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スズキ ワゴンR FXリミテッド/ワゴンR スティングレー T新車試乗記(第681回)

Suzuki Wagon R FX Limited / Wagon R Stingray T

(0.66L・124万9500円/0.66Lターボ・149万6250円)

累計販売台数380万台以上。
保有台数約300万台!
ニッポンの国民車、ワゴンRは
軽の王座を取り戻せるか?


  

2012年12月28日

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キャラクター&開発コンセプト

デザインはキープコンセプト。メカニズムは一新


新型スズキ ワゴンR

1993年に登場し、軽トールワゴンという新ジャンルを開拓したスズキ ワゴンRが、2012年9月、4年ぶりにフルモデルチェンジした。5代目となる新型は、パッケージングやデザインはキープコンセプトながら、メカニズムは完全に刷新。ホイールベースを25mm拡大し、980Mpa級の超高張力鋼板をA/Bピラーなどに使用した新型プラットフォームを採用。また車両全体で最大70kgという大幅な軽量化も行なっている。

エンジンは現行MRワゴンやアルト等で先行採用した新世代R06A型(の改良型)を採用。変速機も定評のあるジヤトコ製の副変速機付CVTを採用するなど、パワートレインも最新世代にアップデートされている。

エネチャージ、新アイドリングストップ、エコクールを新採用


今回試乗したワゴンRと同スティングレー

また新型ワゴンRには、軽自動車初の新技術が3つ採用された。1つ目はリチウムイオンバッテリーや高効率・高出力オルタネーターを使った新開発のブレーキエネルギー回生システム「エネチャージ」。2つ目は減速中に13km/h以下でエンジンを止める「新アイドリングストップシステム」。3つめはアイドリングストップ中に、エバポレーター内の蓄冷材でエアコンの冷気を保つ「エコクール」。車体の軽量化を含めて、これらのエコ技術は「スズキグリーン テクノロジー」と称され、今後は他のスズキ車にも順次展開されるという。

これらによって、新型ワゴンRのJC08モード燃費は、ノンターボ・FF車で28.8km/L、ターボ・FF車で26.8km/Lを達成。ノンターボ車に関しては、12月に発売されたダイハツの改良型ムーヴに0.2km/L抜かれたが、ターボ車に関しては今でもクラストップを守っている。

販売目標は月間1万6000台。年間にすると19万2000台になる。ちなみに初代から4代目までの国内累計販売台数は、19年間で約378万台(2012年6月時点)。年間平均では約19万9000台。

価格帯&グレード展開

CVTは110万9850円からスタート


ワゴンRのボディカラーは、写真のフィズブルーパールメタリックを含む8色

新型も、ベーシックなワゴンRとスポーティなワゴンR スティングレー(以下スティングレー)の2本立て。ワゴンRはノンターボのみで、ベースグレードの「FX」と質感の高い内外装、アルミホイール、運転席シートリフターを装備した「FX リミテッド」の2グレード。スティングレーはノンターボの「X」とターボの「T」の2グレード。先代はCVTの他に4ATもあったが、新型は副変速機付のCVTに一本化。また12月には5MTが追加設定された。4WDはそれぞれ11万7600円高。CVT車に関しては、全車エコカー減税対象車(取得税と重量税を100%減税)となっている。

CDプレーヤー装着車はそれぞれ2万1000円高。ESPはスティングレーにしか設定がなく、6万3000円高になる。

 

スティングレーのボディカラーはテーマカラーのフィニックスレッドパールを含む6色。写真はワゴンRでも選べるミステリアスバイオレットパール

■ワゴンR
・FX(5MT)       109万9350円(FF)/121万6950円(4WD)
・FX(CVT)       110万9850円(FF)/122万7450円(4WD)
・FX リミテッド(CVT)  124万9500円(FF)/136万7100円(4WD)★今回の試乗車

■ワゴンR スティングレー
・X(CVT)        133万3500円(FF)/145万1100円(4WD)
・T(CVT・ターボ)    149万6250円(FF)/161万3850円(4WD)★今回の試乗車

