キャラクター&開発コンセプト
新規格ワゴンRのテーマは「軽量化」
軽自動車の新しいカタチとして'93年にデビューして以来、スズキの看板車種、いや、もはや日本の代表車種に育ったといえるワゴンR。昨年10月、衝突安全性能を普通乗用車並みにするという新規格の導入に伴い、ワゴンRは新規格ボディ(全長10cm、全幅8cmアップ)へフルモデルチェンジ。当然重くなるはずのボディの「軽量化」をテーマに、新開発「軽量衝突吸収ボディ」をはじめ、エンジン、プラットフォーム、サスペンションなどのわずかな贅肉も見逃さず削り落としていく「1部品、1g軽量化運動」を展開。さらに各部の質感向上も行っている。
価格帯&グレード展開
43ものグレード展開で、アメリカンな過激モデルも仲間入り
今回から、走りのイメージを強烈にアピールした「RR(ダブルアール)」と呼ばれるモデルが新たに加わった。ワゴンRとワゴンR-RR、ともに5ドアモデルと1+2ドアモデルの2種類のボディを設定し、ノーマルのワゴンRには全4種類のエンジンを、ワゴンR-RRには64psのDOHCターボを搭載する。これにFFと4WD、5MT/3AT/4AT/CVTが組み合わせられ、計43ものバリエージョンを展開する。
価格はワゴンRが69.8~118.7万円、ワゴンR-RRが117.5~139.7万円。なお、RRは、当初予想していたより2倍の売れ行きで、全体構成比の7割程度を占めている。
NA車にはVVTと無段変速機CVT
なお、ノーマルのワゴンRが搭載するのは、52ps/6.1kg-m、55ps/6.2kg-m、52ps/6.3kg-mの3つのSOHCエンジンと、60ps/8.5kg-mのSOHCターボエンジン。中でも、CVT車用の55psエンジンは、可変バルブタイミング機構「VVT」を採用し、最大トルクを3000回転で得るという。また、CVTには、ケプラー、ゴム、樹脂を組み合わせたベルトを使い、金属ベルトより高い伝達効率と静粛性を確保しているという。CVT車以外にVVTはないが、2WDモデルについてはLEV仕様(低公害車)だ。
パッケージング&スタイル
売れて納得の正常進化スタイル
新規格ボディのワゴンRは全長3395mm×全幅1475mm×全高1680mm。外観で最も大きく変わったのは、テールランプがバンパー埋め込みから、ハッチゲートサイド部に移動し、横長から縦長になったことくらい。誰もが親しめるデザインは健在だ。しかし、ボディが拡大されたことで、立体感や存在感は明らかに強まっている。
今回、試乗したRRは、2層ヘッドライト、大型グリル&バンパー、エアロパーツを装備。黄色のナンバーさえ付いていなければ、誰も軽自動車とは思うまい。「ミニミニアストロ」といったところだ。
もちろん50km/hの前面・側面衝突で乗員が保護され、かつ燃料が漏れないといった新安全基準を達成しているわけだが、ボディを強化&拡大しながらも、各車平均で10kg増に抑えた点は評価すべきだろう。'93年デビュー時のような新鮮味こそ感じられないが、軽の販売ナンバーワンに君臨し続けるのも納得の出来だ。
数ランクアップした品質感、熟成のユーティリティ
外観はキープコンセプトだが、乗ったときの印象は大きく異なる。インテリア各部の素材・仕上げが飛躍的に高まり、先代とは全く比べものにならない。淡いグレーと鮮やかなブルーの内装により、視覚的な開放感も増している。フロアATの他に、RRとノーマルの5ドアには、コラムシフト+ベンチシートが採用されているので、左右のウォークスルーも可能だ。室内幅は4cm増えたが、それ以上に広くなった気がする。
先代で好評だった使い勝手も、さらに良くなっている。インパネ下部の小物入れをはじめ、ありとあらゆる空間にポケットが存在する。助手席の座面下にあったシートアンダーボックス(バケツ)は容量が拡大され、助手席シートバックがテーブルとして使えるシートバックトレイも装着。よりRV的な要素が濃くなっている。リアシートのヘッドレストは外さなくてもフルフラットにできる。
基本性能&ドライブフィール
パワーはもはや十分だが
今回試乗したRRは、シリーズ最強となる64ps/10.8kg-mのDOHCターボを搭載するモデル。エアロルックに加えて、10mmのローダウン化が施される。64psもあるのだから、パワーに関してはもはや不満は無い。トップエンドのパワーだけでなく、トルクも十分。アクセルをグイッと踏んでやれば、わずかに遅れて過給が始まり、高回転まで一気に吹け上げる。
足が地に着いていない感じは完全に払拭されてはいないが、先代より随分と安定感は増しており、少々乱暴なハンドル操作をしても腰砕けになることはない。拡大されたトレッド、延長されたホイールベース、そしてボディ剛性などが、こうした走りを生んだのだろう。スポーツモデルのRRといえども、強い突き上げはなく、乗り心地も犠牲にされていない。
ただ、ステアリングの中立あたりにしっかり感がなく、高速走行時に不安を抱いてしまったことも事実。ロック・トゥ・ロックが4回転もあるなど、全体的にもう少し引き締まった操縦性が欲しいところ。アクセルペダルも妙に軽すぎる。ハイパワーエンジンに、サポート性に欠けるベンチシートというのも、どうなのだろうか (フロアシフトのセパレートシート仕様も選べるが)。
ここがイイ
100km/h走行時は3800回転で、ちょうどほどよくターボも効いており、静かな巡航ができる。1速落として(4ATなので)からの加速もパワフルで不満なし。120km/h巡航も、ちょっとうるさいが十分快適。ホンダZターボ、プレオRSと共に、長距離ツアーが可能な軽自動車だ。ホイールベースはホンダ・キャパと同じで、室内長が伸び、結果として自然に足を伸ばした所にアクセルペダルがあるなど、運転姿勢に無理が無くなったのは非常によい。
ここがダメ
乗った瞬間にスズキ車と分かる「軽さ」はやはり健在。乗っているうちに軽はこれでイイか、これがスズキの味か、と思えてきて気にならなくなるが、もう少ししっとりとした乗り味が加えられると、さらにいい。電動パワーステアリングのフィーリングを変えるだけでも、かなり違うと思うのだが。
ここまで品質と機能が向上しながら、エアバッグとABSはオプションなのが気になるところ。その分、車両価格を安く設定でき、これがスズキの販売戦略のひとつなのではあるが。
総合評価

何といってもスタイルがイイ。その原因は窓が小さいこと。他の軽ミニバンはみな妙に窓がでかいので、デザイン的なバランスが崩れている。その点、ワゴンRはいかにもアメリカン・ミニバンの縮小版のよう。大人っぽく見えるのが強みだ。さらにワゴンRには、すでに一種のブランド力がある。自信を持って軽自動車に乗れるという点で、このクルマに勝るものはないだろう。
動力、空間、ユーティリティなど、軽自動車は40年を経てここに究極の姿となった。これ以上良くなると軽自動車規格そのものを見直す必要がでてくるだろう。
公式サイトhttp://www.suzuki.co.jp/dom4/index.html