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トヨタ ヴィッツ RS新車試乗記(第355回)

Toyota Vitz RS

(1.5リッター・CVT・159万6000円)

2005年02月25日

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キャラクター&開発コンセプト

海外は日本の倍以上

1999年に出たヴィッツは、日本にコンパクトカーブームを巻き起こした先駆的なモデルだ。日本のコンパクトカー作りの基準を引き上げた功績も大きいし、欧州に与えた影響もまた大きい。国内累計台数は約70万台だが、海外(主に欧州圏)ではこの倍以上。世界第2位のトヨタも欧州ではまだまだマイナーメーカーだから、この数字は大きい。

6年振りにフルチェンジして2005年2月1日に登場した2代目は、選んだことに誇りを持てる“My Proud Compact”をテーマに、大人びた雰囲気で登場してきた。国内向け広告コピーは「水と、空気と、ヴィッツ」と限りなく透明なイメージだが、クルマ自体は独・仏スモールカーに真っ向勝負の走行性能など濃い内容だ。トヨタ最小として国内でパッソが生まれ、欧州ではPSAと共同開発のアイゴが発売予定の今、2代目ヴィッツは先代より少し上級移行し、欧州Bセグメントに投入される。

ネッツの「N」

生産はトヨタ自動車の高岡工場(愛知県豊田市)と豊田自動織機の長草工場(愛知県大府市)。先代ヴィッツから操業を開始したフランス北部のバランシェンヌ工場の生産モデルもいずれ新型に切り替わるはずだ。

国内の販売目標は月間1万台で、昨年5月に旧ビスタ店を統合したネッツ店が販売を行う。同店の主要取り扱い車種はこの新型ヴィッツを皮切りに、ネッツ(Netz)の「N」をモチーフにしたバッジを付ける予定だ。

価格帯&グレード展開

RSは159万6000円

グレードは5つ。標準車の「B」(105万円)、主力の「F」(115万5000円~)、1.5リッターの「X」(140万7000円)、スマートキーや6エアバッグが付く「U」(138万6000円)、そして今回試乗したスポーティモデル「RS」(159万6000円)。RSのみ5MT車が設定された。

CVTが主軸

RSを含めて2WDのAT車がすべてCVT(無段変速)を採用。日産、ホンダ、三菱に続いて、トヨタもついにCVTを主力に据えたことになる。理由は優れた10・15モード燃費が狙える点や、CVTのコスト低減・小型化が進んできたからだ。先代の主軸は1リッターだったが、2代目は1.3に移行。1リッターエンジンはパッソと同じ3気筒に変更され、初代ヴィッツを支えた1リッター4気筒は廃止されてしまった。理由はトルク感や燃費と説明されるが、もちろんコストも3発の方が安いはず。ちなみにデイズの初期ヴィッツも1リッター4気筒だが、高回転まで毎日ブン回され、健気に頑張っている。

パッケージング&スタイル

コンパクトさを維持

今回試乗したRSのボディサイズは全長3800mm(RS以外は3750mm)×全幅1695mm×全高1520mm。先代より少し大きいが、4メートル寸前のライバル車を見渡せば今でもコンパクトだ。とは言え、先代の可愛いらしさは薄まり、特にこのRSは彫りが深いバンパーや真っ黒のボディカラーのせいで戦闘的。アウトバーンやオートルート(フランスの高速道路)で、ルノークリオRSやVWポロGTIと渡り合うには、これくらいの迫力が必要か?

セルシオを55km/hでぶつける

衝突安全性が飛躍的に向上した点もこのボディの大きな特長だ。トヨタで初めて衝突試験速度を50km/hから55km/hに引き上げ(衝突エネルギーは約2割アップ)、全方位でクルマ対クルマの衝突試験を行ったという。2トン近いセルシオとの前面オフセット衝突(55km/h+55km/h)、後面オフセット衝突(55km/h)、そして側面衝突(55km/h)と、その条件はかなり厳しい。高いハードルを自ら課したのは、欧州ではこれが大きなセールスポイントになるからだ。逆に、15km/hまでの低速衝突ではラジエイターやエアコン・コンデンサーまでダメージが及ばない衝撃吸収構造を採用。ヘッドランプもランプ本体の再使用を図るクラッシャブル構造だ。これも補修コストが自動車保険の料率に影響する欧州対策だろう。

先代の欠点を解消

先代の有機的なデザインを改め、万人向けになったインテリア。RSに限らず、シートの着座感やドアアームレストの位置が良くなり、視覚でも体感でも安定感が増した。キャビンフォワード&モノフォルムだとAピラーが視界を妨げるのが通常だが、ヴィッツはそうならないように、Aピラー周辺の視界をうまく確保。RSのステアリングにはチルト(上下調整)しかないが、装備が充実した「U」グレードにはテレスコ(前後調節)が付く。

