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トヨタ ヴィッツ 1.3 U新車試乗記(第622回)

Toyota Vitz 1.3 U

(1.3リッター直4・CVT・150万円)

「カッコいい方が・・・」とのことで
イメチェンした3代目ヴィッツ!
とりあえず「1.3 U」に乗ってみた!

2011年02月05日

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キャラクター&開発コンセプト

3代目は「カッコいい方が、いいじゃないですか。」


新型ヴィッツ 1.3 F
(photo:トヨタ自動車)

2010年12月22日に発売された新型ヴィッツは、1999年の初代、2005年2月の2代目に続く3代目。欧州戦略車として鳴り物入りで登場してから12年が経ち、その間に世界70ヶ国以上で累計販売台数350万台以上、国内だけで累計140万台以上を販売したトヨタの基幹モデルだ。

6年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型は、全長3.9メートル前後、全幅1695mmと相変わらずコンパクトだが、従来のような可愛らしさではなく、精悍さを強めたスタイリングが特徴。広告コピーは「カッコいい方が、いいじゃないですか。」だ。

プラットフォームは先代の改良版を採用。ホイールベースは先代比+50mmで、室内空間や積載性を確保。さらに質感や快適性など「あらゆる領域でひとクラス上を追求」したという。

また環境性能も当然ながらクラストップを追求。先代では1リッター直3モデルに搭載したアイドリングストップ機構を、新型では1.3リッター直4モデルで採用(1.3F “スマートストップ パッケージ”)。同クラスの純ガソリン車で最高の10・15モード燃費:26.5km/Lを達成したほか、機構を一新したことでエンジン再始動時間が0.35秒と素速いのも売りだ。

目標は先代と同じ月間1万台

国内向けの生産拠点は、豊田自動織機の長草工場(愛知県大府市)のみ。先代はトヨタ自動車の高岡工場(愛知県豊田市)でも生産していたが、需要減に伴い2010年から休止していた。販売チャンネルは変わらずネッツ店で、月間販売目標も先代デビュー時と同じ1万台だ。

ひとまず立ち上がり約1ヶ月間(年末年始を除く営業日)の初期受注は、目標の2倍となる2万2000台を達成。ちなみに先代は立ち上がり1ヶ月(2/1~2/28)で約3万1000台だった。

 

※過去の参考記事

■モーターデイズ>新車試乗記>トヨタ 2代目ヴィッツ RS / F(マイナーチェンジ) (2007年10月更新)
■モーターデイズ>新車試乗記>トヨタ 2代目ヴィッツ RS (2005年2月更新)
■モーターデイズ>新車試乗記>トヨタ 初代ヴィッツ B エコパッケージ (2001年9月更新)
■モーターデイズ>新車試乗記>トヨタ 初代ヴィッツ RS (2000年12月更新)
■モーターデイズ>新車試乗記>トヨタ 初代ヴィッツ (1999年2月更新)

 

※外部リンク
■トヨタ自動車株式会社>プレスリリース>ヴィッツをフルモデルチェンジ (2010年12月)

価格帯&グレード展開

エンジンは3種類、グレードは実質7種類、ボディカラーは全17色


ベーシックな「F」の内装色はライトグレーと写真の「ジンジャー」の2色
(photo:トヨタ自動車)

エンジンは1リッター3気筒「1KRーFE」(69ps)、1.3リッター4気筒「1NR-FE」(95ps)、1.5リッター直4「1NZ-FE」(109ps)の3種類。RSには5MTもあるが、残りは全てCVT(無段変速機)となる。また1.3リッター車には電子制御式の「アクティブトルクコントロール4WD」(前後配分は100:0~70:30で変化)が用意されている。

以下の通り、グレードは多種多様。ボディカラーは先代でも14色あったが、新型は計17色(ジュエラ専用の5色を含む)と日本車の単一モデルとしては異例の多さだ。

■「F “Mパッケージ”」
※リアパワーウインドウやボディ同色ドアミラー等を省いた廉価グレード
・1リッター3気筒     FF:106万円(CVT)

■「F」
※ベーシックな装備内容の標準グレード
・1リッター3気筒     FF:119万5000円(CVT)
・1.3リッター4気筒    FF:129万円(CVT)/4WD:147万9000円(CVT)

 

ヴィッツ 1.0 Jewela
(photo:トヨタ自動車)

