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VW high up!(ハイアップ!)新車試乗記(第678回)

Volkswagen high up!

(1.0リッター3気筒・5速セミAT・183万円)

フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)の写真VW最小モデルが
ちょっぴりマニアックな
超エコカーになって帰ってきた!

2012年11月22日

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up! キャラクター&開発コンセプト

VW最小モデル。自動ブレーキも標準装備

新型up!の画像
新型up!(写真は4ドアのhigh up!)
(photo:VGJ)

「up!(アップ!)」は、フォルクスワーゲンで最も小さなコンパクトカー。ポロより450mm短い全長3545mmのボディでありながら、大人4人が快適に乗れる空間を確保。また、新開発の1リッター3気筒エンジンと5速セミATを搭載し、日本で販売するVW車としては過去最高のJC08モード燃費23.1km/Lを達成し、エコカー減税(75%減税)の対象車になっている。

また、エントリーグレードで149万円からという価格のほか、低速域での追突回避や衝突被害の軽減を行う自動ブレーキシステム「シティエマージェンシーブレーキ」を全車標準とした点も、テレビCMなどで強くアピールされている。

 
2ドアのmove up!の写真
2ドアのmove up!
(photo:VGJ)

ちなみにup!は、かつてVWの最小モデルだった「ルポ」(2001年~2006年)や「フォックス」(日本未導入)の後継モデル。2007年にコンセプトカーとしては登場した時はリアエンジンという想定だったが、市販車は一般的なFFとなり、欧州では2011年秋に、日本では2012年10月1日に発売された。生産はスロバキアのブラチスラヴァ工場で行われている。

フォルクスワーゲン グループ ジャパンの発表によれば、国内の累計受注台数は発売から約3週間で3000台を突破したとのこと。また、ショールームへの来場者の約8割が国産車ユーザーとなるなど、新規顧客が高い割合を占めているという。

なお、up!は2012年のワールド・カー・オブ・ザ・イヤー(WCOTY)を受賞。日本では2012-13年のRJCカー・オブ・ザ・イヤー=インポート(輸入車部門)を受賞している。

価格帯&グレード展開

2ドアなら149万円から。4ドアは168万円から用意

up!のカラーバリエーションが並んだ写真
up!の日本仕様。ボディカラーは全6色
(photo:VGJ)

ラインナップは、エントリーグレードである「move up!(ムーブ アップ!)」の2ドア(149万円)と4ドア(168万円)、そして上級グレードで4ドアのみの「high up!(ハイ アップ!)」(183万円)の3種類。ESP、4エアバッグ、シティエマージェンシーブレーキが全車標準である点や、4ドアが用意された点も、このクラスの輸入車では画期的なところ。

そして一番高いhigh up!のみ、フォグランプ、8スピーカー、リアパークディスタンスコントロール(バックセンサー)、マルチファンクションインジケーター(燃費計、外気温、時計など)、レザーステアリング、シートヒーター、クルーズコントロール、185/55R15タイヤ&アルミホイール(下位グレードは165/70R14&鉄ホイール)を標準装備するなど、中間グレードの15万円アップとは思えないほど豪華になる。このhigh up!のみ、オプションで電動パノラマスライディングルーフが用意されている。

 
フロントガラス上部の自動ブレーキ用レーザーセンサーの写真
フロントガラス上部には自動ブレーキ用のレーザーセンサーを備える

シティエマージェンシーブレーキは、時速約5~30km未満で走行中、フロントガラス上部の赤外線レーザーセンサーで10m前方までの車両や障害物(歩行者や小型の障害物を除く)を検知し、ドライバーがブレーキ操作をしなかった場合に自動的にブレーキをかけるものだ。

パッケージング&スタイル

全長はショート、ホイールベースはロング

右前方から撮影されたフォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)の写真
試乗車のデカールは非売品

