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ベクトリックス VX-1新車試乗記(第594回)

Vectrix VX-1

(モーター+ニッケル水素電池・130万円)

日本初上陸!
高性能“ビグスク”EVで
ハイウェイを激走する!

2010年05月01日

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キャラクター&開発コンセプト

米国で開発された高性能大型EVスクーター

「ベクトリックス VX-1」は米国Vectrix社が開発した大型電動スクーター。専用インホイールモーターとニッケル水素電池を搭載し、0-80km/h加速6.8秒、最高速度100km/hを誇る高性能二輪EVだ。現時点で市販車としては、世界で最も高性能な電動スクーターの1台と言える。

すでに米国、英国、イタリア、スペイン、オーストラリア等で販売されており、英国の自動車保険・ロードサービス大手である「AA」(The Automobile Association、1905年創立)といった企業やNYPD(ニューヨーク市警)などの警察、官公庁を中心に採用されているという。

日本での扱いは250ccクラスのスクーターと同じ


2010年3月の東京モーターサイクルショーで、国内への輸入販売が正式に発表された

日本では、名古屋市を中心に輸入車や国産車の正規販売店を展開する株式会社ホワイトハウス(本社:名古屋市)が正規輸入販売権を取得。2010年春から販売を開始した。

当面は愛知県東郷町にある同社のマルチブランド大型ショールーム「オートプラネット名古屋」内の直営店で販売する。初年度の販売台数は100台を目標だ。

なお、日本の道路交通法上、VX-1は125cc超250cc以下の普通自動二輪車となり、250ccのスクーター同様、「AT限定普通二輪免許」以上で運転できる。

また道路運送車両法では、出力基準によって125cc超となるが、250cc以下250cc超を分ける出力基準は特にないため、すべて250cc以下と同じ「軽二輪自動車」扱いとなる。よって車検は不要だ。

ベクトリックス社について


2010年3月の東京モーターサイクルショーでVX-1を紹介するベクトリックス社のスティーブン・B・ダウニング(Steven B. Downing)副社長

1996年創業のベクトリックス社は、二輪ゼロエミッション・ビークルの開発・研究を行っている企業。同社の目標は「ガソリンエンジンからゼロエミッションへ向かうパーソナル・トランスポーテーションの革新」であり、VX-1はその最初の市販プロダクトとなる。

その研究開発や資金は、産業用モーションコントロール機器の世界大手である米国パーカー・ハネフィン社がバックアップ。インホイールモーター、電子制御システム、ボディパネル等も、同社から供給を受けている。また香港のGPバッテリー社からはニッケル水素電池パックの供給を受けるほか、資金および人材面でも強力なバックアップを受けているようだ。言わばEV市場への参入を考える有力企業の合同新規ビジネスといった側面もある。なおVX-1の生産(最終組立)はポーランドで行われている。

 

同社および関連会社は燃料電池の開発も行っており、それを搭載したプラグイン燃料電池二輪車も開発中だ。同社によれば、燃料電池の搭載によって航続距離が伸びるほか、燃料電池による充電か外部電源からの充電かの選択が可能になり、さらにトリクル(細流)充電を行なうことで自然放電を補えるのがメリットだという。

■参考リンク
ベクトリックス USA(英語) http://www.vectrix.com/

・動画(YouTube>ベクトリックス ポーランド工場)

価格帯&グレード展開

車両価格は130万円。250ccスクーターの2倍弱


(photo:ベクトリックス ジャパン)

VX-1は基本的に単一モデルで、日本での価格は130万円。なお2010年4月現在、国内で販売されている250ccスクーターの車両価格はだいたい70万円前後で、VX-1はそれらの2倍弱となる。

ベクトリックス VX-1   130万円 ★今回の試乗車

・ホンダ フォルツァ Z   69万3000円(ベース車)~82万4250円(ABS・オーディオパッケージ)
・ホンダ フェイズ     57万7500円(ベース車)~63万5250円(タイプS)
・ヤマハ マジェスティ   70万2450円
・スズキ スカイウエイブ  62万8950円(タイプS ベーシック)~70万3500円(タイプM)

・ベスパ GTS250ie     69万5000円
・アプリリア スカラベオ 250ie  58万9000円

パッケージング&スタイル

外寸は国産250ccクラスとほぼ同じだが、シート高は高め


ボディカラーは現在全6色で、試乗車はサファイアブルー

以下は国産の人気250ccスクーターと並べた表だが、ボディサイズはそれら“ビグスク”系で平均的なところ。VX-1の全高が高めなのは、ウインドプロテクションを重視して大型スクリーンを備えるからだ。国産250ccクラスではカッコ重視で(最高速もそんなに伸びない)、ショートスクリーンを付けることが多い。

