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フォルクスワーゲン e-up!新車試乗記(第756回)

Volkswagen e-up!

(モーター+リチウムイオン電池・366万9000円)

クルマ好きは
電気up!の夢を見るか?


2015年04月10日

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キャラクター&開発コンセプト

“e-drive for everyone.”(みんなのための電気自動車)


VW e-up!
(photo:VGJ)

欧州では2013年秋に販売開始、日本では2014年10月に導入を発表、2015年2月1日から受注が始まった「e-up!(イー・アップ!)」は、VWの最小コンパクトカー「up!」(欧州では2011年、日本では2012年発売)がベースの電気自動車(EV)。追って日本でも導入予定のe-ゴルフと共に、VWにとっては「化石燃料に依存しない次世代モビリティへのひとつの回答」となるモデルだ。

VWによれば、EVは「価格や航続距離などの課題はあるものの、排気ガスを出さず、クリーンかつ静粛性に優れた電気自動車は、一定のお客様のニーズを満たし、新しいモビリティとして受け入れられる可能性があると判断」したという。VW自身は2020年に総生産台数の3%前後がEVやPHEVになると予測している。VWグループの年間生産台数は現在でも約1000万台なので、3%は年間30万台以上になる。

航続可能距離は185km(JC08モード)


2014年10月に日本導入が発表されたe-ゴルフとe-up!
(photo:VGJ)

もともとup!は、当初からEV化を想定して開発されており、e-up!でも外観は大きく変わらない。その床下にはエネルギー容量18.7kWh、重量230kgのリチウムイオン電池が、ボンネットの下には最高出力60kW(82ps)、最大トルク210Nmの駆動用モーターが搭載される。トランスミッションは多くのEV同様に1段のみ。

車重はガソリンup!(920kg)より240kg増えて1160kgだが、0-100km/h加速は12.4秒を誇り、最高速は130km/hに達する。航続可能距離はJC08モードで185kmだ。

生産はガソリンup!と同じスロバキアのブラチスラバ工場で、リチウムイオン電池パック、モーター、制御ユニット等はVWの自社製になる。ただしバッテリー「セル」はパナソニック製のようだ。

200V普通充電に加えて、急速充電“CHAdeMO”にも対応


200V普通充電はボンネット下のポートで行う。
(photo:VGJ)

充電に関しては、200Vの普通充電ポートをボンネット下に装備(e-ゴルフはフロントエンブレム内にある)。空の状態から約8時間で満充電にできる。なお、この場合の「普通」充電とは、急速充電ではないという意味になる。

また、ガソリンup!で給油リッドがある部分には、400V急速充電用のポートを標準装備。日本仕様は日本の急速充電規格“CHAdeMO(チャデモ)”になる。こちらは約30分で約80%まで充電可能。今回試乗した試乗車(デモカー専用の初期導入車)はCHAdeMO未対応だったが、実際に販売される車両は対応済みのものになる。

■外部リンク
・レスポンス>庄司社長「CHAdeMO対応に万全を期す」(2014年10月14日)

 

急速充電用ポートは右リアフェンダーのリッド内にある
(photo:VGJ)

■参考記事
・新車試乗記>VW high up! (2012年11月掲載)
・新車試乗記>日産 リーフ (2011年7月掲載)
・新車試乗記>三菱 i-MiEV (2009年12月掲載)

 

価格帯&グレード展開

価格は366万9000円


VWディーラーのEV専用スペースで普通充電中
車両協力:フォルクスワーゲン小牧

e-up!は4ドアのみの単一グレードで、ボディカラーはピュアホワイトのみ。価格は366万9000円。

レーザーレーダーを使用したシティエマージェンシーブレーキ(低速域追突回避・軽減ブレーキ)、ESP、4エアバッグ、シートヒーターが標準装備になる。

ガソリンup!は現在、2ドアが154万8000円、4ドアが175万6000円~179万9000円なので、e-up!の値段はおおむねガソリン車の2倍近い。ただしEVには購入補助金があり、それを利用すれば実質的な購入費用はもう少し安くなると思われる(ただ保有期間の義務など様々な条件が付く)。

