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トヨタ ヴィッツ RS新車試乗記(第154回)

Toyota Vitz RS

 

2000年12月29日

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キャラクター&開発コンセプト

トヨタのボトムエンドを担うヴィッツが、本格的にスポーツ市場開拓に乗り出した

トヨタが工場建設を含む本格的な欧州市場進出を狙って開発したコンパクトカー、ヴィッツ。99年1月のデビュー以来、幅広いユーザーから人気を集め、次世代コンパクトの大役を見事果たした大ヒットモデルだ。これまでのエンジンラインナップは70馬力の1リッターと88馬力の1.3リッターの2本で、コンパクトカーらしくシティユースを重用視。特に最高燃費22.5km/lを誇る高い経済性が自慢となっている。

今回、新たに設定された「RS」は、従来モデルとは一線を画すスポーツバージョンだ。いや、これまでも一応、スポーツバージョンは存在した。インターネットでの試験販売から始まった「ユーロスポーツエディション」がそれだ。しかし同グレードは欧州仕様の足回りを組み込んだだけで、スポーティーモデルというには「チョット」という感があったのも事実。「RS」はこのモデル以上にチューンした本格的なスポーツバージョンというわけだ。最大のニュースは、ヴィッツ初となる1.5リッターエンジンを投入したこと。この他、足回りはもちろんのこと外装、内装にも専用アイテムを奢るなど、「ユーロスポーツエディション」以上にスポーツ路線を強調している。

価格帯&グレード展開

122.5~158.0万円。ベースグレードより30万円アップ

グレード展開としては1.3リッターエンジンの「1.3RS」、その装備を簡略化した「1.3RS-Dパッケージ」、1.5リッターエンジンの「1.5RS」の3タイプ。いずれも3ドアと5ドアがあり、ミッションは全車、4ATか5MTを選べる。価格帯は122.5~158.0万円と、ベースとなった「U」グレードの30万円アップ。「ヴィッツ=安い」という印象は全く感じられなくなってしまったが、改良内容を考えれば、納得の値段といえる。実際、スポーティーさをウリとするライバル、ダイハツ・YRVターボ(149.9万円)をはじめ、輸入車のプジョー106(235万円)/206(165~189.5万円)、フィアット・プント(157.0~218.0万円)あたりと比較すれば、RSの価格はむしろ割安。なお、この「RS」は、欧州にも同じ仕様で販売される。スポーツ路線を着実に強化させようとしているトヨタの意気込みが感じられる。

パッケージング&スタイル

素朴感を損なわずに専用パーツ満載

エクステリアは従来モデルの好評点をそのまま踏襲しつつ、さらに差別化を図るべく数々の専用アイテムが奢られる。その内容は前後エアロバンパー、サイドステップ、リアスポイラー(ディーラーオプション品と同一)、フロントフォグランプ、フロントグリルなど。ボディカラーはホワイト、イエロー、マイカ、スーパーレッドⅤに加え、専用色としてストロングブルーメタリック、グレーメタリックの計6色が用意される。

細部にもスポーティテイストが追加されており、ブラックグリルに映える「RS」のレッドバッジ。ブラックアウト化されたヘッドライト。よく見るとテールランプもバックランプがバンパーへ移行されたことで、ピンクスモークのレンズ色に変更されている。前から見ても後ろから見ても「RS」としっかりと認識できる、主張のある仕上がりとなる。

ボディサイズは全長3630×全幅1660×全高1485mm。従来モデルより全長が20mm長いのは、大型化されたリアバンパーによるもの。エアロパーツの装着で塊感がいっそう強調され、吊り目系ヘッドライトと「ひげ」にも見えるバンパー両脇のエアダクトと相まって、コミカルタッチの“太った猫”といった印象だ。ヴィッツ本来の持ち味、素朴さを損なわないようすれば、このあたりが限界だろう。「あまりかっこよくない」というのが正直な気持ちだが、派手な装飾品でコテコテにするより、ずっと好感が持てるのは確かだ。

若者ウケを狙ったブラック×シルバーのインテリア

室内の装備は基本的に最上級グレード「U」をベースにしたもの。専用アイテムとなるのはタコメーターを備える金属調のアナログメーター(実はファンカーゴからの応用品)。パワーウインドウスイッチまわりのカーボン調パネル。ブラック/グレーメタからなるツートーンカラーの本革ステアリング&シフトレバー。メタル調のスカッフプレート(1.5リッター車のみ)。

そしてもっとも走りへのこだわりを演出するのがバケットタイプのスポーツシート(高さ調整機構付き)だ。従来モデルのシートがフランス車風と例えるのなら、こちらはドイツ車風。クッションはやや硬めになったものの、高めに設定されたヒップポイントまでは従来と変わっておらず、一般的なスポーティーカーにはない開放的な視界はヴィッツならでは。

黒に統一された専用の室内色が、質感の向上に一役買っていることも忘れてならないところ。従来モデルでは明るいグレーを基調とした2トーン仕上げだったために、開放感が実感できた反面、安上がりな質感が露呈していた。RSは黒色を用いることで、走りの気分を演出させるばかりでなく、その安っぽさが視覚的に薄らいでいるのだ。

基本性能&ドライブフィール

ヴィッツ初の1.5リッターエンジン。注目はエンジンより足回りの充実ぶりにあり

エンジンは、従来より搭載されている1.3リッター直4(88馬力/12.5kgm)に加え、ヴィッツ初となる1.5リッター直4の2タイプ。後者はすでにプラッツやファンカーゴなどの兄弟車に搭載されている1NZ-FE型が流用され、スペックも同じ110馬力/14.6kgmを誇る。これらエンジンに4ATもしくは5MTが組み合わせられる。

