2~4.6
ダイハツ キャスト (2015~) 3395 1475 1600~1640 2455 4.7
新型スマート フォーフォー (2015~) 3495 1665 1544 2494 4.1
フィアット 500 (2008~) 3545 1625 1515 2300 4.7~5.6
新型ルノー トゥインゴ (2016~) 3620 1650 1545 2490 4.3
ルノー 4CV (1947~1961) 3640 1430 1420 2100
トヨタ パッソ /
ダイハツ ブーン(2016~)
3650~3660 1665 1525 2490 4.6
スズキ イグニス (2016~) 3700 1660 1595 2435 4.7
 

インテリア&ラゲッジスペース

オシャレさと工夫で勝負

先に触れたように、内装のアクセントカラーはブラン(白)、ブルー、ルージュの3通り。一番の爽やかさんは、写真の外装ブルードラジェ、内装ブルーの組み合わせ。このパターンだけ、シート地がホワイトになる。インパネ等の質感は決して高くないが、色使いやデザインで魅せる。今も昔もフランス車はセンスの良さがイノチ。

 

オプションのスマートフォン クレードル。5.5インチサイズでも縦にして固定できる

生活車らしく、ユーティリティにも工夫が凝らされている。取り外しのできるフロントコンソールボックス(きっちり固定されていないのでガタガタするが)、1.5Lペットボトル2本を固定できるリアドアポケットのゴムバンド(笑)、リアシート下の収納スぺース(容量29Lで長傘も入る)など、フレンチ雑貨的なアイディア満載。標準装備のオーディオにはスマートフォンとの接続機能のほか、ルノー車でおなじみのサテライトスイッチ(ステアリングコラムの右下に突き出ているオーディオ操作用リモコンスイッチ)が備わる。

 

電動キャンバストップは走行中でも100km/h以下なら開閉可能

運転席シートのリクライニングは内側のダイアルで調整する。エアバッグはフロントおよび前席サイドエアバッグの計4つ
 

実用に耐える後席


後席ニールーム(膝まわりの前後長)は「クラス最高の136mm」とのこと

後席スペースは大人でも実用に耐えるレベル。身長175cm程度までなら、頭が天井にあたることもないし、足先も前席シートの下に入るので、そんなに窮屈ではない。座り心地もシートクッションが平板な割に悪くない。

リアエンジン車なので、加速時にはエンジンからの音がやや気になるが、街乗りレベルであれば十分に静かで、乗り心地もいい。エンジンからの熱はほとんど感じなかったが、引き出したシートベルトは少し熱くなっていた。また、トランクマット下のエンジンリッドは、触れないほどではないが、かなり熱くなる。

フィアット500と比べると、リアドアがあるのはトゥインゴの強み。後席の乗り降りはもちろん、チャイルドシート(ISOFIXチャイルドシート取り付けアンカーを装備する)を脱着する時や手荷物を置く時に便利だ。

 

リアの窓は欧州Aセグメント車でいまだ現役のスイング式

写真の金具を反転させると、背もたれをカーゴポジションにできる
 

荷室容量は174L(カーゴポジションでは219L)~980L、助手席を前方に倒した時の奥行きは2200mm

吸音・遮音・断熱マットを外し、6本のネジを手で緩めてリッドを外すとエンジンが現れる
 

ポリプロピレン製のフロントフードをずらし、バッテリー、冷却水、ブレーキフルードのメンテナンスを行う

フロントグリル内のロックレバーを解除すると(キーで施錠できる)、フロントフードが前にスライドする
 

基本性能&ドライブフィール

走りよし、乗り心地よし、ハンドリングよし

試乗したのは「インテンス キャンバストップ」(199万円)。

エンジンはルノー製の「H4Bt」こと、0.9L 3気筒ターボエンジン(90ps、135Nm)。ルーテシア等の1.2L 4気筒ターボから1気筒省いたモジュラーユニットだが、共通パーツは半分ほどらしい。このターボエンジンは、当初は自然吸気1L 3気筒モデル(71ps、91Nm)だけだった新型スマートにも、すでに追加されている。