■「F “SMART STOP パッケージ”」
※アイドリングストップ機構、VSC&TRCを標準装備
・1.3リッター4気筒    FF:135万円(CVT)

■「Jewela」
※内外装メッキ加飾、買い物アシストシート等を装備。専用ボディカラーも5色あり
・1リッター3気筒     FF:126万5000円(CVT)
・1.3リッター4気筒    FF:136万円(CVT)/4WD:154万9000円(CVT)

 

今回試乗した1.3 「U」

■「U」
※15インチタイヤ、オートエアコン、コンライト(オートライト)、快適温熱シート、ソフトパッド表皮、タコメーター、買い物アシストシート、スマートキー等、装備充実の上級グレード
・1.3リッター4気筒    FF:150万円(CVT)/4WD:168万9000円(CVT) ★今回の試乗車
・1.5リッター4気筒    FF:160万円(CVT)

■「RS “C パッケージ”」
※RSから、スーパーUVカットガラス、ディスチャージヘッドランプ、オートエアコン、スマートキーを省略
・1.5リッター4気筒    FF:160万円(CVT)

 

ヴィッツ 1.5 RS
(photo:トヨタ自動車)

■「RS」
※専用エアロバンパー、ディスチャージヘッドランプ、リアディスクブレーキ、スポーツシート、テレスコピックステアリング、パドルシフト(CVT車)等を装備。ヘリカルLSD、VSC&ESPをオプション設定
・1.5リッター4気筒    FF:172万円(5MT)・179万円(CVT)

パッケージング&スタイル

「可愛い」から「カッコいい」へ変身


フロントワイパーは1本タイプ。ウォッシャーノズルを内蔵する

ボディサイズ(先代比)は、全長3885mm(+100)×全幅1695mm(同)×全高1500mm(-20)、ホイールベースは2510mm(+50)。要するに先代より少し長くなったわけだが、それでも全長は3.9メートル未満(RSは3930mm)、全幅は5ナンバー枠内に収まり、Bセグメント車らしいコンパクトさはキープされている。

 

ただし見た目の印象は大きく変った。初代ヴィッツは丸々としたフォルムが特徴で、2代目も同じ路線だったが、3代目は全体にプジョー207を思わせる末広がりなスタイルとなり、すっかりアスリート体型に。特にiQと同じ「数理面」と呼ばれる立体的な表現が使われたフロント部、そして縦長から横長に変わったヘッドライトが変身ぶりを象徴する。

 

Cd値(空気抵抗係数)は0.285と優秀。数値を発表するところが自信のある証拠

それでも、「可愛くない」とか「ヴィッツっぽくない」とか言われるのは折り込み済みで、トヨタとしては「カッコいい方が、いいじゃないですか。」(広告コピー)ということなのだろう。

インテリア&ラゲッジスペース

センターメーターを廃止。デザインはワイド感重視へ

インパネのデザインも激変した。まず歴代ヴィッツの特徴だったセンターメーター(2000年前後のトヨタ車に多かった)を廃止。それに伴ってダッシュボードも左右対称から、非対称デザインに変更し、ダッシュ前面にはグレードによって色や仕上げが異なるパネル(試乗車の「U」ではシボ付きソフトパッド仕様)を採用している。

 

「U」や「ジュエラ」等に装備される「買い物アシストシート」。買い物袋をかけるフックや傘置きとしても使える

また先代では運転席と助手席をセンターコンソールで分断し、そこに空調ダイアルを縦に並べていたが、このセンターコンソールを廃止。空洞部分にドリンクホルダーや小物入れを置くだけにした。全体としてはエクステリア同様、ワイド感を重視したデザインだ。

質感に関しては、「U」「RS」「ジュエラ」で随所にメッキ加飾やシルバー塗装を施し、ステアリングやシフトノブを本革とするなど工夫されているが、同クラスのVWポロやプジョー207と比べると、少々物足りないというのが正直なところ。

新設計のフロントシート。「U」には「快適温熱シート」を標準装備


運転席リフターの調整範囲は60mm(先代比+15mm)に拡大。シートスライド量も10mm×24段(先代比+8段)となった

フロントシートの骨格は新設計。歴代ヴィッツは座面も視点も高めで、着座姿勢は独特だったが(慣れると運転しやすく、疲労もしにくかった)、新型の着座感はコンパクトカーとしてはごく一般的なものとなった。独自性は薄れたが、おそらく他車から乗り換えても違和感がないのは新型の方だ。

