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マツダ ベリーサ新車試乗記(第331回)

Mazda Verisa

(1.5リッター・4AT・153万3000円)

2004年08月27日

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キャラクター&開発コンセプト

デミオベースの上質なコンパクトカー

ベリーサはデミオをベースに、高い質感の内外装デザインを与えた新型コンパクトカー。デミオの発売から2年近く経った2004年6月28日に発売された。世界中で売るベーシックなコンパクトカーに、国内専用の内外装を与えて上質に仕立てる手法は、ヴィッツ-イストの関係と同じだ。

開発キーワードは「シック」「モダン」「ハイクオリティ」で、従来のコンパクトカーにない丁寧な造り込み(=クラフトマンシップ)が感じられるデザインを目指したという。また、デミオで定評のある優れた操縦性に加えて、高速走行時でも音楽や会話が楽しめる静粛性にもこだわった。

車名「ベリーサ」は、「verita(イタリア語で「真実」)」と「satisfaction(英語で「満足」)」を併せた造語で、「真の充足」を意味するという。メインターゲットは「モノ選びやライフスタイルに『自分らしい上質さ』、『こだわり』を求める30代のカップル」。メーカーは特に女性向けであると謳ってはいない。このあたりもイストに似たコンセプト、似た戦略だ。

販売数でデミオを越えられるか

ところで、2004年1~6月計の販売ランキングでは、イスト8位、ヴィッツ14位。イストはデビュー以来のこの2年間、ヴィッツより常に販売台数で上位だ。また、日産でも、6位のマーチをさしおいて、キューブ(キュービック含む)が2位と絶好調。となると、マツダとしても同じような派生モデルのベリーサに期待したくなる。販売目標は2500台/月だが、デミオ(10位)の実績がここ半年で平均7000台/月だから、もう少し上を狙いたいところ。はたして。

価格帯&グレード展開

FF車が153万3000円

基本的にはモノグレードだが、FF車(153万3000円)に加えて、日産マーチやキューブなどと同じ、後輪を電気モーターで駆動するe-4WD車(172万7250円)が用意される。

パッケージオプションがいくつかあり、各部にメッキパーツが付く「ドレスアップパッケージ」(4万2000円)、ハーフレザーシートやウッド調パネルなどが付く「レザーパッケージ」(9万4500円)などがある。目玉はミュージックHDD(ハード・ディスク・ドライブ)のオーディオシステム(6万8250円)だろう。HIDヘッドライト(7万3500円)やアルミホイール(4万7250円)もオプションだ。

パッケージング&スタイル

クラス破りの仕上げの高さ

全長3975mmx全幅1695mmx全高1530mmは、デミオと比べてわずかに大きいだけ。2490mmのホイールベースも当然同じだ。デミオと同様に、ライバル車よりも大柄で、一昔前のCセグメントカー(80年代のVWゴルフやシビックなど)並みのサイズだ。

ベースは同じだが、外観イメージはまったく違う。「シックで上質な個性」を追求したというデザインだが、確かにエクステリアのフィニッシュやハイライト(光の映り込み)の美しさはクラス離れしていて、まるで最近のフォルクスワーゲンみたいだ。国内専用車だから、マツダ車としての統一感をあまり気にせず、目標通りのテイストに徹することが出来たようだ。あの5角形グリルも免除されたか、と思ってよく見ると、小さなグリル(というかスリット)はちゃんと5角形になっていた。

凝ったディテール。が、何かに似ている…

LEDによってブルーのリングが光る4灯ヘッドライトなど、ディテールもたいへん凝っている。なのに全体として、個性がぼんやりしているのが残念なところ。

デイズスタッフに印象を聞いても「○○に似ている」という意見が多く、例えば、新型MINI(ブラックアウトされた立ち気味のAピラー)」、VWのトゥアレグ(サイドウインドウ・グラフィックスやドア周辺の処理)」、トヨタ・イスト(オーバーフェンダーの形状)という名前が挙がる。ベリーサならでは、というチャームポイントが無いのが、こうした印象を生むようだ。

シックなインテリア

コンセプト通り、インテリアも上質だ。標準車の内装は落ち着いたベージュ(マツダは「オリーブ」と呼んでおり、少しくすんだ感じ)のファブリックを使い、縫い目はダブルステッチで、センス良くまとまっている。この仕上がりの良さは、国産車では一つ上のクラスでも、そうそう無いだろう。さらにオプションのレザーパッケージを選ぶと、ブラックレザーと紺のファブリックのハーフレザーシートになり、センターパネルやステアリングにウッド調アクセントが付く。

フロントシートは2クラスも上のアテンザに使用する大型フレームを採用。デミオのシートも悪くなかったが、さらにゆとりのある座り心地とサポート性を備える。座面高の調整はレバーだが、シート後部だけ上下する点は今ひとつ。