パッケージング&スタイル

キープコンセプトながら、水平基調重視に

デザインやパッケージングは、見事にキープコンセプト。ただし伝統の縦型ヘッドライトは微妙に変化(角が一つ増えた)。また先代の特徴だったクラウチングスタイル(前のめり気味の姿勢)が改められ、ボンネット位置は少し高く、ルーフ後端は低くなり(全高は20mm低下)、水平基調が強まった。また、ウエストライン(サイドウインドウの下縁)も後ろ上がりから水平基調になり、結果的にサイドウインドウの面積は大きくなっている。またヘッドライトに合わせて、リアのサイドウインドウにも角が一つ増えた。

 

スティングレーは、フロント部分(Aピラー付け根から前)、リアコンビランプ、ホイールの意匠が専用品になる。また、ディスチャージヘッドランプが全車標準となるほか、フロントグリルがラインタイプのLEDイルミネーションで光るのも売り。ただしスティングレーも、新旧を一目で見分けるのは難しい。

 

リアコンビランプはワゴンRとスティングレー、いずれもLED
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
先代スズキ ワゴン R 3395 1475 1660 2400 4.2-4.4
スズキ ワゴン R 1640 2425 4.4
スズキ ワゴン R スティングレー 1660 4.4-4.6
ダイハツ ムーヴ 1620 2455 4.4
ホンダ N-ONE 1610 2520 4.5-4.7
 

インテリア&ラゲッジスペース

開放感を高める工夫


ワゴンRの内装はグレーとベージュの2トーン。オートエアコンは全車標準

インテリアもキープコンセプトだが、微妙に質感と広々感をアップ。先代の完成度が高かったので、今回は細かいブラッシュアップが主な仕事になっている。内装材も徹底的に軽量化されたが(内装材で約10kg、前後シートで約8kgも軽量化)、だからといって安っぽさはない。

快適装備も大幅に充実。エネチャージやエコクールの採用に伴い、オートエアコンを全車標準化。キーレスプッシュスタートや運転席シートリフターは、最も安い「FX」グレードを除いて全車標準になっている。

 

スティングレーのブラック内装。ターボの「T」は7速MTモード付パドルシフトを装備

室内は先代でも十分に広かったが、今回ホイールベースが25mm伸びて、室内長は2165mm(数値的には+115mm)、タンデムディスタンス(前後乗員間距離)は1000mm(+25m)になった。しかしむしろ実感できるのは、「広々感」を左右する部分の改良。ダッシュボードの高さを20mm下げたり、オーディオ位置を20mm奥(前方)にしたり、サイドウインドウの下端を15mm下げる、といった工夫で、先代よりも広く見せている。

 

スズキ軽で定番の“バケツ”(助手席シートアンダーボックス)も装備

シートリフターは「FX」グレードを除いて標準装備
 

後席フットルームは有り余るほど。クッションは分厚く、シートの座り心地も良好。左右別々に前後スライド可

バケツの下にはリチウムイオン電池を配置。後席から常に見える
 

ワンタッチダブルフォールディングで後席を畳んだところ。さらに助手席背もたれを水平に前倒しできる

床下にはパンク修理キット、ジャッキ、タイヤレンチ。軽でもスペアレスが普通になってきた
 

基本性能&ドライブフィール

「ノンターボで十分じゃん」

今回の試乗は、浜松市のスズキ本社を基点に、浜名湖周辺で行った。試乗したのは、自然吸気エンジンを搭載する「ワゴンR」の上級グレード「FXリミテッド」(124万9500円)と「ワゴンR スティングレー」のターボ車「T」(149万6250円)。

まずはノンターボの標準車から試乗。エンジンは従来のK06A型に代えて、新世代のロングストロークユニット「R06A」。フリクションを減らすなど改良を施したものだが、基本的には現行MRワゴンやアルトなどでおなじみのユニットで、トルクフルかつ静かなことで定評がある。またCVTも定評あるジヤトコ製の副変速機付CVT。8速ATを超えるレシオカバレッジが自慢。

走り始めた瞬間から、やはりパワートレインがいい。ギアリングの低さとトルクのあるエンジンで、出足からグッと力強く加速してくれる。これには最大70kgという軽量化も効いているはず(試乗したワゴンRの車重は790kgで、先代の同等グレードより60kgも軽い)。またスズキによれば、加速時にオルタネーターの稼働を減らす「エネチャージ」の効果もあるはずとのこと。

