Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > トヨタ ヴァンガード 350S “Gパッケージ”

トヨタ ヴァンガード 350S “Gパッケージ”新車試乗記(第482回)

Toyota Vanguard 350S

(3.5リッターV6・5AT・334万9500円)

とぼけた顔してヴァンヴァンヴァン。
並みのSUVじゃかなわない。
走り上手なヴァンヴァン
ヴァンガードに試乗!

2007年10月13日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

北米向けRAV4ベースの高級SUV

2007年8月30日に発売された「ヴァンガード」は、ミディアムサイズの高級SUV。5人乗りと7人乗り(3列シート)のほか、エンジンは2.4リッター直4(CVT)と3.5リッターV6(5AT)が選べる。日本国内では事実上クルーガー(米国における初代ハイランダー)の後継だが、米国向け2代目ハイランダー(07年~)とは別物。ベースは北米向け3代目RAV4にあるロングホイールベース版で、仕立てが「高級」となっているのがポイントだ。

・トヨタUSA>ハイランダー http://www.toyota.com/highlander/index.html

強くて優しい7人乗りSUV

ヴァンガード( Vanguard )とは英語で「前衛、先駆者」のことで、フランス語の「avant-garde(アヴァンギャルド)」とほぼ同じ意味。広告コピーは「タフ&ジェントル 7シーター」。

生産は田原工場(愛知県田原市)。取扱いはトヨペット店とトヨタカローラ店で、目標台数は月間2500台。年内の4ヶ月間は月間3500台ペースで、合計1万4000台を目指す。立ち上がり1ヶ月の受注(8/30~9/30)は約8000台と好調だ。

・ヴァンガード受注状況について(2007年10月3日) http://www.toyota.co.jp/jp/news/07/Oct/nt07_1002.html

価格帯&グレード展開

「240S」は200万円台後半、「350S」は300万円台前半

2.4リッター直4の「240S」(264万6000円~294万円)と3.5リッターV6の「350S」(305万5500円~334万9500円)の2種類。さらに3列シートの7人乗り(4万2000円もしくは5万2500円高)、本革×アルカンターラ・電動シートの「Gパッケージ」(24万1500円もしくは25万2000円高)、HDDナビ(34万200円高)を選ぶという流れ。

パッケージング&スタイル

顔は専用だが、後姿は・・・

ボディサイズは全長4570×全幅1855(350S)/1815(240S)×全高1690mm。RAV4(日本仕様)より全長は235mm長く、ホイールベースは100mm長い2660mmだ。

顔のデザインは現行カムリやレクサスに通じるキリッとしたもの。適度な威厳、メッキグリルにトヨタマークと正攻法だ。黒のボディカラーだと特に高級感がある。一方、ボディ後半部は、まんま「スペアタイヤのないRAV4」で、ちょっと力が抜けてしまう。リアコンビランプのパーツ自体は別物だが、RAV4譲りの形状自体が特徴的なので、どうしてもその残像が重なって見えてしまう。

加飾パネルは「ブロンズ調」

内装も基本的にはRAV4と同じ。違うのはセンターの一部パネルとドアトリムの加飾で、RAV4ではメタル調シルバー塗装、ヴァンガードでは「ブロンズ調」ヘアライン処理風となっている。このブロンズ調というのは珍しい仕上げだが、言われないとブロンズ(青銅)には見えない。ここは好みが分かれる部分だ。

写真の「Gパッケージ」は、本革とアルカンターラ(東レのスエード調人工皮革)のコンビシートだが、気になったのはシートのサイズが小さいこと。骨格自体はRAV4と共通のようだが、座面長が短く、ちょこんと腰掛ける感じになる。

なお、新型イストから始まったトヨタの方針通り、ヴァンガードもサイド&カーテンシールドエアバッグを全車に標準装備する。ただしイストで採用された前席アクティブヘッドレストは装備されていない。

後席は広いが、座り心地はいま一つ

センタートンネルの無いフラットな足もと、前後スライド、リクライニング機能など、一見すると良さそうなセカンドシートだが、座ってみると明らかに座面高が足りず、膝下が浮いてしまう。前席下の空間まで使って足を伸ばすことはできるが、これでは落ち着いて座っていられない。要するにRAV4そのもの。少なくとも後席乗員に「ジェントル」な作りとはなっていない。

サードシートはエマージェンシー

サードシートを荷室床下にすっぽり収納できる点は、現行(3代目)エスティマと同じだが、その作りや折り畳み機構自体はアイシスの発展改良版のように見える。

実際に座った印象は、完全にフットルーム不足で、あくまでエマージェンシー。そもそもエスティマのホイールベースは2950mm、アイシスですら2785mmあり、ヴァンガードはそれより125mmも短い2660mmだから、ここは仕方のないところか。

スペアタイヤはどこだ?