試乗した「U」に標準装備される「快適温熱シート」は、先代ヴィッツで好評だったもので、肩や腰を部分的に温めることで高い温熱効果を狙ったもの。腰痛持ちや冷え性の人にお勧めだが、「U」でしか選べないのが残念。

前ドアのサイドガラスに「スーパーUVカットガラス」を採用

新型ヴィッツでは、「U」「ジュエラ」、そして「RS」(Cパッケージを除く)のフロントドアのサイドガラスに、紫外線を99%カットする「スーパーUVカットガラス」が採用された。正面のフロントガラスは当然ながら合わせガラスで、中間膜にUVカット機能を与えたタイプではすでにUVカット率が約99%に達していたが、単に強化ガラスとなる従来のサイドガラスは、UV吸収剤を中に練り込んだだけで、UVカット率は約89%に留まっていた。

 

フロントの「ドア」ガラスに採用された「スーパーUVカットガラス」
(イラスト:トヨタ自動車)

そこで「スーパーUVカットガラス」ではUV吸収剤の練り込みに加えて、ガラスの片面にUV吸収膜を塗布。これによって日焼け防止用の手袋と同等のUVカット効果を得たという。サイドガラスへの採用は世界初とのこと。

後席居住性はクラス上位。ただし安全装備的には2人掛けが基本

先代でも後席は十分に広かったが、新型では室内長を35mm伸ばして1915mmに拡大。さらにフロントシートの背もたれ形状も改良して、後席足もとスペースも広げたという。というわけで、空間自体はフィットにこそ負けるが、マーチ、デミオ、スイフトには優る。座り心地はよく、特に座面クッションには厚みがある。

少々意外なことに後席中央席は2点式シートベルトで、ヘッドレストもなし。前席サイド&前後席カーテンシールドエアバッグは全車で4万2000円のオプションとなる。

床の高さを2通り選べるアジャスタブルデッキボードを採用


フロアボードを下にした状態(写真では外してある)。上段より120mm深くなる

リアウインドウの傾斜が強まり、そのままではトランク容量が減ってしまうからか、新型では荷室奥行きを145mm拡大。荷室容量は発表されていないが、おそらく先代(274リッター)と同等、つまり207(270リッター)やポロ(280リッター)並みといったところか。数値を発表しなかったのは、フィット(最大422リッターと桁外れ)と比較されるのを嫌ったからかもしれない。

 

写真はフロアボードを上にして、ツライチにした状態

後席の収納方法は、背もたれをパタンと倒すだけのシングルフォールディング。1.3リッター車以上の上級グレードでは6:4分割となる。

ただし後席の座面は固定式で、しかもクッションが分厚いので、畳んでもかなり嵩張る。そこで新型ヴィッツでは、床の高さを2通り選べるアジャスタブルデッキボードを採用。畳んだ背もたれとフラットにすることが可能だ。

 

床下にはパンク修理キットのほか、小物も少し置ける

パンク修理キットは「RS」以外の全車で標準装備。ただしパンク修理キットの代わりにテンパースペアタイヤを工場オプション(1万0500円)で搭載することも可能。

基本性能&ドライブフィール

パワートレインの印象はいつものトヨタ車と同じ


設計年次が比較的新しい1.3リッター「1NR-FE」エンジン

試乗したのは上級グレード「U」の1.3リッター車(車両本体150万円)。同型エンジンでアイドリングストップ機能付の“スマートストップ パッケージ”(同135万円)もあるが、「U」は温熱快適シートなど快適装備が付いてくる仕様。

パワートレインの印象は、いつものトヨタ車とおおむね同じ。1.3リッター直4「1NR-FE」は設計年次が比較的新しいエンジンだが、すでにiQ、新型パッソ、新型ラクティスでおなじみのもの。CVTもロックアップ制御を高めて燃費効率を高めた最新世代とのことだが、目立って従来のトヨタCVT車と違うという感じはない。つまり相変わらず、せっかちなアクセル操作に対してはエンジン回転を跳ね上げて落ち着きがない反面、繊細なアクセル操作に対しては1000~2000回転での力強く粘り、燃費性能をキープする。このあたりの二面性はラクティスあたりと同じだが、少なくともアクセル操作を最小限に留める模範的な「エコ運転」が出来れば、静かに快適に走る。

1.5リッターのラクティスと、そして多分ヴィッツRSとも違うのは、アクセルを踏み込んでも大して速くないこと。馬力は95psで、車重は1000~1020kgと軽いから、そこそこ走りそうだが、アクセル全開でも「燃費を優先してます」感がつきまとう。

シャシー性能はオーリスに迫る?