トランスミッションも新型スマートと同じで、ゲトラグ製の6速EDC(エフィシエント デュアル クラッチ)、いわゆるDCT(デュアル クラッチ トランスミッション)。先代は5速セミATや5MTだったから、大幅な進歩だ。

ボタンを押すのではなく、キーを回してエンジン始動。ブルブルブルン!という感じで、リアの3気筒エンジンが目覚める。最初はECOモードで始まるが、エアコンの効きまでECOになってしまうので、一瞬窓が曇って焦る(笑)。ある程度、(エバポレーター内の?)湿気がとれるまで、ECOモードをオフにするとよい。

 

エンジンは高さを抑えるため後ろに49度傾けて搭載されている

車重は1010kg、このキャンバストップ車は20kg増しの1030kgで、パワーウェイトレシオは約11kg/ps。アクセルを踏み込むと、すぐにトルクが盛り上がり、力強く加速してくれる。パワー感は軽のターボ車を上回り、普通車の1.3Lクラス並みだ。

なお、加速時には後方から、エンジン音というか、吸気音のような「シュォォォー」という音がかなりはっきり聞こえてくる。また、車外で聞こえる「ブロロロロ!」という排気音も、なかなかの迫力。ただ、これはアクセルを踏み込んだ時の話で、その時を除けばむしろ「静かなクルマ」という印象になる。

 

シフトレバーのそばにECOモードのスイッチがある。その横はクルーズコントロール&スピードリミッターのスイッチ

6速DCTはトルコンATのような自然さが売り。1速から2速へのシフトアップを除けば、いつ変速したのか分からないくらいスムーズ。その動きを確認する上でもタコメーターが欲しくなるが、今のところはオプションでも選べないのが残念だ。

ターボ車の電動パワーステアリングは、大きく切った時にレシオが速くなるバリアブルギアレシオ(VGR)を採用したもので、その手ごたえはかなり軽め。小回りはものすごく効き、快感とさえ言えるレベル。最小回転半径はワゴン R(4.4m)より小さい4.3mだ。

RRのネガはほとんどまったくない

スマート フォーフォー同様、乗り心地はとてもいい。ロングホイールベースやワイドトレッドに加えて、RRによる前後重量配分(45:55)、フロアや足回りの剛性感が効いている。Aセグ車にありがちなピョコピョコ感、ユサユサ感はなく、クラス破りのフラット感が楽しめる。

一方で、荒れた路面や段差では、ゴトゴトと揺れたり、リアから突き上げが入ったりもするが、どうやら日本仕様は本国のスポーツサスペンションが標準らしい。それでも路面からの振動やザラザラ感が、何か柔らかく分厚いもので遮断されているところには、独特のしっとり感がある。

 

車両協力::ルノー豊川

そして、ボディの後端、低い位置にエンジンが搭載され、その重さで下に押し付けられた後輪が路面を蹴り、ボディを押し出す感じは、まさにRRならでは。コーナリング時も旋回中からアクセルを積極的に踏んでいける。

一方でRRと言えば、低速コーナーでは(安定重視のセッティングにより)アンダーステアが出やすく、高速走行時にはオーバーステアになりやすい傾向があるが、トゥインゴはと言えば、よく曲がり、それでいて操縦安定性も高い。パワーがないせいもあるが、ESC(横滑り防止装置)が大げさに介入してくることもまずない。ルノー自身は新型トゥインゴについて「まるでFF車のように運転でき、RRによく見られるオーバーステアには陥りません」と主張しているが、その言葉に誇張はぜんぜんない。

 

リアブレーキはドラム式だが、昔のレーシングカーみたいなデザイン(スマートと共通)

それからブレーキング時の安定感もRRならでは。ブレーキアシストが働く急制動でも(ちなみにその時にはハザードランプが自動的に作動する)、ほとんどノーズダイブ感なしに、車体を全体に沈み込ませながら止まる。リアブレーキはドラムだが、制動能力は申し分ない。