参考までに日産リーフの価格は266万3280円~347万0040円。そしてi-MiEVは、47kW(64ps)版が283万8240円、30kW(41ps)版が226万1520円。

また、EVと併せて購入したいのが自宅用の200V普通充電器。e-up!のカタログ巻末には、トヨタホーム製(19万円~、補助金を受ければ2014年時点では実質13万円~)、パナソニック製(23万5000円~、同実質15万5000円~)、簡易タイプ(車両に搭載される充電ケーブルを使用する。9万5000円~)などが掲載されている。

なお、電池の保証期間は、8年間・16万kmとかなり長め(ただし使用できる容量が70%以上の場合は保証の対象にならない)。

e-Golfも導入予定


VW e-Golf
(photo:VGJ)

さらに2015年央には現行ゴルフ7ベースのEV「e-ゴルフ」も導入されると発表されている。

e-ゴルフに搭載されるリチウムイオン電池のエネルギー容量は、e-up!の約1.3倍となる24.2kWh。また、モーターの最高出力は約1.4倍の85kW(116ps)、最大トルクは約1.3倍の270Nmになる。そして車重も約1.3倍の約1.5トン(1530kg)になるが、0-100km/h加速はe-up!より2秒速い10.4秒を誇り(1.2Lターボ・7速DCTのポロに迫る)、最高速はe-up!より10km/h速い140km/hまで伸びる。航続可能距離(JC08モード)は215kmだ。

また、ゴルフ7譲りの先進安全装備も完備し、静粛性や乗り心地もガソリン車のゴルフを上回るはず。VWでは「環境への負荷が最も少ない究極のゴルフ」と謳う。

価格は未定だが、e-up!との関係を考えると、500万円前後が予想される。

 

パッケージング&スタイル

EVになっても違和感がない

ベースはガソリン車のup!(4ドア仕様)だが、EVになっても違和感がないのは、もともとup!がフロントグリルレスのEVっぽいデザインだからだろう。ベース車と明確に異なるのは、前後バンパーの左右にあるC字型の意匠で、フロントのそれはシルバー、リアは赤色リフレクターになっている。

また、前後のVWエンブレムには、EVのイメージカラーであるブルーの差し色が入るほか、フロントドアとリアゲートには「e-up!」のロゴが入る。そして、足もとには空力性能の高い専用デザインの15インチアルミホイールが装着される。

 

ボディサイズはベース車と基本的に同じだが、ルーフアンテナがある分だけ全高が25mm高い

さらに車体の底は、バッテリー保護と空気抵抗の低減を兼ねて、アンダーフロアカバーでフラットボトム化されている。Cd値はガソリンup!より4%優れる0.308とのこと。

しかし多くの人は、よほど注意深くないと、これがEVだとは思わないだろう。そこが見るからに未来的なBMW i3とは違うところだが、それこそがEVを「特別なものには見せない」というVWの狙いでもある。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
三菱 i-MiEV (2009~) 3395 1475 1610 2550 4.5
VW e-up! (2015~) 3545 1650 1520 2420 4.6
VW ポロ (2009~)
※諸元は後期型(2014~)
3995 1685 1460 2470 4.9
VW ゴルフ7 (2013~) 4265 1800 1460 2635 5.2
日産 リーフ (2010~) 4445 1770 1550 2700 5.2~5.4
 

インテリア&ラゲッジスペース

専用メーターや情報ディスプレイを装備

インテリアも一見ガソリンup!と大差ないが、メーターをよく見ると、エンジン回転計に見えるものは、実際にはモーター出力や回生状態を示すパワーインジケーターだし、燃料計はバッテリーの残量計に置き換えられている。こういった本物の指針を使ったアナログメーターの方が、液晶ディスプレイ表示より見やすい。