さらにアクセルを踏み込めば、軽快に伸びやかに加速。エンジン音は高まるが、まったく不快ではなく、アクセルを緩めればすぐに回転が下がって、ウソのように静かに走る。「もうノンターボで十分じゃん」とターボに乗る前から思えてしまう。とにかくこのR06A型エンジンと副変速機付CVTのコンビは、スズキの宝、傑作であると再認識。

アイドリングストップシステムの完成度も高い


R06A型エンジン(写真はワゴンR用のノンターボ)。通常の鉛バッテリー(ただしアイドリングストップ車用)も積む

減速中に13km/h以下でエンジンを停止する「新アイドリングストップシステム」も滑らかに作動。エンジンはいつの間に止まっているという感じで、ほとんど意識されない。

もちろん、始動時にはそれなりにスターターノイズが聞こえるが、始動は素早く、ショックもほとんどなし。また、ESPが無くても、最大2秒間ブレーキを保持するヒルホールドコントロールが全車に装備されているおかげで、坂道発進でも落ちないのがいいところ。他メーカーのESP無し車にも装備すればいいのに。

またアイドリングストップ中にブレーキを緩めて再始動しても、もう一回踏み込めば再びアイドリングストップするのもいい(3回目は無理なようだが)。また季節柄、蓄冷技術「エコクール」の効果は体感できなかったが、真夏にはそれなりに恩恵があるはず。アイドリングストップ機能としては、最もよく出来たものの一つでは。

フロントスタビやESPはないが、安定性はまずまず(ワゴンR)

試乗前に気になっていたのが、ワゴンRにはフロントスタビライザーとESPの備えがないこと(オプション設定もない)。確かにコーナーへ意図的にオーバースピード気味に入り、エイヤッとステアリングを切れば、ロールは大きめに出るし、アンダーステアも強い。とはいえ、常識的な運転操作であれば、特に問題ないレベルで、唐突な動きもない。

タイヤは普通のワゴンRでも13インチ(145/80R13)が廃止され、専用開発の155/65R14サイズで統一(試乗車はダンロップのエナセーブ)。一昔前の軽自動車からするとかなり大径で、これも安定性に寄与しているはず。ESPに関しては、後で乗ったスティングレーのターボ車(スタビライザーと165/55R15タイヤを標準装備)にオプションで付いていたESPがそこそこ介入してきて安心感があるのを経験すると、素のワゴンRにも欲しいと思えてくる。オプションでも選べないのが残念。

高速道路では、ノンターボでも80km/hまでなら速やかに到達する。100km/h巡航時のエンジン回転数は負荷によって安定しないが、2500から3500回転くらいで、エンジン音も静か。軽ノンターボ車にあるまじき快適な高速走行ができる。アクセルベタ踏みで6000rpmまでぶん回せば、最高速も140km/h手前まで伸びそう。

ただし普通のワゴンRの場合は、100km/h超から風切り音が急に高まるほか、遠州灘名物である横風(かなりの突風)に吹き付けられると、ややステアリングがとられることがあり、ついついアクセルを踏む力が緩む。基本的に高速道路はのんびり行きましょう、という感じ。

明らかに普通車を食うターボ


スティングレーのターボ車は165/55R15タイヤを履く

続いて乗ったのはスティングレーのターボ。馬力は64ps/6000rpmに、最大トルクは9.7kgm/3000rpmに跳ね上がる。ミッションはノンターボと同じ副変速機付CVTで、ギアリングも最終減速比を含めて一緒。

このパワートレインがまた実にいい。出足の力強さは、意外にもノンターボと大差なし(それだけノンターボが力強い)。ところが、その後の加速では、ノンターボが高回転まで使って「全力で」走るのに対し、ターボは低回転のまま余裕で加速。軽自動車という感じがまるでしない。先回のN-ONE同様、一部のリッターカーを超えて、1.3リッタークラスを食うかも。また、先日乗ったN-ONEのターボエンジンより、このR06A+副変速機付エンジンは明らかに静か。

またスティングレーのターボ車に関しては、シャシーも不満なし。直進安定性は高く、高速走行時に強い横風を受けても、全く動じず。ボディ形状や車重はほぼ同じだから、この差はサスペンション設定が違うせいだろうか。スティングレーにはノンターボを含めてフロントスタビライザーが標準になるし、ターボ車についてはタイヤも165/55R15(ブリヂストンのエコピア)に格上げされる。足回りは明らかにしっかりしていて、この点に関しては普通のワゴンRと別モノ。ある程度、攻める走りも可能で、そういう意味ではESPも心強い。限界を試すような走りをすると、けっこう介入してくる。