なお、サスペンションはスマート フォーフォー同様、フロントがマクファーソンストラット、リアがド・ディオン式。タイヤは前が165/65R15、後ろが185/60R15で、フォーフォーの自然吸気モデルと同じだ。フォーフォーのターボだと、前が185/50R16、後ろが205/45R16と大きくなるが、トゥインゴでも限定発売されたPack Sportが同サイズのタイヤ&ホイールを履く。

高速道路を走ると惚れる

直進安定性も期待以上。高速域でも揚力や横風の影響はあまり感じられず、不安なく真っすぐ走ってくれる。意外にこのスタイリングは空力バランスも良さそうだ。

ちなみに新型トゥインゴ(ターボ車)は、エンジン冷却の必要性が低い場合、フラップを閉じて空気抵抗を減少させる「コントロールドフラップ」を採用。ボディ底にはほぼ全面(エンジン部分を除く)にアンダーカバーも装備している。Cd値はこの短いボディで0.31と優秀だ。

エンジンが遠い場所にあるため、静粛性もなかなか高い。速度が上がるにつれて、だんだん騒々しくはなるが、ロードノイズや風切り音が急にうるさくなることはなかった。高速道路でうっかり前のクルマについていくと、いつのまにか130km/hくらい出てしまうので、標準装備のスピードリミッター&クルーズコントロールを活用したい。最高速は165km/hくらいまで伸びそうだ。

ちなみに電動キャンバストップは、80km/hくらいまでなら開けたまま快適に走行可能。100km/hだと風の音で会話が難しくなるが、不快な巻き込みはないので一人で乗る分には問題ない。走行中でも100km/h以下なら開閉可能だ。

試乗燃費は12.1~19.5km/L。JC08モード燃費は21.7km/L

今回はトータルで約370kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、一般道と高速道路をほとんどECOオフで走った区間(約80km)が12.1km/L。高速道路をクルーズコントロールを使って90~100kmで巡行した区間(約100km)が19.5km/Lだった。また、東名集中工事のせいで50~60km/hでのノロノロ巡行を強いられた区間(約50kmほど)では22km/L台を維持した。

総じて燃費は、高速巡行時はいいが、一般道だとついついアクセルを踏んでしまって悪化しやすいという印象を受けた。

JC08モード燃費は21.7km/L。スマート同様にタンク容量は35Lと少なめで、使用燃料はハイオクになる。欧州Aセグ車らしく給油口はキー式。

 

ここがイイ

RRであること、走り、乗り心地、キャンバストップなど

ライバル車はVW up!、フィアット 500など力作ぞろいだが、トゥインゴの強みはやはりRRであることだろう。このサイズでも良い乗り心地、広い後席、後ろから押されるような加速感は、まさにRRならでは。フィアット500のような高級感はないが、走りよし、乗り心地よし、デザインよし、装備よし、価格よし、そして条件付きだが、燃費もまずまずいい。

また、エンジンがドライバーから遠い位置にあるため、3気筒の振動やノイズがあまり気にならないのもいい点。特に高速巡行時だと、エンジン音や振動は(少なくとも前席では)ほとんどまったく気にならない。

 

操縦安定性の面でも、RRのネガはほとんどない。低速でもよく曲がり、高速域ではFF車に遜色ないレベルで安定している。ブレーキもよく効き、急制動時でも安定した姿勢で止まる(これもRRならでは)。そして抜群の小回り性能、大きく開く4枚のドアなど、「ここがイイ」には事欠かない。

最後に、キャンバストップの気持ちよさ。オープンカーより気楽に屋根が開けられて、恥ずかしさもなくて(笑)、また走行中でも開閉できて、適度に風、光、空の景色を楽しめる。雨音も含めて、クローズド時の遮音性もまったく気にならなかった。10万円高なら絶対にお勧め。

ここがダメ

タコメーターが欲しい。ECOモードでのエアコン効きなど


スマート フォーフォー ターボに装備されるタコメーター

クルマ好きなら誰でも不満に思うのが、タコメーターがないことだろう。現行スマートのターボ車にはダッシュボード右端に突き出すタイプが標準装備されるので、トゥインゴにもぜひオプションでもいいから欲しいところ。

