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新車試乗記 第235回 トヨタ ヴォルツ S Toyota Voltz S

 

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日時: 2002年09月14日

 

キャラクター&開発コンセプト

ターゲットは今時のワカモノ

2002年8月20日に発売されたヴォルツは、アメリカからの輸入車。トヨタによると「アクティブなライフスタイルを志向する若者」向けの「新ジャンルのクルマ」だ。CMを見れば一目瞭然。キャッチコピーは「ストリート、アソビート」。CMソングは、インディーズ系バンドによるカバー「世界は二人のために」。10代は言い過ぎにしても、20歳代前半以下をターゲットにした感じだ。

クルマ自体はカローラのNCV(ニュー・センチュリー・バリュー)プラットフォームがベース。機能はステーションワゴンだが、オーバーフェンダーでボディをワイド化(1,775mm)、背を高くして外観はSUVチック。クロスオーバー的なクルマだ。

トヨタとGMの共作だが、設計・生産についてはトヨタが主導権を取る

重要なのは、ヴォルツがトヨタとGMの共同開発車という点だ。かつてトヨタ車として輸入・販売されたキャバリエが、基本的にはGM車だったのに対し、ヴォルツは企画・デザインにのみGMが参加。実際の設計・開発はトヨタが行なった。つまりキャバリエがトヨタ・バッジを付けたGM車だったのに対し、ヴォルツは中身もトヨタ車(ただしアメリカ製)と言える。

生産は両社の合弁会社であるNUMMI(NEW UNITED MOTOR MANUFACTURING,INC.。カリフォルニア州)。NUMMIの工場は'84年から稼動していて、シボレー・ノバに始まり現在は北米向けカローラやトヨタ・タコマ(ピックアップトラック)などを生産。日本で販売されるヴォルツはトヨタ・ブランドながら、輸入車としてカウントされる。

またの名をポンティアック・ヴァイブ

ヴォルツは、北米ではGM車としてポンティアック・ヴァイブ(Vibe)名で販売される。また、現地で販売されるトヨタ・マトリックス(Matrix)はメカ的に兄弟車と言っていい存在。こちらのデザインはその名の通りぐっとトヨタ車っぽい。日本でもそこそこウケそうだが、日本導入の予定は今のところないようだ。

日本での販売目標は1,500台/月。ちなみに2002年1月に北米で発売されたポンティアック・ヴァイブは4月末までに15,000台を販売したという。市場規模の違いはあるとは言え、現地の出足は好調と言えるだろう。GM車ながらトヨタ・クオリティという点も、アメリカでは大きなセールスポイントになるはずだ。

価格帯&グレード展開

グレードは「Z」と「S」の2種類

高性能モデル「Z」は1.8リッターNAで190psを誇る2ZZ-GEエンジン(セリカ、カローラ・シリーズでおなじみ)を搭載。タイヤは215/50R17。ブレーキは前後ディスク。2WDのみ。6速MT仕様が199.8万円。4速AT仕様が205.2万円。

標準モデル「S」は、同じ1.8リッターながら132ps(4WDは125ps)の1ZZ-FEエンジンを搭載。タイヤは「Z」よりマイルドな205/55R16。リアブレーキはドラムとなる。4速ATのみ。2WDが178.8万円。4WDが198.8万円。

ライバルはスバル・フォレスター(178.5~229.5万円)、三菱エアトレック(170~230万円)、日産エクストレイル(185~282.5万円)、ホンダCR-V(187.8~214.8万円)。NA、2WD同士で比べれば、プライシングはほぼ互角だ。

パッケージング&スタイル

まさにポンティアック風のエクステリア

全長4,365×全幅1,775×全高1,605(4WD:1.615)mm。オーバーフェンダーによるワイド感が特徴だ。前後バンパーやボディサイド下部の「クラディングパネル」や大径タイヤがワイルド。クーペのように後ろ下がりになったルーフは、後ろから見るとなかなかカッコいい。サイドウインドウは後ろに行くにしたがって天地が狭くなる、最近のトヨタに多いデザイン。

とはいえ全体的にはかなりGM寄りのデザインだ。しかも、GMの一部門、ポンティアックはアメリカ車の中でひときわ「エグい」スタイルが特徴。かつて日本に輸入されたグランダムが良い例だ。このポンティアック・スタイルが日本で受けるかどうかは微妙だが、豊富なラインナプップを誇るトヨタでは、これくらいの個性派じゃないと存在意義はないかもしれない。

クオリティは高いが、それなりに割り切りもあるインテリア

インテリアはブラック/グレー基調。オプティトロンメーターの赤い照明が鮮烈(照度調整付き)。要所要所のメッキ処理やメタル調仕上げなど、パッと見た目の品質感はまずまず。

細かく言えば、ダッシュなどがソフトパッドでなかったり、ドアノブがメッキ無しの樹脂のままだったり、あるいは収納部のフタの締り方、パーツ裏のバリ処理など、同クラスの国産トヨタ車より劣る感じはやっぱりある。エアコンも全車マニュアル。しかし、アメリカ的な基準からすれば、ツボを押さえたデザイン、質感と言えるだろう。あからさまに安っぽくはないし、「別にこれでいいじゃん」と考えることは出来る。黒のTシャツ(気の効いたプリント入り)という感じ。