荷室容量は7人乗車時は240L、5人乗車なら540L。セカンドシートを畳めば、奥行き最大2015mmの広大な空間が広がる。ただし室内高は最大でも990mmで、自転車をタテ積みする時は前輪を外す必要がある。

スペアタイヤはバックドア背面にはなく、吊り下げ式でもない。2代目イプサムのように助手席シートの下や、エスティマのようにセカンドシート下にあるはずもなく、もちろんランフラットタイヤでもない。正解は「スペアタイヤレス」。パンク修理キット(修理剤と電動ポンプ一式)が荷室左側面に入っている。

「それじゃ心配だ」という人には、背面スペアタイヤ仕様(6万円前後)もあるが、そのリアゲート自体(タイヤカバーも含めて)はRAV4と同じもの。つまりそうすると後姿はほとんどRAV4になってしまう。

基本性能&ドライブフィール

パワーは十二分。「240S」で十分か

試乗したのは「350S」。3.5リッター「2GR-FE」(280ps、35.1kg-m)は現行エスティマやブレイドマスター、マークXジオと同じもので、元々はレクサスIS350、GS350、クラウンアスリートなどの高級FRセダン用ユニットだ。FF用の横置き版はデチューンされているがそれでも280psあるから、パワーはまったく申し分ない。

車重は7人乗りで1700kg(試乗車で1720kg)だが、発進や交差点からの立ち上がりでアクセルを踏み込めば、ウワッと一気呵成に吹け上がる。ある意味、過剰な速さでもあり、チョイ乗りした直4+CVTの「240S」(170ps、22.8kgm)で十分と思ったくらいだ。RAV4譲りの電子制御フルタイム4WDゆえ、トラクションも完璧。タイヤもこの350Sでは235/55R18のサマー規格を履いている。

なお、他の「2GR-FE」搭載車が6速ATであるのに対して、ヴァンガード350Sは1段少ない5速ATとなっている。そのためか全開加速で1速が吹け切った後、2速まで一瞬の間があるが、これは一般道ではアクセルを戻すきっかけになって都合がいいとも思える。キックダウンも俊敏で、もたつくことはまずない。パドルシフトはもちろん、マニュアルモードもなく、ジグザグ式ゲートだけだが、これだけ全域でパワフルなら特に不都合なし。CVT車には7速マニュアルモードが付く。

「350S」はやや固めの乗り心地

前ストラット、後ろダブルウイッシュボーンの足回りは基本的にRAV4譲り。乗り心地は基本的には悪くないが、高い重心、短めのホイールベース、そこにパワフルで重いエンジンを積むため、同クラスのセダンより固めになるのは避けられない。それより気になるのは上に書いたようにシートの出来。ここにRAV4ベースのデメリットがもろに出てしまっている。

悪路走破性に関しては、全車に電動パワステまで制御する「S-VSC+アクティブトルクコントロール4WD協調制御」と4WDロックモードを装備。ヒルスタート・アシストやダウンヒル・アシスト・コントロール(DAC=通称ダック)も付いている。最低地上高の190mmはRAV4と同じだが、オーバーハングとホイールベースが伸びているので、事実上の対地クリアランスは減ったことになるが、いざという時の性能としては十分だろう。

経済性なら240Sがお勧め

今回は2日間で150kmを試乗。21.7Lのハイオクガソリンを消費し、約6.9km/Lとなった。大人しく走ればもう少しいいはず。10・15モード燃費は9.6km/Lだ。なお、2.4リッター車の10・15モードは12.6km/Lで、しかもレギュラー仕様だから、経済性を重視すればむろん「240S」の方がいい。

ここがイイ

標準装備のS-VSCとアクティブトルクコントロール4WDは、オフロードというよりオンロードでの安全性確保で効果を発揮する。2WDの用意がないことや、サイド&カーテンシールドエアバッグ全車標準化など、日常的に乗られるクルマとして、とても安全性の高いクルマといえるだろう。350Sはそうとうパワフルだが、それを技術でコントロールしているという点で、さすが最新のトヨタ車といえる。またミニバンの技術が生きているサードシートの格納方法は秀逸。これくらい簡単だとサードシートもちょくちょく出し入れできる。

見た目に関してお買い得は高い。サイズとエンジン、なかなか整ったスタイルをひっくるめると400万円くらいの高級車に見えなくはない。クルーガーの中古車もまだ高値がついているくらいで、人気のSUVは当面値落ちが少ないはず。これらのお値打ち感は魅力だろう。

ここがダメ

あまりにRAV4のまんまなこと。3.5リッターエンジンも取ってつけたようで、国内向けRAV4との差別化以外に必然性が感じられない。世の、あまりクルマに詳しくない多くの人には別にかまわないことかもしれないが、そこを確信的に実行されるとクルマ好きとしてはちょっとひいてしまう。

またRAV4ベースの影響もあってか、乗り心地が固め、騒音も高め、前述のような小さなシートサイズなど、真の高級車を目指して作られたSUVとはいいがたい。効率よく作られた高級っぽいSUVとでもいうべきか。また平均燃費計がない、前席アクティブヘッドレストが装備されていないあたりなど、ちょっとのことなんだからつけておいてよ、と言いたくなってしまう。