エンジンを始動すると、まずECOモードで始まるが、同モードではエアコンの効きも弱くなるため、真夏だと暑く、今回のように湿度の高い時だと外気導入にしていても窓が曇って困った。

ならばと、ECOモードをオフにすると、今度は燃費がかなり落ちる印象。そんなわけで燃費を気にするなら、室内が冷えたところで早めにECOモードに戻したいところだが、今どきめんどくさい話ではある。

 

右から2番目がアイドリングストップのオフボタン

アイドリングストップは標準装備だが、エンジンが停止する間際にブルブルブルと振動が出るのが惜しい。また、アイドリングストップ機能はエンジンを始動する度にオンになるが、それをオフにするには「アイドリングストップ中に」、オフスイッチを押すしかないこと。しかもこのオフスイッチ、ダッシュボードの右下の方にあって押しにくい。

自動ブレーキの類がないこと。新型スマートにはレーザーセンサーを使った「衝突警告音機能」が標準装備されているが、トゥインゴにはそれもない。ただ、スマート フォーフォーはNAモデルで213万円~、ターボだと256万円もするので、ルノーとしては価格上昇を嫌ったのだろう。

着脱式のセンターコンソールボックスは、カチッとはまるというより、ただ置くだけという感じで、運転中にふくらはぎで押すと外れそうになる。

総合評価

1960年代の亡霊が蘇った?


初代スマート

「初代スマートはやっぱり画期的なクルマだったなあ。ベンチャーで作られたあのクルマ、結局ダイムラーの傘下になったよね。ダイムラーは昔、三菱と提携していて、2代目スマートのエンジンは三菱製だったし、三菱もRRの軽自動車 i を出した。そのあと、三菱と手を切ったダイムラーが3代目スマートをどうするか考えた時、ルノーもトゥインゴをどうするか考えていたので、共同開発することにしたんじゃないかな。スマートのパッケージングはEVにも向いているから、今度の新型スマートとトゥインゴでもRRレイアウトにしたんだろう」。ひと昔前ならクルマ好きは深夜のデニーズでそんな話で盛り上がっただろう。

 

スバル R-2

こんな話、特に後半はどこまでホントか分からないが、とにかく目の前には現実にRRの4人乗り新型車があるわけで、ビートル、4CV、チンクエチェント(500)、スバル360、R-2など、死に絶えたはずの1960年代の亡霊が蘇った感があって、ついクルマ好きの頬を緩ませてしまう。

同じくRRのポルシェ 911でいえば、アクセルオンで強いアンダーステア、オフにすると急にオーバーステアに転じるなんてのが、1980年代の930ボディまでは常識だった。しかし、1990年代以降の急速なシャシー性能向上や電子デバイスの進化により、911はいまだRRのままで一級のスポーツカーとして存在している。昔と違って現代なら、RRのデメリットは抑え込めるということだろう。

となると、ことボディサイズに制約があるコンパクトカーというジャンルでは、RRはデメリットより本文で書いたようなメリットのほうが大きいのかもしれない。半世紀も経てば、さすがにクルマも劇的に進化をとげるものなのだと感慨深い。

 

そういうわけで、911やら500やら、そしてR-2やらのRRを郷愁とともに愛でる、一部クルマ好きが狂喜するであろう新しいRR車が、トゥインゴの名を冠して復活した。走れば、まったくもって不満なし。新型スマートの自然吸気モデルでは「大人しいなぁ」という印象だった動力性能は、ターボエンジンのおかげでまったくの別物になっている。ポップなスタイルやインテリアは、今も記憶に残る初代トゥインゴを知る者にとっては、まさにトゥインゴのよきDNAに思えるし、日本向けではオートエアコン、オートワイパー、オートライトなど快適装備もフルについている。

 