ボディ外寸は2ドアでも4ドアでも同じ。大きさは見る角度によってはポロと大差ないように見えるが(特に正面)、横から見るとup!はオーバーハングやエンジンルームが極端に短く、Cピラーやリアウインドウが立っている。タイヤが4隅で踏ん張っているところは、ロングホイールベース化が著しい最近の軽自動車に近い。想像だが、日本の軽自動車なども相当研究したのではないだろうか。そういえば、ついこの前までVWはスズキと提携していたっけ。

 
右後方から撮影されたフォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)の写真

ボディは小さくても、フロントのVWエンブレムはポロやゴルフ並みに大きく、前から見た時の印象は、アーモンド型のヘッドライトと相まって精悍。最近では珍しいグリルレスのフロントデザインにも主張が感じられる。

一方、リアはスマートフォンをモチーフにしたとのことで、ハッチゲート全面を一枚のガラスとするなど斬新。ポップだが、オモチャっぽく見えないのがすごい。また、この短躯にて、欧州衝突安全テストのEuro NCAPでは最高評価の5つ星を獲得している。

 
正面から撮影されたフォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)の写真
左側面から撮影されたフォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)の写真
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) ホイールベース(mm)
スマート fortwo 2740 1560 1540 1865
ホンダ N-ONE 3395 1475 1610 2520
フィアット 500 3545 1625 1515 2300
VW up! 3545 1650 1495 2420
MINI クーパー 3740 1685 1430 2465
VW ポロ 3995 1685 1475 2470
トヨタ アクア 3995 1695 1445 2550
 

インテリア&ラゲッジスペース

質感よし。上級グレードなら装備もよし

フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)の前部座席の写真
試乗車のダッシュパッドは黒(ブラックパール)だが、high up!の一部ボディカラーではボディ同色になる

インテリアで予想を軽々と越えてくるのが、質感の高さ。ダッシュボードこそポロのようなソフトパッドではなくハード樹脂であるし、上質感もポロほど(あるいはゴルフほど)ではないが、正直このクラスとしては文句が付けられないレベル。特に上級グレードのhigh up!の場合は、ダッシュパッド(インパネ)の色を、ボディカラーが赤の場合は赤に、水色の場合は水色にすることも可能。他にベージュやシルバーも用意されている。またドアトリムの一部もボディ同色の鉄板になるから、ボディカラーがそのまま内装の「差し色」になる。

装備も充実していて、特にhigh up!には、ポロやゴルフなどと同様のマルチファンクションインジケーター(燃費が気になる方には必須)が付いてくるし、今どき珍しいくらい細身のレザーステアリングの握り心地も良い。おまけにシートヒーターまで付いてきて、ほとんど全部のせ状態。

 
フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)のメーターの写真
回転計は小さめだが、視認性はまずまず。ただし数字(赤い液晶表示)は小さくて、やや見にくい
フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)のシフトレバーの写真
ASGこと、新開発の5速セミAT。P(パーキング)はなく、ニュートラルでエンジンを始動する
 

キャビンの広さはポロ以上?

側面から撮影されたフォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)の運転席の写真
フロントシートで「オオッ」と思ったのは、リクライナーがVWでは異例のレバー式であること(VWではダイアル式が普通)。テレスコはないが、ポジションや座り心地に不満はない

室内空間は例えて言うなら、今時の軽自動車を、横幅だけ普通車で作った感じ。前席も後席も現行ポロと大差ないと思えるほど広い。むしろ後席に関しては、ポロ(全高がup!より20mm低く、ルーフ形状はスラントしている)より、ヘッドルームに関しては余裕がありそう。Cピラー角度やリアドアの形状も、up!の方はカッコ良さより開口面積を優先といった感じになっているので、乗り降りもしやすい。

 
フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)の4ドアの後席ウインドウの写真
4ドアの後席ウインドウは懐かしいヒンジ式(このクラスの欧州車では今でも珍しくない)。2ドアはハメ殺しになる
フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)の後部座席の写真
後席は一見ポロと大差なく見えるほど広い。ドアの開口角や開口面積の広さにも注目
 
フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)の荷室の写真
荷室容量は251リッター。明らかにフィアット 500やMINIより広いが、ポロ(280リッター)より奥行きは少ない。上下2段階で固定できる「バリアブルカーゴフロア」を装備
フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)の後席を折り畳んだ荷室の写真
最大容量は951リッターでポロ(952リッター)と同等。後席の折り畳みはシングルフォールディングで簡単。床下にはパンク修理キットを搭載する
 

基本性能&ドライブフィール

1リッター3気筒にしては振動が少ない

フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)のエンジンルームの写真
エンジンはオールアルミ製の新開発1リッター3気筒。かつてのルポや先代ポロの1.4リッターと同等の75psを発揮する

試乗したのは4ドアの上級モデル「high up!」(183万円)。パワートレインは全車共通で、車重も2ドアで900kg、4ドアで920kgとほとんど同じ。ただタイヤは、このhigh up!のみ、下位グレードの165/70R14に代えて、185/55R15が装着される。試乗車にはコンチのプレミアムコンタクト2という立派なタイヤが付いていた。

とりあえずエンジンを始動。エンジンは1リッターの3気筒だが、振動の少なさは噂通り。3気筒にありがちな独特の振動はほとんどなく、クルマに詳しくない人なら特に気付かないかも。新型ノートの1.2リッターも3気筒だが、あちらはスーパーチャージャー。自然吸気でここまで振動を抑制できるのか、と驚いてしまう。

後でエンジンルームを覗いたら、エンジン自体は普通の3気筒並みにブルブル震えていて、その振動を大容量のエンジンマウントが吸収していた。しかしこのあたりの作りは日本車の3気筒も同じなので、振動が室内に伝わってこないのには他にも理由がありそうだ。

「息継ぎ」はそれなりにある

フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)の走行中の写真

変速機はASG(ドイツ語でAutomatisiertes Schaltgetriebe:英語でオートメーテッド マニュアルトランスミッションのこと)と呼ばれる新開発の5速セミAT。フィアットではデュアロジック、アルファロメオではセレスピードと呼ばれるロボタイズドMTの一種で、要はマニュアルギアボックスをベースに、シフト&クラッチ操作をアクチュエーターで行い、変速操作を自動化したものだ。DCT(デュアルクラッチトランスミッション、VWではDSGと呼ばれる)に対して、シングルクラッチ式とも呼ばれる。日本車で採用した例は、一番近くても一昔前のトヨタ MR-Sくらいか。ASGのメリットはMTの生産工場で作れることのほか、軽量であること。up!用のミッション単体重量はわずか30kgだという。

セミATの動作上の特徴はいくつかあるが、その一つはクリープが一切ないこと。ドライブやリバースに入った状態でブレーキを離してもクルマが動かないのは、普通のATやCVTに慣れた人には戸惑う部分だろう。それでもアクセルを踏み込めば、半クラッチを自動的に当てて、スムーズに走りだす。

 
フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)のフレーム図解
ボディ全体の67%に超高張力鋼板か高張力鋼板を、8%(フロア、Bピラーなど)に高価な熱間成型鋼板を使用。ルーフやリヤハッチパネルのフレームへの接合にはレーザー溶接も使われる
(photo:VGJ)

とりあえずベースはMTなので、加速する時にはパワーがダイレクトに伝わる。最高出力は75ps、最大トルクは9.7kgmに過ぎないが、3気筒ならではのトルク感と、900kgちょっとの軽い車重が奏効して、走りはけっこう俊敏。このあたりは同じ1リッター3気筒(三菱製)の現行スマートと同じで、3気筒エンジン+セミATならではの感覚とも言える。0-100km/h加速はメーカー発表値で13.9秒だ。