スティングレーには吸音材を追加


100km/h巡航時のエンジン回転数。ターボなら2400回転をキープできる

一番驚いたのが、ターボ車の高速道路での走りっぷり。100km/h巡航時のエンジン回転数は、2リッタークラスの普通車も負けそうな約2400回転。120km/h巡航は約2900rpm。パワーのないノンターボだと、アクセル開度に応じてエンジン回転数が跳ね上がってしまうが、ターボエンジンは地力があり、低回転のまま加速できる。その気になれば、リミッターが働く140km/h直前でも、3500rpmくらいで淡々と巡航できるはず。高速道路でも、速度超過に注意されたい。

しかもこのスティングレーのターボ、同じ速度域でも明らかに普通のワゴンRより静か。ワゴンRで気になったAピラー周辺のザワザワとした風切り音がなく、ほとんど1.3リッタークラス並みの静かさで高速巡航できる。これはすごい。

で、後で資料を見たら、スティングレーには、ダッシュサイドパネル(Aピラーの付け根)、ダッシュパネル外面(いわゆるファイアウォールのエンジン側)、ボンネット裏に吸音材が配置されていた。これは普通のワゴンRにも欲しいかも。

試乗燃費はノンターボが17.0km/L、ターボが15.2km/L

今回はワゴンRとスティングレー、それぞれに約50kmずつ試乗。参考までに試乗燃費は、一般道から高速道路まで、燃費に頓着しない走りも含めて、ワゴンR(ノンターボ)が17.0km/L、スティングレー(ターボ)が15.2km/Lだった。

JC08モード燃費(FF車)はノンターボが28.8km/L、スティングレーのターボが26.8km/L。一方、この12月にビッグマイナーチェンジしたムーブは、それぞれ29.0km/Lと25.2km/L。ホンダ N-ONEは、27.0km/Lと23.2km/L。よってノンターボではムーヴがワゴンRに僅差で勝ち(0.2km/L差)、ターボではワゴンR スティングレーが大差?で勝ちとなっている(ムーヴと1.6km/L差、N-ONEと3.6km/L差)。

燃料タンク容量は27リッター。これは先代ワゴンRや現行ムーヴ(FF車)より3リッター少なく、ホンダ N-ONEより8リッター少ないが、燃費が良くなったので航続距離は先代と同等を確保した、ということか。

ここがイイ

パワートレイン。ノンターボがよくなったが、ターボはさらにすごい

広さから、静粛性、快適性まで、ほとんど普通車要らず。特にパワートレインは、ダイハツ、ホンダと比べても、スズキが今のところ一歩抜け出ているのでは。ノンターボでも十分だが、特にスティングレーのターボ車は一部の普通車を超えている。

またターボ車の燃費がかなり良く、それはライバル車のモード燃費との比較でも明らか。我々の試乗燃費でも、先代ターボが11.9km/Lだったが、今回は15.2km/Lと大きく向上している(NAは先代が16.6km/L、今回は17.0km/L)。ボディの軽量化やスズキグリーンテクノロジーも効いていると思うが、ターボのおかげで走りがよく、燃費もいいという意味では、VWのTSIエンジンにも通じるものがある。スズキの販売店では、来店者にとにかく試乗してもらう、という売り方をしているらしいが、それも納得の走り。他社車両と乗り比べてみれば誰でも分かるレベルだ。

ここがダメ

ワゴンRにターボやESPがないこと。過剰に思えるモード燃費競争

普通のワゴンRで、ターボ車やESPが選べないこと。月間1万6000台も販売するモデルなのだから、「ワゴンR本来のスタイルで、走りは普通車並み(ターボ)」というモデルが欲しい人は、かなりいると思う。ホンダのN BOXでも最近、標準モデルにターボ仕様が追加設定された。

最大70kgも軽量化されているが、ドアの開閉音などは、ちょっと「軽く」なってしまったこと。軽量化は重要だが、ある程度の重量と重みはあっていいと思う。

ターボ車の場合、低燃費を狙って低回転を積極的に使うため(トルクフルなので使える)、副変速機が高速側にシフトした後の60km/hくらいで、エンジンから軽く振動が出る。フィアット500のツインエア(2気筒ターボ)に比べればはるかに軽微だが、ちょっと気になった。

