キャラクター&開発コンセプト
イタリアンなマークII ? 官能を刺激するエキゾチックセダン
ヴェロッサはマークII と同じ車格を持つミディアムクラスの4ドアセダン。ビスタ店扱いとなるクレスタの後継を担うわけだが、そのキャラクターはクレスタとは180度異なる。「Firm(引き締まった)」をキーワードに、極めて個性豊かなスタイルを創出。走りもスタイル同様、よりスポーティーなものとし、こだわりを持つ人の感性を満たす新しい高級セダンを追求した。マークII がコンサバな路線を継承したのに対して、ヴェロッサは全く違ったアプローチからスポーツセダンを目指したというわけだ。
搭載されるエンジンは2リッター、2.5リッターとそのターボ仕様の3種類。ミッションは2リッターと2.5リッターターボが4速AT、2.5リッターが5速ATとなり、5速MTは2.5リッターターボのみに用意される。駆動方式はFRの他、2リッターモデルには4WDを併設。乗車定員は5名だ。
ところでマークII 3兄弟として活躍してきたチェイサーはどうなるのか? 実は先頃、スポーツセダンとしての役割をアルテッツァとアリストに託して消滅となった。トヨタ店にはラグジュアリー路線のブレビス、トヨペット店にはコンサバ路線のマークII 、ビスタ店には個性派のヴェロッサと、それぞれのキャラクターが明確に異なるモデルを各販売チャンネルに分配。どうやらトヨタとしては、ただでさえ60%近いこのクラスのセダンのシェアを完全に牛耳るという目論見のようだ。
価格帯&グレード展開
グレードは全6種類とマークII に比べてちょっとだけシンプルな構成。2リッターが「20(240万円)」とその4WDモデル「20 Four(257万円)」「20 Four-Gパッケージ(275万円)」。2.5リッターが「25(279万円)」「V25(294万円)」。2.5リッターターボが「VR25(MT334万円/AT337万円)」となる。
マークII と比較して数万円安いが、VR25のみ1万円高い。恐らくアルミホイールのメッキ処理分だろう。
パッケージング&スタイル
マークII をベースとした三河産アルファもどき?
ボディサイズは全長4705mm×全幅1760mm×全高1450mm。ホイールベースは2780mm。同じプラットフォームを共用するマークII と比べて、全長が-30mm、全高が-10mmとなっている。 工業デザインとして優秀かという評価は別とし、ギョッとさせられる大胆なデザインであることは確かだ。フロントはアルファ156のパクリ(?)みたいなグリル両サイドのスリットが印象的。リアもシンプルながら十分個性的だ。中でも最大の特徴といえるのが「シャドーストリームライン」と名付けられたキャラクターライン。これは前後のタイヤを強調する彫刻的造形をボディと融合させたもので、言ってしまえばブリスターフェンダーみたいなもの。
マークII がゲルマン系とするなら、こちらはラテン系のノリ。エンブレムを変えてしまえばイタ車といっても通じそうなエキゾチックなムードを醸し出している。セルシオでベンツをマネしたと思ったら、今度はアルファのマネか? などという悪口も聞こえてきそうだが、ヴェロッサのデザインをひとつひとつを見るとかなり大胆だが、全体を通してみるとアルファほど徹底してはいないようだ。例えばキャラクターラインにしても、見方によってはとってつけたような感じ。どうせならドアハンドルも隠して欲しかったところ。
「エモーショナル(感情に訴える)」をコンセプトにしただけあって、見る人の美意識によって「メチャ、カッコイイ」か「絶対イヤ」と意見は真っ二つに分かれるだろう。ちなみにデザインを担当したのは愛知県は三河(豊田市)のトヨタ本社。三河というのは中部圏では、関東圏での東京に対する埼玉のようなイメージのエリアだ。
分かりやすい高級感、分かりやすいスポーティー感、分かりやすい個性