豊富な小物入れ

さらに、ピタッと閉まるフタ付きの大型小物入れが、運転席と助手席の正面に設けられ、いかにも便利そう。試乗車はプリウスやクラウン等と同じプッシュボタンでエンジンを始動できる「スマートエントリー&スタートシステム」(4万950円のオプション)を装備している。従来のものよりドアハンドルを握ってからアンロックするまでの反応が速くなり、違和感がなくなった。

助手席からまったく見えなかったセンターメーターが、新型ではちゃんと見えるようになったのも大きな進歩だ。一方、デジタル速度計が廃止されたのはちょっと残念(遠視点メーターは慣れが必要だったが)。

クッションかフラットな床か

一気にカローラ並みに広くなった後席だが、RSは内装色のせいか少し素っ気ない。上級グレードのチルトダウン格納リヤシートが売りのヴィッツだが、RSは単純な一体可倒式リヤシート。実はこのシートの方がクッションが分厚くて座り心地がいい。

このRS用シートのデメリットは、荷室に段差が残ること。しかしヘタに上げ底にしてフラットな床としたり、クッションを薄くしてまで後席を下に沈み込ませるより、実用的とも言える。荷室容量(後席使用時)は狭かった先代の205Lから、新型では274Lにアップしている。

基本性能&ドライブフィール

CVTで燃費とパワーを両立

今回試乗したのはトップモデルのRS。1080kgのボディを引っ張るのは、従来からある1.5リッターエンジンの「1NZ-FE」(110ps、14.4kgm)。RSは新型ヴィッツで唯一5MTが選べるグレードだが、試乗車はCVTだった。1.0、1.3は新開発の超小型・軽量CVTだが、RSは従来型のようだ。

1.5リッターでトルクがあるだけに、普通に走るだけならCVTの癖は気にならない。加速しないときは低回転で燃費をセーブしつつ、アクセルの微妙な踏み加減で速度をコントロールできる。ただ、アクセル全開やスポーツモードで高回転を維持するとややノイジーだし、加速感が薄いところはCVT的。RSなのに、なぜかマニュアルモードはない。街中で走る限り不満はなく楽ちんだが、ワクワク感はあまりない。

ヴィッツにレグノ

タイヤが転がる瞬間からゴツゴツした感じが伝わってくるのも、トヨタ車らしからぬところ。路面の凹凸をしっかり伝えてくるが、剛性が40%アップしたボディが共振することはない。RSの標準タイヤは195/50R16という200ps級のタイヤサイズだが、ロードノイズ対策なのか、銘柄はブリヂストンのレグノという高級コンフォートタイヤだ。確かに音は静かで、乗り心地も「RS」というバッジを付ける割に悪くはない。アベンシスのように欧州仕様をナマで味わう感じはなく、日本の環境に合わせた感じだ。

高い限界性能

いつもの山道を走ると、限界性能の高さがよく分かる。そうとう攻め込んでも、姿勢変化をしっかり抑えながら、何事もなくサラーと曲がってしまう。特にリアがトーションビーム(新開発)とは思えないほどよく踏ん張り、RSだけが装備する前後15インチ四輪ディスクブレーキも頼もしい。ほどほどにクイックな電動パワステの剛性感、正確さもまずまず。1クラス上の走りという感じだ。

ただ、パワーウエイトレシオは10kg/ps程度とそれほどパワフルではないし、伝達にCVT(マニュアルモードなし)が介在するので、操縦が特に面白いわけではない。マニュアル車で、さらにオプションのヘリカルLSDが入れば、また違った印象になるかも。さらに過給器付きで150psくらいあっても大丈夫そう、と思わせるほどシャシーの余裕がある。

「ミニアベンシス」

RSの良さは、高速道路を走るとよく分かる。たった1500ccにして、100km/h巡航はわずか2000回転。この時の静かさや直進安定性は、まさに2リッタークラス。そこからアクセルを深く踏み込むと6000回転釘付けのまま、間もなくリミッター作動域に到達する。この時の安定感も抜群で、先代で緊張感があった高速域でのフルブレーキングやレーンチェンジも、まったく安心して行える。まさに「ミニアベンシス」といった感じで、いかに欧州を意識して新型ヴィッツが開発されたかがよく分かる。

ここがイイ

実に欧州車らしい!?高速安定性。いわゆる欧州での高速走行に耐えうる高速性能は、日本ではスモールカーであることを忘れさせてくれる。しかもアベンシスより静かに感じた。これを支える、タッチも効きもいい新開発ブレーキがまたいい。

フロントウインドウを寝かせながら、良好な視界を確保しているのもいい。また些細なことかもしれないが、カップホルダーとフロントのエア吹き出し口との間に半円の溝があり、ここを暖気あるいは冷気がはしって飲み物に当たる。保温には良さそうだ。

反応が早いスマートエントリー&スタートシステム。ドアハンドルを握ってアンロックする反応が従来のものより明らかに早く、ロック解除→ドアオープンというツーアクションが、感覚的には握って引くというワンアクションで、違和感がなくなった。キーレスエントリーは登場から10年で当たり前になったが、この出来ならそれに近い勢いで普及していきそうだ。