もう一つ、国産勢と異なるのがシート高。日本仕様は20mm低いローシートが標準だが、それでも750mmあり、シート幅も大きめ。結果、身長165センチでは両かかとがベッタリとはいかず、若干の不安がある。スクーターとして考えると、足つき性はあまり良くない方だ。

       全長 全幅 全高 WB シート高
ベクトリックス VX-1
2120 800 1370 1525 750
ホンダ フォルツァ Z 2185 750 1175 1545 710
ヤマハ マジェスティ (250) 2175 780 1185 1550 700
スズキ スカイウェイブ 250 タイプS 2270 760 1225 1585 710
 

国産“ビグスク”的なスタイリング

米国「ROBRADY design (http://www.robrady.com/)」社が手がけたというデザインは、良くも悪くも日本製ビッグスクーター風。試乗中、周囲の人から「EVだ!」と気付いてもらえないのが、淋しいところ。

よく見れば、マフラーはないし、フロントカウルには「ELECTRIC」とステッカー、また前後ウインカーやストップランプは電力消費を抑えるためのLEDなのだが・・・・・・、よほど観察力が鋭くないとEVだとは気付かないだろう。

実はハイテクの電装。残り航続距離や充電状態を表示


(photo:ベクトリックス ジャパン)

大型三眼メーターの中央はアナログ式の速度計。最高速は出力制御が働く100km/h+だが、余裕をもって120km/hまで目盛ってある。

左のメーターはバックライト付の液晶で、デジタル時計、システム状態を知らせる「READY」そして「GO」という文字、そして直近の走行状況から予想される残り航続距離などを表示。

右側のメーターも液晶で、充電状態をバーグラフで表示する。この左右の液晶メーターは、夜間こそ見やすいが、昼間の視認性はいまいちだ。

 

なお、電装系はすべてCAN(Controller Area Network)で結ばれており、システム全体が統合制御されている。例えば走行中にウィンカーを出しっぱなしにしていると、クラクションが短く「プッ、プッ」となって“無駄な電力の消費”を教えてくれるし、ハイビームにしたときのインジケーターの点灯も一瞬タイムラグがあるなど、コントロールユニットの介在がそこはかとなく感じられる。

回生ブレーキを自在に使いこなせる「アドバンスト・スロットル」

操作系で独特なのが、走行中にスロットル・グリップを通常とは逆方向に回して、回生ブレーキを働かせる「アドバンスト・スロットル」。オートバイ乗りにとっては「?」と思うものだが、機能的には実に優れており、詳しくは後の試乗インプレッションで触れる。これはベクトリックス社がいくつか特許を取得・申請しているものの一つだ。

また車体停止時には同じ操作で、モーターが逆回転し、車体をリバース(バック)させることも出来る(最高3km/h)。ホンダのゴールドウイングならいざ知らず、この程度のスクーターで大げさな、と最初は思うが、実際にはモーターの抵抗で車体を押し引きする時の取り回しがけっこう重く、意外に重宝する。

それ以外は、おおむね一般的なスクーターと同じ。右レバーがフロントブレーキで、左レバーがリアブレーキ。ウインカーもごく一般的なプッシュキャンセル式だ。ヘッドライトは常時点灯なので、オン・オフスイッチはない。

フルフェイスが1個入る

シート下トランクの容量は約40リッターで、フルフェイスヘルメットがちょうど1個入る。国産ビッグスクーター御三家のフォルツァ、マジェスティ、スカイウェイブあたりだと、容量は60リッター前後でフルフェイスヘルメットは2個入るが、もちろんフルフェイス1個のモデルもある(ホンダ フェイズ、スズキ ジェンマなど)。駆動用バッテリー(車体下部に集中配置される)や充電器も積むVX-1の場合は、十分健闘していると言っていいのでは。

 

ちなみにシートを跳ね上げる場合は、イグニッションに差したキーを上から押しながら回し、電磁ロックを解除して行う。閉める時は反対にローテクで、それを支えているコイルスプリング(写真右)を横から押し、グニャッとさせる。

また、フロント右側には、財布や車検証などが入るグローブボックス(容量6リッター)がある。ただしリッドを開けるには、キーを回して電磁ロックを解除する必要があり、走行中に開ける操作はできない。

空から満充電まで、100V電源で約4時間

トランクスペースには充電用コードも収まる。コードの長さは約2.4メートル。充電するときはこれをそのままAC100Vもしくは200Vコンセントに差すだけだ。カタログ記載の充電時間は、AC200V電源の場合、空の状態から80%充電の状態まで約2.5時間だ。