それでもまあ案の定、オートエアコンの効きがなんだか今ひとつなのはご愛嬌だし(そういえば先回のシトロエン C4試乗記でご指摘があったように、フランス車のエアコン設定は目盛りを20くらいにすると快適というのはトゥインゴもそうだった)、オートワイパーの感度?設定?が今一つで、思ったように拭いてくれないことがあったり、アイドリング中にボディがブルブル震えたりすることもあった。けれどそんなことより、一人なら車中泊できるフラットな荷室(拡大時)に寝転んで、日本車ではすっかり採用されなくなったキャンパストップで秋の星空を眺めていると、このクルマでもう一度青春してみたくなる。

最小公倍数ともいうべきクルマ

自動ブレーキなどの先進装備は何もないし、今時の新型車ながらエンジン始動はシリンダーにキーを差して回すタイプだけれど、それより日本車ではついぞ見ない純正スマホホルダーがあるべき場所にセットできるから、ナビもオーディオもなくていいし、ミリ波レーダーはなくても、ハンドルスイッチで簡単に操作できる「ごく普通の」クルーズコントロール(日本車と違って設定速度は幅広い)が十分便利だった。高速走行もずいぶん静かだから、遠乗りはこのクラスとは思えないほど楽だ。そして電気の時代が来れば、このままモーターと電池を載せることだってできるだろう。

 

そして何より、メカのユニークさ、デザインのポップさ、走りの楽しさ、そうした魅力を持ちながら、価格が安い。日本で189万円ということは、現地価格は感覚的に130万円程度か。軽のスズキ ハスラーもいいなあと思ったクルマだが、ハスラーのターボだと140万円ほどする。それを思うと際立つ安さだ。日本ではクルマはもう軽で十分と思うのだが、世界的にも日常のクルマとしてはこれくらいで十分では。地球のためにもそれがいい。これ以上の走りやこれ以上の高級感、これ以上のスペースは、どうしても欲しい人が相応のお金を出して手に入れればいい。

 

スマートという2人だけが乗れるマイクロカーは、移動手段としてやはりちょっと不便なことがあった。でもその全長を少し伸ばして、人や物を載せられるようにしたら、クルマなんてこれでもう十分じゃないの、という乗り物ができた。2代目までのスマート フォーツーは長距離走行が辛かったが、これならどこまでも楽々行けるはず。我慢することは何もない。初代スマートを見たときから求めていた、理想的なミニマムな乗り物の完成形が新型トゥインゴ(とスマート フォーフォー)だ。最小公倍数ともいうべきクルマだろう。これなら荷物もしっかり積んで、いつでもどこへでもツイン(2人)でゴーできる。

 

試乗車スペック
ルノー トゥインゴ インテンス キャンバストップ
(0.9L直3ターボ・6速DCT・199万円)

●初年度登録:2016年9月
●形式:DBA-AHH4B
●全長3620mm×全幅1650mm×全高1545mm
●ホイールベース:2490mm
●最低地上高:130mm
●最小回転半径:4.3m
●車重(車検証記載値):1030kg(470+560)
●乗車定員:4名

●エンジン型式:H4B
●排気量:897cc
●エンジン種類:直列3気筒DOHC・4バルブ・ポート噴射・ターボガソリン・横置
●ボア×ストローク:72.2×73.1mm
●圧縮比:-
●最高出力:66kW(90ps)/5500rpm
●最大トルク:135Nm (13.8kgm)/2500rpm
●カムシャフト駆動:カムチェーン
●アイドリングストップ機能:有
●使用燃料:プレミアムガソリン
●燃料タンク容量:35L

●トランスミッション:ゲトラグ製6速DCT(6速EDC=エフィシエント デュアル クラッチ)
●JC08モード燃費:21.7km/L

●駆動方式:RR(リアエンジン・リア駆動)
●サスペンション形式(前):マクファーソン・ストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):ド・デオン+コイルスプリング
●タイヤ:前 165/65R15、後 185/60R15(Dunlop Sport bluResponse ※Made in Poland)

●試乗車価格(概算):-円
※オプション合計(概算) -円:スマートフォン クレードル 5400円、マフラーカッター(社外品) -円

●ボディカラー:ブルー ドラジェ
●試乗距離:約370km

●試乗日:2016年10月
●車両協力:ルノー名古屋東 / 岡崎 / 豊川(株式会社ガレージ新和)

 
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