Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > スズキ ワゴンR FX

スズキ ワゴンR FX新車試乗記(第290回)

Suzuki Wagon R FX

(0.66リッター・4AT・96.5万円)

2003年10月24日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

基本に戻り、「いい道具」を追求

2003年9月30日にフルモデルチェンジしたワゴンR。今回の3代目では、上級ではなく原点を目指し、優れた道具感を追求したという。確かにそのスタイルは、やや上級志向に振れた2代目の延長ではなく、初代に回帰したような印象を与える。

販売目標はシリーズ全体で1万5000台(年間18万台)。初代登場(93年9月)以来、過去10年の年平均は19万4000台、2代目発売時の2000年には約24万5000台も売っただけに、この目標は楽勝か。ただし、90年代前半と違い、今ではkei、アルトラパン、MRワゴンといった新車種が仲間入りしている。

シャシーを一新。軽初の直噴ターボを投入

ベストセラーカーらしく基本はキープコンセプトだが、室内空間を広げたり、さらに小回りが効くようにするなど、定評ある機能性をさらにアップ。新型プラットフォームにより、乗り心地、静粛性、操縦安定性も向上させたという。エンジンは軽自動車初の直噴ターボエンジンをワゴンR RRに新しく投入。64ps、10.5kgmの高出力ながら19.0km/リッター(2WD、4AT)の低燃費を達成している。他のエンジンは基本的に従来と同じだ。

なお、この新型ワゴンRから、クルマにつくスズキの「S」マークの意匠が微妙に新しくなった。これまで国内小型車用、海外小型車用、軽自動車用、2輪車用、そして社章とバラバラだったものを、今後はこれに統一して行くという。

価格帯&グレード展開

NA、低圧ターボ、高圧ターボが各2種類

グレードは全部で6種類。ベース車の「FA」(77~99.2万円)、装備が一通り付いた「FX」(88~107.7万円)は自然吸気エンジンで、4ATや5MTがある。M(マイルド)ターボ仕様は、「FT」(107.5~118.7万円)、その豪華版「FS」(117~128.2万円)、そして高出力ターボのワゴンR RRの「Sターボ」(130~141.2万円)、直噴ターボ「RR-DI」(140~151.2万円)と続く。ターボ車はすべて4速ATだ。

ABSはターボ車に標準装備されるが、「FX」ではオプション(2.5万円)となる。販売主力は今回試乗した「FX」(ABS付きで99万円)だが、走りに余裕が欲しければ「Mターボ」、さらに余裕が欲しければ「RR」というところ。

パッケージング&スタイル

道具感を追求

全長3395mm×全幅1475mm×全高1645mm、ホイールベース:2360mmは先代とほぼ同じ。旧規格の初代と比べても、背の高さはほとんど不変。つまりワゴンRのパッケージングは最初からすでに完成していたわけだ。言うなれば、先進的なMRワゴンや、レトロなアルト・ラパンがあったからこそ、こうした機能性や道具感の強いデザインにできたと言えるだろう。新型は先代より箱っぽく、初代の工業製品的なものに戻った感じがする。

サイズ不変ながら、最小回転半径が先代の4.2メートルから4.1メートルになった(NAモデル)のも、地味ながら評価したいポイント。単純に言ってUターン時に約20センチ余裕が出来るわけだから「一発で曲がれなかったところが曲がれる」可能性がある。

機能を最優先

従来でも広々感は十分だったが、新型の印象はそれをさらに上回るもの。ルーフを何と195mmも前後に延長し、サイドウインドウを立ててルーフ幅を70mmもワイド化。これによりへッドルームを大幅に拡大したほか、ダッシュボードを反らせて広々感を出した。弓なりダッシュボードはBMW(5/7シリーズやZ4)や日産(ティアナなど)で採られる流行りの手法だ。ドア開口部が広くなり、乗降性にも有利だという。室内幅も45mmも広がっている。カッコよりも機能、と割り切ったからこそ出来たパッケージングだ。

乗り降りのしやすさはワゴンRの長所の一つ。今回も従来通り635mmの前席シート高を採用。さらにサイドシル(ドア下の敷居部分)をえぐって、足の運びを邪魔しないようにした。ここにも使いやすさ優先の姿勢が見える。