ソフトな前席シート

ホイールベースは2,600mmとカローラ・シリーズと同じ。だからパッケージングには問題なし。ただし、前席はタイト感を演出した気配あり。足下はかなり狭い感じ。大柄なアメリカ人が乗るとどうなんだろうかとちょっと心配になる。ヒップポジションは高め。シートはダイアルで上下できるが、調節幅は小さい。Aピラーがかなり寝ており、体格によっては頭部に圧迫感を感じる可能性がある。

シートは見た目からスポーティで硬めを期待したが、予想に反してかなりソフト。サポート性はほとんど重視していないタイプ。トヨタのシートには「当たり」の柔らかいシートが多いが、ヴォルツのシートはそれと比べてもかなりソフト。こうしたシートに慣れないせいか、短時間の試乗で腰が痛くなった。このあたりもアメリカンな味ということだろう。

後席は荷物置き場?

後席の素っ気なさは、アメリカ的な割り切りを感じさせる。ドアトリムはすべて黒っぽい樹脂。空間は広く、座り心地も悪くないが、雰囲気はかなり無機質。荷物入れか、たまに友達を乗せる時に使えれば、という割り切った造りだ。

樹脂製フロアとガラスハッチを持つ荷室

荷室拡大はシートバックを倒すワンアクションでOK。荷室フロアはエクストレイルなどと同じく樹脂でカバー。汚れたマウンテンバイクやマリンスポーツ用ギアを放り込むのに便利だ。床にはフックを任意の位置で固定できる「デッキフロアレール」が設けられる。リアゲートはガラスハッチのみの開閉も可能。壁までギリギリで駐車した場合も、物の出し入れが可能。全体として、容量は平均的だが使い勝手のいい荷室だ。

基本性能&ドライブフィール

132psでもパワーは十分

190ps、6速MTにも興味ひかれるが、今回の試乗車はパワー控えめ「S」の2WD仕様(178.8万円)。ディーラーオプションのDVDナビ(22.7万円)が付いて、合計201.5万円。DVDナビはともかく、このモデルがおそらく販売主力だろう。「S」のボディカラーは2トーンとなり、試乗車はダークブルーマイカとグレーの組み合わせ。

搭載される1.8リッターVVT-iユニット(132PS/6,000rpm、17.3kgm/4,200rpm) はセリカやオーパでお馴染みのベーシックユニット。車重1,250kgのボディをトルキーに引っ張る。出足、中間加速など、動力性能にまったく不満はない。高速道路(アメリカならフリーウェイ)の入り口でストレスなく合流できる、実用的な性能だ。

洗練性はちょっと? のエンジン

しかし、回転域を問わずエンジンから響くビリビリとした細かなノイズは、この種のシティ・ランナバウトにはちょっと不似合いかも。同じエンジンを積んだ他のトヨタ車はもっと洗練されているし、静粛性も高い。これをスポーティさの演出と取るか、詰めの甘さと取るか。

基本的に乗り心地は良いが

前述のようにシートの座り心地はソフトだが、乗り心地はそれほどソフトではない。段差でガツンと来ることはないが、凹凸のある路面では細かい上下動を繰り返し、快適至極とは言えない。ちなみに試乗車である「S」の205/55R16は、コンチネンタル製・ツーリングコンタクトというオールラウンド系。190ps「Z」の215/50R17はファイアストーン製のファイアホークSZ50が装着されていた。ややスポーツ志向のタイヤとなるため、乗り心地や走りはかなり変わってくるものと想像できる。

通常のペースでは問題ないものの

このクルマで山道を攻める人はいないと思うが、一応いつものワインディングも走ってみた。132psと平均的なパワーなこともあり、タイヤのグリップは低速では十分。ペースを少々上げても、ベッタリしたグリップ走行で何事もなく(何事も起こせず)コーナーをクリアする。しかしいつもの段差付き横っ飛びコーナーでは、ややリアの腰砕け感があった。SUVではなくスポーツワゴンと考えると、もう少し限界域でシャキッとした安定感が欲しいところ。

まっすぐ走るのは得意

直進安定性は申し分ない。アメリカでは現在、郊外のインターステートでは制限速度75マイル/h(約120km/h)の区間が多く、実際には80~85マイル/h(129~137km/h)で流れることもある。この速度域でリラックスして「真っ直ぐ」走れることがアメリカでは何よりも重要だ。

逆に、アメリカ車の場合「曲がること」のプライオリティは低く、ヴォルツもややその傾向にあると言えるかもしれない。日本の高速道路にはよくある100km/h弱で進入するコーナーでは、挙動はかなり不安定な感覚だ。思ったようなラインには乗ってくれず、アンダーが強い。といってアクセルを戻すとオーバーな感覚になり、ステアリングに力が入る。ただ、タイヤの性格も考慮しておく必要はある。オールシーズンタイヤでなく通常のオンロードタイプなら印象はかなり変わったに違いない。

