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メルセデス・ベンツ V230新車試乗記(第36回)

Mercedes-Benz V230

 

1998年08月07日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

商用車ヴィトーをベースにしたメルセデス初のMPV

ダイムラー・ベンツは年間生産台数60万台の自動車メーカーから、100万台メーカーを目指そうと、ここ数年で様々な動きを見せている。先のクライスラーとの合併劇もその代表的なものだが、車種バリエーションを増やすことも急激にすすめられている。メルセデス初のMPV(マルチ・パーパス・ビークル)いわゆるミニバンとなるVクラスは、商用車版ヴィトーがベースで、同じくスペインで生産され、コストを低減して多くのライバルと競合できるものとされた。

価格帯&グレード展開

390万円。日本のメルセデス・ベンツの中では、C200と並んで最も安い価格を実現

日本導入されたV230の価格は何と390万円! 国産の上級ミニバンに迫る低価格ぶりで、正規導入されるメルセデスのラインナップではC200と同じく最も安い。6人乗れるこの大柄なボディで、メルセデスマークが付いてこの価格。パワーウエイトレシオならぬマネーウエイトレシオでは間違いなく最もお買い得なモデルといえよう。オプションとして本革シート(36万円)やスライディングルーフなどが用意されており、フル装備すれば結構なお値段になるが、ノーマルでも特に不満の無い装備を持っているので、日本車キラーになり得る価格だ。なおエアロパーツキットは用意されていない。

このバーゲンプライスで大打撃を食らったのは、それまで500万円とか600万円で販売していた並行輸入業者。今では少し値を下げて売っているようだが、正規ものより豪華仕様といえどもかなり苦しい状況だ。それ以上に可哀想なのがそれらを購入してしまった人々。今回のメルセデスの値付けは、かなりの波紋を巻き起こしている。もしかするとメルセデスの勇み足か?

パッケージング&スタイル

意外にも全幅以外は日本の上級ミニバンよりも小さい

スペース効率、コスト面などを徹底追及した結果、ベースに選ばれたのがスペインで生産される商用車のヴィトー。Vクラスの「V」は、このヴィトーとバンの頭文字ということらしい。230は排気量を示し、駆動方式はFFだ。室内の広さを最大限に確保するために、ほとんど曲面を持たない平面で構成されるスタイリングは何の変哲もない箱のようだが、堂々とした存在感が漂うところはさすがだ。

スリーサイズは、全幅こそ1890mmとビッグだが、全長は4670mm、全高は1850mmと意外にも国産上級ミニバン程度。実際、グランビアやエルグランドよりも小さい。また、3000mmというロングホイールベースにも関わらず、最小回転半径は5.8mで、しかもオーバーハングは小さいので、取り回しやすさは想像以上にいい。

2、3列目シートは取り外し可能、でもシートは恐ろしく重い

シートポジションは低く、リアにはドアの開口部が広い左右スライドドアを備えているので、乗り降りはもちろんのこと、荷物の積載も楽だ。リアハッチは一番下からガバッと開く。また広いグラスエリアのため開放感も上々だ。シートは2+2+2の6人乗り仕様となっており、全席アームレスト付きの独立シート。シートに3点式シートベルトが組み込まれている辺りが、いかにもメルセデスらしい。2列目シートはテーブルや前方への折り畳みが可能で、ガチッとした剛性感は全く損なわれていないことも注目すべきところ。2,3列目シートは取り外しも可能で、全部外した時の荷室容量は4564リットルと、いい意味での商用車ベースということが生かされている。さらに2列目シートを対座式に装着することもでき、対座状態での走行も可能となっている。ただし、シートの重量は、1脚38kgと恐ろしいほど重く、1人での作業はあまり現実的ではない。取扱説明書には「必ず大人2人で作業を行って下さい」と記載してある。

また、アームレストが立派すぎるため、2列目から3列目シートのウォークスルーはほとんど無理だった。スライドもしないのでスライドドアから3列目シートへ入るのもかなりきつい。