お化粧箱?を標準装備

女性にとって嬉しいのが、助手席のグローブボックスに大型のメイクアップミラー(化粧用の鏡)を備えた点。車外からの視線を気にせずにお化粧直ししたいという声を反映したらしいが、確かに鏡はここにあった方が便利だろう。専用の照明も備える。左右ウォークスルーはできないので、ドライバーが女性の場合は意味がない。そこはちょっと問題。

マツダが「アドバンスト・キーレス・システム」と呼ぶカードキーを、オプションではなく標準装備とした点もポイント。キーを携帯するだけで、ドアのロック/アンロック、エンジンの始動/停止といった操作が可能だ。

もう一つの売りが、オプションの「ミュージックHDD(ハードディスクドライブ)」。20GBと、ちょっとしたノートパソコン並みの内蔵ハードディスクに、およそ3000曲、CDアルバムなら約300枚分を録音できるというもの。ドライブ中にCDを聴きながらでも、エンジンを停めてクルマを離れている間でも、CD一枚分の録音が可能という。音楽好きにはたいへん便利な物だ。

旧ゴルフクラス並みの後席、荷室

上に書いたように、後席の広さはほとんどCセグメントカー並み。例えば、全長が4020mmだったVWゴルフ3(91~97年)と、後席の空間は良く似ている。足元などは逆に広いかもしれない。欠点はゴルフやアクセラなどと比べて、クッションに腰がなく、形状も平板なこと。長距離はちょっと疲れるだろう。

リアシートの折り畳みは、背もたれを倒すだけのシングルフォールディング。標準装備の「フレキシブルボード」は床にしたり(段差がなくなり、床下が小物入れになる)、パーセルシェルフ(目隠しになるボード)に使えたりする。デミオほど容量重視ではないが、イストよりはずっと広い。

基本性能&ドライブフィール

走りも上質

ベリーサのパワートレインはデミオの上級グレードと同じカムチェーン駆動の1.5リッター(113ps、14.3kgm)+4ATのみ。デミオの1.3リッターも実にいいエンジンだが、ゆったりと静かに走らせるため、少し余裕を持たせたのだろう。

実際、その走りは狙い通り。静粛性はお世辞抜きに2.0リッタークラスセダン並みか、それ以上で、乗り心地も同じように良い。クルマが動き出した瞬間、ほとんどの人が走りでも「上質感」を感じるはずだ。普通のトルコンATだが、変速ショックはほとんど感じない。

相変わらずのシフトパターン

基本的なところで文句ないベリーサだが、相変わらずマツダ車のシフトパターン(非シーケンシャル式)は分かりにくかった。「D(ドライブ)」の下に「S(スロープ=坂の意)」と「L(ロー)」があるのだが、「S」が1~3速はいいとして、「L」が1速と2速を使う、というのがまず理解しくい。ローと言うなら、普通は1速だけでしょ? と思う。

さらに、シフトレバー横の「ホールドモード」スイッチが加わると、話がさらにややこしくなる。トヨタ車などのOD(オーバードライブ)オフスイッチは、文字通り4速トップを使わない、つまり3速へのシフトダウンや1~3速使用を意味するが、マツダ車のホールドモードは、シフトレバーが「D」にあれば2~3速、「S」ならば2速固定、「L」なら1速固定となる。どうしてこれが一般的な「ODオフスイッチ」でいけないのか、よく分からない。

説明書を読めば、様々な状況で便利なことは分かるが、その文面を思い出しながら運転するわけにもいかない。マツダ車のユーザーはこのホールドモードをちゃんと使いこなしているのだろうか。

デミオ譲りの気持ちいい操縦性

デミオの操縦性はこのクラスでは輸入車を含めてトップクラスだが、普段は上品なベリーサも「マツダのスポーツDNA」はしっかり受け継ぐ。油圧パワステは特にクイックではないが、フィール自体は滑らかでステアリングを切るのが気持ちいい。185/55R15のスポーティなタイヤのせいもあって、ワインディングをけっこうなスピードで安定して走る。基本的に乗り心地重視なので、リアタイヤをタックインでバンバン流す走りはできないが、ベリーサの性格からすれば申し分ない操縦性だろう。

クラス随一の静粛性

高速巡航の静かさも一つ上のクラスだ。エンジン音、ロードノイズ、風切り音など、2.0リッタークラスのセダン並みと言っていい。二重ドアシールや通常の3.5mmから4.0mmに厚みを増したサイドウインドウガラスなど、遮音には念が入っている。150km/hほど出しても、まったくうるさくなかった。このクラスで最新のDセグメント(アコード、アテンザクラス)並みの静かさが欲しい人にお勧めできる。