今回の試乗では一般的な100V電源で行ったが、その場合は約4時間くらいのようだ。ベクトリックス ジャパンのスタッフによると、充電時間が長い場合は、システムが自動的に充電をストップして充電器を休ませてから(冷やしてから)、再開するという。

また、あくまで目安だが、バッテリー残量が3分の1くらいあれば約3時間、半分あれば約2時間、3分の2くらいあれば約1時間で、ほぼ満充電まで復活する感じだ。

 

充電中、速度計の針が指すのは、充電を行っている電流量。「85」を差している場合は8.5アンペアを意味する

充電が完全に終了すると、充電状況を示していたメーター照明が消え、ブーンと唸っていた冷却ファンの音も止まり、静かになる。

なお、車体底部にあるGPバッテリー社製ニッケル水素バッテリーは容量3.7kWh(125V)。ニッケル水素で、しかも二輪車用としては、かなりの大容量だ。放電サイクルは1700回程度で、10年もしくは走行8万km程度のライフサイクルを確保しているという。

基本性能&ドライブフィール

馬力は250ccクラス以上、トルクは600ccクラス並み

パーカー・ハネフィン社製のインホイールモーターは、一般的な薄型DCブラシレスタイプ。最高出力は27.4ps(20.2kW)で、ヤマハ マジェスティ(19ps)やホンダ フォルツァ Z(22ps)、スズキ スカイウェイブ(26ps)を上回る。さらに最大トルクは、600cc並みの6.6kgm(7Nm)。変速ギアはないが、後輪ハブに内蔵する遊星ギア(プラネタリーギア)で適度に減速して後輪を駆動している。

理論上は0回転から最大トルクを発揮する電気モーターだが、いきなり発進直後からドカンと加速するわけではなく、ちゃんと大人しく発進して、二輪EV初心者を安心させる。慣れてくると、もう少し力強くてもいいかな、と思えてくるが、スロットル操作への反応はとても自然だ。

「ギュォーーーン」から「キュィーーーン」

最初の動き出し(10km/h以下くらい)こそ、ちょっと物足りないが、その後は本領発揮。「ギュォーーーン」と意外に大きいモーターノイズを響かせながら、あっという間に60km/hに到達する。このあたりですでに、交差点で並んでいた原付スクーターや四輪車ははるか後方だ。

 

ここから例のモーターサウンドは「ギュォーーーン」が「キュィーーーン」へ変化。0-50km/h加速は3.6秒、0-80km/h加速は6.8秒だそうだが、確かに90km/hまでは一本調子で加速してゆく。ちなみに250ccビッグスクーターの0-80km/h加速は8~10秒台といったところで、i-MiEVの0-80km/h加速は10.6秒、iのターボ車でも11.2秒だ。少なくとも80km/hまでなら、ホンダ CR-Z(某誌のテストでは0-80km/h加速7秒台)くらいの速さがある。ただし現在「市販車」でこれに一番近い加速感が味わえるのは、間違いなくi-MiEV。モーターサウンドといい、一直線的な加速感といい、そっくりだ。

車体底に大量のニッケル水素電池を積むにも関わらず、カタログ上の車重は210kgと、国産250ccスクーターと同程度。アルミ製バックボーンフレームが軽量化に効いていると思われる。

「真綿で締めるがごとし」快感の回生ブレーキ


(photo:ベクトリックス ジャパン)

このVX-1で面白いのが、スロットルを逆に回すと回生ブレーキが働く「アドバンスト・スロットル」システムだ。使い方は簡単で、減速したいときに反対に回すだけ。当然、モーターで駆動している後輪にだけ制動力が掛かるので、試す前は「ブレーキロックしたら、どうしよう」などと少しビビるのだが、実際にやってみるとぜんぜん問題なし。いかにも、回生してます! という感じの「ギュィィィィン」という音と共に、まさに「真綿で締めるがごとく」制動力が働き、絶妙な塩梅で減速できる。いまだかつてないほどイイ感じで効くエンブレ、という感じだ。

なので街中はもちろん、ワインディングでもスロットルを前後に回すだけで、けっこうハイペースで走れる。というか普通に油圧ブレーキを掛けるより、こっちの方が快感で、しかもブレーキレバーを引く必要がないので手が楽。慣れてくると通常の油圧ブレーキより使いやすい。

なお、この回生ブレーキを使うと、まったく使わない場合に比べて約12%ほど電力消費が抑えられるという。バッテリー残量計で言えば、一目盛りか二目盛り、といった差になって表れるようだ