あまりにもチープな品質感、390万円だから仕方がない

メルセデスの高級イメージからするとインパネはあまりにもプラスチッキーで安っぽい。まあ、メルセデスのバッジ付きで390万円ならこれも仕方ないかと納得するしかないだろう。ダッシュから生えるATシフトノブはコラム以上に使いやすい。三菱のインパネシフトよりぐっといい。ヒップポイントは高く、ステアリングは寝かし気味、まるでトラックに乗っているようだ。右ハンドル化でペダルレイアウトは中央寄りとなり、ドライビングスタイルはいいとはいえない。一般に四角い空間は空気循環効率に優れているといわれるが、エアコンは容量不足気味、リア用クーラーが欲しいところ。カップホルダーは前席用、後席用に装備されているが、かなり華奢で、すぐに壊れそう。

基本性能&ドライブフィール

予想以上に活気ある走り、ペダルはかなり重い

アインドリング振動は大きく、ステアリングの微振動が目で見て分かるほど。騒音もうるさく、ステアリングも重めで反力の強いもの。慣れには時間がかかりそうだ。乗員を含めれば軽く2tオーバーするヘビーウエイトを、C230と同じ2.3リットル直4エンジン(143PS/21.4kgm)で引っ張り上げるのだから加速面が心配であったが、車重の重さをカバーするためか、各シフトアップポイントは高く、市街地ではさほど力不足に悩まされることはなかった(後に燃料代で悩まされそうではあるが)。実際、パワーウエイトレシオは13.9kgm/PSと、リッターカーや軽自動車のそれと大差ないのである。

アクセルを奥まで踏み込めば、意外にも力強い走りを披露し、早い交通の流れにも十分に乗れる。が、アクセルは普通の力では踏み込めないくらいほどの重さで、ブレーキの踏力も重い。ハーフスロットル以下でのストップ&ゴーは辛く、長時間乗ると信号の待ち時間でさえ苦痛に感じるほどだった。

ガッチリとした硬さ、高速走行は不安定

サスペンションはフロントがストラット、リアがセミトレーリングアーム。このリアには重量物積載時に車高を水平に保つセルフレベリング機構をもつエアサスペンションが採用される。クルマ酔いするようなロールやピッチングは少なく、実用域での安定性は高い。段差をダイレクトに拾うガッチリとした硬さだが乗り心地は悪くない。100km/h以上になると風切り音が増し、ステアリングの収まりが悪くなりボディが揺らぐような感じがして不安が残る。

ここがイイ

1.ミニバン中のミニバンといった感じの硬質なかっこいいルックス。ブラバスのエアロを付けると文句なし。

2.広さに徹した室内空間。角張っていて、内装もむやみに厚ぼったくないので、室内は確かに広い。小柄な人なら立って歩けるほどの室内高も魅力。ほとんどの家族が3~4人だと思われるので、イスは普段、家族分だけ取り付けておけば、広大な空間が楽しめる。

3.メルセデスのブランド力。知らない人が見たら390万円とは思わないはず。道を開けさせるだけの「恐さ」も持ってます。

ここがダメ

1.エンジン。スポーツモードにすると、いつになってもシフトアップしないと感じるほど、引っ張りまくる。やはりこのボディをストレス無く走らせるには最低でも3リットルV6が必要でしょう。

2.操作系の重々しさ。普通の家庭の場合、ミニバンの運転は奥さんが結構するはずだが、コレはかなりきついはず。

3.内装の質感など。デザイン的には一見高級っぽく見えるのだが、ひどくプラスチッキーなのは否めない。また、この手のクルマは対座にするなら運転席が回転しないとダメ。セカンドシートの対座は意味がない。

総合評価

室内空間、コスト面、安全性など、こだわるところには徹底してこだわっており中途半端なところが見えてこない。そうした意味ではまさに道具としてのミニバン。しかし、これが日常的に使いやすいか、ということになるとハナシは違ってくる。メルセデス哲学を理解している人ならこれほど安い買い物はないだろうが、アレも欲しい、コレも欲しいという日本車的アメニティを期待すると裏切られる。ファーストカーとしては非日常的で、セカンドカーとして使うには取り回し面で奥さんが困る。やはりコレはお金持ちのレジャー用サードカーにピッタリ……。でも390万円というのは庶民でも食指が動くというもの。ディーラーでも年内納車分はすでに完売のようで、人気はさすがに高いようだ。実用性や品質性が優れているとは言えないアストロがブームになったぐらいだから、Vクラスブームがやってくる日も近いかも? リセールバリューは相当高いはずで、国産ミニバン並みの値落ちと思われるから、意外に経済的に乗れるだろう。

 

公式サイトhttp://www.mercedes-benz.co.jp/

 
 
 
 
 

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