ここがイイ

きれいで上質であること。内装は材質がよく組み付けの仕上がりもいいため、小型ハッチバックでも大人っぽい雰囲気で、確かに30代でも乗れる質感を保っている。まじめで良心的な作りに感じられる。

乗り味がマツダのクルマらしからぬ非スポーティなのもいい。マツダはどれも妙にスポーティだったが、ベリーサにはほんわかムードで、コンセプトによくマッチしている。オートマもまるでCVTのように「角の丸い」フィーリング。これも上質感がうまく演出できているところ。日本専用車種ゆえの思い切った性格づけとなっている。

防水に優れ、後でプログラム変更可能が自由(離れたら自動ロックという動作も設定できる)なカードキーは便利で、キーを差し込む必要なく始動できるのはたいへんよろしい。これが標準装備というのは見識だ。パソコンの必要がなくCDベースで録音できる、操作が単純なHDDカーオーディオも、時代を先取りしつつ、ポピュラリティーを維持している。

ここがダメ

カードキーは胸ポケットに携帯電話と一緒に入れていたら、うまく反応しないことがあった。このあたりはさらに確実性の欲しいところ。またHDDカーオーディオは、今後コピーガードCDが増えた場合、ちょっと心配。これらハイテクは日々進化するだけに、標準装備するならユニット化して、いずれ最新のものと差し替えられるような設計すべきだろう。その意味ではオーディオのパネル部分が一般的な2DINベースでないのは残念(インパネのカバーを外せば2DINようなので、対応可能だとは思うが)。2DINでオシャレなデザインは難しいが、試みて欲しかった。

職人的センスの良さ、仕上げの抜群さはあるものの、芸術家的ひらめきとか、華がないのは惜しいところ。特にエクステリアにはさらなるオリジナリティが欲しい。ライバルのイストの方が個性はある(いい悪いは別だが)。

総合評価

ベリーサは80年代初頭に一世を風靡した赤いFFファミリアからインスパイアされているというが、あのファミリアは、後輪がフェンダーの外に出そうなほど張り出しており、いわゆるゴルフⅠあたりと同様のふんばり感がカッコ良さにつながっていた。このデザインはかなり分かった人の仕事だったはず。マツダのデザインセンスって、昔からすごくいいのだ。

その後のバブル期に出たユーノスブランドのセダン、ランティスなどのスペシャリティカー、もちろんロードスターやRX-7など、どれもホントに素晴らしいデザインで、その良さはRX-8などの現在のラインナップにまでつながっている。日本の中国地方では、マツダはおそらくエリート企業で、多くの優秀な人材が集まってくるのだろう。デザイン部にも、東京の、あるいは欧州のデザイナーに負けない、いいセンスのデザイナーが集まっているようだ。特にクルマのような特化した商品では、毎日のオシャレな生活から来るデザイン力より、徹底的に専門化した職人的なデザインワザが生きてくるはず。それが見事に結実していると思う。

インテリアのデザインもいい。マツダはかつてペルソナというインテリアデザイン特化型クルマを作ったこともあるほど伝統的に凝る傾向にあり(ペルソナは残念ながら売れなかったが)、昔の赤いファミリアもラウンドした後席サイドパネルなどは、当時グッと来たものだ。広島カープという独立したセ・リーグ球団があるほどの、独立独歩の広島気質がこれらの個性的なクルマを生み出しているのだろう。

と、総合的にデザインを褒めつつ、FFファミリアのようなリアタイヤのふんばり感があるかというと、デミオと同じシャシーで車幅が広がった分、タイヤが奥まっていてイマイチ。極端に奥まってしまったイストほどではないが、シャシー共通というジレンマがここに出ている。専用設計でない分、デザイン担当にとっては悔しかった部分だろうし、ユーザー側としても手放しでカッコいいと言えない部分だ。強い個性の不足やこうした部分でのイマイチ感が、よくできたこのクルマのマイナスポイントになっているのはちょっと残念なところだ。

試乗車スペック
マツダ ベリーサ
(1.5リッター・4AT・153万3000円)

●形式:DBA-DC5W●全長3975mm×全幅1695mm×全高1530mm●ホイールベース:2490mm●車重(車検証記載値):1100kg(F:680+R:420)●乗車定員:5名●エンジン型式:ZY-VE●1498cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●113ps(83kW)/6000rpm、14.3kgm (140Nm)/4000rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/45L●10・15モード燃費:16.8km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:185/55R15(TOYO TRANPATH R27)●価格:153万3000円(試乗車:160万1250円 ※オプション:ミュージックHDD 6万8250円)●試乗距離:約150km ●車両協力:東海マツダ販売株式会社

公式サイトhttp://www.verisa.mazda.co.jp/

 
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