一方、セミATに特有のシフトアップ時の「息継ぎ」も噂通りあり、それなりに大きい。セミATには多かれ少なかれあるものだが、up!の場合はアクセルを全開にするとトルクフルに加速する分、1速から2速、2速から3速へシフトアップする時のトルク切れも大きく感じられる。ただ、これはあくまでスロットル全開時に顕著で、エコドライブする時のようにじんわりアクセルを踏むか、シフトアップ時にアクセルを少し抜いてやれば、解消できる。丁寧にアクセルを踏むだけでスムーズに運転できるという点では、下手な(そして多くの)マニュアルドライバーより上手とも言える。

シャシー性能はポロに迫る? 高速巡航も得意

フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)のタイヤの写真
high up!に標準の15インチアルミホイールは質感が高く、凝ったもの

5速セミATの件を除けば、走りは本当にいい。先に触れたように、エンジンはトルクフルかつ3気筒にしては十分にスムーズだし、「DSG」にも似たダイレクトなパワー伝達感も気持ちいい。

また、ガシッとしたボディに、ガシッとしたサスペンション、軽くて正確な電動パワーステアリングのタッチなども、上級モデルの現行ポロにそっくり。ちょっとしたワインディングを走る機会があれば、ほとんどのドライバーが「このクラスで、この走りか」と驚くはず。ポロ同様、振り回すような走りは得意ではないが、曲がりくねったワインディングを滑らかに走るし、操縦安定性もまったく問題ない。特に試乗車は15インチタイヤのせいかグリップ感が高く、アンダーステアも軽微。意図的に負荷をかける操作をしても、ESPの介入は最小限だった。

 
フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)の走行中の写真

乗り心地も非常に良かった。段差やうねりで強い入力があった時でも、やんわりと受け止めるところなど、良い意味で日本車みたい。実際にサスペンションが硬めなのは、姿勢変化がとても少ないことで分かるが、それにしてもよく出来ている。シャシー性能に関しては軽量ボディや重量配分などの好要素が重なって、結果的にポロと同等になってしまったのでは、と思ってしまう。

高速走行もさすが欧州車で、お手のもの。100km/h巡航はおおよそ2800回転くらいと高めなのは、ギアが5速しかないゆえ仕方ないところだが、逆に言えばこのエンジン、それくらい回してやった方がスムーズで静か。パワーウエイトレシオは約12kg/psと軽のターボ車並みだが、ロードノイズも風切り音も静かなので、とにかく快適に巡航できる。high up!に標準のクルーズコントロールも重宝しそう。アウトバーンでは文字通りフラットアウト(アクセル全開)のまま、サチるところで巡航するのでは。メーカー発表値の最高速は171km/hだ。

試乗燃費は14.5~22.0km/L

フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)のメーターの写真
写真は14.5km/Lをマークした時の図(撮影中に0.1km/L減ってしまったが)。燃費計が備わるのは上級グレードのみ

今回はトータルで約200kmを試乗。参考までに試乗燃費は、いつものように一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が14.5km/L。夜間の空いた一般道で、無駄な加速を控えて走った区間(約30km)では、軽く22.0km/Lをマークした。ここ最近の「第3のエコカー」では、同様の試乗パターンで20km/Lを超えることが多いが、up!の場合は運転パターンにあまり関係なく、割とイージーに好燃費が出てしまうのが特徴。高速道路でも法定速度を守れば、20km/Lを切ることはないと思う。JC08モード燃費は冒頭でも触れた通り23.1km/Lだ。

ただし指定燃料はプレミアムで、燃料タンク容量は35リッターと小さめ。また、給油時に気づいたが、燃料キャップは鍵式だった。今でもラテン車や一部のアメリカ車では珍しくないが、ドイツ車で見たのは久々かも。

ここがイイ

シャシーとパッケージング

フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)の走行中の写真

シャシーのすごさ。パワートレインについては、1リッターの3気筒+セミATということで、突っ込みどころはあるが、このボディとシャシーに文句を言える人はいないはず。日本の軽自動車だって全幅とトレッドがこれくらいあれば、これくらい走るのかもしれないが……、

