Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > トヨタ ヴォクシー ZS

トヨタ ヴォクシー ZS新車試乗記(第472回)

Toyota Voxy ZS

(2.0L・CVT・FF・245万7000円)

ミニバン界のカローラ、
ノア/ヴォクシーの
正常進化に隠された意味とは?

2007年07月26日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

事実上の国内トップセラー

2007年6月27日に、2代目に進化したヴォクシー(ネッツ店向け)およびノア(カローラ店向け)。初代が登場したのは2001年11月だから、約5年半ぶりのフルモデルチェンジとなる。その間、初代ヴォクシー/ノアの累計販売台数は合わせて約80万台にも上り、「事実上の単一車種」(すなわち、セダンとフィールダーの合計であるカローラを除く)としては国内でもっとも売れた登録車(普通車)の1つとなった。特にモデル末期でも逆に伸びを見せたという点がすごい。トヨタにとっては言うまでもなく国内向け最重要モデルだ。なお、モデルライフ後半でヴォクシーが販売台数でノアを上回ったため、新型はノア/ヴォクシーではなく、ヴォクシー/ノアと呼ばれる。

そんな人気車ゆえ、2代目がキープコンセプトとなるのは当然の流れ。プラットフォームの基本部分は踏襲しつつ、着座位置やステップ高を下げて乗り降りを楽にしたり、サードシートの跳ね上げをバネでワンタッチ化するなど、主に使い勝手の面で改良されている。

■新車乗用車登録台数(1~12月統計 ※順位は事実上の単一車種としてのもの)
  ヴォクシー ノア ヴォクシー/ノア合計台数 その年の販売 台数1位モデル
2002年 7万7958台 9万7080台 17万5038台 フィット(25万0790台)
2003年 5万6343台 8万6922台 14万3265台 フィット(18万2285台)
2004年 6万2371台 7万7146台 13万9517台 フィット(14万9503台)
2005年 7万2991台 7万2859台 14万5850台 ヴィッツ(13万1935台)
2006年 6万3546台 5万4283台 11万7829台 ヴィッツ(11万7641台)

新開発2リッター直4とCVT、新技術「バルブマチック」も採用

パワートレインは新開発の2リッター直4「3ZR-FE」+CVT(無段変速機)に刷新。中でも上級グレード用エンジンの「3ZR-FAE」に採用された「バルブマチック(Valvematic)」がトピックだ。バルブマチック搭載車は10・15モード燃費:14.2km/Lを達成している。生産はトヨタ車体(株)の富士松工場(愛知県刈谷市)で、販売目標はヴォクシーとノアで各5000台の計1万台とされている。

価格帯&グレード展開

全車2リッター・CVTで、8人乗りが基本

ヴォクシーとノア、いずれも2リッター直4+CVTのみの設定で、価格帯も同じ199万5000円~265万5000円(4WD車は20万~22万0500円高)。グレード設定内容も基本的にまったく同じだ。乗車定員は8人乗りが基本で、サイドリフトアップシート仕様車のみ7人、積載性を重視した「Trans-X」(ノアの場合は「YY」)が5人乗りとなる。

ヴォクシーのトップグレード「ZS」(ノアでは「Si」に相当)は、バルブマチック付きエンジンを搭載。この「ZS」や標準エンジンの「Z」(ノアにおける「S」)はわずかに3ナンバー幅(1720mm)となるが、その他の主要グレードは5ナンバー枠に収まっている。

パッケージング&スタイル

取り回しを良くするための3ナンバー化

試乗した「ZS」のボディサイズは全長4640mm×全幅1720mm×全高1850mm。3ナンバー幅となっているのは、通常の195/65R15よりワンサイズ大きな205/60R16タイヤを収めて、なおかつ最小回転半径を5ナンバー車と同じ数値(5.5メートル)とするためだ。プレス品のフェンダーパネルは微妙に膨らんでいるが、そこは取り回しの良さが売りの「ジャストサイズミニバン」だから、極力3ナンバー化が目立たないようになっている。このあたりは女性ユーザーの心理を考えたものだろう。