総合評価

ミニバン不要世代の実用車

またまたオヤジねらいのSUVの登場とあいなった。クルーガーがあまりに地味だったということか、あるいはRAV4ロングという生い立ちゆえか、後継車にはまた新たな名がついたわけだが、新車の名前が多すぎてもう覚えきれないというオヤジも多いはず。先週のエクストレイルが7年でフルチェンジしても名前が存続し、クルーガーは4年で消えていく。もし同じ販売力であれば、名前を残す方が売れると思うのだがいかがだろう(トヨタの販売力があってこそ、トヨタ車は名前がどんどん変えられる、と思うのだ)。いずれにしても、なぜこうも車名を変えるのだろうか。

そんなエクストレイルが趣味の道具なら、ヴァンガードは生活の道具といったところ。ほどほどに高級感があって、ほどほどに走りがよく、一応3列シートもあってミニバン不要世代の生活道具として、何ら不満などない。ただしアウトドアで使うというより都会で使うクルマだろう。オフロード性能も、積載性も、もちろん高級という位置付けも、オンロードSUVであることを示唆する。またそれなりに高価でもあるから、買える人は勝ち組ではないにしても、負け組ではない人たちだ。順調に歳を重ねた40代以上、中堅の会社の課長以上というところか。中小企業の社長や大企業の部長以上はたぶんもうちょっと違う選択(SUVにしても、もうちょっと高級なヤツ)に行ってしまうはず。そんな課長が日常生活のシーンで、セダンやミニバンに代えて乗る実用車がヴァンガードだと思われる。タイヤもサマータイヤだ。

幅が広くなっただけにどっしりとした印象が強まり、破綻無くまとめられたエクステリアデザインは悪くない。特に350Sはオーバーフェンダーが格好よく決まっている。インテリアもブロンズ色は新鮮で、高めのナビ位置の見やすさには好感が持てる。シートは大柄な人には厳しいサイズだが、小柄な人ならまあ許せるか。それらがこぢんまりとまとまったために、皆が喜ぶ3列目も設定できたわけだ。その他、装備も走りもやはり破綻なくまとめられている。ただ、クルマ好きとしてひかれる部分はほとんど無い。予定調和の世界というか、よくできたトヨタ車である。

道を外れるか、外れないか

国内自動車市場を牽引するSUVは、月間2万台が売れる。ヴァンガードはその1割以上を占める予定だ。マジョリティそのものゆえ、ひねくれたクルマ好きに好まれる必要はないのだろう。新車発表では「クルマは道が作る…、ヴァンガードは国内の道を知りつくして作られたクルマ」と豊田章男副社長は語ったが、日本の道路事情(と社会・家庭事情)が求めるのがこういったクルマであることは確かだと思う。客のニーズの変化に対応してふさわしいクルマを作っていくのがメーカーの務めであることもまた否定できない。満足感の高いクルマを適価で供給してくれるメーカーがトヨタであることも当然そのとおり。しかし…。

かつて80点のクルマ作りといわれたトヨタは、90年代に暴走を始めたように思う。その象徴がプリウスであり、他にもチャレンジングなクルマを次々に登場させて、ここ15年ほどはクルマ好きをとても楽しませてくれた。その勢いでとうとう事実上世界トップの座まで上りつめたわけだが、このところの新車は、よくできているのは確かなのだが、かつてほどのワクワク感を感じさせてくれない。そんな中、このヴァンガードがおすすめかと聞かれれば、「道を踏み外さない生き方」の人にはその通りと答えよう。300万前後で価格相応の満足ができるはず。しかし道を外してしまった、あるいは外してみたい人にはおすすめできない。

道というのはクルマの走る道や自動車道(剣道、柔道と同じ車道)のことばかりでなく、人生そのもののことでもある。貧乏な方向へ道が外れてしまった人だけでなく、裕福な方向へ道を外した人もこのクルマとは無縁だ。CMのように妻にそっと指輪を渡すことがためらいなくできる、いまどきまっとうな道を行けている人にこそ、このクルマはふさわしい。

試乗車スペック
トヨタ ヴァンガード 350S “Gパッケージ” 7人乗り
(3.5リッターV6・5AT・334万9500円)

●初年度登録:2007年8月●形式:DBA-GSA33W-BPAGK(G)●全長4570mm×全幅1855mm×全高1690mm ●ホイールベース:2660mm ●最小回転半径:5.6m ●車重(車検証記載値):1720kg(1010+710)※標準仕様:1700kg ●乗車定員:7名●エンジン型式:2GR-FE ● 3456cc・V型6気筒・DOHC・4バルブ・横置 ● 280ps(206kW)/ 6200rpm、35.1kg-m (344Nm)/ 4700rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/60L ●10・15モード燃費:9.6km/L ●駆動方式:電子制御式フルタイム4WD ●サスペンション形式:前ストラット/後:ダブルウイッシュボーン ●タイヤ:235/55R18( Bridgestone Dueler H/T 687 ) ●試乗車価格:370万6710円( 含むオプション:HDDナビゲーションシステム 34万200円、ETCユニット 1万7010円 )●試乗距離:140 km ●試乗日:2007年9月

トヨタ>ヴァンガードhttp://toyota.jp/vanguard/index.html

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

トヨタ 最新の試乗記10件

最近の試乗記一覧

関連コンテンツ一覧