地道な改良

前席シートはリッターカーに遜色ないどころか、アップライトな着座姿勢が取れる点でそれらより楽かもしれない。シートファブリックのざっくりした感じもクルマ性格と雰囲気に合っている。これからすると、かつて軽自動車に多かった小振りで薄っぺらな悪夢のようなシートは軽自動車ユーザーをナメていたと思う。NAモデルに運転席シートリフターやチルトステアリングは備わらないが、ドラポジに特に不具合は感じられない。

シフトレバーは従来どおりコラム式だが、形状は新しい。レバー部を立てて、操作性を上げ、空調やオーディオなどへの視線を妨げないという。ただし、レバーの影に隠れる部分はまだ多少生じる。助手席座面下には従来どおり、取り外し式バケツが付く。灰皿やシガーライターはオプションだ。

シートアレンジも従来通り。荷室拡大時は、ワンタッチで後席を前に倒すだけ。今までどおり座面は自動的に下に沈み込む。完全にフラットではないが、荷室床面との段差も30mm縮小したという。後席のクッションの厚みも犠牲になっておらず、シートスライド量も30mm増加。もともと空間は十分だったが、さらに地道な改善が行われた。

カーウイングスを採用

インテリジェント機能では、日産のカーウイングスが採用されたことが話題だ。カーウイングスとは、メーカーオプションのDVDナビ(11~13万円)もしくはディーラーオプションのカーウイングス対応ナビ(22万2800円)を装着し、カーウイングス対応通信アダプター(6万7200円、ブラケット:4800円は別)と携帯電話をつなげば利用できるサポート&情報サービスだ。オペレーターと話をしてサービスを受けることが出来る「コンパスリンクライト」をはじめ、サービス自体は日産が提供する(月々450円のサービス料が必要)。トヨタ系のG-BOOK(ダイハツ、三菱、スバル) 、日産系のカーウイングス、そしてホンダのインターナビと、この分野では静かな勢力争いが続いている。

セキュリティは付いたが、スマートキーはなし

最廉価グレードを除いた全車にセキュリティシステムが今回から付いた。キーレスエントリー以外の操作でドアを開けるとハザードとホーンで警告するという単純なもので、アメリカなどでは珍しくないもの。国内の国産車はまだ無防備なものが多いが、車両盗難や車上狙いの激増を考えると、こうした装備は軽自動車でも必須になってゆくだろう。

残念なのは、他メーカーの国産新型車ではほぼ必ず用意されるスマートキー(所持するだけで施錠・開錠、さらにエンジン始動が可能なキー)が採用されなかった点。道具と割り切ったワゴンRだが、だからこそあっても良いと思う装備だ。

基本性能&ドライブフィール

全項目で少しずつ良くなった

試乗したのは販売主力の「FX」。乗った感じは当たり前ながら「リファインされたワゴンR」。正直、劇的に良くなったという印象は薄い。しかしチェックしながら乗ると、加速がスムーズになり、エンジン音も低くなり、乗り心地も良くなり、安心感が大きく増したことが分かる。パワーユニットはVVT(可変バルブタイミング機構)付き自然吸気エンジンのおなじみK6A型。スペックに大きな変化はないが、フリクション低減により10・15モードは19.8km/リッターから20.0kmへとわずかに向上している。

54ps、6.4kgmに車重820kgということで実際の走りはそこそこだが、2代目初期のものに比べれば、出足がスムーズで格段に乗りやすい。フロアと制振材の密着度を高めたり、パワートレインの剛性アップを図ったりしてノイズや振動も抑えたという。

高速走行も楽になった

100km/h巡航は4速トップで約4400rpm。ターボ車のような静かさはないが、うるさいと文句を言うほどではない。3速に落としてレッドゾーンが始まる7000回転まで回すとちょうど120km/h。最高速はメーター読みで120km/h+α出る。パワーに余裕はないが、トップエンドでもエンジンに苦しげな感じは無い。直進安定性もこの速度なら十分にある。従来、スズキの軽自動車の電動パワステは高速で軽すぎる嫌いがあったが、新型ワゴンRのものは落ち着きがあり、この点も高速走行の余裕に寄与しているのかもしれない。

ブレーキアシスト&EBD付きABSはターボ車が標準装備するほか、試乗車のFXにもオプション装着(2.5万円)されていた。経済性が問われる軽自動車で、その価格をどう捉えるかは微妙だが、ABSはやはり付いているに越したことはない。フルブレーキング時にハンディとなる重心の高さやトレッドの狭さをかなり救ってくれるので、出来れば標準装備が理想だ。