新型ヴィッツで注目すべきはパワートレインよりも、シャシーの方。プラットフォームは先代の改良版とのことだが、そんな予備知識がなければシャシーもブランニューと思ってしまうくらい先代とは印象が違う。

とりあえず乗り心地、安定感、しっとりした動きが印象的で、さすが欧州戦略車、さすがヴィッツ、と思わず見直してしまうレベル。新型ラクティスより上背が低くて重心も低いせいか、ヴィッツの方が落ち着きがあり、上手くまとまっている。何かに似ているなあ、と考えて思い当たったのはオーリス。ま、乗り比べればクラスの差は歴然とあるのだろうが、その差が先代ヴィッツよりも一気に縮まったのは間違いない。1.5リッター車ならもっとオーリスっぽいかも。

というわけで、高速走行時の直進安定性も120%問題なし。100km/h巡航は1900回転ほど。シャシー的には、速度計の盤面を使い切る走りもぜんぜんOKっぽいが、クルマやパワートレインのキャラクター的にはエンジン回転を抑えて淡々と走る方が合っている。

ドキドキワクワク感なら「RS」か

あくまで「1.3 U」での印象だが、いつものワインディングでも、シャシー性能は余裕しゃくしゃく。乗り心地を重視したソフトな設定を思うと、路面のうねりや段差を乗り越えるときの落ち着きぶりはとても頼もしい。

またブレーキを掛けながらコーナーに侵入しても、先代ヴィッツのように、前輪アウト側に前のめりになる感じは全くなくなった。パワステがスローでダルなのは物足りないが、それでもステアリングを切ればフロントがインに入り、アンダーステアなりにとりあえず曲がってくれる。同時にリアの接地感はしっかりしていて、何をどうやってもリアが流れることはない。

ただ、それはエンジンが非力で、どうこうなるほどパワーがないせいもある。またエンブレが効かないのも不満なところで、シフトレバーをS(スポーツ)やB(エンジンブレーキ重視)にしても大差なし(「RS」以外にパドルシフトはない)。なのでコーナー手前では、フットブレーキでしっかりスピードを落とす必要がある。

そういったわけで、少なくとも「U」に関しては、腹八分目でスムーズに走りましょう、という仕様。ドキドキワクワク感なら「RS」がある、ということのようだ。実際「RS」では、専用サスペンションが装着され、ステアリングギア比もクイックになり、さらにヘリカルLSDもオプション選択できる。スイフト XSやポロ 1.2 TSIあたりと比べるなら、排気量に関係なく「RS」が相手だ。

なお、その是非はともかく、この上級仕様「U」でも、VSC&TRCはなし(オプション設定すらない)。VSC&TRCが標準装備されるのは、アイドリングストップ付の“スマートストップ パッケージ”車のみだ(他は「RS」にオプション設定)。これはアイドリングストップ後の坂道発進で、ヒルホルダーを働かせるのが主な目的。

試乗燃費は12.6~17.4km/L

今回は1週間にわたって試乗し、約500kmを試乗。参考までに試乗燃費は、いつもの一般道と高速道路をまじえて走った区間(約90km)が12.6km/L。郊外の一般道を無駄な加速を控えて走った区間(約60km)が16.0km/L、また名古屋-浜松往復(東名と一般道を走行、約200km)では17.4km/Lだった。ただ、営業車モード?で何も考えずに街中だけで無頓着に走っていると、13km/L台に留まる。

なお「U」の10・15モード燃費は24.0km/Lで、試乗車の場合はオプション装着による車重増加で22.0km/L。JC08モード燃費は20.6km/Lだ。

ここがイイ

シャシー。買い物アシストシート、快適温熱シートなどの気配り装備


買い物アシストシート
(photo:トヨタ自動車)

日本で使うBセグコンパクトカーとしては申し分ないシャシー性能。この点については欧州レベルというか、ポロや207に並ぶのでは。

それとは一転して、日本車らしい気配りもあり、買い物アシストシートでは前側パネルを引き上げると、助手席に置いた荷物がずり落ちないほか、買い物袋やゴミ袋もぶら下げられるし、溝が切ってあってそこに傘を立てかけることも出来る。これ便利。濡れた傘の置き場には本当に困ることが多いから、これはトヨタ全車標準を願いたいものだ。