内装色は木目調パネルも含めて黒一色で統一されており、オプションとして淡いチャコールカラーのファブリックシートと本革が用意される。本革は黒色のみで、シート中央部の表皮がヴィトン・エピ風。
インパネはマークII のものをモチーフとしながらエアコンダクトを円形としたのが特徴で、縁にはメッキリングが施されている。「単に変わったことをしたかった」という感じで、バランス的にはあまり良くない。メーターはマークII が4眼式だったのに対して、ヴェロッサはより大径の3眼式を採用。その他、アルミペダル、金属調スカッフプレート、フロア式パーキングブレーキなどを全車に標準装備し、スポーティーさを強調。さらにイルミネーションは鮮烈な赤で統一。夜の表情は、目が疲れるほど刺激的だ(そのため照度調整機構が付く)。ナビディスプレイ位置だけはさすがトヨタ、まったく不満のないものだ。
デザイン優先を強くアピールしたため、マークII と比べるとAピラーやサイドウインドウの傾斜がきつく、全高が10mm低いなど、その開放感は少しタイトになった印象。黒尽くめの内装色だと、さらにそれが助長される。とはいえ、旧世代のクレスタと比べれば、ホイールベースの50mm延長、背高パッケージ採用の効果は大きい。
前席はマークII 同様、比較的に高い位置となっており、車幅の見切りや乗降性は良い。トランク容量もマークII より32リッター小さいものの、それでも443リッターというラージセダンの基準に準拠するものだ。気になったのは後席の頭上空間の狭さ。試乗車がサンルーフ付きだったため、身長170cmで拳1個分となっている。
なお、ドリンクホルダーは前席用、後席用とそれぞれ2つ付いていて500ccペットボトル対応。またトランクにはユーティリティボックス、後席はアームレストスルー機構が付く。デザイン重視とはいえ、細かな気配りを忘れていないのがトヨタらしいところ。
基本性能&ドライブフィール
パワートレーンは基本的にマークII 同等、でも足回りは締め上げられた専用チューン
エンジンのラインナップはマークII と同じで、2リッター直6「D-4」、2.5リッター直6、2.5リッター直6ターボの3種類。メインは2.5リッター直6「D-4」で、直噴の採用によって最高出力200馬力/6000rpm、最大トルク25.5kg/3800rpmの性能と、10・15モード燃費12.4km/リッターの好燃費、排ガスレベル★1つのクリーン性能をバランスさせている。ミッションは5速ATとなり、ナビ搭載車にはITS装備のひとつ、道路状況を判断して3~5速間でシフト制御する「NAVI・AI-SHIFT」が設定される。
ハイパフォーマンスの2.5リッター直6ターボは280馬力/38.5kgmを発生。ミッションは4速ATと5速MTを設定する。2リッター直6は160馬力/20.4kgmを発生、ミッションは4速ATのみだ。なお、シフトステアマチックの設定はない。
足回りはマークII 同様、4輪ダブルウィッシュボーン。タイヤはグレードに応じて195/65R15、205/55R16、215/45R17の3つサイズが用意され、2.5リッターモデルはアルミホイールにクロームメッキ処理が施され、後輪にはさらに太い225/45R17が装着される。
「硬い≠乗り心地が悪い」ということがよく分かる、しなやかな足回り
試乗したのは2.5リッターの「V25」。「Firm」をキーワードとしているだけあって、走り味はベースとなるマークII のスポーツグレード「iR」よりも締め上げられている。締め上げているといっても、単にサスペンションを硬くしたというものではない。段差によるショックを包み込むように吸収しており、215/25VR17というフラットタイヤを履いているのにも関わらず上質な乗り心地を提供している。むしろ以前に乗ったTEMS付きのマークII よりも、今回のヴェロッサの方がゴツゴツとした感じが消えている。硬いというより硬質感のある、という捉え方をしたほうがいい。
