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トヨタ ヴィッツ B エコパッケージ新車試乗記(第187回)

Toyota Vitz B Eco Package

 

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2001年09月09日

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キャラクター&開発コンセプト

アイドリングストップシステムを新採用

トヨタの世界戦略車として位置付けられるコンパクトカーであり、日本のベストセラーカーであるヴィッツ。今年5月、新たに追加された「エコパッケージ」は、営業車用途と思われるグレード「3ドア・B」をベースに、車両停止時にエンジンを自動停止させ、発進時に再スタートを行う「トヨタ・ストップ・アンド・ゴー・システム(アイドリングストップ・システム)」を採用したモデルだ。

エンジンは1リッター、ミッションは5速マニュアルのみ。アイドリングストップシステムの採用によって燃費を7%向上、10・15モード燃費で24.0km/lを記録。これはハイブリッド車と軽自動車を除く乗用車でトップ! 5速MTというのはもはや一般的とは言いがたいが、それでも大渋滞の都心部で活躍する営業車にはピッタリのクルマといえるだろう。内外装の変更点はほとんどなく、乗車定員は5名。

価格帯&グレード展開

価格はベースよりも5万円高い89.5万円

ヴィッツ「B・エコパッケージ」の価格は89.5万円。「B(3ドア・5MT)」の価格が84.5万円だから、ベースの5万円高という計算だ。ちなみに同「B」のオートマは92万円。デュアルエアバッグ、ABSといった安全装備は完備し、快適装備としてのマニュアルエアコンも標準設定されているものの、オーディオレス、ノンパワステ、手動式ウインドウとなっており、装備は極めてシンプル。AM/FMラジオが1万2000円、パワステが3万1000円でオプション設定されている。

パッケージング&スタイル

「ECO」エンブレムがアイドリングストップ車の証

ベースとなったのは最も装備の簡素化が図られている「B」で、ボディは3ドアのみ。全長3610mm×全幅1660mm×全高1500mmとボディサイズに一切の変更はない。外観上、アイドリングストップシステムを採用する証は、唯一リアの「ECO」エンブレム(小っちゃい)のみとなっている。バンパーは無塗装の黒。ドアノブ、ドアミラーも黒。ホイールは鉄チン。いかにも「営業車にどうぞ」といった風貌だ。

わずか820kgという軽自動車並の車重は、シリーズトップの軽量ボディ(厳密にはアイドリングストップシステムによってベースグレードよりも6kg増加している)。最上級グレード「U」の5速MTと比較して50kg、1.3リッター+CVTのフィットだと170kgも軽い。パッと見はずんぐりとしているが、コンパクトカーらしいまとまりだ。

従来どおりのCd値0.30という空力特性もフィット以上(Cd値0.31)に優秀だ。リアサイドとルーフ後端を絞り込んだデザインによって、2ボックス車の燃費性能に影響する背面の渦を作らない良好なエアロボディを作り出している。さらに床下の前部分をフラット化。タイヤも155/80R13にして、ころがり抵抗を抑えている。エンジンやアイドリングストップといったメカ頼りで完結するのではなく、ボディ自体も省燃費化に大きく貢献しているわけだ。

センターメーター(このグレードはホワイトアナログメーター)が特徴的な室内も外観と同様、大きな変更はない。装備は極めてシンプルで、マニュアルエアコンが標準装備されるいるものの、ウインドウの開閉は手動式。パワステはオプション、オーディオもオプション、リモコンキーは設定すらない。新たに追加されているのは、メーター内にアイドリングストップができる状態であることを示す「ECO」インジケーターランプと、インパネ右脇にあるアイドリングストップのキャンセルスイッチぐらいだ。

しかし、いざ乗ってみると不思議と大きな不満はない。廉価グレードとはいえ、ステアリングにチルト機構がちゃんと付いているし、足代わりにするなら、むしろこれでいいんじゃないとさえ思えてくる。コンパクトカー本来の在り方を再認識させられる。また、紺色ボディに組み合わせられるミストグリーンの内装色もチープさを感じさせない好材料の1つとなっている。今も新鮮味のあるヴィッツの内装は、全く魅力が薄れていない。