シートヒーターはあまり好まないのだが、快適温熱シートは腰の部分をじんわり温めてくれて、たいへん具合のいいものだった。UVカットガラスもいい。かつては「走り」、今は「燃費」というメーカーのアピール合戦だが、やがてこういう快適装備で競いあう時代へと移行してほしいものだ。

ここが気になる

インテリアデザイン、少なくとも「U」はファン・トゥ・ドライブに欠けること

エクステリアデザインは好み次第としても、内装は明らかに物足りない。飛び抜けて質感の高い部分、あるいは目を引く斬新な意匠やカラーといったものがなく、全体にぼやけた印象になっている。プラスチッキーな室内は歴代ヴィッツもそうで、質感についてはまあ文句は言わないけれど、ドア内張りなど手に触れる部分は、一部だけでも布張りにしてもらいたいもの。毎日乗るクルマなのだから。ヴィッツのアイデンティティともなっていたセンターメーターを止めてしまったのも、心情的には悲しい。

CVTによるパワートレインがファン・トゥ・ドライブに欠けること。馬力は100ps程度でいいから、低回転でトルクフルに加速してくれるパワートレイン(例えばVWの直噴ターボとDCTのような)があれば、という思いがふつふつと湧いてくる。多分、欧州ではディーゼルターボにマニュアルギアボックスを組み合わせて乗るユーザーが多いはずで、奢った感じのするシャシーも要はそれに合わせたものではないか。結果、余計にパワートレインの貧弱さが目立ってしまった。その点では、やがて来るハイブリッド版が本命かも。

特に試乗した1.3の「U」は、完全にシャシーがパワーを上回っている上、ステアリング操作に対する動きがあまりに大人しい。多少なりとも「ワクワクドキドキ」が欲しい場合は、少なくとも「RS」だろう。

総合評価

走りより燃費

ヴィッツがベンチマークにしたというポロは、走りだした瞬間にガシッとしたボディの剛性感が伝わってきて、それはそれは「いいクルマだなあ」と思える。ヴィッツも今回、あまり期待せずに乗ってみたら、見事にその感触があったのには驚かされた。さすがに欧州で正面きって対抗するモデルだけのことはある。ラクティスとかの、いかにもトヨタのコンパクトカーという無味無臭な感じがなくて、気合の入り方がよく伝わってきた。これはいい。

走りは本文に書いたとおり、スポーツグレードでない「U」でも、足回りのシッカリ感が際立つが、それゆえ残念ながらCVTのダイレクト感に欠ける感触が気になってしまう。その昔、トヨタ首脳は優秀なATがあるからCVTなどやらないと言っていたが、ここに来てやはり途中ですべてCVTへと舵を切ってしまったのは痛かったと思っているのでは。まあそれでもマニュアル車が中心の国であれば対等に戦えるわけだし、日本のコンパクトカーとしては走りより燃費だから、これで問題はないか。

そのCVTのおかげで、特にCVTまかせの低回転を維持した走りなら、格段に燃費が良くなる。いつもとても厳しい数字しか出ない我々の試乗でも、ポロ 1.2 TSI ハイラインが10.0km/L(10・15モード燃費は20.0km/L)、ポロ 1.4 コンフォートライン(自然吸気モデルですでに販売終了)が11.5km/L(同17km/L)、ヴィッツが12.4km/L(試乗車は同22.0km/L)。毎日乗っていると、ボディのガッシリ感とかはだんだん慣れて薄れてしまうから、結局燃費という経済性(と環境性能)が結果を残すことになる。日本のクルマとしては、これが正しい姿ということだろう。

これがカッコいいカタチなのか?