脱ボクシーなヴォクシー

エクステリアの印象はノアはともかく、ヴォクシーに限ればかなり変わった。先代は「Boxy」と綴りたくなるくらい箱っぽく精悍なデザインで、そこが販売台数で優位だったノアを、モデルライフ後半で追い抜いた最大の要因となった。しかし新型は「2段積みデザイン」のヘッドランプなど先代の特徴を受け継ぎつつ、エッジを丸める方向に再デザイン。トヨタが目指したように依然「クールで個性的」だが、ちょっと動物的にもなった。子供には受けるかも。試乗車はテーマカラーの「ダークバイオレット・マイカメタリック」で、個人的には「クジラさん」に見える。

インパネシフト、良好なドラポジでさらに高まった完成度

センターメーターを先代から引き継ぎ、コラムシフトを廃して新たにインパネシフトを採用した新型。ユーティリティも含めて完成度の高かった先代だが、やはり新型の方がいい。インパネシフトは使いやすいし、前方視界もセンターメーター(上級グレードはオプティトロン)の視認性もとてもいい。質感も今風になったし、例の「スタートボタン」も上級グレードに付いた。「ZS」には7速パドルシフトも備わる。特にいいのはチルト(上下)&テレスコピック(伸縮)ステアリング、そして運転席の上下アジャスターが全車標準になったことで、ほぼ思い通りの運転姿勢がとれるようになった。ヒップポイントの基準位置が先代比で30mm下がり、乗降性や乗用車らしい着座感にプラスになっている。

前方、左サイド、後方をカバーするモニター

オプションのHDDナビゲーションシステムと同時装着できるフロント&サイドモニターは、従来タイプよりさらに見やすくなった印象で、特に画像処理で真上から見た映像に変換するサイドモニターが良くなった。左前方の死角を映し出すモードも付いている。このあたりは左前を広角レンズで映し出す日産のサイドブラインドモニターを意識しているはずだ。これらとセットでインテリジェントパーキングアシスト等も付いてくるが、価格は43万0500円となかなかのいいお値段。HDDナビとバックモニターだけなら34万6500円だ。

3列シート全車でウォークスルーが可能に

試乗車は「ロングスライドマルチ回転シート」(3万5700円)付きで、いわゆる回転対座が可能だ。セカンドシート中央席を跳ね上げれば、キャプテンシートのように1列目から3列目までウォークスルーが可能なのは従来と変わらないが、これが標準の非回転シート(タンブル収納式シート)でも可能になったのが新型の特徴だ。ミニバンのシートアレンジとしては、最もシンプルで応用の効く解決方法だろう。弱点はセカンドシートの中央席が補助席っぽくなることか。

ステップ高は低く、子供が乗り降りの際につかまる取っ手があるなど、お父さん以外もイイと思える工夫が施されている。特に新型が売りとするのは、回転シート車の「チャイルドケアモード」。乳幼児をチャイルドシートに乗せる時などに便利なように、セカンドシートを外向きに回転できる機能で(助手席側シートで60度、運転席側で30度)、子育て中の人がこれを見たらグラッと来そうだ。このあたりの操作性まで考えてあるため、回転対座モードにするのも意外と簡単だった。こうして見ると、やはり回転シート付こそヴォクシー/ノアの本命か、と思えるが、実際には価格の安いタンブルシートの方が売れ筋となるかもしれない。

広さは十分のサードシート

サードシートの乗り降りはセカンドシート中央から、というより、やはり通常通りセカンドシートの背もたれを倒してやった方が楽だ。開口部が広く、操作力も軽くすむので、そう大儀ではない。サードシートの座り心地はもちろんセカンドより落ちるし、長時間はつらいが、足もとから頭上まで空間の広さは十分。子供なら気にならないかもしれない。

跳ね上げのデメリットを解消

サードシートを横に跳ね上げて収納するのは、座り心地のいいシートと積載性を両立するのに定番の方式。しかし重いシートを跳ね上げるのに力が要ったり、上げてからフックで固定するのが面倒だったり。そこで新型ヴォクシー/ノアでは強力なスプリングを仕込んで、一連の跳ね上げ操作をワンタッチ化。固定用フックもワンタッチ式のバックルに変更した。結果「今までの苦労はいったい・・・」と思わせる簡単操作ができるようになっている。これならサードシートの前後スライドや、大げさな電動格納システムは必要ない、と思わせるほどだ。