基本性能&ドライブフィール

アイドリングストップシステムで24.0km/Lの低燃費を実現

エンジンは従来ヴィッツに搭載されているものと全く同じ1リッター直4ユニット。ミッションは5速MTで、ATの設定はない。最高出力70ps/6000rpm、最大トルク 9.7kg-m/4000rpmを発生する。VVT-i(連続可変バルブタイミング機構)を採用しており、低燃費と低エミッションに貢献している。そして何よりこのエンジンが素晴らしいのはエンジン自体が極めて軽量化されていること。剛性を十分に確保した上で、クラス最軽量の68kgを実現している。

新たに採用されたアイドリングストップシステムは、信号などで車両を停止させ、ギヤをニュートラル状態にしてクラッチペダルから足を離した時、エンジンが停止する仕組み。クラッチペダルを踏み込むとエンジンが再始動し、スムーズなアイドリングストップと再発進を可能としている。

ただし、次の条件が1つでも満たされていないとき、アイドリングストップは作動しない。●エンジンが十分暖まっていること。●バッテリー状態が良好なこと。●いったん走行したあとであること。●外気温が0度以上であること。●運転席ドア、またはボンネットが閉じていること。●エアコンスイッチがOFFであること。●アイドリングストップモードのスイッチが入っていること。

これらの条件が満たされているときはメーター内に「ECO」のインジケーターが点灯し、ドライバーにアイドリングストップができることを教えてくれる。なお、このアイドリングストップがうざい(?)と思う人のために? キャンセルスイッチも備えている。

エンジン再始動のタイミングが絶妙

通常のエンジン始動は“クラッチを踏む”ことが最低条件。クラッチを踏んでいなければ、キーを回してもエンジンはウンともスンもいわない。加速はリッターカーとしてまったく問題ないレベル。いや、厳密に言えば、人一人分軽いだけエコパッケージのほうが、主力グレードよりも軽快な走りができると言っていいだろう。クラッチ操作も軽く、スコスコとシフトチェンジできる。

さて、肝心のアイドリングストップだが、メーター内の「ECO」マークが点灯さえしていれば、きっちりと作動してくれる。停止時にシフトをニュートラルにしてクラッチを離せば、ブルッとわずかな振動とともにエンジンストップ。つぎにクラッチを踏めば、キュルルルンッとエンジンが再始動。この再始動に要する時間は、キーを使ってのエンジン始動よりわずかに短い。“クラッチ踏む→シフトを1速に入れる→クラッチを離す”といった一連の動きの中で、エンジン再始動はすでに完了。つまりエンジンがかかるまでのタイムラグを感じさせない。そのため気難しいことを一切考えず、ごく一般的なマニュアル車と同じ感覚で発進できる。後続車の迷惑にもならない。

ハード面での耐久性、信頼性も高そうだ。エンジンの始動を短い時間に何度も繰り返せば当然、バッテリーに負担がかかるわけだが、そんなときでも停車するたびにしっかりとアイドリングストップしてくれる。例えば渋滞のことを想定して“アイドリングストップ→エンジン始動→2、3m進む→車両停止→アイドリングストップ→エンジン再始動…”という意地悪なことを12回繰り返してみたが、まったく問題なかった。

夏はアイドリングストップしない!? 

ただし夏場、“エアコンを使うとアイドリングストップしない”というのは致命的問題。エアコンをONにしたとたん「ECO」マークが消えて、アイドリングストップは作動しない状態になってしまう。あわせててエアコンをオフにしても、長時間の駐車した後と同様に1kmぐらい走らないと「ECO」マークは点灯しない。エアコンに慣れてしまった人にとって、夏場はほとんど意味のない代物になってしまう。例え我慢してエアコンオフでガソリンをセーブしても、今度は飲み物が欲しくなってコンビニに入ってしまう。清涼飲料水はガソリンよりも高い! しかもペットボトルは環境に悪い・・・

気になる今回の燃費結果だが、これが編集部員のミスで正確な計測できず…、スミマセン。しかし、ストップ&ゴーの多い市街地中心ならば、「燃費を7%向上させた」という数値よりも優れた結果は期待できるはず。普段、自分の運転がいかに無駄なガソリンを消費しているのかを痛感するだろう。アイドリングストップは単に燃費が良くなるだけではなく、排気ガスを撒き散らさないというメリットも忘れてはならない。