ただし調子にのって回生ブレーキばっかりに頼っていると、いわゆる急制動が必要な時にストッピングパワーが足りなくなる。その時はすかさず回生ブレーキを使いつつ、ブレーキレバーに指をかけてブレンボ製キャリパーのディスクブレーキに助けを乞う、というワザ?を使うことになる。結果、並みのスクーターよりはるかに強力で安定感のある減速が可能だ。

なお、正立式のフロントフォークはマルゾッキ製で、リアの2本サスはザックス製と、各パーツは定評のあるもので構成されている。セッティングはやや硬めだが、動きはしなやか。ピレリ製のタイヤと相まって、足まわりは申し分ない。

最高速は100km/h+α。新幹線のように?巡航

高速走行では90km/hに達すると、それまで一本調子だった加速感が急に鈍り、意図的に出力をセーブしているのが分かる。そしてメーター読み105km/hに到達すると、そこで速度をピタッと保持。モーターノイズが少し収まり、「ヒューーーーーン」という音に変化。大型スクリーンの下に頭を沈めると、風切り音も消える。この時の感覚に一番近いのは、巡航中のジェット旅客機か、新幹線。思わず、ビールを飲みながら駅弁を食べている状況を思い浮かべてしまった。

そんな風に余裕があるのも、直進安定性が完璧だから。轍(わだち)があるようなところでも、車線変更はまったく不安なく行えるし、サスペンションもかなりスムーズに動く。ウインドプロテクションもこの程度の速度域では完璧で、電池が持つならこのまま600kmくらい楽に走れそうに思えた。

航続距離は街乗りなら50~60km程度、高速全開で30km程度か

そんな感じで、今回はデイズスタッフ総勢5人で試乗しつつ、トータルで65kmを試乗。充電を継ぎ足しながらだったので、満充電から空までどれだけ走れるかは正確にチェック出来なかったが、市街地走行(それなりに元気よく走って)では約50~60kmくらいという感じか。航続距離の目安としてカタログにあるのは、48km/h定地走行で88km、72km/h定地走行で72km、80km/h定地走行で56kmだ。

また高速道路では、「アクセル全開」で20km走った後でもバッテリー残量は3分の1ほどあり、推定残り後続距離は7マイル(約11km)と出たので、30km程度か。ベクトリックス ジャパンのスタッフが試した場合も、やはり高速全開では30km弱でバッテリー残量警告灯が点いたとのことで、またアメリカ本国の取扱説明書(本国のHPからダウンロードできる)にも、これを裏付けるデータとして、97km/h(60mph)定地走行で32km(20マイル)とある。つまり首都高速で言えば、東京・銀座から横浜あたり、東名高速で言えば東京ICから厚木IC、あるいは名古屋ICから岡崎ICあたりまでだ。もちろん、実際にはそこでバッテリーが尽きてしまうので、その前に多少の充電が必要だが。

ここがイイ

動力性能や完成度の高さ。二輪EVならではの自然との一体感

EVらしく未来的で、十分にパワフルな走り。回生ブレーキの出来も素晴らしく、全体としてとても完成度が高い。EVという新奇な乗り物でありながら、工業製品としてよく練り込まれている。欧米の官公庁が採用しているという話も、この出来ならよく分かる。

走行中も、信号などで停車中も、とにかく周囲の音がよく聞こえる。こういった自然というか、周囲との一体感はまさに2輪ならでは。無音で止まっていると、周囲のガソリン車がまさに「20世紀の遺物」に思えてくる。

ここがダメ

EVらしさのないスタイリング、航続距離など

スタイリングに個性が欲しい。もっと未来感を、少なくともEVならではのアピールが欲しい。デイズスタッフの意見としては「アキラ」のバイクのようなスタイリングだったら、その注目度は大きく変わるだろう、というもの。むろん実用性や世界市場を含めての販売面では難しいとは思うが。

シティコミューターとして考えれば大きなハンディではないかもしれないが、やはり航続距離は限定的。基本性能や快適性がすこぶる高いだけに、そこだけが惜しい。

最高速は105km/h程度で制御されるが、パワー的にも、シャシー的にも、ウインドプロテクション的にも余裕は十分で、出来ればi-MiEVと同じ128km/h(リミッター作動)程度まで出れば、と思う。105km/hでは追越車線に出にくく、かといって走行車線の流れは遅すぎる。

ヘッドライト(ハロゲン式)は常時点灯なので、停車中でも点きっぱなしになる。電力消費を抑えるためにも、ここはライトキルスイッチか、LEDのデイライトを装備したいところ。