少人数なら「Trans-X」もいい

それでもまだ荷室スペースが足りない場合は、回転シート車ならセカンドシートをロングスライド機能で前まで寄せてスペースを確保(最大荷室長:1500mm)。標準のタンブルシートの場合は、前に跳ね上げればいい(同:1600mm)。自転車などの大物を積むのに有利なのはタンブルだが、人間を乗せることを主体で考えればやはり回転シートだろう。なお、2列シートとフラットなデッキボードを組み合わせ、フラットベッドや大きな収納スペースを生み出す「Trans-X」(ノアはYY)というグレードが用意されているのはすばらしい。少人数のアクティブな家庭なら、これが一番使いやすいと思う。

基本性能&ドライブフィール

国産市販車初の「バルブマチック」とは

試乗車は最上級の「ZS」グレード。トヨタ初の「バルブマチック」付き2リッター直4「3ZR-FAE」(158ps/6200rpm、20.0kgm/4400rpm)を積む。バルブマチックとは、モーターアクチュエーターでバルブのリフト量を連続可変させ、それによってスロットルの代わりとするもので、理論的にはBMWのバルブトロニックと同じものだ。ただしトヨタでは独自のカム機構や極小のプラネタリーギアを使ったアクチュエーターを新開発することで、まったくのオリジナルシステムとしている。このあたりの詳細は歯車系工学技術の専門領域で、とても難解。専門業界誌をご参照ください。

バルブマチックの最大のメリットは、吸気抵抗となるバタフライを介さないことでポンピングロスを低減し、燃費が良くなることだ。燃費改善率が高いため、今後はどんどん採用例が増えてくると思われる。なお、BMWのバルブトロニック同様、バルブマチックにも実はスロットルバタフライがあり、主にアイドリング領域で使われるようだ。

何の不満もない

とは言えBMWのバルブトロニック同様、バルブマチックだからといって特別パワフルに感じられるわけではない。非バルブマチック仕様の「3ZR-FE」(143ps/5600rpm、19.8kgm/3900rpm)に比べて額面上のパワーは確かに上で、高回転での伸びもあるように思えるが、常用回転域での差は数値ほどはないという感じだ。いずれにしても、1600kg余りの車重に150ps前後のパワー、20kgmのトルクは十分。例のごとく出来のいいCVTゆえに、変速ショックやエンジン音も急激な高まりなしに加速できるのがいい。

乗り心地は205/60R16タイヤを履く「ZS」でもまったく問題ない。特に書くことがないくらい「何の不満もない」という印象に終始する。フル乗車で走ってはいないが、このパワーなら高速道路でも、そう不満なく走ることができそうだ。平地で巡航するだけならエンジンノイズはほとんど気にならない。ただ、絶対的なパワフルさはなく、ついエンジンを回し気味になる。エンジン先行でそのあと車速がついてくるCVTの感覚は、車重の軽いクルマと比べると少々気になるレベルだ。

メリットを生かすならエコ運転

あくまで2名乗車くらいまでという条件付きだが、7速マニュアルモード付きCVT(Dレンジでもシフト操作を受けつける)を駆使すれば、1.5リッタークラスのハッチバック車みたいにスポーティに走ることも可能。現行(3代目)ステップワゴンほどではないが、ハンドリングもミニバンとしては十分に機敏で、安定感のあるコーナリングができる。ただし飛ばしてばかりいると、車載燃費計の数値は走りっぷり相応の低空飛行。こうなるとバルブマチック以前の問題で、そのためにも普段は例の「エコドライブインジケーター」(エコ運転すると緑色のランプが点灯)を見ながら運転したい。参考までに今回は200kmほど試乗し、車載燃費計の数値は約8km/Lだった。10・15モード燃費は14.2km/Lだ。