もう一つ目を引くのは、センターコンソールにある車両情報ディスプレイ「touch+more(タッチアンドモア)」。GARMINと書いてあるのでポータブルナビかと思いきや、(残念ながら)ナビ機能はなく、エネルギーフローメーターなどの車両情報、各種設定、SDカードなどデジタル音源のオーディオ操作機能、携帯電話ハンズフリー機能などのインターフェイスの役割を果たす。

 

左のパワーインジケーターは出力レベルをパーセントで表示(×10)。右はバッテリー残量計

さらに専用アプリをパソコンやスマホにダウンロードすれば、eリモートサービス「Car-Net」(3年間無償)を使用できる。これは、離れた場所から充電残量、外気温、ドアの施錠状態、GPSで駐車位置などをチェックできるほか、エアコンやヒーターのスイッチオンも出来る優れもの。プラグイン状態で車内を適温にしておけば、それだけバッテリー容量をセーブできるというわけ。

 

車両情報ディスプレイ「touch+more(タッチアンドモア)」。写真はエネルギーフローメーター表示中

パソコンやスマホに専用アプリをダウンロードして使うeリモートサービス“Car-Net”
(photo:VGJ)
 

バッテリーの存在を感じさせない


フロントシートはドイツ車っぽくヘッドレスト一体型のハイバックタイプ。テレスコはないが、ポジションは不満なく決まる

最も感心するのは、総重量230kg分のリチウムイオン電池を搭載しながら、キャビンや荷室の広さがガソリンup!と大差なく見えること。バッテリーは主に前後シートの座面下にあり、後席のヒップポジションはやや上昇しているようだが、着座姿勢は自然で、ヘッドルームも十分。足の長い人が後席で足を伸ばさない限り、バッテリーの存在はほとんど意識されない。

あえて弱点を言えば、それはガソリンup!同様に4人乗りであること、そしてリアのサイドウインドウがヒンジ式になることだ。

 

ガソリンup!と大差なく見える荷室まわり(同等とすれば容量は約250L)

電池の存在を感じさせない後席まわり。カチッとした硬めの座り心地だが、なかなか快適
 

後席背もたれは5:5分割。床の高さはフロアボードで2段階で調整可能(写真は下段)

荷室床下にはパンク修理キットと、出先の充電ポイントで使用するための充電ケーブルが備わる
 

基本性能&ドライブフィール

ガソリンup!とは対極のスムーズさ

試乗したのは、2014年末に正規ディーラーに配車された初期導入モデル。実際の市販予定車とは異なり、急速充電規格「CHAdeMO」には未対応である点を、まずお断りしておく。

車両を受け取った時点では満充電の状態。VWでおなじみのバタフライ式キーをステアリングコラムに差し、ブレーキを踏みながらキーをひねる。するとエンジンは掛からないが、エレベーターが到着した時のような「ピンポン♪」という電子音が鳴って、メーターにReady(準備OK)と表示が出る。あとはシフトレバーをDに入れて走りだすだけだ。

いわゆるクリープはなく、つまりブレーキペダルを離してもクルマは動き出さないが、アクセルを踏み込めば、210Nm(21.4kgm)のトルクが瞬時に立ち上がり、速やかに加速し始める。5速セミATのup!とは、対極のスムーズさがある。初めてEVに乗る人でも、この最初の加速で不安はあっさり消し飛ぶはず。

超トルクフル。そして速い!