走りにかける意気込みは、足回りに表されている。スポーツサスペンション、前後スタイビライザー、4輪ディスクの採用といったきめ細やかな改良が施されたのだ。さらに1.5リッターモデルには185/55R15タイヤと専用アルミホイールも装備され、1.3リッターモデルとの差が明確に打ち出される。

ちなみに今回のスポーツサスペンションというのは、「ユーロスポーツエディション」で採用されたユーロチューンドの味付けとは違うもので、同グレードを含んだ従来モデルのブレーキは後ろがドラム式となる。

ヴィッツの弱点「非力さ」を解消した2リッタークラスの力強い加速

試乗したのは5MTを搭載する1.5リッターモデル。110馬力/14.6kgmというスペックだけを見ればたいしたことないが、940kgの軽量ボディには十分以上のパフォーマンス。8.54kg/PSというパワーウエイトレシオはほぼアルテッツァ「AS200」とほぼ同等の数値であり、実際、出だしの加速はかなり力強い。もしかして2リッタークラスのスポーツセダンよりも速いかも? この力強さに慣れてしまうと、当然、1リッターヴィッツが、ものすごくかったるくなる。吹け上がりも6300回転までなんらストレスなく回る。ただ、トルク特性がフラットだから、扱いやすい反面、回して楽しむというタイプではない。

なお10・15モード燃費は同エンジンのファンカーゴよりも50kgほど軽いこともあって、0.2km/l良好な15.2km/l(AT。MTは17.0km/l)となる。

スポーツハッチ・ブーム再来の予感!? 一般公道ベストバランス

ここで気になるのが同じカテゴリーに属するダイハツ・YRVとの比較だろう。YRVのエンジンは1.3リッターだが、ターボが付くために最高出力は140馬力と、RSを大きく上回る。車重は同じ940kgだから、YRVのバカッ速さは、RSをもってしても揺るがない。しかし、トータルのバランスの点では明らかにRSが上。YRVはシャシーがパワーに負けているという印象に対して、RSはシャシーがパワーに負けていない。これはパワー云々というより、ガッチリ固められた足回りと、ワンサイズ大きなタイヤによるところが大きい。決してロールがないわけではないが、適度な重みを感じるパワステと相まって、スピードを出しているときでも操縦性は素直。タイヤが鳴り出して挙動が乱れるまでが穏やかだから、いきなりスピンモードに入ることもない。腕に自身がない人でも、挙動が乱れたと思ったら容易に立て直すことができるはず。一般公道でも楽しめるあたりは、まさに昔で言うところのスポーツハッチ。スポーツハッチがゴロゴロしている欧州市場に真っ向から勝負できる仕上がりといっていいだろう。

スペック勝負から脱皮、シフトフィールにもこだわった

スポーツを全面的に押し出していても、乗り心地が犠牲にされていないのも評価できるところ。ソフトだけに終始している1リッターヴィッツに対して、RSはしなやか。市街地では多少ゴツゴツした感じはあるものの、高速道ではむしろRSのほうが快適に感じられる。

もうひとつ印象に残ったのがシフトフィールだ。カチッ、カチッとした節度感を作りだしている。なんとなく、わざとらしいところもあるが、まぁ、一応、子供だましとはいえ頑張っているな、とは思う。逆にもうちょっと頑張って欲しかったのがエンジン音。ヴィッツに限らずトヨタの4気筒は相変わらず、音に対する演出が下手。ただ単に「太く」「大きく」すればいいのだという考え方がしてならない。このあたりはずっとホンダのほうが上手い。いや、排気音なんてマフラー交換でどうにもなるだけに、最初からマフラー交換を前提にしているのか? アフターパーツ市場にも手を出そうとしているトヨタだけに、それは十分考えられる。

ここがイイ

固めのホールド感のあるシートは絶品。ここに座り、剛性の高いシフトを操作すると、ヴィッツであることを忘れてしまう。トヨタらしく固めた足でも乗り心地をそこなっていないのもいい。パワーがない分、エンジンをフルに回せる楽しみがあるので、乗っていてとても楽しい。

ここがダメ

トヨタの場合、アルテッツァもそうだが、エンジンにはスポーティなフィーリングがあまり感じられない。ホンダ車のようなエンジンを回して味わう快感は皆無。結果として、回らないエンジンをブン回す楽しみがあり、これは確信犯か。 

総合評価

アンダーなパワーを固めた足回りで着実に路面に伝えながら、90%以上の能力で走り回る楽しみを、常用速度域で感じられるクルマ。ただ、終始弱アンダーなハンドリングで、トリッキーな動きはなく、グリップ走行で速いタイプゆえ、人によっては物足りないかもしれない。しかし、ノーマルヴィッツのヤワな足回り(それがノーマルヴィッツの味だが)と比べると、別のクルマといってもいいほどのスポーティーな仕上がりだ。パワーがなくてもクルマは楽しめる、という好例だ。

小さいクルマが見直されるべき21世紀の始めに、小さくても楽しいクルマが出てきたことは重要な意味を持つ。小さいのは当たり前で、今後はそれぞれに個性(楽しみ)があるという展開をメーカーはさらに押し進めるだろう。ヴィッツはノーマルでも若者から熟年までが乗って似合うクルマで、クラスレス、ヒエラルキーレスを実現した小型車だが、さらにスポーティーという選択肢まで加わると、タイプレスまで実現しそうだ。クルマはヴィッツ一種類でいい、などという社会になるのはごめんだが、出来そこないのクルマをあまり乱発するのも、資源の無駄遣いに思える。クルマに厳しい21世紀の社会で、クルマ好きがクルマを楽しむためには、このヴィッツの方向性は正しいと思う。

 

公式サイトhttp://toyota.jp

 
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