キャラクター&開発コンセプト
米国で開発された高性能大型EVスクーター
「ベクトリックス VX-1」は米国Vectrix社が開発した大型電動スクーター。専用インホイールモーターとニッケル水素電池を搭載し、0-80km/h加速6.8秒、最高速度100km/hを誇る高性能二輪EVだ。現時点で市販車としては、世界で最も高性能な電動スクーターの1台と言える。
すでに米国、英国、イタリア、スペイン、オーストラリア等で販売されており、英国の自動車保険・ロードサービス大手である「AA」(The Automobile Association、1905年創立)といった企業やNYPD(ニューヨーク市警)などの警察、官公庁を中心に採用されているという。
日本での扱いは250ccクラスのスクーターと同じ
日本では、名古屋市を中心に輸入車や国産車の正規販売店を展開する株式会社ホワイトハウス(本社:名古屋市)が正規輸入販売権を取得。2010年春から販売を開始した。
当面は愛知県東郷町にある同社のマルチブランド大型ショールーム「オートプラネット名古屋」内の直営店で販売する。初年度の販売台数は100台を目標だ。
なお、日本の道路交通法上、VX-1は125cc超250cc以下の普通自動二輪車となり、250ccのスクーター同様、「AT限定普通二輪免許」以上で運転できる。
また道路運送車両法では、出力基準によって125cc超となるが、250cc以下250cc超を分ける出力基準は特にないため、すべて250cc以下と同じ「軽二輪自動車」扱いとなる。よって車検は不要だ。
ベクトリックス社について
1996年創業のベクトリックス社は、二輪ゼロエミッション・ビークルの開発・研究を行っている企業。同社の目標は「ガソリンエンジンからゼロエミッションへ向かうパーソナル・トランスポーテーションの革新」であり、VX-1はその最初の市販プロダクトとなる。
その研究開発や資金は、産業用モーションコントロール機器の世界大手である米国パーカー・ハネフィン社がバックアップ。インホイールモーター、電子制御システム、ボディパネル等も、同社から供給を受けている。また香港のGPバッテリー社からはニッケル水素電池パックの供給を受けるほか、資金および人材面でも強力なバックアップを受けているようだ。言わばEV市場への参入を考える有力企業の合同新規ビジネスといった側面もある。なおVX-1の生産(最終組立)はポーランドで行われている。
同社および関連会社は燃料電池の開発も行っており、それを搭載したプラグイン燃料電池二輪車も開発中だ。同社によれば、燃料電池の搭載によって航続距離が伸びるほか、燃料電池による充電か外部電源からの充電かの選択が可能になり、さらにトリクル(細流)充電を行なうことで自然放電を補えるのがメリットだという。
■参考リンク
・ベクトリックス USA(英語) http://www.vectrix.com/
・動画(YouTube>ベクトリックス ポーランド工場)
価格帯&グレード展開
車両価格は130万円。250ccスクーターの2倍弱
VX-1は基本的に単一モデルで、日本での価格は130万円。なお2010年4月現在、国内で販売されている250ccスクーターの車両価格はだいたい70万円前後で、VX-1はそれらの2倍弱となる。
■ベクトリックス VX-1 130万円 ★今回の試乗車
・ホンダ フォルツァ Z 69万3000円(ベース車)~82万4250円(ABS・オーディオパッケージ)
・ホンダ フェイズ 57万7500円(ベース車)~63万5250円(タイプS)
・ヤマハ マジェスティ 70万2450円
・スズキ スカイウエイブ 62万8950円(タイプS ベーシック)~70万3500円(タイプM)
・ベスパ GTS250ie 69万5000円
・アプリリア スカラベオ 250ie 58万9000円
パッケージング&スタイル
外寸は国産250ccクラスとほぼ同じだが、シート高は高め
以下は国産の人気250ccスクーターと並べた表だが、ボディサイズはそれら“ビグスク”系で平均的なところ。VX-1の全高が高めなのは、ウインドプロテクションを重視して大型スクリーンを備えるからだ。国産250ccクラスではカッコ重視で(最高速もそんなに伸びない)、ショートスクリーンを付けることが多い。
もう一つ、国産勢と異なるのがシート高。日本仕様は20mm低いローシートが標準だが、それでも750mmあり、シート幅も大きめ。結果、身長165センチでは両かかとがベッタリとはいかず、若干の不安がある。スクーターとして考えると、足つき性はあまり良くない方だ。
| 全長 | 全幅 | 全高 | WB | シート高 | |
| ベクトリックス VX-1 |
2120 | 800 | 1370 | 1525 | 750 |
| ホンダ フォルツァ Z | 2185 | 750 | 1175 | 1545 | 710 |
| ヤマハ マジェスティ (250) | 2175 | 780 | 1185 | 1550 | 700 |