前後シート下に、計204個のセルから成るリチウムイオン電池を搭載する
(photo:VGJ)

さらにアクセルを深く踏み込めば、最新高層ビルのエレベーターの如く滑らかに、そして不安をみじんも感じさせず、一気呵成に加速してゆく。これに近い感覚は、i-MiEVやリーフ、そしてもちろんi3やテスラでも味わえるが、一見ガソリン車に見えるクルマで、これを味わえるのが感慨深い。

ちなみに最高出力は60kW(82ps)、車重は1160kg。一方、リーフは、最高出力が80kW(109ps)、最大トルクが254Nm(25.9kgm)で、車重が1430~1460kgある。結果、車重あたりのパワーは、e-up!とほぼ互角であり、実際のところ、そのトルク感も、記憶の中のリーフに割と近い。

ちなみにe-up!の0-100km/h加速は、ガソリンup!(欧州向け5MT車)の13.2秒より0.8秒速い12.4秒だが、感覚的にはもっともっと速く感じられる。ヒューンという音を除けば、ほぼ無音なせいだろうか。特に中間加速は速く、VWによれば80km/hから120km/hまでの加速タイムは、ガソリンup!の15.5秒に対して、10.5秒だという。最高速は130km/hで制御される。

走行モードは「Normal」「Eco」「Eco+」の3段階

e-up!では、走行モードを「Normal」、「Eco」「Eco+」の3種類から選べる。

Normal は最もパワフルで、最高出力60kW、最大トルク210Nmを発揮し、0-60km/h加速4.9秒、最高速130km/hを発揮するフルパワーモード。今回はもっぱらこれで走った。

Eco は、出力特性がフラットになり、エアコンの効きが制限されるモード。最高出力は50kW、最大トルクは167Nmにダウンし、0-60km/h加速は6.1秒、最高速は120km/hになる。

Eco+ は出力特性がさらに穏やかになり、空調が完全に止まってしまうモード。最高出力は40kW、最大トルクは133Nmになり、0-60km/h加速は7.6秒、最高速は95km/hに制限され、何と空調ファンさえ止まってしまう。

ただし、EcoやEco+でもアクセルを深く踏み込めばフルパワーになり、最高速を引き出せるので、少なくともEcoであれば不満なく走ることができる。

重厚かつシットリ。静粛性もクラス破り

シャシー関係もガソリンup!とは想像以上に別物だった。リチウムイオン電池がバラストのように床下に搭載されたことで、重心は圧倒的に低い。また、フロアパンがほぼ全面的に設計変更されたほか、高強度の熱間成形鋼板(いわゆるホットスタンプ材)の使用比率も重量比でガソリンup!の8%から33%に大幅アップしている。

結果としてボディ剛性感、特にフロアのガッチリ感は普通のゴルフを超えて、2トン級の高級セダンレベル。また、EVはエンジン音などがしない分、他のノイズが気になりやすいが、ロードノイズはほとんどゴルフ7並みに静か。初期導入車には、遮音に少し難のある車両もあったようだが、今回乗った車両については文句のつけようがなかった。

 

タイヤサイズはガソリンup!と同じ165/65R15だが、専用開発のダンロップ SP ストリートパフォーマンス(Made in Germany)。転がり抵抗は7%減とのこと

ハンドリングも悪くない。まず、4輪を路面に押し付けているようなシットリした接地感が気持ちいい。コーナーでも切り始めの一瞬こそ鈍いものの、その後は適度にロールしてスムーズに曲がっていく。舵角がついた状態で意図的にアクセルを踏み込むと、フロント内輪がシューンと一瞬だけ空転する。なんというトルク持ち。

乗り心地もいい。ホイールベースは軽自動車並みの2420mmだが、ピッチングは皆無。高剛性ボディ、低重心、専用165/65R15タイヤなどが、絶妙なバランスを見せる。ちなみに前後重量配分は57:43(660+500)で、ガソリンup!の61:39(560+360)と比べると少しリアが重め。とにかく全体にしっとりした落ち着きがある。

回生ブレーキの強さを5段階で調整できる

あと面白いのは、回生ブレーキの強さを5段階で選べるところ。通常の「D」は回生ブレーキが効かないモードで、アクセルを戻しても一般的なガソリン車並みのエンブレならぬ“回ブレ”しか効かない。これなら誰でも最初から違和感なく乗れる。

