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ホンダ ヴェゼル ハイブリッド新車試乗記(第723回)

Honda Vezel Hybrid

(1.5L 直4+モーター・7速DCT・FF・235万円)


21世紀の都市型SUVは
プレリュードの再来なのか?
いや、HR-Vのリベンジだった!

2014年03月28日

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キャラクター&開発コンセプト

スシャリペティ風のクロスオーバーSUV


東京モーターショー2013に出展された時のホンダ ヴェゼル(参考出品車)

2013年11月に開幕した東京モーターショーでお披露目され、12月20日に発売された新型車ヴェゼル(Vezel)は、3代目フィットがベースの小型クロスオーバーSUV。

「センタータンクレイアウト」を採用するプラットフォームはフィット譲りだが、内外装デザインは全く異なり、ボディサイズは二回りほど大きい。ホンダによれば、1980年代に一世を風靡した“スペシャリティモデル”を意識しつつ、SUV、クーペ、ミニバンの要素を融合した全く新しいジャンルのクルマとのこと。車名ヴェゼルは、カットした宝石の小さな面「Bezel」と「Vehicle」を合わせた造語で、宝石の輝きのように「多面的な魅力と価値を持つクルマ」を意味するという。

 

ハイブリッド車には、現行フィットハイブリッドの1.5リッターアトキンソンサイクルエンジン(110ps、13.7kgm)よりもパワーを重視した1.5リッター直噴エンジン(132ps、15.9kgm)に7速DCTを組み合わせた「スポーツ ハイブリッド i-DCD」を採用。モーターと合わせたシステム出力は、フィットハイブリッドの137psから152psに向上している。また、ホンダのハイブリッド車では初の4WDを設定した。JC08モード燃費は、プラグインハイブリッドなどを除くSUVで国内最高の24.2~27.0km/L(4WDは21.6~23.2km/L)を達成している。

また、純エンジン車には、フィットの上級グレードと同じ1.5リッター直4・直噴エンジン(131ps、15.8kgm)とCVT(無段変速機)を採用。こちらにもFFと4WDがあり、JC08モード燃費はFFで19.2~20.6km/L、4WDで19.0km/Lとなっている。

販売目標は月間4000台


2014年12月に開催された名古屋モーターショーに出展されたヴェゼル ハイブリッド

国内向けは、フィットと同じ埼玉製作所の寄居工場で生産。販売目標は月間4000台。累計受注台数は2014年1月31日時点で、目標の8倍以上になる3万3000台を超えた。

ただ、2月10日にはフィットとヴェゼルの両ハイブリッド車に、7速DCTの1速ギアに関するリコール届出があった。販売実績(自販連発表)は、2013年12月:2207台(25位)、2014年1月:6235台(9位)、2月:4257台(22位)となっている。

なお、ヴェゼルはフィット同様、世界中で販売されるグローバルカー。国内からの輸出はなく、海外分は北米、欧州、アジアで生産が行われる。

■過去のニュース
モーターデイズ>ホンダ、新型ヴェゼルを発表(2013年12月)

■過去の新車試乗記
ホンダ フィット ハイブリッド (2013年11月)

■外部リンク
ホンダ公式HP>フィット、VEZELのリコール (2014年2月10日届出)

 

価格帯&グレード展開

純エンジン車が187万円~、ハイブリッドが219万円~


ボディカラーは全8色。写真はハイブリッド専用色のミスティグリーン・パール

1.5リッター直4の純エンジン車(CVT)と1.5リッター直4+モーターのハイブリッド車(7速DCT)があり、それぞれにFFと4WDを設定。価格はガソリン車が187万円~、ハイブリッド車が219万円~。純エンジン車とハイブリッド車は装備が異なるので単純には言えないが、「ハイブリッド代」はだいたい30万円くらいだ。

FFの21万円高(装備差を含む)になる4WD車には、現行CR-V譲りの新開発「リアルタイムAWD」を採用。ホンダ独自の電子制御多板クラッチ式4WDで、完全メカ式のビスカス式や従来のデュアルポンプ式4WDに比べて、制御自由度が高く、走破性が高まっている。