| スズキ スカイウェイブ 250 タイプS | 2270 | 760 | 1225 | 1585 | 710 |
国産“ビグスク”的なスタイリング
米国「ROBRADY design (http://www.robrady.com/)」社が手がけたというデザインは、良くも悪くも日本製ビッグスクーター風。試乗中、周囲の人から「EVだ!」と気付いてもらえないのが、淋しいところ。
よく見れば、マフラーはないし、フロントカウルには「ELECTRIC」とステッカー、また前後ウインカーやストップランプは電力消費を抑えるためのLEDなのだが・・・・・・、よほど観察力が鋭くないとEVだとは気付かないだろう。
実はハイテクの電装。残り航続距離や充電状態を表示
大型三眼メーターの中央はアナログ式の速度計。最高速は出力制御が働く100km/h+だが、余裕をもって120km/hまで目盛ってある。
左のメーターはバックライト付の液晶で、デジタル時計、システム状態を知らせる「READY」そして「GO」という文字、そして直近の走行状況から予想される残り航続距離などを表示。
右側のメーターも液晶で、充電状態をバーグラフで表示する。この左右の液晶メーターは、夜間こそ見やすいが、昼間の視認性はいまいちだ。
なお、電装系はすべてCAN(Controller Area Network)で結ばれており、システム全体が統合制御されている。例えば走行中にウィンカーを出しっぱなしにしていると、クラクションが短く「プッ、プッ」となって“無駄な電力の消費”を教えてくれるし、ハイビームにしたときのインジケーターの点灯も一瞬タイムラグがあるなど、コントロールユニットの介在がそこはかとなく感じられる。
回生ブレーキを自在に使いこなせる「アドバンスト・スロットル」
操作系で独特なのが、走行中にスロットル・グリップを通常とは逆方向に回して、回生ブレーキを働かせる「アドバンスト・スロットル」。オートバイ乗りにとっては「?」と思うものだが、機能的には実に優れており、詳しくは後の試乗インプレッションで触れる。これはベクトリックス社がいくつか特許を取得・申請しているものの一つだ。
また車体停止時には同じ操作で、モーターが逆回転し、車体をリバース(バック)させることも出来る(最高3km/h)。ホンダのゴールドウイングならいざ知らず、この程度のスクーターで大げさな、と最初は思うが、実際にはモーターの抵抗で車体を押し引きする時の取り回しがけっこう重く、意外に重宝する。
それ以外は、おおむね一般的なスクーターと同じ。右レバーがフロントブレーキで、左レバーがリアブレーキ。ウインカーもごく一般的なプッシュキャンセル式だ。ヘッドライトは常時点灯なので、オン・オフスイッチはない。
フルフェイスが1個入る
シート下トランクの容量は約40リッターで、フルフェイスヘルメットがちょうど1個入る。国産ビッグスクーター御三家のフォルツァ、マジェスティ、スカイウェイブあたりだと、容量は60リッター前後でフルフェイスヘルメットは2個入るが、もちろんフルフェイス1個のモデルもある(ホンダ フェイズ、スズキ ジェンマなど)。駆動用バッテリー(車体下部に集中配置される)や充電器も積むVX-1の場合は、十分健闘していると言っていいのでは。
ちなみにシートを跳ね上げる場合は、イグニッションに差したキーを上から押しながら回し、電磁ロックを解除して行う。閉める時は反対にローテクで、それを支えているコイルスプリング(写真右)を横から押し、グニャッとさせる。
また、フロント右側には、財布や車検証などが入るグローブボックス(容量6リッター)がある。ただしリッドを開けるには、キーを回して電磁ロックを解除する必要があり、走行中に開ける操作はできない。
空から満充電まで、100V電源で約4時間
トランクスペースには充電用コードも収まる。コードの長さは約2.4メートル。充電するときはこれをそのままAC100Vもしくは200Vコンセントに差すだけだ。カタログ記載の充電時間は、AC200V電源の場合、空の状態から80%充電の状態まで約2.5時間だ。
今回の試乗では一般的な100V電源で行ったが、その場合は約4時間くらいのようだ。ベクトリックス ジャパンのスタッフによると、充電時間が長い場合は、システムが自動的に充電をストップして充電器を休ませてから(冷やしてから)、再開するという。
また、あくまで目安だが、バッテリー残量が3分の1くらいあれば約3時間、半分あれば約2時間、3分の2くらいあれば約1時間で、ほぼ満充電まで復活する感じだ。
充電が完全に終了すると、充電状況を示していたメーター照明が消え、ブーンと唸っていた冷却ファンの音も止まり、静かになる。
なお、車体底部にあるGPバッテリー社製ニッケル水素バッテリーは容量3.7kWh(125V)。ニッケル水素で、しかも二輪車用としては、かなりの大容量だ。放電サイクルは1700回程度で、10年もしくは走行8万km程度のライフサイクルを確保しているという。