と、言いつつも人間、一度快適さを知ってしまうと次なる要求が贅沢になるもの。コストの面や重量増の問題で実現は難しいと思うが、できれば単にエンジンをストップさせるだけでなく、エアコンオンでも、AT車でもアイドリングストップできるシステムが欲しかったところ(その回答の一つが、先ごろクラウンに搭載されたマイルドハイブリッド)。また、エンジンストップ中は専用インジケーターランプもしくは「ECO」ランプの色が変わるなどして、ドライバーにエンジンが停止していることを明確に促して欲しかった。周りが静かな場所だたったら、エンジン音でアイドリングストップ中か否かが分かるが、周りがうるさい市街地だと判断しにくい。いずれにせよ営業車用としての普及は望めると思うが、個人で「買うか」と言われたら、おそらく断ってしまう。残念がなら現状では万人向けのクルマとは言いがたい。

ここがイイ

ヴィッツのベーシックな利点はやっぱりいい。本当によくできたクルマだと思う。さらにエコの場合、さらに燃費がいいとかさらに環境に優しいといういいところが増える。5速ミッションだと思うままにエンジンを引っ張れるから、1リッターでもAT車のパワー不足感がないのはいいと思った(燃費は悪化させているような気がするが・・・)。マニュアルエアコンも風量、風向きがコントロールできるのがいい(当たり前に思えるが、上級グレードのオートエアコンはそれができない)。

ここがダメ

かなりあった。まず、パワステ無しは仕方ないが、走り出しても妙に重いまま。コーナーなどでもずっしりとした重みが腕に伝わる。一般に走り出せばもっと軽くなってもいいはずだがなぜ?。エンジン始動音もプリウスではほとんど気にならないが、さすがにこのクルマではかなり気になる。始動するたびにセル音がすることを、ちょっと想像してみて欲しい。

オプションのラジオは実に安っぽい音がする。悲しくなってきた。みごとに価格に比例した音を出すというのはたいしたことではあるが。また走行6000kmほどの試乗車だったが、運転席後部からビビリ音が気になった。これは個体の問題だとは思うが。

シートにハイトコントロールがないためチルトハンドルとのポジションが決まらない(体格によるだろう。小柄な人は決まりにくく、大柄な人は決まりやすい)。また乗り心地も固め。ヴィッツ特有のしなやかさがない。転がりを重視した低燃費タイヤの影響だと思われる。

以上は1リッターの最上級グレード(当編集部にある)と比較しての話。価格にして40万円ほど違うわけで、差があって当然だが、この見事なまでのチープさはマイカーとしては辛いところ。

総合評価

日中エアコン無しで走れる期間が名古屋あたりだと長くみて年間7ヶ月程度。10・15モードで1.5km/L燃費が向上しても実質的にはそう大きなメリットはない。個人でエコを買う意味はほとんどないといえるのでは。営業車として考えたら、公園でエアコン付けっぱなしで昼寝をすることを禁止した方が、経済的にも、環境的にもメリットがありそうだ。

ではこのクルマに意義がないかといえばけしてそんなことはない。環境対策先進企業としてのトヨタのプロパガンダではあるが、こういうクルマをカタログモデルとして市場に出す意欲は素晴らしい。またさすがにヴィッツにマイルドハイブリッドは載せられないと思うので、小型車にはこうしたアイドルストップシステムを、という提案は称賛に値する。ならばぜひ上級グレードにも設定してもらいたい。そうすれば、燃費記録を出すための戦略車としてでなく、実際に環境に優しいマイカーとして買われる可能性がでてくるはずだ。三菱にピスタチオというアイドリングストップ車のあだ花があったが、このままではエコもそうならないとも限らない。ぜひ上級グレードへの設定を望みたい。

しかし安心してクルマのエンジンを自動停止させられるということは、つぎに必ずエンジンが一発でかかるという自信があるからで、昔のクルマを知るものとしては感慨深い。四半世紀ほど前はエンジンが一発でかかること自体がたいしたことだったのだから。

 

公式サイトhttp://toyota.jp

 
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