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オペル ヴィータ GLS新車試乗記(第168回)

Opel Vita GLS

 

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2001年04月14日

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キャラクター&開発コンセプト

「かわいいヴィータ」から脱却、新型は男性ユーザーの獲得も狙う

日本におけるオペルのボトムレンジがヴィータだ。本国名は「コルサ」で、初代の登場は1983年。 2代目は93年に本国で登場、95年から日本導入が始まった。昨年末までに約600万台を生産するオペル史最大のヒット作となり、本国ドイツでは94年よりVWポロ、プジョー206といった強豪をおさえ登録台数第1位となっている。日本でも人気が高く、特に昨年は常盤貴子が演じる人気ドラマのヒロインの愛車として登場したため、モデル末期にも関わらず売り上げが伸びたらしい(赤色だけかもしれないが)。

8年ぶりのフルモデルチェンジで3代目となった新型は、「ニューシンプル」がテーマ。基本的にはキープコンセプトだが、先代と大きく異なるのは、ターゲットに男性ユーザーも視野に入れてきた点。それゆえボディサイズは半回り大きくなり、デザインも少しシャープになった。ラインナップは先代と同じで3ドアと5ドアの2タイプ。パワートレーンはFF駆動の1.4リッター+4ATのみで、先代にあった1.6 と1.2の設定は今のところなし。乗車定員は5名。ハンドル位置は右のみで、夏頃に左ハンドル仕様が導入される予定だ。

価格帯&グレード展開

ちょっとだけ値上げして価格は173万~187万円

パワートレーンは1.4リッター+4速ATのみ。グレードはボディ形状により5ドアが「GLS」、3ドアが「スイング」とごくシンプルな展開。価格は前者が187万円、後者が173万円。先代の価格よりもそれぞれ9万円アップ、4万円アップだ。

国産車と比べてしまうと割高ではあるが、装備はリアウインドウが手動式となっている以外、かなり充実しており、特に安全装備に関してはサイドエアバッグを標準装備するなどかなり贅沢な内容。それを考えればまずまず妥当な価格。

ちなみにテレビCMの新キャラクターはhitomiというモデル出身、現在歌手の女の子。ドラマの常盤貴子と同様、女性への販売には結びつくかもしれないが、男性層の獲得にはつながらないと思う。

パッケージング&スタイル

「カワイイ女の子」から「オトナの女性」へ

ボディサイズは全長3815mm×全幅1645mm×全高1440mm。先代と比べると全高以外、全て拡大されており、全長+75mm、全幅+35mm。ホイールベースも45mm延長され、クラス最長の2490mmを誇る。ちなみにヴィッツのサイズは全長3610mm ×全幅1660mm全高1500mm、ホイールベース2370mm。新型ヴィータはヴィッツより「細長い」体型ということになる。そこに構築されるボディタイプは先代同様、3ドアと5ドアの2タイプ。ドアの枚数に関係なく全長は同じ。空力特性はクラストップレベルのCd値0.32を実現している。

多少男性側に歩み寄ったデザイン

デザインは基本的には丸みを帯びた先代のモーチフを踏襲するものの、随所に直線や折れ線が入り、キリッとした印象となった。新型は男性にも受け入れられるようなユニセックスなキャラクターが与えられている。用意されるボディカラーは豊富で9色。ヘッドライトは現在のこのクラスのトレンドでもある吊り目。テールランプはバックガラスの両脇にセットされた縦長スタイル。前から見れば明らかにヴィータと分かる。でも、後ろから見るとちょっと戸惑う。フィアット・プントかと…。

なお、このデザインを監修したのは先代と同様、児玉英雄という日本人デザイナー。二玄社のカーグラなどでイラスト&コラムを連載するなど、業界ではかなりの有名人だ。

カラーバリエーションは豊富。質感と造形の進歩はあまり見られない

内装はボディ色に合わせてベージュ、ブルー、レッドなど5色も用意されるが、全体の印象としては質素で平凡。質感も樹脂表面のシボがちょっとだけ細かくなった程度で、あまり進歩していない。強いて言えばハザードスイッチが立派になったことぐらいか。ポロをはじめとするライバル勢が、飛躍的に進歩していることを思うと、見劣りしていることは否めない。