「あんしんパッケージ」は上位グレードに標準装備


エントリーグレードを除いて、最近のホンダ新型車に多い片側2灯LEDヘッドライト(ロービーム)を標準装備

低速域で自動ブレーキを作動させるシティブレーキアクティブシステムや、前席サイド&カーテンエアバッグをセットにした「あんしんパッケージ」は、エントリーグレード(ハイブリッド標準車やガソリン車のG)を除いて標準装備。

プローブデータ機能(インターナビ装着車から収集した交通情報や蓄積データを活用して案内等を行う機能)で定評があるHonda インターナビは全車オプションだが、通信費が3年間無料になるサービス「リンクアップフリー」が付いている。

 

Honda インターナビは、メーカーオプション。フリックなどスマホライクな操作が可能

【ガソリンエンジン車】
・1.5L 直4・直噴DOHC(132ps、15.9kgm)・CVT

■G、X、S(FF)   187万~212万円
■G(4WD)       208万円

【ハイブリッド車】
・1.5L 直4・直噴DOHC(131ps、15.8kgm)・7速DCT

■標準グレード、X、Z(FF)        219万~250万円 ※今回の試乗車
■標準グレード、X、X Lパッケージ(4WD) 240万~268万円

 

パッケージング&スタイル

SUVとクーペのクロスオーバー


試乗車のボディカラーはホワイトオーキッド・パール

「Dynamic Cross Solid」なるデザインコンセプトは、いまいち意味不明だが、要はSUVのような力強いロアボディとクーペ風のアッパーボディを組み合わせたもの。ホンダ自身はヴェゼルを、1980年代に一世を風靡した“スペシャリティ”の再現としており、全高はSUVにしては低めで、ルーフはBMWのX6みたいに後ろでスラント。フロントフェンダーの造形もかなりクーペっぽい。

もっとも、ホンダには北米で以前販売していた大型クロスオーバーSUV「アキュラ ZDX」(2009年~。2013年に販売終了)というモデルがあり、ヴェゼルのスタイリングはそれの小型バージョン風にも見える。

大きく見えて、意外にコンパクト

 

リアドアのアウターハンドルは、流行りのCピラー内蔵式で、2ドアクーペ風に見せる

全長4.3メートル、全幅1770mmのボディサイズは、フィットより二回りは大きく、ホイールベースは80mmも長い。全高を除けばゴルフ7と同じくらい。SUVにしてはロー&ワイドゆえ、遠くから見ると実寸以上に大きく立派に見える。国内でのライバル車は、日産ジューク、デュアリスあたりだが、スバル XV ハイブリッド、ゴルフ7、MINI クロスオーバー、マツダ CX-5あたりとも競合するかも。

 

アキュラ ZDX (2009年)
(photo:Honda)

アキュラ ZDX (2009年)
(photo:Honda)

最低地上高は185mm(FF)/170mm(4WD)。フィット(135/150mm)より20~50mm高い
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
ホンダ フィット ハイブリッド(2013~) 3955 1695 1525 2530 4.9~5.2
トヨタ アクア (2011~) 3995 1695 1445 2550 4.8~5.7
日産 ジューク (2010~) 4135 1765 1565 2530 5.3
VW ゴルフ 7(2013~) 4265 1800 1460 2635 5.2
ホンダ ヴェゼル (2013~) 4295 1770 1605 2610 5.3
スバル XV ハイブリッド(2013~) 4450 1780 1550 2640 5.3
トヨタ プリウス (2009~) 4460 1745 1490 2700 5.3
マツダ CX-5(2012-) 4540 1840 1705 2700 5.5
 