パッケージングのすごさ。プレスリリースには「かつてのオリジナルビートル同様に、大人4 人と小旅行の荷物を搭載するラゲージスペースを確保」とあるが、いや、オリジナルビートルを超えているのは明らか。横幅だけ自由に日本の軽自動車を設計したら、これが理想ではないか、と思えるほど、このクラスのコンパクトカーとしては理想的なパッケージングだと思う。

ここがダメ

もう少し出せばポロが買える

セミATに関しては、他社モデルのセミATに近いもので、特に良くも悪くもないと思う。
トルコンATやCVTのようなイージーさを求める人を含めて、万人向けでないことは確かだが、セミATにはセミATなりのメリットもあるから、あとはそれぞれが販売店で試乗をして、いいかどうかを決めればいいと思う。

本文では、「3気筒にしては振動が少ない」点を強調したが、では4気筒並みかと言えば、そうでもない。4気筒に限りなく近いが、やっぱり3気筒独特の振動はあるし、エンジンを回すと(軽自動車に似た)3気筒独自のビィーーンという音が高まる。4気筒、特にポロの1.2 TSIエンジンの滑らかさ、静かさには及ばないというのが率直な印象。上級モデルのhigh up!に、あと35万円足せば、1.2リッター直噴ターボ、7速DSG、ついでにアイドリングストップも備えた「ポロ TSI コンフォートライン ブルーモーション テクノロジー」が買えるわけで、ここは悩みどころ。ゆえに、いっそ149万円の2ドアか、という選択もある。

エコカーとして、一つ物足りない点を挙げるなら、アイドリングストップ機能がないこと。セミATでさえ慣れを要するので、さらにアイドリングストップがつくと混乱する人が増えそうだが、欧州仕様には設定があるようなので、日本向けにも燃費に特化したモデルとして用意できれば面白いと思う。

総合評価

これからのカタチを提案

フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)を高所から見下ろした写真

いつものようにVW車絶賛となって申し訳ないが、いいものはいいので仕方ない。up!はやはり今年のイヤーカーにしてもいいクルマだと思ってしまった。

まずはスタイリングがいい。パッケージング優先なので全体的には、ある意味、当たり前のカタチだし、いわゆるカッコよさの欠片もないものだ。しかしグリルレスのフロント周り、ブラックアウトしたリアハッチといったデザイン的処理で、見事に個性を出していて、幾多の小型車の中でも埋没しない。特にグリルレスのフロント部は、このまま電気自動車です、といっても通用するくらい「これからのカタチ」をしている。小さなクルマの筆頭であるMINIやフィアット 500が、昔のカタチで個性を出す中、これからのカタチを提案しているわけで、その点でも評価せずにはいられない。up!もVWグループの廉価ブランドであるシュコダ版になると、グリルも当たり前のデザインなのだが、VWはグループ内での上級ブランドゆえ、上級感がちゃんと出してあるのだ。

痛快に思える部分

フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)のバンパーの写真

室内は、確かにそこかしこにコスト意識が見られるわけだが、それを逆手に取っているのがうまい。ドアの鉄板むき出しなど、国産車では軽トラくらいでしか見られなくなったが、そこがボディ同色ゆえ、かえって新鮮にすら見えてくる。インパネとカラーコーディネイトすれば、もう完全にオシャレな部類。無印良品に通じるシンプルさが心地よい。シートの背もたれ操作がダイヤル式でないのもコストダウンだと思うが、シートそのものはいつものVWで、大変素晴らしい。リアの窓が開かないのも、昨今ではおそらく問題は無い。あなたのクルマで、直近にリア窓を開けたのはいつのことだったかを考えてみて欲しい。

そういった割り切りをしながら、必要な部分にはちゃんとコストをかけているわけで、そこにはメーカーによる明らかな主張がある。日本車ならリア窓が開かないというだけで「一部の客」が文句を言うから、CS(顧客満足度)にうるさい日本企業では、そんなことは全く考えられないだろう。しかしVWの場合は、顧客の最終的な満足はリア窓が開くことではなく、例えば自動ブレーキがついていること、という判断だ。コスト削減に苦しむ日本車だが、こういう判断はたぶん出来ないだろう。そうした判断こそが、このクルマが痛快に思える部分。メーカーによる明らかな主張があることは、やはり評価せずにはいられない。

