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トヨタ ヴィッツ新車試乗記(第60回)

Toyota Vitz

 

1999年02月25日

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キャラクター&開発コンセプト

トヨタが送り出す新基準リッターカーは世界戦略車

トヨタが今年、最初に世に送り出したブランニューモデル「ヴィッツ」は、一昨年東京モーターショウに「NBC・FUN TIME」という名で参考出展され、欧州名「ヤリス」で知られるリッターカー。これまで同社のエントリーカーであったスターレットに変わる(とはいってもスターレットは当分の間、継続販売される)FF小型ハッチバックだ。スモールカーの巨大市場、欧州で販売され、トヨタのシェアアップに貢献する使命をもったモデルでもあり、次世代トヨタ車の中心的存在になり得る小さな大物だ。

「世界に通じるコンパクトクラスのベンチマークの創造」をテーマに大人4人が快適に過ごせる室内空間と優れた基本性能の、社会調和を図るミニマムサイズの具体化。これを実現するために、エンジン、足回りをはじめ全てを新開発し、コンパクトカーの世界基準を提案している。

価格帯&グレード展開

価格帯は軽自動車並みの84.5~128.0万円、インターネットのみの販売車種も

エンジンは1リッターのみ。ボディバリエーションはスターレットの流れをくむ3ドアと5ドア。グレードは廉価なものから順に「B」「F」「U」の3タイプと、装備を充実させた「F Dパッケージ」。駆動方式はFFのみで、4WDの設定はない。全グレード、5MTと4ATが用意される。この他に商用目的でBグレードには「ビジネスパッケージ(助手席エアバッグ+ABS+ブレーキアシストがなく、パワステ+折り畳み式後席が付く)」の設定もある。ボディカラーはパステル系を中心に全8色。

小型車にとって重要な価格面でもヴィッツは魅力的であり、84.5~128.0万円という軽自動車並の価格を実現している。さらに欧州ヤリスには自動クラッチ、つまり2ペダルのセミATも用意されているのだという。

また、インターネットのみの販売グレードがあるということも注目したい。そのグレード「ユーロ・スポーツエディション」は、ボディカラーに専用ブラックマイカを設定し、ヨーロッパ仕様のサスペンションを施したもの。欧州ヤリスに限りなく近いフットワークを持ったライトチューン・マシンだ。価格は3ドアが132.8万円、5ドアが138円。もちろんこれはカタログには記載されていない。こうしてじわじわと販売が見直されていくのだろう。

テレビCMといいインターネット販売といい、ヴィッツの広告戦略は非常に興味深いものがある。

パッケージング&スタイル

ボディサイドの深く刻まれたラインが存在感を強調、かつトヨタ的な親しみ感あるデザイン

ヴィッツの開発にあたっては、コンパクトクラス用プラットフォームを新設。より高い速度での衝突安全性を高めるために「GOAボディ」をさらに進化させ、オフセット前面衝突試験を従来の60km/hから64km/hにまであげて対応している。

デザインは、前身である「FUN TIME」ほどのドラスティックなインパクトは放ってはいないものの、そのイメージは色濃く反映されている。ショルダーラインが深く刻まれ、かなり筋肉質。本当にスターレットよりも150mmも小さい(短い)のかと思ってしまうほどの存在感だ。それでいて小型車に大切な親しみ感も持ち合わせており、ターゲットユーザーの女性にとっても、キュートでお洒落に映るのではないだろうか。また、ボディカラーもピンクやミントグリーンなどの新鮮なものが用意されており、オプションによってカラフルなコーディネイトも可能。個性を尊重する若い女性にも喜ばれるだろう。 

欧州ベーシック車をも凌ぐ高効率パッケージ

ボディサイズは全長3610mm×全幅1660mm×1529mm。全長はスターレットの-150mmとなるが、ホイールベースは+70mmの2370mm、全高+100mmの1500mmとすることでクラストップの室内空間を実現。

特筆すべきは約800kgに抑えられた軽い車重と0.30というクラストップのCd値。車重に関しては軽ミニバンと同じくらいで、欧州で同じBセグメントに属するVWポロの約1トンを下回る。Cd値は、ヴィッツよりも背の低いスターレットが0.34。ヴィッツがいかに優れているのかが分かるだろう。さらに最小回転半径が軽自動車並みの4.3m、これはマーチよりも0.3m小さい。最初、ボディサイズに関して、もう少し小さくても良かったのではという気もしたのだが、市街地での機動性にここまで優れた性能を持ってすれば、もう何もいうことはない。ご立派!機能とデザインを高次元で融合させた未来的なインテリア、一部グレードで汎用性がないのがちょっと不満

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内装は柔らかな曲面によって、インパネからドアトリムまで連続させた未来的で開放感溢れるデザインだ。コスト削減の形跡が随所に見られるのも事実だが、優れたデザイン力によってそれらが全く気にならないものに仕上げられている。ただ個人的には、インパネの岩風シボだけは馴染めない。

その内装でまず目を奪われるのがインパネのセンターメーターだろう。トヨタにとっては4番目の採用であり、やや運転席側に向けられているのが特徴だ。ナディアと同じ虚像式デジタルメーター(FおよびBグレードはアナログ式。アナログセンターメーターはトヨタ初だ)を採用しているが、見る角度によって歪みがほとんどなく、ナディアよりは見やすくなっている。ただ時計表示もメーター内に内蔵されているために、時間は運転席からでしか確認できないのが小さな不満。

収納ポケットを多く配置した点も特徴のひとつ。特にセンターパネル両側の洞窟状のポケット(CD12枚分が収納可能)は、ポイッと放り投げるような横着な人には特に重宝するはず。