インテリア&ラゲッジスペース

前席はスペシャリティ風。後席と荷室はフィット並みに実用的


タッチパネル式のオートエアコンは全車標準。助手席側ダッシュ前には、横長の吹き出し口、その名も「ワイドフローエアコン」を配置

アイポイントは一般的なセダンより約100mm、フィットより約60mm高いそうだが、内装もやはりスペシャリティ風。センタークラスターは運転席を向いて斜めになり、運転席と助手席の間に架かる「ハイデッキセンターコンソール」はS2000風でもある。

また、ドアトリムをソフトなクロス張りにしたり、センターコンソールの表皮をソフトパッドにするなど、触感にも配慮。また、国内向けホンダ車ではエリシオンの改良型以来という電動パーキングブレーキ(オートブレーキホールド機能付)も採用されている。フィットベースであることを窺わせるものは、ほぼ皆無。

一方で後席は、外観から想像されるより広々。ホイールベースは現行フィットより80mmも長く、ゴルフ並みにあるので、フットルームもヘッドルームも十分。そして荷室も広い。駆動用バッテリーの存在を感じさせないパッケージングは見事。

 

サイドウインドウは小さめだが、後席の広さは不満なし。つま先は前席下に入り、若干のリクライニング調整も可能。チップアップ(座面の跳ね上げ)もできる

前席下には燃料タンクがあるが、ドライビングポジションは自然。チルト/テレスコ、ラチェット式シートリフターは全車標準

ハイデッキセンターコンソールの中は、収納スペース(LED照明やHDMI端子付き)。後方には大型のドリンクホルダーが備わる
 

荷室容量は404リッターで、Cセグワゴン並み。後席使用時でもゴルフバッグを3個積めるとのこと

後席をダイブダウンすればフラットに。荷室高は約83センチで、前輪を外したスポーツ自転車を立てた状態で2台積める

ハイブリッドの荷室フロア後端には、ちょっとした床下収納スペース。そこから前には駆動用バッテリーが収まる
 

基本性能&ドライブフィール

ハイブリッドにもパワー重視の直噴エンジンを搭載


エンジンは全車1.5リッター直噴。ハイブリッド車には7速DCTを組み合わせた「スポーツハイブリッド i-DCD(Intelligent Dual Clutch Drive)が搭載される

試乗したのはハイブリッドの中間グレード「X」(235万円)に、オプションの17インチアルミホイール&タイヤ、インターナビ等を装着した仕様。

ホンダのハイブリッドと言えば、今でもエンジンとモーターが一体になったIMAを思い浮かべてしまうが、ヴェゼルや新型フィットのハイブリッドシステムは、「スポーツハイブリッド i-DCD」と呼ばれるもの。自然吸気1.5リッターDOHCエンジン(LEB型)とモーターは切り離すことが可能で、これによりモーターだけでの発進・走行が可能になっている。変速機はホンダ独自開発の7速DCT(クラッチ部分は独シェフラー社製)。

 

このグラフは、ヴェゼルのハイブリッドシステムと2リッター純エンジン(自然吸気)を比較したもので、4000回転以下のトルクではハイブリッドが圧倒的に上回ることを示す

ただし、フィットハイブリッドのエンジンが熱効率を重視したアトキンソンサイクルなのに対して、ヴェゼルのエンジンは一般的なオットーサイクルの直噴。これにより、エンジンの最高出力は110psから132psに、最大トルクは13.7kgmから15.9kgmにアップ。モーター(29.5ps、16.3kgm)自体は両車で共通だが、システム出力は、フィットハイブリッドの137psに対して、「2.0Lエンジンに匹敵する」152psにアップしている。要するにヴェゼルは、燃費よりパワー重視だ。

メカメカした走りの割に、燃費もいい


プリウスやフィットハイブリッドと同じ電子制御セレクターを採用。手前に「スポーツ」モードのスイッチを配置

車重自体はFFの場合、フィットハイブリッドの1080~1160kgに対して、ヴェゼルは1270~1300kg。つまり、150kgくらい重いわけだが、パワー感はヴェゼルの方が明らかに上。特に、燃費優先の「ECON(イーコン)」モードを切ってノーマルモードで走ると、霧が晴れたようにパワートレインがリニアに反応し、キビキビ走ることができる。ヴェゼル、意外に速い。