ここがイイ

5ナンバーサイズの正常進化であること。コンセプトを見事なまで変えず、とにかく使い勝手を細かく更新してある。その最も象徴的なのがシートアレンジで、前述のように先代のものをより使いやすくした。スタンダードなタンブルシートでもセンターウォークスルーできるようになったのが特によい。片側をタンブルしておくと、室内移動がしやすい5人座りの空間ができる。もちろん跳ね上げ式サードシートという、ミニバンでは理想的なシート収納法を残したこと、さらにそれを楽にしたことはすばらしい。これで床下のブラインド・ラゲッジスペースも残せたわけだ。外から見えないこの収納は、ファミリーカーにとって何かととても貴重なもの。さらにこのラゲッジのトノカバーが3分割になり、物の出し入れがしやすくなったのも文句なしにいい。

運転席が3㎝とはいえ低くなって乗り降りしやすくなったし、ピラーにアシストグリップがちゃんとあるのも高評価。Bピラーの子供用グリップも、子供に使い方を教える必要はありそうだがアイデア物だ。通信ユニットを内蔵したG-Book mxがミニバンに採用されたのも、あたりまえとはいえ、すばらしいこと。子供がこうしたハイテクに早くから馴染んでくれれば、ITSの未来は明るい。

こうして考えると、モーターデイズが高く評価した初代ホンダステップワゴンの正当な進化型が、「日産」セレナや、この「トヨタ」ヴォクシーというのがちょっと皮肉だ。初代ステップワゴンで不満だったことは、10年を経てこのヴォクシーでことごとく解消されている。その意味では究極の5ナンバー「ワンボックス」車だ。

ここがダメ

ノアのエクステリアはプレーンで嫌みはないが、差別化をねらったと思われるヴォクシーのデザインはかなりの個性だ。bBにも通じるトヨタ的アメリカンルックは、がんばっているとは思うが、正直かっこいいとはいいかねる。セダンのアリオン同様、うねった曲面ボディパネルは5ナンバー枠でデザインをがんばるための最新アイテムのようだが、これもノア/ヴォクシー2つの個性を演出することで販促を促す、という意味では効果的なのだろうか。

タンブルシートも評価したいモーターデイズとしては、回転シートでないとチャイルドケアがないことは残念なところ。おそらくトヨタも回転体座の使用頻度がそう高くないと認識しているはずだが、それがあったからこそチャイルドケアが安く(3万5700円)設定できたのも確かだ。しかし量販タイプであるタンブルシートにこそ、チャイルドケアが欲しかった。

後席の子供が見られる後方確認ミラーはやっとついたと評価したいが、画角が広すぎ。後席全体が見渡せるのはいいが、肝心の子供の映った姿が小さすぎる。もう少し画角の狭いミラーを可動式にし、ピンポイントで子供の表情が見られるタイプにすべきだ。

電動スライドドアのスイッチがステアリング左側のダッシュボードにある。夜間手探りで別のスイッチを探している時にうっかり押しそうになってしまったし、そもそもステアリングの死角になりやすく、左手で操作しなくてはいけないためどうにも操作しにくい。間違えて押さないためだとは思うが、この手のスイッチはもっと正面に大きく配置した方がかえってトラブルが少ないと思う。

左ドアミラー下の補助ミラーで、例のフェンダーに付く補助ミラーは免れたが、いずれにしてもあまり実用的とはいえない。国の指導をクリアするためにやっているだけで、消費者のメリットは少ないのではないか。これがなくてもいっこうにかまわないから、その分もうちょっと電子的な安全装備を標準化してもらいたい。つまりこの分の安全にかけるコストはVSCの標準化などに使うべき。ヴォクシーのように日本で一番売れるクルマにもしVSCを標準化したというなら、ものすごく画期的なことだと思う。トヨタならそこまでやって欲しかった。