それにしても分からないのはスタイリングだ。トヨタの意図が分からないというより、これがカッコイイのかどうか、もう我々には分からない。女性向けグレードも別に設定されているくらいで、女性より男性ウケのカタチということはなんとなく分かるが、その男性が見て、これがカッコイイのかどうか、もう判断できないのだ。世界の男性にとって、これがカッコいいカタチなのか? 内装についても、上質感の判断はひとまず置いて、そのデザインはカッコイイのだろうか? ドアから連なるダッシュパネルが特徴的なインパネの造形など、我々が最新工業デザインというものについていけなくなっている、ということなのだろうか。小型車枠いっぱいの車幅も、欧州基準で言えば抑えた方かもしれないが、日本ではもうちょっと狭いほうがコンパクトカーらしくて使い勝手がいいと思う。

 


初代ヴィッツ (1999-2005年)
(photo:トヨタ自動車)

初代ヴィッツがあれほど評価が高かったのは、コンパクトカーらしからぬクラスレス感、趣味の良さ感を持っていたからだろう。それゆえ男も女も老いも若きも、あれなら乗れた。2000年にデイズでも一台買ったが、小さなクルマなのに貧乏臭くなくて、トヨタ車なのに趣味良く見え(失礼)、内装はチープだったが、それをデザインがカバーしていた。シートも分厚くてフランス車のようだったし、要はトヨタ車でありながら欧州車みたいだった。いわゆるトヨタヒエラルキーから外れたクルマに見えたのだった。その意味では本当に衝撃的なクルマで、トヨタの未来に大きな期待がかかるクルマだった。それから12年、今回のヴィッツは数あるトヨタのコンパクトカーの中で位置付けがはっきりしたクルマとなった。女性向けのパッソ、ファミリー向けのラクティス、男性向けのヴィッツと住み分けたわけだ。状況は変わっていくもの、時代は変わっていくもの、ということだろう。

iQのプラットフォームなら・・・・・・

我々クルマ好きはヴィッツというクルマに対して特別な思い入れがあるので、今回は画期的なコンパクトカーの登場を期待していた。例えばiQベースの超巨大居室スペースを持つコンパクトカーなんて面白いはず。iQの時に書いたと思うが、フロント部分を限りなく小さくしたiQのプラットフォームなら、その後ろに広大なスペースを作れるのでは。そしてこのヴィッツでも実現している、ポロにも負けないガッシリ感を持たせ、限りなくクラスレスなデザインとする。もちろんパワートレインは・・・・・・、そんなクルマが見たかったのだが、それは未来のお楽しみとしておこう。

ところで我々は乗っていない1.3リッターのアイドリングストップ仕様だが、1リッター車より15万円ほど高くなる。むろん、4気筒になるし、VSC&TRCと寒冷地仕様並みのバッテリーが付いて15万円差はむしろ安いといえるのだが、しかし現実にはその額を燃費で稼ぐためには相当な距離を走りこむ必要があり、さらにバッテリー交換となれば大型な分、交換費用が余分にかかる。ということで某ディーラーで聞いた限り、皆さんかなり躊躇されるようだ。またヴィッツ全車に関して、スペアタイヤ仕様は10500円高くなるのだが、いざパンクした時を考えると、スペアタイヤなら何度も使える分、一回しか使えないパンク修理キットより安くつくので、スペアタイヤを求める人が多いという話も聞いた。このクラスのクルマを買う人は、コストには相当にシビアだということを実感させられるエピソードだった。

試乗車スペック
トヨタ ヴィッツ 1.3 U
(1.3リッター直4・CVT・150万円)

●初年度登録:2010年12月●形式:DBA-NSP130 ●全長3885mm×全幅1695mm×全高1500mm ●ホイールベース:2510mm ●最小回転半径:4.7m ●車重(車検証記載値):1020kg( 640+380) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:1NR-FE ● 1329cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・横置 ●ボア×ストローク:72.5×80.5mm ●圧縮比:11.5 ● 95ps(70kW)/6000rpm、12.3kgm (121Nm)/4000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/42L ●10・15モード燃費:24.0km/L ※試乗車の場合、オプション装着による車重1020kg以上となり、22.0km/L ●JC08モード燃費:20.6km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット(+コイル)/後 トーションビーム(+コイル) ●タイヤ:175/65R15( Bridgestone Ecopia )●試乗車価格:189万2805円( 含むオプション:175/65R15タイヤ&5Jアルミホイール 4万7250円、【HIDセット】<ディスチャージヘッドランプ+コンライト> 5万5650円、フロントフォグランプ 1万0500円、【Naviセット】<HDDシンプルナビゲーションシステム&バックモニター+ステアリングスイッチ> 22万0500円、SRS前席サイド&カーテンシールドエアバッグ 4万2000円、ETCユニット 1万6905円 )●ボディカラー:ライトブルーマイカメタリック ●試乗距離:約500km ●試乗日:2011年1月 ●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
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