総じてダイハツの改良型ムーヴ同様、モード燃費の向上のために、爪に火を灯すような努力が行われているが、軽自動車の一般的な使われ方を思うと、0.1km/Lを争うような燃費競争には、もはや疑問を感じるところ(セールスが簡単という理由だろうが、これくらいは乗り方で変わる)。同じコストを掛けるなら、自動ブレーキの採用やESPの標準装備化を選ぶという道も模索して欲しい。

総合評価

もうどんな遠乗りでも軽自動車でできる

4年前に軽の完成形だと絶賛したワゴンRだが、今回、更に良くなっていることには驚愕するしかない。特にNAの走りが一段と良くなっている。先代への評価は、ターボ車に関しては世界に通用する、まさにリッターカー並の理想的な小型車になった、というものだったが、今回はもうNAでもそう言っていいんじゃないか、というところまで来てしまった。

クルマというものの進化を今、最も感じられるのが軽自動車の世界だ。出るクルマ、出るクルマ、みな興味深い。キャンピングカーのように乗用車もバッテリーを2つ積んだら何かと便利なはずというのは昔から言ってきたことだが、それが燃費に効くというのは驚きだった。蓄冷材を使ってエアコンを効率化するというのもキャンピングカーの発想にはあったが、それもうまく取り入れられている。これらに加えて、エンジンが止まりまくるアイドリングストップが加わったスズキグリーンテクノロジーは、横展でさらに多くのクルマに恩恵を与えそうだ。走りの点でも機構の点でも、ワゴンRのライバルとなるホンダ N-ONEは、まだその追走者という感が否めない。

 

また今回、NAの走りが良くなったことは、車重を落としたことが大きく効いている。かつてスズキでは1部品1グラム削減運動などで軽量化に取り組んだ時期があったが、ここまで極端に軽くなったのは超高張力鋼など新素材の積極採用と、その使い方の設計効果が大きいようだ。またエネチャージはエコだけでなく、走りにも効いているようだ。もはや先代で完成したと思っていたクルマが、こういうことをやればまだまだ進化するのか、とスズキの(つまりは日本の)技術力に脱帽したくなる。これが日本の生きる道なのではないか。

そして今回、ターボ車はもっとすごいことになっている。流れの速い高速道路で、これまでのターボ車では流れの中に混じって走ろうとすると、さすがにいくぶんは気を使わないといけない場面があったが、スティングレーのターボにもはやそんな気遣いは無用。中間加速はどんな速度域でも全く不満がなく、さらに安定感、ドライバーの安心感もこれまた不満が全くない。普通車のように走るというより、もはや普通車そのもの、あるいはそれ以上の走りと言い切れる。あの軽自動車がここまで走れるようになったとは。この快適さなら、もうどんな遠乗りでも軽自動車でできるだろう。

来年2013年のトレンドは「安全」


初代スズキ ワゴンR (1993年)
(photo:スズキ)

今となっては保守本流に見えるスタイリングだが、このカタチとパッケージングは、デビューした20年前、まさに革新的なものだった。タント系の巨大空間は過剰すぎるという感想があるなら、変わらぬこのスタイルはありだろう。いいものはそのまま作ればいい。スイフトだってそうだった。

とはいえパッと見、新鮮味がないことも事実。ライバルのN-ONEのごときデザインは、コンセプトとアイデンティティが確立しているワゴンRではどうにも無理だし、スズキにはMRワゴンという、よりデザインコンシャスなモデルもあるから、競合を防ぐためにも保守本流は致し方ないところ。それでも先代と見比べると、ドアパネルの造形やリア窓の後端下部など、細部がリファインされたことで、よりデザインの完成度は増している。過去のどのワゴンRより、綺麗なデザインになっていると思う。とはいえ、何かもう一つ新しさが欲しいという感はどうしても否めなかった。

また、新型ワゴンRで一つ残念なことは、来年2013年のトレンドとなるだろう「安全」に対して、「先行してはいない」ことだ。ムーヴが微々たる差の好燃費を後出しして、NAの燃費競争に勝ち名乗りを上げ、さらに低速域での衝突回避システムを前面に出してきたのは、スズキにとってアタマが痛いところだろう。これに関しては、後出しの後出しでいいので、追加してもらいたいところ。軽のユーザーは確かに燃費や車両価格に敏感だが、安全がトレンドになれば今後は間違いなく、お金を出すようになるはずだ。ESPや自動ブレーキ系の安全デバイスはぜひ早い時期に全車標準としてほしいものだ。それこそが軽にとって、次の大いなる進化となるだろう。