パワステもけして重すぎず、スッキリ適度な手応えを感じさせてくれるもの。ロック・トゥ・ロック3.2回転と標準的なセッティングとなっているのにも関わらず、中立付近の曖昧さがほとんどないので、ステアリングに対するクルマの反応はかなり機敏。操舵に対しての密度の高さが感じられるハンドリングだ。高速コーナーでの挙動は、限界まで粘って一気に崩れるというものではなく、ジワジワとタイヤが滑っていくというもの。ロールも基本的には少なく、クルマの向きの変わり方と一致している。だからコントロールしやすい。またVSCの介入も遅いので、FRならではの自然な動きが楽しめる。
足回りで唯一不満だったのがロードノイズだ。タイヤの銘柄によるものなのかもしれないが、エンジンの静粛性が高いだけに、タイヤからの音がかなり耳につく。
車重は1490kgと、同グレードのマークII と同じ。搭載エンジンのスペックも同じ、空力抵抗係数Cd値0.29も同じ。タイヤサイズの差はあるものの、日常での動力性能はほぼマークII と同じと考えていい。強力な瞬発力はないものの、十分速いと言えるし、何よりアクセルの踏み量にリンクしたリニアな加速が気持ちいい。ATのギア比が適切なので2速と3速を使い分けながらワインディングを気持ちよく走らせることができる。シフトマチックの設定がないことが惜しまれるが、ゲート式シフトは、かなりマニュアル的に使えるので、人によっては不満ではないかもしれない。エンジンサウンドが全然官能的でないことも実に惜しまれる。
ただ高速道路に入ってみると、超高速域では直進性がよくない。マークII では感じられなかったこの不安定感は足のせいとしか思えない。これはちょっと意外だった。
ここがイイ
トヨタらしいハードウェアの出来の良さは。誉められるところ。ベースのマークII が素晴らしいだけに当然ではあるが。それ意外に、と考えるとあまり思いつかない。スポーティーに仕上げてあるので、マークII より乗っていて楽しいのは確か。あとはスタイリングがいいと言えればいいのだが・・・
ここがダメ
どう考えてもこのクルマはマークII のパイクカー。三河で考えたイタリアンデザインは内外装共にかなりムリがある。とてもカッコイイとか、意欲的なカタチとは言いづらいのだ。同じパイクでも、WiLLVSあたりはそれなりに自動車デザインの固定概念を壊そうとがんばっているのだが、これはどうにも。もう少し背を低くし、平べったい印象を強めればグッとかっこよくなると思うのだが、この背の高さではバランスがとれていないのは明白。キャラクターラインで腰高感を薄めようとしているが手遅れという感じだ。アルファっぽいカタチで、トヨタの安心感が買えますという、あまりにお手軽な印象を受ける。
総合評価
フロントボンネットの複雑なラインをプレスで出す技術のスゴさ、しかもアルファと違ってチリもきちんとあっているのは、やはりトヨタクォリティのなせるワザだ。フロントまわりだけをアップで見るとそれなりにカッコイイし、リア斜め7:3のスタイルも悪くない。ところが全体にはボテッとして、シャープさが感じられないのはなぜだろう。メッキのホイールも合っているとは言いづらい。
いずれにせよ、最近のトヨタは、トヨタ嫌いを振り向かせるためのクルマ作りに精出している。ましてやシェア60%にもなるこのセダン市場でさらにシェアを伸ばすには、トヨタらしからぬクルマを作るしかなく、かつてのトヨタを象徴するようなクレスタでは売れないことは明白。ゆえにこんな一見トヨタらしからぬクルマも出てきたわけだが、クルマ作りに意欲的であることを評価してしまう我々クルマ好きとしては、妙に商売っ気だけがみえてしまうヴェロッサは、どうにも素直になれないクルマだった。
とはいえハード的にはほぼできあがってしまったセダンが生き延びていくには、もはやこの方法しかないだろう。ならばもうちょっと上手くやってよ、と思わずに入られない。
公式サイトhttp://toyota.jp