さらにスポーツモードを選択すると、メーター照明色が赤になり、アクセルに対するツキも向上。高回転まで引っ張るようになる。ただ、こうなるとエンジン音がけっこうノイジーで、フリクション感も高まる。ノーマルモードで十分だ。

一方で、燃費の良さにも驚かされる。エンジンが暖まれば、EV走行を多用し、車載モニターの平均燃費はどんどん向上。と言っても、プリウスのように20km/L台も楽勝というわけではないが、DCTによるメカメカした走りで、街中でも14km/L台以上をキープできる。

ワインディングもスポーティに


車両協力:ホンダカーズ東海

足回りはいかにもホンダ車らしく、カチッと硬め。車重は試乗車で1300kgだが、しっとりとした重厚感よりも、軽快感の方が強い。目線が高めのシビックという感じか。コーナーではロール感があまりないまま、軽快に曲がってゆく。試乗車のタイヤはパッケージオプションの215/55R17(ダンロップ SPスポーツ MAXX 050)で、いわゆるエコタイヤのような情けなさはなかった。

 

高速道路もそつなく走り、静粛性も普通にいい。風切り音やロードノイズも特に気にならなかった。100km/h巡航時のエンジン回転数は2000回転弱といった感じ。液晶ディスプレーに表示できる回転計は目盛りが荒くて分かりにくい。

なお、30km/h以下の低速で作動する「シティブレーキアクティブシステム」は上位グレードに標準装備されるが、ミリ波レーダーを使ったCMBSやACC(アダプティブ クルーズ コントロール)は未設定。このあたりは、おいおい用意するということのようだ。

試乗燃費は13.6~18.7km/L。JC08モード燃費はFFで24.2~27.0km/L

今回はトータルで約200kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)で13.6km/L。また、一般道を大人しく走った区間(約30km×2回)で18.5km/L、18.7km/Lだった。JC08モード燃費は、FFで24.2~27.0km/L、4WDで21.6~23.2km/L(いずれもグレードやオプションの有無で多少異なる)。

総じて実用燃費は、プリウス、アクア、フィットハイブリッドには及ばないが、無頓着に走っても14km/L前後はいくという印象。タンク容量は40リッターなので、航続可能距離は500~700kmくらいか。

 

ここがイイ

パッケージング、扱いやすいさ、パワー感、内装デザイン

フィット譲りのパッケージングは見事と言うしかない。駆動用電池を積んでいることなど忘れてしまうほど荷室は広いし、シートアレンジの自由度も高い。センタータンクレイアウトがハイブリッド車でここまで威力を発揮するとは、当のホンダも思っていなかったのでは。

扱いやすいボディサイズ。全幅は1770mmもあるが、狭い道でも気にならないし、小回り(最小回転半径は5.3メートル)もまずまず効く。

 

ノーマルモードやスポーツモード(つまりECON以外のモード)での、スポーティな走り。欧州車で主流の直噴ターボモデルあたりと比べると、もう少し突き抜けるようなパワー感は欲しいところだが、国産ハイブリッド車としては、かなり走りが楽しい方だと思う。これにはもちろん、ダイレクト感のある7速DCTが効いている。

ドアトリムに布を張るなど、質感や触感にこだわった内装。ウォークスルーは出来ないが、そういう実用性が欲しければ、次期フリードだってありますよ、ということだろう。大胆にスペシャリティに振ったのは良かったと思う。

ここがダメ

ジャマなAピラー、メーターの表示など細々

高めのアイポイントで見晴らしはいいが、交差点での右・左折などではAピラーがジャマで、横から近づいてくる歩行者や自転車が見にくい。超高張力鋼板(1500Mpa級のホットスタンプ材)を使って出来る限りAピラーを細くしたようだが、やはりまだ気になる。