総合評価

ミニバンは子育て世代の必需品

日本で最も売れているクルマ(除く軽自動車)がヴォクシー/ノア連合であることは、前述の通り。なぜ売れるかは簡単なこと。「必要なクルマ」が安くて、突出していないからだ。必要なクルマというのはどういうことかというと、子育て世代の必需品であるということ。クルマがないと子育ては厳しい。もちろんクルマなど無くても子育てはできるが、クルマがあるととても楽だ。これは実感した人でないとわからないと思うが、とにかく子育て世代にとって、クルマはないと困るものだ。さらにその場合のクルマはワンボックスタイプのミニバンであるとさらによい。ミニバンのように広ければ、子供にまつわる様々なものが放り込んでおけるし、出かける時にも余裕がある。ジジババを含めた大人数も乗せやすく、もちろん昨今はチャイルドシートがいくつかの座席を占拠したままだから、座席数は多いに越したことはない。とにかく子育てに3列シートミニバンはマストなアイテムといってもいい。

またヴォクシー/ノアは目立たず突出していない。子育てはあまりオシャレにはいかない。けっこう生活臭い。となるとあまり目立つ(あるいはオシャレな)クルマではちょっと使いづらい。よくある、そして良くできた生活の道具でけっこう、ステイタス感などない方が、子育てには良いのだ。その点、どこにでもあるヴォクシー/ノアは最適。今時貴重な5ナンバーサイズでコンパクトだし。その上、安い。安いというのは価格ばかりでなくメンテや下取りといったトータルカーライフの費用として。総額250万も出せば買えるし、5年乗ってもまだけっこうな値がつく。5年落ちなら50万円位で売れるから、年間40万円、月3万円というところ。もちろん10年乗るなら月2万円ほどにすぎない。それくらいで家族の幸せが買えるなら、安いものだ。

ミニバンに乗って生活し、ミニバンに乗ってレジャーに出かける。子供と一緒の暮らし、子供の成長を糧とする暮らし、それにはミニバンが必要だ。ただしそれはクルマ好きの生活ではないから、特にクルマ好きのお父さん(あるいはファミリーぽいことを嫌悪するお父さん)はミニバンをある種、敵視している。クルマは走ってナンボという部分からミニバンはほど遠いと。確かに昔はそうだった。しかしもはやミニバンでも走りを楽しめるものが登場してきている。ヴォクシー/ノアもまあ十分でしょうと言えるレベル。それで、ますますミニバンが売れる。結果、日本で売れるクルマはミニバンだけというようになってしまった。

しかしそんなミニバンで育った子供たちは、残念ながらクルマ好きに育たないのが現実だ(現在の18歳はすでにミニバン育ち世代だ)。ミニバンで楽しい思い出を作ってきたが、それはミニバンというクルマの思い出ではなく、ミニバンというクルマで楽しんだ思い出だ。したがって大きくなって免許取得年齢になっても、セダンやスポーツカーといったクルマに乗ったことがないから、残念ながら自らクルマに乗ろうとはしない。やがて結婚し、子供ができればきっとまたミニバンに乗るとは思うが、やはりそれ以外にクルマに目覚めることはないだろう。現在のミニバン中心のクルマ社会では、もはや今後クルマは売れなくなる一方だと思う。ミニバンを売れば売るほど、クルマ好きが減っていくという事実に気付いている人は多いはずだが、そうは言ってもとにかく今はミニバンを売るしかないのだ。

トヨタはもっと別のこと考えている

ということで、トヨタあたりはもっと別のこと考えているようだ。まあ、クルマ好きにマニアなクルマを売ることが商売ではなく、欲しい人に良い商品を供給するのが商売の基本なのだから、そこへ猛進しているようだ。例えばこのヴォクシー/ノアからトヨタは残価設定クレジットでの販売を強化している。これは3年後の下取り価格を設定して、残りの金をローンで支払うというもので、毎月の支払いが少ないのがウリだ。人気車で中古車相場の安定しているヴォクシー/ノアは、なんと50%の残価を設定している(残価は本来、販売店が決めるものではあるが)。つまり250万円のクルマなら、その半分の125万円を据え置き、残りを3年で払うわけで、月々の負担がグッと軽くなる。総額を同じ支払いとするには、倍の6年長期ローンにしなくてはならないわけで、こうなると金利もよけいにかかるから、残価設定は有利ということになる(実際には据え置いた分にも金利はかかるので、そう単純ではない)。実際あるディーラーでは、ヴォクシー購入者でローン利用者の半分以上が、すでにこれを使っているという。