ここがイイ

エクステリアデザインは確かにトヨタだけでは作れなかったと思う。特にエグいフロントグリルまわり、オーバーフェンダーといったあたりのおおらかさは、日本人デザイナーなら一歩退いてしまうところ。結果として、かなりカッコいいもの(後述)になったと思う。妙に若年層の若者ウケをねらっているが、20代後半、30代くらいまでの一部の人なら、このデザイン、抵抗なく受け入れられるのではないか。トヨタは新ジャンルのクルマといっているが、確かにセダンでもクーペでもステーションワゴンでもSUVでもないというヴォルツは、走ってよし、乗ってよし、積んでよし、しかも4WDでない分価格も安いという、クルマの新しい型を提示した画期的な商品だと思う。実はホンダのHR-Vもかなりこれに近い商品だと思うのだが。

ここがダメ

アップがワンタッチではない運転席パワーウインドウ。上下ワンタッチになれた日本人には不満が残るところ。高速道路の支払い後、「アレ?」と思ってしまった。またボディ幅が広い割には運転席の膝まわりが狭い。小柄な日本人がシートを前に出すと、出っ張ったインパネシフト部分が左足に干渉する。大柄なアメリカ人がシートを一杯に下げれば広くなるかもしれないが。

そして何より全体のクォリティ(プラスチックの質感、組み付け精度、チリの合いかた、バリの処理など)は、やはり日本製トヨタ車の異様なまでの高品質感に比べれば、一歩後退する。走りの方も欧州車志向のクルマ好きにはおそらく不満が残るはず。日本で製造してから輸出されるヤマハ製スポーツエンジン(2ZZ-GE)と6速MTの組み合わせには試乗していないが、アメリカ製1ZZ-GEエンジン搭載車は、日本人が好むスポーティというイメージからはかなり遠い、という印象だった。

総合評価

アメ車(キャバリエ)をいくらいじってもトヨタ車にはならなかったが、ヴォルツはアメリカで作ったトヨタ車ゆえ、その出来にキャバリエのような問題はない。ただ、日本の工場で日本人が作ったトヨタ車と比べると、明らかに違う。例えば空調パネルの横にあるメッキのモールは、よく見ると隙間の幅が上下でほんのわずかに違うし、ウレタンステアリングには1㎜以下のほんとに小さなバリがあって、ステアリング操作するときに引っかかり感がある。例えばこのステアリングのバリなどはデイズのスタッフによっては気にならなかったほどで、実に些細なことなのだが、日本人の作るトヨタ車ではこんなことはあり得ないだろう。NUMMIは米コンシューマレポーツ誌でベリーグッド評価を受けている工場で社長も日本人なのだが、やはりできあがる製品は日本の工業製品とはひと味違った仕上がりになるようだ。とはいえキャバリエやサターン、キャデラック・ドゥヴィルといった今までに乗ったアメリカ車と比べれば、アメリカ車であることを全く感じさせないクォリティであることは確かだ。

GMが口を出したことでさらにエグさを増したエクステリアとはいえ、最近のトヨタのデザインはそうとう「ぶっ飛んだもの」になってきている。9月13日に登場したカルディナもそうだが、デザインにかなり「ガンダム」が入ってきているように感じるのだが。特にこのヴォルツは「近未来SF(アニメ)に出てくる自動車」みたいな形をしている。ウルトラ警備隊(古い!)のクルマみたい。そんな意味では、普通のクーペやワゴンに興味を示さない若年層には訴えかけるものがあるのかもしれない。日産Zをカッコいいと思わない大多数の若者でも、ヴォルツならカッコいいと思うのだろうか? そして、アメリカの若者も日本の若者同様にガンダムが好きなのか?

そんなわけで、年をとったクルマファンには理解できないクルマがポツリポツリと増えている。古典的なデザインや、セダン、クーペといった古典的なカテゴリーも崩壊しつつあり、「癖のあるスポーツカーをねじ伏せるのがスポーツドライビングの醍醐味」といった考え方も、もはや過去のものとなりつつある。そしてアメリカ人と日本人の好みの差という部分も、ヴォルツを見ているとだんだん詰まってきているように思える。グローバリゼーションはクルマの世界では今のところ関係ないが、果たして今後どうなるのか。そしてクルマにグロバリゼーションの波が押し寄せた場合、そのスタンダードは日本車なのか、欧州車なのか、それとも米国車なのか。日米で同じクルマが売られるヴォルツは、その形状の特殊性、コンセプトの新しさ、新しい世代への訴求といった点で、もしかするとグローバルスタンダードなクルマの第一号なのかもしれない。中国などアジアの若者の目にはこのクルマはどう映るのだろう。

ヴォルツ S (2WD・4AT):スペック
●全長4,365mm×全幅1,775mm×全高1,605mm●ホイールベース:2600mm●車重:1270kg●エンジン:1.8リッター直列4気筒横置き●132ps/6,000rpm、17.3kgm/6,800rpm●10・15モード燃費:13.0km/L●タイヤ:205/55R16●価格:178.8万円(試乗車:201.5万円)

公式サイトhttp://toyota.jp

 
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