メーターの右側にある液晶ディスプレイは切り替え式で、平均燃費、燃費履歴、ハイブリッドシステムのエネルギーフロー、アクセル開度グラフ、エンジン回転計などを表示できるが、逆に言えば平均燃費とエンジン回転計を同時に見ることは出来ない。特に常時見たいのは平均燃費と回転計なので、やはりエンジン回転計は、専用メーターを装備したいところ。中央のアナログメーターを回転計にし、速度をデジタルにしても良かったと思う。

 

また、パドルシフト操作時には、メーター内に使用中のギア段数が表示されるが、これはVWなどのように常時表示にしてもらいたい。せっかくの7速DCTなんだし。

インターナビはプログレッシブコマンダーを廃止し、スマホ風のタッチ操作になったが、スムーズにフリックできないなど、操作感はいまいち。多くのユーザーは、最新のスマホやタブレットの操作性を知っているので、今のレベルでは不満を感じると思う。これは他メーカーの最新純正カーナビにも言えることだが。

 

フィットハイブリッドやオデッセイに続いてしつこく書くと、LEDヘッドライトはロービームのみで、ハイビームは黄色っぽい色調のハロゲンになってしまう。LEDロービームがとても明るいせいもあり、ハイビームに切り替える度に「こっちもLEDだったら」と思ってしまった。バイキセノンに加えて、ハイ/ローLEDも他メーカーでは増えているので、早めに手当てして欲しい部分。

総合評価

“持ち上げ系”はカッコいい

ヴェゼルは世界戦略車だ。日本では昔あったスペシャリティカーの復活とアピールされているが、世界的に見ればスタイリッシュでコンパクトな街乗りSUVというのは、最も売れ筋のトレンド車。そうした目で見ると、なるほど、いかにもクラスレスに見える内装の質感など、世界で勝つためのものなのだな、と思える。もちろん、スタイリッシュなボディも、世界を見て作られているのだろう。全高にしても、一般的な日本のタワーパーキングには入らないなど、日本の都市部に住む人にはちょっと選びにくい部分がある。

それでも、その国際サイズゆえに、スタイリングは見事にカッコよく決まっている。コンパクトながら、ワイド&ロー(ローなわけはないが、そういう印象)なスタイルになった。それをそのまま最低地上高を上げて持ち上げる手法は、今やカッコよく見せるための定番でもある。VWのクロス系、アウディのオールロード系など、持ち上げ系のクルマはどれもカッコいい。人気のスバル XVも、考えてみればインプレッサの持ち上げ系だ。ヴェゼルも第一印象で、これは売れる、と思ったが、実際、相当なヒット車になりつつある。

HR-Vのこと


ホンダ HR-V (1998年)
(photo:Honda)

また、ヴェゼルにはハイブリッド車もあるため、日本では、より売れ筋車になりえる。ライバル視されるスバルXV ハイブリッドより確実に燃費はいいし、日本ではクリーンディーゼル車よりハイブリッドの方がポピュラー。近年、どうにも違和感があったホンダ車のインパネデザインは、ここに来てすっかりシンプルなものに戻ってきており、ヴェゼルのインテリアも素直にイイと思える。居住空間やユーティリティにも不満がない。二重底になっていてサイズ違いの飲み物が置けるセンターコンソールのカップホルダーやら、使い勝手には疑問があるが、目新しいタッチパネルの操作系など、人目を引く装備もある。人の心をくすぐる演出は多彩だ。

たとえ斬新で意欲的なクルマを発表しても、時代にマッチしないと売れない。ホンダも時々そういう手痛い失敗をしてきた。例えばHR-V。「楽しさ創造車Jムーバー」第二弾(ちなみに第一弾はキャパ)という提案型のクルマとして、1998年に投入されたHR-Vのコンセプトは、今思うとほとんどヴェゼルと同じようなものだったと思う。「斬新なスタイルと優れたユーティリティ、爽快な走りをコンパクトなボディの中に実現し、世界最高水準の安全・環境性能を備えた新しいジャンルのクルマ」だった。街乗りで生きる、スタイリッシュな3ドア「持ち上げ系」の乗り物。HR-Vを自動車ジャーナリストは絶賛したのだが、日本ではあまり売れなかった(苦笑)。途中から5ドアも追加したのだが、2006年には販売を終了している。