素晴らしいワインディングでのスタビリティ。マニュアルモードのないCVTゆえ、あまり楽しい感じがしないのは難だが、実際にはとても速い。パワーも最初はあまりないように感じるが、実は結構あって、出足などでは軽いトルクステアを感じるほど。MTなら先代RSのパワー不足感を感じさせない仕上がりのはず。

ここがダメ

パッソがボトムラインを構成する関係上、ちょっとアッパークラスへ移行したヴィッツは、印象が全体に普通になった。ベーシックカーというより高級車ぽい雰囲気すらあって、こうなると逆に内装のプラスチック類の立て付けなんかが安っぽく感じられてしまう。試乗車がRSということもあるが、ほっと癒される先代ヴィッツのやわらかさはない。

回すとうるさい従来型エンジンとマニュアルモードのないCVTでは、一世代前のCVT車的な出来の悪さを感じてしまう。エンジン回転、走り、アクセル開度がリニアではないのだ。このため市街地ではごく当たり前のクルマにしか感じられないのが残念。ワインディングをとばすと、また全く違う性格を見せるのだが。

RSのオレンジ照明のメーターは昼間は見にくい。また、先代同様、位置がセンター過ぎて見にくい。もう少し右に寄せないと視線移動量が少ないというメリットがでない。

総合評価

発表会のニュース欄で日本人の免許所有者の50人に一人くらいはヴィッツを「買ったことがある」と書いたが、人口1億2000万人、うち自動車免許所有数7000万人とすると、70万台の販売数は100人に一人が買ったことになり、さらに中古車で買った人も合わせれば50人に一人でもおかしくない、という計算だ。デイズにも一台あるし、社員も一台持っているし、親戚、知人を合わせれば50人に一台以上の所有感がある。

欧州でも、EUの人口は日本の約3倍で、販売台数は2倍だから、日本ほどではないにしろ、相当に浸透しているはずだ。中国ではトヨタブランドではないヴィッツ(プラッツ)も走っているから、確かにヴィッツは水と空気並に存在していることになる。

基本的には水と空気はタダだったが、最近はどちらもそれなりにコストがかかるようになっている。とはいえ、それはたいした額ではない。ヴィッツもタダではないが、そのランニングコストは他車に比べたいした額ではない。5年乗ったデイズのヴィッツで計算してみたら月当たり1万7000円ほどの値落ちで、軽自動車並だ。その意味では「水と、空気と、ヴィッツ」というコピーは今年のコピー大賞にしてもいいと思うほどお見事。

と、コピーばかりを誉めているのは、RSに試乗したからだ。本当は現在乗っている4ATの1リッター旧ヴィッツと、CVTになった新ヴィッツを比較してみたかった。普通のヴィッツがどれくらい良くなったかは今後のレポートに譲ることにして、CVTのRSに関していえば、街中を乗る限り目立った良さは感じなかったものの、印象はワインディングと高速走行で一変した、というもの。

硬めながらショックの角が丸くて不快さを感じない乗り心地、比較的うるさいエンジンとCVTのリニア感の無さという部分が目立つ街中では、特に良くなった感じはしなかった。しかもRSは小回りも利かない。ところが、その気になって走ってみると、素晴らしいスタビリティは先代の20%増しといったところ。前述のようにマニュアルモードがないためエンジン回転を操る楽しさがない分、面白みはスポイルされているが、乗り終えてみれば「こりゃすごい」となる。

RSはこのクラスでは出色のスポーティーカーと言ってもいいと思う。まったくクラスも駆動方式も違うが、マークXも同様に感じた。安全で楽しいというトヨタ流のスポーツチューニング。優等生的なそれを良しとする人には、このRSはおすすめだろう。いずれにしてもマニュアルモードのないCVTはイマイチ。一時期トヨタはCVTより普通のATで十分といっていたが、そのつけが今来ているようにも感じられる。

試乗車スペック
トヨタ ヴィッツ RS
(1.5リッター・CVT・159万6000円)

●形式:DBA-NCP91-AHXVK●全長3800mm×全幅1695mm×全高1520mm●ホイールベース:2460mm●車重(車検証記載値):1080kg (F:680+R:400)●乗車定員:5名●エンジン型式:1NZ-FE●1496cc・直列4気筒・横置●110ps(81kW)/6000rpm、14.4kgm (141Nm)/4400rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/42L●10・15モード燃費:18.6km/L●駆動方式:前輪駆動(FF) ●タイヤ:195/50R16(BRIDGESTONE REGNO ER33)●価格:159万6000円(試乗車:195万4050円 ※オプション:スマートエントリー&スタートシステム 4万950円、サイド&カーテンシールドエアバッグ 6万3000円、G-BOOK対応カードボイスナビゲーション付ワイドマルチAVステーションII 23万9400円、ETC車載器 1万4700円)●試乗距離:約300km

公式サイトhttp://toyota.jp/vitz/index.html

 
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