人が自由に移動すれば、社会は活気づく

販売累計は377万9118台(2012年7月時点)、現存車(保有台数)が約293万6000台(2012年6月時点)、そして日本で一番売れているクルマを争うワゴンRがここまで良くなると、危惧されるのはいよいよ「軽とは何なのか」が論議される可能性だ。

高速道路を普通車と同じ速度で快適に走れるのに、走行料金が安いのは平等ではない、と言い出す人たちが出現するかもしれない。高速料金だけでなく、「軽優遇はこのままでいいのか」という論議も出るだろう。本来は高速料金全般が高すぎるわけで、これ幸いと実質的な値上げとなってしまうのは勘弁願いたい。

軽の極端に低い税制もしかり。例えば最近話題になっている走行距離に応じて(使った分だけ)税金を払うという仕組みが今後確立するのであれば、軽の枠撤廃も致し方ないと思うが、軽に対する現状の諸経費を値上げするだけなら、軽が売れなくなり、それこそ日本の自動車産業は壊滅する。いや自動車産業どころか、日本の内需というものが崩壊する。

景気回復、内需拡大には実にわかりやすい特効薬があると思う。それは国民の10人に1人が何らかのかたちで関わっていると言われるクルマを、昔のように売れる商品とすることだ。昨年のように35年も前と同じ販売台数では、景気など回復するはずがない。嘘つき民主党は去り、昔の名前が勢ぞろいした安倍自民党政権が、どのような舵取りをするのかも不安でいっぱいだが、彼らには消費税を上げても構わないので、そのかわり税制・保険制度などの改正で、自動車をもっと所有しやすくしてもらいたいものだ。高額なエコカーであるEVに大きな補助金を出している場合ではないだろう。安くてこんなに素晴らしいエコカーである軽自動車にこそ補助金を出し、もっともっと軽自動車が実質的に安くなって売れれば、日本の内需拡大はまちがいないと思うのだが。

 

マスコミもクルマを敵視するのはいいかげんやめて、もっとクルマに乗ろう、もっと自由に移動しようというキャンペーンをすべきだ。そのクルマはこんなに素晴らしい国民車である「軽」で十分。ガラパゴスでもいいではないか。クルマに乗って海外には行けないのだから。国内を多くの人が移動すれば経済活動が活発化する。人が自由に移動すれば、社会は活気づく。クルマに乗る人を増やすための政策こそ、日本の復興、活性化の特効薬だと思う。すでにこんなに素晴らしいクルマがあるのだから。

 
 

試乗車スペック
スズキ ワゴンR FXリミテッド/ワゴンR スティングレー T
(0.66L・124万9500円/0.66Lターボ・149万6250円)

●初年度登録:2012年9月●形式:DBA-MH34S ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1640mm / 1660mm ●ホイールベース:2425mm ●最小回転半径:4.4m / 4.6m ●車重(車検証記載値):790kg(480+310) / 820kg(510+310)/ ●乗車定員:4名

●エンジン型式:R06A ●排気量・エンジン種類:658cc・直列3気筒DOHC・4バルブ・横置 / 同ターボ ●ボア×ストローク:64.0×68.2mm ●圧縮比:11.0 / 9.1 ●最高出力:38kW(52ps)/6000rpm / 47kW(64ps)/6000rpm ●最大トルク:63Nm (6.4kgm)/4000rpm / 95Nm (9.7kgm)/3000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/27L ●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:28.8km/L / 26.8km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動) ●サスペンション形式:前 マクファーソン ストラット+コイル/後 I.T.L.(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)+コイル ●タイヤ:155/65R14(Dunlop Enasave EL300) / 165/55R15(Bridgestone Ecopia EP150) ●試乗車価格(概算):-円  ※オプション:- -円 ●ボディカラー:フィズブルーパールメタリック / ミステリアスバイオレットパール ●試乗距離:-km ●試乗日:2012年12月 ●車両協力:スズキ株式会社

 
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