総合評価

バイクの自由はガソリンの対価

いつも思うことだが、乗り物というのは自由につながっている。乗り物による移動の自由によって、人は現代の文化を手中にしてきた。今をときめく坂本龍馬も、当時最新の乗り物である船で、同時代人の誰よりも高速で移動している。今日は長州、明日は薩摩という彼の機動力は現代人並だ。それゆえあれだけのことを成し遂げたと言えるのではないか。

移動の自由といえば、特にバイクという乗り物は、かの映画「イージーライダー」が象徴するように、自由と同義語に近い。今回久々に二輪車に乗ってみて、クルマとは大きく異なる開放感やマシンとの一体感、自在な感覚に感動した。二輪を走らすことは、クルマとは確かに自由の度合いが違う。同時にちょっと事故をすればただでは済まないというリスクも、様々な自由の概念と同様にその裏返しとして存在するわけで、安全に血道をあげるクルマとは一線を画する、ある意味特殊な移動ツールだ。

実用的な移動手段としてはクルマの方が快適で安全なわけで、いまどき好き好んでバイクに乗る人は、実用というより、すでに趣味嗜好の領域と言ってもいいだろう。その趣味を支えているのが、「バイクに跨ってどこまでも気ままに走り続ける」という「バイク=自由」という共同幻想であることは間違いないと思う。

 

それがなぜ幻想かといえば、どこまで走り続けるバイクにも、燃料は必要だからだ。航続距離がクルマより一般的に短いバイクは、ロングツーリングでは給油を計画的にしないといけない。特に昨今はスタンドが減ったから、田舎では本当に困る状況も考えられる。案外不自由なのだ。もちろん、ガソリンが無ければ走れないわけで、バイクの自由はガソリンの対価でもある。
ということはつまり、無駄に自由な移動は、環境のためにならない。あなたの自由のために環境を壊していいのかと問われれば、昨今の風潮のもとでは謝るしかない。本当にCO2によって地球が温暖化しているのか、という論議が盛んになるのは、まだまだこれからのことだと思うし。

「趣味は電動バイク」

そこでこのベクトリックスだ。自由に好き勝手走っても、環境負荷はぐっと少ない。今は公共充電インフラがわずかしかないが、クルマと違って家庭用の100Vなら、民家の軒先でも充電出来そうだ。バイク乗りは連帯感が強いから「うちで充電すれば?」という仲間はネットを通じていくらでもできるだろう。ただ、今の航続距離では「自由」と呼ぶにはどうにも辛い。今の倍走れば、かなり違うのではないか。早くそこまでの進化を望みたい。

かような次第で、今はまだ色々苦労しそうだが、苦労も、あくまで趣味のものとしてならそれが楽しみにもなる。「趣味は電動バイクです」という場合、国産や中国製の原付クラスの電動バイクではちょっと物足りないが、これなら対象として十分。一般道での走りは不満ないし、免許も取得しやすい(中免なら持ってる人も多いだろう)。バイクだからカスタムの楽しみもクルマ以上にありそうだ。

趣味の乗り物として考えれば、色々工夫をしなくてはならないベクトリックスは面白いと思う。同クラスのガソリンスクーターは完成度が高すぎて今ひとつ面白みにかけるが、これは工夫して乗らないといけない乗り物だ。工夫する余地が多いほど、趣味としては意義がある。やがて来る、「どこまでもゼロエミッションで走り続けられる本当に自由なバイクライフ」という未来を先取りして、今「趣味は電動バイク」というのも悪くないのでは。

試乗車スペック
ベクトリックス VX-1
(モーター+ニッケル水素電池・130万円)

●初年度登録:2010年3月●形式:SZCAA ●全長2120mm×全幅800mm×全高1370mm ●ホイールベース:1525mm ●シート高 750mm(日本仕様のローシート)●最小回転半径:-m ●車重(車検証記載値):210kg( -+- ) ●乗車定員:2名 ●モーター型式:R ●モーター種類:DCブラシレス ●定格電圧:125V ●最大出力:27.4ps(20.2kW)/-rpm  ※最大連続出力:9.5ps(7kW)/-rpm ●最大トルク:6.6kgm(65Nm)/-rpm  ※最大連続トルク:2.2kgm(22Nm)/-rpm ●バッテリー種類:ニッケル水素電池 ●バッテリー容量:3.7kWh ●駆動方式:インホイールモーター+プラネタリーギア(後輪) ●サスペンション形式:前 テレスコピック/後 ユニットスイング式(インホイールモーター内蔵) ●タイヤ:前 120/70-14/後 140/60-13( Pirelli ) ●試乗車価格:-円 ( 含むオプション:- -円 )●試乗距離:65km ●試乗日:2010年4月 ●車両協力:ベクトリックス ジャパン(株式会社ホワイトハウス)

 

 
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