MT文化のAT

フォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)を右側面から見上げた写真

唯一気になるのは、セミATにつきるだろう。スマートにも長く乗ってきたからセミATには慣れていて、試乗中はあまり気にならなかったが、日本のATやCVTに慣れている人には、おそらく我慢出来ないと思う。DSGもそうだが、これはもうMT文化の国のAT作りゆえ、セミATも文化の違いとして理解するしかない。個性だと思えれば、逆に魅力になるかもしれない。むろん燃費には効くはずだし、走りもシャープだ。MTモードで走れば、シフトの実感もある。ただ、燃費や走りの悪化をユーザーが了解の上での選択肢として、一般的なATも選べたらとは思う。

あと一つ加えて言えば、やはり輸入車らしさが薄いのも気になる点かも。デザイン的に遊びのあるフィアット 500のような、一見してオシャレな小型車と違って、VWらしい理詰めの実用車ゆえ、ここは致し方ないところか。ブランド的にもプレミアムカーではなく、VW(国民車)だし。

日本製品の問題点が透けて見える

排気量がもうちょっとあったら、横幅がもうちょっとあったら、日本の軽自動車は世界に通用する理想的なコンパクトカーになれるのでは、と10年来言ってきたが、こうしてVWに、まさにこれ、というクルマを、出されると、日本人としてはまた暗然たる気持ちになってしまう。しかもその価格が、輸入車でありながら日本の肥大した「高級」軽自動車と大差ないという事実を前にすると、なんだか考え方を抜本的に改めないといけない気がしてくる。up!には、高級軽自動車にはないESPどころか、自動ブレーキまでついている以上、日本でもコストの考え方を見直さないとまずい、と思わずにはいられない。

 
背面から撮影されたフォルクスワーゲン high up!(ハイアップ!)の写真

CS(顧客満足度)のために何でもします、ではなく、最終的に、本当に顧客に満足してもらえる商品は何か。そしてそれを大胆に提示していくという姿勢は、日本企業には難しいのだろうか。このクルマを見ていると、昨今のコンシューマー向け日本製工業製品の問題点が透けて見えてくる思いだ。

何となくチープなインパネを見ながら、鉄板むき出しのドアを閉めて、このクルマは現代に蘇った初代ゴルフだなと思った。up!は世界の国民車として、多くの「あまりお金のない人」の幸せをUPさせることだろう。しかもそこそこお金がある人が乗っても全く不満がない。VWは恐ろしいクルマを作ったものだ。

   
 

試乗車スペック
フォルクスワーゲン high up!
(1.0リッター3気筒・5速セミAT・183万円)

●初年度登録:2012年9月●形式:DBA-AACHY ●全長3545mm×全幅1650mm×全高1495mm ●ホイールベース:2420mm ●最小回転半径:4.6m ●車重(車検証記載値):920kg(560+360) ●乗車定員:4名

●エンジン型式:CHY ●排気量・エンジン種類:999cc・直列3気筒DOHC・4バルブ・横置 ●ボア×ストローク:74.5×76.4mm ●圧縮比:10.5 ●最高出力:55kW(75ps)/6200rpm ●最大トルク:95Nm (9.7kgm)/3000-4300rpm ●カム駆動:- ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/35L ●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:23.1km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソン・ストラット+コイル/後 トレーリングアーム+コイル ●タイヤ:185/55R15(Continental PremiumContact2) ●試乗車価格(概算):-円  ※オプション:- -円 ●ボディカラー:リフレックスシルバーメタリック ●試乗距離:約200km ●試乗日:2012年11月 ●車両協力:フォルクスワーゲン本山・小牧

 
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