また、このDモードでは、アクセルオフの状態でコースティング(慣性)走行になり、クルマの慣性力を活かした走りになるという。このあたりはポルシェでもコースティングを積極的に採用しているVWグループらしいところ? 巡航中には確かに独特の滑走感がある。

そしてシフトレバーを左に振ると、その度に、「Stage 1」「Stage 2」「Stage 3」と回生ブレーキの強さが増していき、手前に引くと「Stage 4」に相当する「B」モードに入る。

 

シフトレバーを左右方向もしくは手前(B方向)に振っても、中立位置に戻る。BからDに戻す場合はもう一度B方向に引く(D方向に押すと、Nに入ってしまう)
(photo:VGJ)

つまり回生ブレーキの効き方を細かく調整できるため、ワインディングではAT車のマニュアルモードのような感じで使えて、これがなかなか便利。EVでも運転の楽しさ、ダイレクト感を重視する欧州車らしいところだ。なお、「Stage 2」以上では、回生ブレーキが働くとストップランプが自動で点灯するようになっている。

特に「B」では、アクセルオフでフットブレーキがほとんど必要ないほど強力に回生ブレーキが効く。慣れるまでは、思った以上に手前で止まってしまうこともあるが、ストップ&ゴーの多い街中や、下りのワインディングなどでは積極的に使いたいモードだ。

なお、足で操作する油圧ブレーキには、回生ブレーキと協調制御するために、電子制御の「エレクトロメカニカルサーボ」が備わる(そもそもエンジンがないので、吸気負圧による通常のサーボは使えない)。ブレーキタッチなどの違和感はまったくなかった。

航続距離はJC08モードで185km。実質100kmくらいは行けそう


試乗開始直後のメーター。4km走ったら、Rangeは早くも8km分減ってしまった

そんな風に快適かつパワフルなので、いつまでも乗っていたいと思ってしまうe-up!だが、肝心の航続距離は何度も触れたようにJC08モードでも185km。ちなみにリーフは同モードで228km、i-MiEVの64ps版は180kmだ(41ps版は120km)。

そして、今回の試乗スタート時(満充電時)には、170kmと表示されていたRange(残り航続距離)は、実際に走り始めると、その2倍近いペースで減ることが判明。これは想定内だったが、試乗途中で電池切れすると困るので、バッテリー残量計が3/4の段階で、念のため1時間ほど200V普通充電を行った。あわよくばフル充電にしたかったが、1時間の普通充電では1/8ほどしか入らず、残量計は7/8までの回復に留まった。

 

返却時のメーター。試乗距離(80km)、残り航続距離(27km)、バッテリー残量(1/4強)

さらに試乗を続けた結果、今回はDAYSスタッフ5名が交代で、約80kmを走行(撮影のための移動を含む)。試乗終了時のメーターは、残り航続距離が27km、バッテリー残量計が残り1/4強を示していた。

そんなわけで、今回は途中で充電してしまったが、ECOモードを多用し、フル加速を控えた運転なら、連続で100kmは走れたのではないか、と思う。

 

ここがイイ

EVならではの大トルク感、加速感、静かさ、スムーズさ、重厚感

走りだした瞬間から溢れ出る210Nmの大トルク感。それによる俊敏かつウルトラスムーズな加速。モーターの唸り音やロードノイズまで抑えこまれた静粛性の高さ。そして高剛性ボディと低重心などによる高級車のような重厚感。

そして、それらが全長たった3.54m、全幅1.65mの、軽自動車より一回り大きいほどのコンパクトカーで味わえること。最小回転半径も4.6mで小回りも効くし、バックモニターこそないがバックソナーは標準装備。価格を別にすれば、日本市場に最適なEVの姿がここにある。まさに「みんなのための電気自動車」。