インフォメーションディスプレイ(日付、時計、外気温などを表示)、MD+6連奏CDチェンジャーを標準装備し、しかもスイッチがステアリングにも備わるなど装備は立派だが、全体のレイアウトはいま一つ。カーナビの装着のことはあまり考えられておらず、ディーラーオプションのカーナビを取り付けたとしても、空調の吹き出し口の前に立ちはだかってしまう。

安全性を徹底的に考えた点は評価できる

ボディが大きくなったことで居住空間も広くなっている。先代と比べて肩周辺の余裕は約80mm、頭上空間は約 15mm、助手席との間隔は約20mm広い。実際、座ってみるても広さに不満はない。後席は座面が短いのが気になるが、リクライニング機構が備わっているので一応大人2名なら不足はない。ラゲッジ容量は通常の状態で260リッター、6:4分割可倒式の後席を倒せば最大1060リッターが確保される(ポロとほとんど同値)。ライバルに比べて、決定的なアドバンテージがあるわけではない。

高く評価できるのは安全性への取り組みだ。まず、サイドエアバッグが標準装備されている。ペダルは強い衝撃を感知すると脱落し、ドライバーの脚部への損傷を最小限におさえる構造。また後席には高さ調整機構付きのヘッドレストがちゃんと3名分備わり、シートベルトもすべて3点式だ。とにかく、このヴィータにも、同社のフラッグシップ同様の安全思想がそのまま受け継がれている。ここまで徹底した取り組みは、同クラスの国産車ではなかなか見られない。ただ、あまりにも徹底しているために、側面衝突に対応したサイドシルの張り出しが大きく、降りるときに足が当たってしまう。またリヤウインドウが手動というのは小さな不満点だ。

基本性能&ドライブフィール

オペルの環境&安全思想を受け継ぐパワートレーン

1.4リッター直4エンジンは、環境に優しいと同社が推進する「ECOTEC(エコテック)」と呼ばれるものだ。基本的には先代からのキャリーオーバーだが各部の見直しにより、最高出力は5psアップの90ps/6000rpm。最大トルクは0.6kgmアップの12.8kgm/4000rpm。それでいて燃費は約14%向上の13.2km/L(10・15モード燃費)。組み合わせられるミッションは3つのモード(スノー、エコノミー、スポーツ)を備えた4速AT。停止中にブレーキを踏んでいれば、燃費や振動を低減するためにギアが自動的にニュートラルに切り替わる「ニュートラルコントロール機構」を備えている。パワステは車速感応型の電動式だ。

足回りは前がマクファーソン式ストラット、後ろがトレーリングアーム。これも型式自体は先代と同じだが、姿勢制御能力を備えたDSA(ダイナミックセーフティ)サスペンションをアストラに続き採用している。

1.4リッターとは思えない力強さ

加速は1.4リッターとは思えないほど力強い。この排気量で90psは確かに優れたスペックだが、低中速回転域に集中したトルクが何よりいい。車重は1000kg台に抑えられ、加速は1.6リッターか、それ以上に思える。非常に中身の濃いエンジンといっていいだろう。ATのデキもよく、シフトショックは小さく抑えられている。またニュートラルコントロール機構の効果により、停止中にエンジンの振動がステアリングに伝わってこないのも嬉しい点だ。

ただ、エンジン回転の質感はいまいち。ガサガサしており、遮音性も行き届いていないので、耳障りではないものの騒々しい。それに常用域では路面の段差をよく拾い、どうしてもバタバタとした乗り心地が目立つ。これらが結果的に全体を雑な印象へと導いてしまう。特にストップ&ゴーの多い市街地でより強調され、「まだヴィッツのほうが…」となってしまう。また、クラス最長のロングホイールベースが災いして、最小回転半径は 5.0メートルとコンパクトカーとしては苦しい数値になってしまった。