今回はトータルで高速道路200kmを含む約400kmを走行。参考までに満タン法で計った燃費は、渋滞に巻き込まれながら80~100km/hで走った高速で約15km/リッター。追い越し車線で全開走行(120km/h程度)した時が約12km/リッター。市街地でちょこまかと走った時が約11km/リッターだった。

ここがイイ

カタチといい、シンプルな内装といい、まさに生活の道具と割り切った潔さと使いやすさが新型ワゴンRの魅力。若者にウケる雰囲気のムーヴ、女性に受ける雰囲気のライフ、そして男女、年齢問わず乗れるのがワゴンRということになるだろう。守備範囲が広い分、一車種で多くのユーザーを獲得できるから(色もピンクからグリーンメタリックまで、9種類もある)大ベストセラー街道を今回も突っ走れるはずだ。

カーウイングス対応のDVDナビは、メーカーオプションとすると13万円で、ディーラーオプションより、10万円ほど安い。その10万円でカーウィングス用の通信ユニットとテレビチューナーを買うことができる。というわけで、カーウィングス本格普及を目指した戦略的な値付けのよう。ちなみに日産のカーウィングスはインターネットが表示できないが、スズキのものは表示可能。現状は壁紙がダウンロードできるだけだが、やがて独自のコンテンツサービスも始まりそうだ。また1DINサイズのオーディオスペースが初代同様に上部へきたので、ナビの取付に苦労はないだろう。

ここがダメ

新車を買った喜びには浸りにくいクルマだ。なんだかんだで100万円以上の出費があるワゴンRだが、買ったからといって人に自慢できるとか、うらやましがられるとかは一切無い。その点でも道具なのだが、ちょいと寂しい部分でもある。

運転していて気になったのは、速度計左にあるシフトポジションインジケーターの視認性。ここに太陽の光が当たると、ギアがどのポジションに入っているか分からなくなる。試乗中、何度もそういうことがあり少々困った。

総合評価

年間23万台売れる日本最多量販車。旧型でも多くの人にとってたいした不満はなかったはずで、新型でもキープコンセプトを貫いている。まだ試乗していないが、ホンダのライフが劇的に変わったのとは好対照だ。

新型では、フルチェンジでしかできないハードウェアの細かな詰め直しで、すべてにおいて先代を上回るものに仕上がっている。反面、製造コスト面でも細かな詰め直しが行われたように見えるのも確か。ダイハツには妙に高級な質感が感じられるが、スズキの場合は、潔く軽であることを肯定した、という作りだ。具体的にはドアの内張には布部分はないし、助手席のシートバックトレイもなくなった。フロアシフトもなくなった。

そんなワゴンRが欲しくなってしまったのは、カタチが空気のように街にとけ込み、手足のように乗り回せ、自分の部屋のように広く使えるから。軽でも乗っていて貧乏くさくならないし、走りはこんな程度で十分だし、パッケージングを極めているし、維持費は安いし。非日常的なスポーツカーを一台持っていたら、日常はこのワゴンRで十分だと思う。クルマは生活の道具、と考える人にもこのワゴンRなら十分。つまり世の中のクルマの半分くらいは、ワゴンRにしちゃっても十分なんじゃないか、と思うのだ。

試乗車スペック
スズキ ワゴンR FX(0.66リッター・4AT・96.5万円)

●形式:UA-MH21S●全長3395mm×全幅1475mm×全高1645mm●ホイールベース:2360mm●車重(車検証記載値):820kg(F:490+R:330)●エンジン型式:K6A●658cc・DOHC・4バルブ・直列3気筒・横置●54ps(40kW)/6500rpm、6.4kgm (63Nm)/3500rpm●使用燃料:レギュラーガソリン●10・15モード燃費:20.0km/L●駆動方式:前輪駆動●タイヤ:155/65R13(FALKEN製 SINCERA SN-816C)●価格:96.5万円(試乗車:99万円 ※オプション:ABS 2.5万円)

公式サイトhttp://www.suzuki.co.jp/dom4/lineup/wagonr/index.html

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

スズキ 最新の試乗記10件

最近の試乗記一覧

関連コンテンツ一覧