ここがダメ

高級車並みの車両価格

この素晴らしい性能と完成度で、車両価格が200万円くらいなら……と思ってしまうのだが、今の時点では366万9000円もしてしまうこと(補助金を使えばもっと安くなるようだが)。出先での急速充電ポイントの数もまだまだ心もとないから、遠出は厳しい。現時点では贅沢なセカンドカーもしくはサードカーという感じか。

空調もEVのウィークポイント。ヒーターよりも電気を食わないということで、強力なシートヒーターが標準装備されているが、クルマに乗ってて肌寒いというのも、なんとなく悲しい感じ。

総合評価

ドライバー寿命とのチキンレース

当サイト名のモーターデイズというのは、もう20年も前に「もうじきモーターの時代がやってきてもいいように」つけたネーミングだ。あの頃、初代RAV4ベースのEV(リース販売された)とかに試乗して、エンジン車よりはるかに素晴らしいトルク感に感銘を受け、さすがにあと20年もたてば「実用的なEV」が当たり前に走っているだろう、と思ったものだ。当時のRAV4 EVはニッケル水素バッテリーで、満充電時の航続距離は100km未満(10・15モードで215km)だったから、実用にはまだ程遠かった。

そして今、EVは確かに数多くの車種が登場し始めているが、航続距離のことを考えると、その多くは所有するのに二の足を踏むものばかり。20年も経っても、いまだ買ってもいいと思えるEVがないのだ。価格とのバランスも悪い。テスラは航続距離が理想に近いが、高価格すぎる。そもそも高級車ではなく、毎日乗れる実用車にこそEVが欲しいのだから。ということで20年では夢は叶わなかった。このあと何年待てばいいのか。もはやEVの普及と自分のドライバー寿命とのチキンレース、といった様相を呈してきた。

中古のリーフは買い?

ところで、この分野で先行した日産リーフは、すでに大容量電池搭載版が出来上がっていると、あるディーラーの人が言っていた。メーカーの人は口が堅いが、ディーラーの人は軽い(苦笑)。ただ、今出さないのは現行ユーザーに気を使っているからだという。そうだろう、実質的に100km程度しか走れず、走行が10万kmを超えたら電池劣化でも保証がないとか(日産は5年または走行10万kmまでバッテリーの容量保証をしている)、何かと問題が指摘されているリーフは、やっぱり顧客満足度が高くないようだ。自宅に充電施設まで設置して買った近所の人も、2年足らずで手放している。

いつでも思い立った時に、自由にどこへでも行ける、つまり「移動の自由」こそが、自家用車を持つ意味だろう。それが条件付きになってしまうEVは、やはり自家用車にはまだなかなか馴染みにくい。

 

とはいえ、業務用となれば話は別かもしれない。先ほどのディーラーの人が言うには「リーフがいいのは軽EVと違ってゆったり人を乗せられること」らしい。毎日100kmほど仕事に使うと、10km/Lのクルマだったら1日1500円ほど燃料代がかかるが、EVなら毎日、夜間電力で充電したら300円くらいか。それを25日繰り返すと1ヶ月で3万円ほど浮くから、4年で150万円ほどになる。総額150万円も出せば中古車で走行1万kmくらいのリーフが買えるから、車両代金はタダ、とも言える。自動車税も平成24年以降の登録車なら平成29年までタダ。ここでも10万円ほどはお得になる。

しかしその計算だと4年後のオドメーターは12万km以上になるから、その頃、電池がどこまでヘタっているかは分からない。

発電機を積むか、電池の高性能化を待つか

で、試乗したe-up!だが、巡航距離などはこれまでのEVと大差ない。しかしながら、走らせてみれば、やはりガソリン車よりはるかに素晴らしいと感じる。そのパワフルで気持ちいい走りを堪能していると、エンジン車には戻りたくなくなるほど。そして中古リーフのような計算をすれば、そう高くもない、と言いたいところだが、やはり「移動の自由」が制限される以上、買う踏ん切りはつけづらい。高速道路では力強く静かで加速もいいのだが、1時間ほどしか巡航できないから、気軽に山間部へお花見ドライブ、という訳にもいかないわけだ。