残価設定ローンでは3年後に新しいクルマに替えて同じように支払えば、理論的には3年ごとに新車に乗れる(メーカーとしては3年ごとに買い換えてもらえる)わけで、これは一種の3年リースに近い。これは「クルマを買う(所有する)」より、「ミニバンを子育ての必要な期間だけ借りる」という考え方に近く、クルマが売れない時代には有効かもしれない。ただこれは人気車種だからやれることで、中古車価格の不安定なマニア車(一部のラテン車のような)ではとてもできない話。かつて、今はなきローバーがこのやり方で販売し、窮地に陥ったこともある。ただしこれをうまくやれば、ディーラーやメーカーにとってはいわゆる顧客の囲い込みができて、メリットが大きいわけだ。

こうやって自社シェアをじりじり上げようとしているトヨタだが、この残価設定クレジットにはもっと深慮があるのではないか、とも言われている。それは何か? それはたぶんハイブリッドだろう。トヨタは3年後にはすべてのクルマにハイブリッドを導入するはず。例えばヴォクシー/ノアに気に入って乗っていたとしても、更に燃費が良くて環境に優しいハイブリッド仕様が出たら、特に子育て世代は環境意識が高いはずだから、つい買い換えをするのではないか。そのきっかけを作るのが残価設定クレジットの終了時期であり、買い換えを促進する手段としても新たな残価設定クレジットがあるのではないか、そんなふうに思えるのだ。ハイブリッド車がたとえ少々高額で、月々の支払いが増えたとしても、その分燃料代は減るのだからノープロブレム。つまり高価なハイブリッド車は残価設定クレジットにすることでその値段がよくわからなくなる。そのための手段が、今普及に努めている残価設定クレジットだとすれば、なるほど、ハイブリッドを持たない他社があまり積極的でないのも頷ける。

ハイブリッドによって、そしてやがてはプラグインハイブリッド(先日のニュース参照http://www.motordays.com/news/articles/plug-in_hv_toyota_20070725/)によって、サステイナブル(持続可能な)クルマ社会を作っていこうというトヨタの大きな分母が、このベストセラーカーであるヴォクシー/ノアなのだ。となれば、決して台数を減らすような失敗は許されない。この新しいモデルがかなり保守的な作りなのもそれゆえ納得できる。ファミリーミニバンとしては、もう先代あたりでも十分な完成型であり、特に冒険する必要はなかったし、多彩なミニバン車種を持つトヨタゆえ、これはこれでよいということだ。本当の勝負車は来るべきハイブリッド・ヴォクシー/ノアということになるのだろう。

試乗車スペック
トヨタ ヴォクシー ZS
(2.0L・CVT・FF・245万7000円)

●形式:DBA-ZRR70W-BRXSP ●全長4640mm×全幅1720mm×全高1850mm ●ホイールベース:2825mm ●車重(車検証記載値):1630kg(920+710) ※オプション増加分(+40kg)含む ●乗車定員:8名●エンジン型式:3ZR-FAE ● 1986cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置 ※バルブマチック付 ● 158 ps(116 kW)/ 6200rpm、20.0 kg-m (196 Nm)/ 4400 rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/60 L ●10・15モード燃費:14.2 km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●タイヤ:205/60R16(Toyo Tranpath ) ●試乗車価格:312万6900円 ( 含むオプション:S-VSC+ヒルスタートアシストコントロール+サイド&カーテンシールドエアバッグ 13万6500円、デュアルパワースライドドア 5万2500円、ロングスライドマルチ回転シート 3万5700円、HDDナビ+フロント&サイドモニター+インテリジェントパーキングアシスト+AC100Vコネクター+NAVI・AI-Shift制御 43万0500円、ETCユニット 1万4700円 ) ●試乗距離:200 km ●試乗日:2007年7月

トヨタ公式サイト>ヴォクシーhttp://toyota.jp/voxy/index.html
トヨタ公式サイト>ノアhttp://toyota.jp/noah/index.html

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

トヨタ 最新の試乗記10件

最近の試乗記一覧

関連コンテンツ一覧