上級車Uの場合、標準オーディオは専用デザインとなっており、また空調吹き出し口は丸型のために、市販ドリンクホルダーの取り付けはできない。さらエアコンはマニュアル操作を一切削除したオート機能のみ。下級グレードではエアコンもマニュアルだし、オーディオも付け替えられる。なおナビはセンターメーターの下にある1DINスペースを利用することになり、取り付けはインダッシュタイプのモニターがベスト。 

シートはフレンチ風、自然な乗降性と余裕のある後席スペース

最も感心させられたのがシート。シートの厚みがタップリとしており、乗る人を優しく包み込む印象を与えている。何となくフレンチカーっぽい。ミニバンほどではないが小型2ボックスではかなりアップライトな着座姿勢がとれることもマル。設計値では全席、身長190cmの人でも余裕の頭上空間(前席で90mm、後席で45mm)を確保しているのだという。デザイン良し、パッケージング良しの、誠に感服させられる出来映えだ。リアシートは欧州車のようにきちんと座ることを強いられるタイプ。広いが、一般の日本人にはもう少し背もたれが寝た方が喜ばれるだろう。

ヴィッツはこの先、クーペやミニバンタイプなどの派生車種で様々なバリエーション展開を図るようだが、その時はコラムシフト&足踏み式パーキングブレーキで左右ウォークスルーができることを期待したい。現状はマニュアルシフト中心の欧州市場優先だから致し方ないが。

基本性能&ドライブフィール

凝ったメカこそないが、惜しみない新技術を投入

ヴィッツのエンジンは最高出力70PS/6000rpm、最大トルク9.7kg/4000rpmを発生する新開発1リッター直4(1SZ-FE型)のみ。お馴染み可変バルブタイミング機構VVT-iを採用し、スモールカーにふさわしい高性能と低燃費を両立し、実用域で扱いやすさを重視した軽量コンパクトエンジンだ。足回りは前ストラット式、後トーションビーム(トヨタではイータビームと呼んでいる)と平凡なもの。特別凝った高価なメカニズムではないものの、トヨタFFの次世代標準メカとなるものだ。ミッションは5速MTまたは4速ATとなる。4速ATも新開発だ。

リッターカーとは思えない上質な乗り心地、軽自動車を越える燃費性能

市街地を中心とした走り、具体的には60km/hぐらいまでならリッターカーということを感じさせない上質なエンジンフィールをみせる。静粛性も上々だ。はっきりいって3気筒のストーリアの比ではない。加速面でも低速トルクがタップリとしているので、急坂時でも軽自動車のようにむやみにアクセルを踏むことなく余裕を持って走らせることができる。スモールカーにありがちなピッチングも気にならないほどで、路面の振動をスパッと吸収するフラットな乗り心地は、2リッタークラスに匹敵する質感を持ち合わせており、正直、驚き。「リッターカーなら、ま、こんなものだろう」という安物グルマ的な印象が全くないのだ。さらに燃費(10・15モード)は軽自動車をも凌ぐ20km/リッター越え(MT車。AT車でも19km/リッターを上回る)!! ここまでくると軽自動車にとってもヴィッツは脅威となるはず。うーん、本当にトヨタが本気を出すと怖い。

ハイパワー軽を遙かに越える高速性能、さすがリッターカー

ATのセレクタはDから2へフリーで入り、ODボタンも使うと2速、3速、4速がマニュアルのように使えるのはいい。高速では80km/hあたりから風切り音が高まり、中間加速はさすがにパワーの不足を感じさせられることは否めない。それでも100~120km/hというあたりの巡航は不満なし。アクセルを踏めば、100km/hでも2速までキックダウンして、じわじわとスピードを増す。軽のハイパワー車は135km/hくらいが限界だが、ヴィッツは150km/h以上出るので、ここ一番という時の安心感は格別。やかましいが直進性はよく、接地感も高くて、私なら140km/h巡航もさほど苦にならない。

女性ユーザー向けにセッティングされたと思われるやや軽めのハンドリングはもう少し手応えが欲しいところだが、ジワッとロールし、かつしっかり足が地に着いたコーナリングは安心感の高いもの。タイヤがプアな割にちゃんとしてる。これで欧州仕様の「ユーロ・スポーツパッケージ」のように足回りを固め、マニュアルで乗りこなせば、もっとファンなクルマになりそうだ。

ここがイイ

近所の住宅街で、きれいな奥さんが、早速、シルバーのヴィッツに乗っていた。とてもイイ感じ。ヴィッツには今までのトヨタ車のイメージがなくなってしまった。すごくオシャレ。しかしトヨタ車がオシャレとは、何か世の中、たいへんなことになってきてると思う。

ここがダメ

質感は、何か安っぽいな、と思う人が多いだろう。オートエアコンは思うように空調ができなかった(ファンがいつも回っていてうるさい)。Uグレード以外のリアシートがたためないのは不満。

総合評価

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凄くわかりやすくいうと、フランス風乗り味の見事なコピー。そして、すばらしいエンジン、すばらしいパッケージング、すばらしいエクステリア、すばらしい品質、すばらしいインパネでもって、コピー元のはるか上をいく。日本人向けマーケティングではけしてできないクルマ。もう一度、すばらしいと言ってしまおう。

しかし、RV日本ではこうしたハッチバック車の大ヒットはいまさら難しいかも。とはいえ、ヴィッツベースのミニバンはすでに用意されてるらしい。軽メーカーには申し訳ないけれど、100万円で何か買え、といわれたら、軽よりあまりにお買い得感が高いので、迷わず買ってしまうだろう。

イイものが安いということは、消費者には悪いことではないと思うが、何かあまりにトヨタと他社との差がどんどん開くようで、それがはたして健全なことなのか・・・・。

100点満点で…

95点

 

公式サイトhttp://toyota.jp/

 
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