それを解決するにはBMW i3のように発電機(発電用エンジン)を積むしかないだろう。発電機を載せたレンジエクステンダーになれば、実用性は飛躍的に上がるはず。もちろん、アウトランダーPHEVやプリウスPHVのようなプラグインハイブリッド「EV」車なら、より実用的だ。なんとかe-up!にも発電機が載せられないかと思うのだが…。

「電池の保ち」以外、クルマの出来としては、もうEVに軍配をあげてもいい。それゆえ電池に革命が起きたら、少なくとも日本では一気にEVが増えていくと思う。日本の充電インフラも昨今じわじわと充実してきているし。そこは20年前とはだいぶん違うところだ。

FCV(水素燃料電池車)も、いわば発電機付きEVだが、燃料供給のインフラ面は、ガソリン発電機にはとてもかなわない。その上、電池に革命が起きると、それまでにインフラが整っていなければ「MIRAI」の未来は閉じられてしまうかも。その意味で、VWなどの欧州勢がEVにより積極的なのは、一本筋が通っていると言えるだろう。特にドイツでは、日本とは違って2020年には原発を止め、以降は再生可能エネルギー中心で電気を作る方針であり、電気はかなりクリーンなものになる。今回試乗して実感したように、EVはすでに出来上がっていると言っていいから、充電インフラの整備を進め、電池や制御系の高性能化を待てばよいということだろう。

 

2012年1月のデトロイトショーで発表されたVW E-Bugster。最高出力85kW(115ps)のモーターとリチウムイオン電池を搭載。航続距離180kmを謳ったEVコンセプト
(photo:VGJ)

今や欧州車メーカーとも言える日産はリーフで先行し、VWもBMWも、EVに力を入れている。こうなるとトヨタもHVとFCVの間に、プリウスPHVだけでなくコンパクトなEVを早く投入した方がいいように思うのだが。最近オーリスには1.2Lの直噴ターボが投入されたが、そのあたりでも欧州メーカーの後塵を拝しているわけで、先行きには若干の不安を覚えてしまう。

さて、個人的な話だが、ガソリン車のザ・ビートルに乗っている身としては「E-バグスター」の市販を待望している。これに惚れて今の1.2Lターボのビートルに乗っていると言ってもいいくらいだ。ドライバー寿命が絶たれる前に、300km走れるザ・ビートル「E-バグスター」は果たして出るだろうか。

 

試乗車スペック
フォルクスワーゲン e-up!
(モーター+リチウムイオン電池・366万9000円)

●初年度登録:2014年12月 ●形式:ZAA-AAEAB
●全長3545mm×全幅1650mm×全高1520mm
●ホイールベース:2420mm ●最低地上高:145mm ●最小回転半径:4.6m
●車重(車検証記載値):1160kg(660+500) ●乗車定員:4名

●モーター形式:EAB ●モーター種類:3相交流モーター
●定格電圧:-V ●定格出力:60kW
●最高出力:60kW(82ps)/3000-12000rpm
●最大トルク:210Nm(21.4kgm)/0-2500rpm

●駆動用バッテリー種類:リチウムイオン電池
●総電圧:374V
●総電力量:18.7kWh

●トランスミッション:1段固定式

●一充電走行距離(JC08モード):185km
●交流電力消費率(JC08モード):104W-h/km

●駆動方式:前輪駆動(FF)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション形式(後):トレーリングアーム+コイルスプリング
●タイヤ:165/65R15(Dunlop SP StreetResponse)

●試乗車価格:366万9000円 ※オプション:- -円
●ボディカラー:ピュアホワイト

●試乗距離:約80km ●試乗日:2015年4月
●車両協力:フォルクスワーゲン小牧(愛知県小牧市)

 

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