「小さなグランドツーリングカー」に成長

オペルというと無個性という印象が強いが、新型ヴィータの走りには質実剛健のドイツ車らしい味が残されている。足まわりはスタビリティを重視した引き締まったもの。パワステも同様で、やや重め。ロック・トゥ・ロックは3回転弱と、シティカーとしては突出してクイックなセッティングになっている。速度を上げるほど、これらの効果が発揮され、高速巡航はコンパクトカーとは思えないほどビシッと安定。エンジン、風切り音とも「やかましい」というレベルなのはご愛敬だが、140km/hくらいでもまったく問題ない。これぞドイツ車の美点だ。欧州ではこのクラスでもファーストカーとして使われるから、「街乗りだけ快適、高速巡航はヘロヘロ」というのは全くハナシにならない、というわけだ。

ワインディングでも同様にしっかり感があり、そこそこスポーティーに楽しめる。日本のようにクラス毎に走りのシーンを設定して作り込めばいい、というクルマ作りでなく、マルチに使えることを想定して作られたクルマだ。

ここがイイ

走りのしっかり感、オートマのシフトプログラムの適正さ、ペダル位置の自然さ、カップホルダーの豊富さ、運転席アシストグリップ位置に着けられたサングラスホルダー、インパネコンソールのフタにつけられたペン置き類、ハンドルのオ-ディオスイッチ、そこそこ広い室内といったあたり。総じて不満のないシティーカーになっている。いや、オペルの狙う「これ一台でひとまず何でもこなせるクルマ」に確かになっている。

ここがダメ

2アクション式のリモコンキー。最初の一押しで運転席のロックが外れ、さらに押すと全部のロックが外れる。一人だけでチョイ乗りするときには、一見悪くないようにも思えるが、メリットは感じられない。ロックはワンボタンでオンオフだけがベスト(前にも書いたとおり)。

本文にもあるとおり、リアウインドウの手動レギュレータは、欧州車の伝統ではあるものの、日本仕様だけでもパワーにして欲しいところ。エアコンが当たり前の現在、リアウインドウは夏場に乗り込むときの換気のためにあるといってもよく、これを運転席から空けられないと、とても換気効率が悪い。

総合評価

本国ではスズキ・ワゴンRがアギーラ(日本モデルと違ってなかなかかっこいいフロントマスクを持っている)という名前で、オペルのベーシックモデルになってしまった現在、ヴィータの位置は微妙。どう考えても、ハッチバックのヴィータ(コルサ)よりミニバンタイプのアギーラの方がスペース効率はいいわけで、欧州もベーシックモデルがミニミニバンへ移行する可能性は高いと思う。そこでコルサはワンステップ上へシフトし、日本でいうところのファミリーセダンを狙ったわけだが、ややムリというか、徹しきれない迷いも感じられてしまう。

転じて日本の市場では、ベーシックな5ドアハッチバックは売れないはずだったのに、ヴィッツがその常識をくつがえしてしまった。ヴィッツ一辺倒の日本市場ではヴィータはライバルの一つとしていい選択肢になる。年間1万台ペース、月にして1000台弱のこれまでの販売実績は、ヤナセの販売力なら達成できるだろう。

しかし、新旧ヴィータを並べてみてみると、新型に際だった良さを認められないのもまた事実。インパネの質感も、バスケットボールの表面のようなシボで特徴づけられてはいるが、とても良くなったとはいえないし、ボディデザイン的にも旧型の方がやっぱりカワイイ。むろんすべての面で旧型の欠点を消し去っており、不満のない出来になっていることは確かなのだが。

日本市場では、「女性が買うクルマ」という位置は揺らがないはずなので、知名度が上がっている現在、さらにどこまでセールスプロモーションを徹底できるかが、このクルマの命運を握っていると思う。走りのしっかり感はライバルに勝っていても、現実に乗る層にとってはそれはあまり強力な訴求力とならない。上級にシフトしたと言うより、もう一度「かわいいヴィータ」というコピーをばらまいた方がいいのでは。

売れたクルマはモデルチェンジしてもイメージを変えないという手法は、今回新型ステップワゴンがトライしている。モデルチェンジしてもテーマソング(オブラディ・オブラダ)が変わらないCMというのは画期的だ。ヴィータもhitomiより常盤貴子を起用すれば、もっと売れるはず。それくらいベタなマーケティングが、月数千個程度の数しか売れないクルマという商品には、今後はますます必要になってくるだろう。

 

公式サイト http://newvita.opel.co.jp/

 
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