その点、今回のヴェゼルはアルファロメオのような隠れ5ドア車でもあり、ミニバンブームが去って次のブームを求めている日本では、こういう持ち上げ系が流行りとなる可能性は高い。ポルシェ マカンの受注が好調なように、世界的にもこうしたコンパクトな持ち上げ系シティカーのニーズが高まっている。世界市場と日本市場がいよいよクロスし始めており、日本向けとか世界向けといった区別は、徐々に意味を持たなくなりつつある。このクルマはそういったことを象徴するのではないか。そしてベースはフィットゆえ、開発や生産の面でもホンダにとってはやりやすい部分がある。

さらにジャンルを超えたクルマに

とはいえ、一つ不満を言えば、あまりにまとまりすぎているという印象があることだ。アクが強くなく、どこから見ても優等生に見える。ジュークやXV、そして過去のHR-Vなどと、少し違うと思えるのがそのあたりだ。そして日本でヴェゼルをスペシャリティカーと言うのであれば、個性の部分はもう少し必要ではないか。かつてのスペシャリティカーは、がんばれば何とか手が届きそうな、皆の憧れの存在だった。2代目プレリュードなどは当時、いかにも遊び人的な、圧倒的な存在感を放っていたが、ヴェゼルは最近のホンダらしい落ち着いたクルマに見える。まあプレリュードのそれは、1980年代という時代の影響も大きかったのだろうが。

「ジャンルを超えて行け」というヴェゼル。内外装デザインの点では確かにそう。しかし今のパワーユニットのヴェゼルは、割に常識的。ホンダにはアコードハイブリッドという画期的なハイブリッドシステム車があるが、もしそれと同じようなパワーユニットがヴェゼルに載ったら、それこそがジャンルを超えたクルマになったように思う。

 

試乗車スペック
ホンダ ヴェゼル ハイブリッド X
(1.5L 直4+モーター・7速DCT・FF・235万円)

●初年度登録:2013年12月 ●形式:DAA-RU3 ●全長4295mm×全幅1770mm×全高1605mm ●ホイールベース:2610mm ●最小回転半径:5.3m ●車重(車検証記載値):1300kg(790+510) ※メーカーオプション追加により20kg増加 ●乗車定員:5名

●エンジン型式:LEB ●排気量・エンジン種類:1496cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・横置 ●ボア×ストローク:73.0×89.4mm ●圧縮比:11.5 ●最高出力:97kW(132ps)/6600rpm ●最大トルク:156Nm (15.9kgm)/4600rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/40L

●モーター形式:H1 ●モーター種類:交流同期電動機(永久磁石式同期型モーター) ●定格電圧:173V ●最高出力:22kW(29.5ps)/1313-2000rpm ●最大トルク:160Nm(16.3kgm)/0-1313rpm

●バッテリー:リチウムイオン電池

●システム最大出力:112kW(152ps)/-rpm ●システム最大トルク:-Nm(-kgm)/-rpm ●JC08モード燃費:24.2km/L ※アルミパッケージ装着車。非装着車(16インチタイヤ仕様)は26.0km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイルスプリング/後 車軸式+コイルスプリング ●タイヤ:215/55R17(Dunlop SP Sport Maxx 050)※メーカーオプション

●試乗車価格(概算):269万1250円 ※オプション:アルミパッケージ(ルーフレール、17インチアルミホイール&タイヤ) -円、Honda インターナビ+リンクアップフリー -円、オプション塗装 3万6750円 ●ボディカラー:ホワイトオーキッド・パール ●試乗距離:約200km

●試乗日:2014年3月 ●車両協力:ホンダカーズ東海

 
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