キャラクター&開発コンセプト
異業種合同プロジェクトから誕生したトヨタ版パイクカー
花王、松下電器、アサヒビール、近畿日本ツーリスト、そしてトヨタ自動車の異業種5社が提携して、「WiLL」(ウィルと読む)という統一ブランド名で、それぞれの得意な新商品を作り、トータルコーディネイトさせて、話題を盛り上げようという新手のマーケティング商品がWiLLシリーズ。ご承知のようにすでに他社商品は登場しており、真打ちのクルマがトヨタの「Vi」(ヴイアイと読む)だ。
昨年の東京モーターショーに参考出品車として初披露され、若い女性を中心に好評を博したモデルをほぼそのままのカタチで市販したもの。
WiLLの統一コンセプトである「遊びゴコロと本物感」のもと誕生したViは、”自分の感性やこだわりを大切にした商品選びをする「ニュージェネレーション層(20代)のイメージリーダーとなるクルマとして提案された「4ドアパーソナルカプセル」である”とメーカーはいう。要はトヨタが弱いとされる若者向けのクルマということだ。
Viの開発・企画を担ったのは、30代の若手が集まったトヨタの社内組織「VVC」というところも忘れてはならないところで、若者ユーザー層獲得を目的とした奥田元社長(現会長)直属の組織。会社内会社とでもいうべき独自の動きをする組織だ。奥田さんがお墨付きを与えて自由にやらせた結果がWiLLVi。こういう動きができるトヨタを市場が評価するため、株価も上がるのだろう。
Viは限定販売ではなく、ブームの商品に終わらせたくないという意志が見えるのが、かつての日産パイクカーと決定的に違うところだ。とはいえベースはヴィッツであり、デザイン優先のその成り立ちは、いいタイミングで登場したパイクカーには違いない。
価格帯&グレード展開
価格は標準仕様が130万円、キャンパストップ仕様が145万円
グレードは標準仕様とキャンパストップ仕様の2種類。搭載エンジンは1.3リッター、駆動方式はFF、ギアボックスは4ATのみというシンプルな構成だ。単純にベースとなったヴィッツと比較すれば25万円ほど高くなっているが、生産性やインパクトを考えれば価格以上の魅力はある。
なお、全車、オーディオレスでオプションで用意されているのはオーディオとナビ、それと寒冷地仕様ぐらい。
販売はビスタ店のほか、東急ハンズのWiLLショールームや東京お台場のメガウェブでも申し込みを受け付ける。当面の月販目標は1500台としており、テレビCMを一切打たないという広告展開も巧妙だ。
パッケージング&スタイル
これであなたもシンデレラ。実写版カボチャの馬車
全長3760×全幅1660×全高1575mmという3BOXボディを持つViのベースとなったのは、2370mmにホイールベースからも分かるとおり、日本、欧州で絶好調のヴィッツ。
メーカー自ら理性よりも感性を重視したというデザインは、「カボチャの馬車」をモチーフとしたもの。大きく弧を描いた前後対称型のフェンダーパネル、3本のプレスラインが入ったドアパネル、そしてこのクルマの最も特徴となる、かつて「クリフカット」と呼ばれた逆に傾斜したCピラー。ただし全てにおいて深い意味はなく、単にこうしたデザインがあったらいいなぁ、という思いつきの結果できてしまったもの。ヴィッツが13インチなのに対し、2インチアップの15インチタイヤを採用したのもデザイン重視の結果だ。
ある意味、ふざけたクルマなのかもしれないが、今、最も時代の流れにマッチした発想ではないのだろうか。実際、たいした宣伝もしていないのに、話題となっているし、これまでクルマに興味のなかった若い女性が、このクルマを気にしている。また試乗の際、オバチャン層にも大ウケしていたことが印象的だった。
クルマというより女性の部屋みたいなお洒落なインテリア
内装も外観に違わず、これまでに例がなかったもの。センターメーター(アナログ)を採用するのは一連のヴィッツシリーズと同じだが、インパネ、ステアリング、シート、ドアトリムなど、素材の配色にとことん凝っている。全て茶系でコーディネイトされており、乗る人をリラックスさせる”なごみ”の空間だ。インパネは焼きたてパンのようにふっくらとした造形で、シートはリビングソファのようなベンチタイプで生地はサラとした肌触りの良いもの。シフトノブも丸型で触り心地がいい。ハンドルがなかったら、女性の部屋かと見間違えるほど、お洒落な雰囲気だ。ちなみデザイナーは30代の男性とのこと。
後席の狭さはご愛敬。デザイン重視でも大きな問題点はなし
居住空間は、前席に限っていえばヴィッツよりも開放的。一方、後席は前席を最後端に設定すると足がつぶれてしまうほど、狭い。中途半端に狭いより、ここまでいさぎよく狭ければ、もう、ご立派というしかない。もちろん、これもデザイン重視の結果である。それでも後ろに乗るつもりなら、後席ドアの上方がせり出しているために、頭をぶつけないよう、ご注意を。
装備に関しては、最近の贅沢仕様のコンパクトカーに慣れてしまったためか、やや物足りない。オーディオレスの設定はアフターで好みのものを装着するからいいとして、ドアミラーが手動というのは、いろんな人が乗る試乗車だっただけに不便だった。ターゲットが女性ということで、灰皿もない。後席を利用する機会は少ないからウインドウの開閉は手動。キャンパストップの開閉も手動。
基本性能&ドライブフィール
走りは少しパワーがあるヴィッツなので、不満なし
プラットフォームは基本的にヴィッツと共通だ。足回りは前がマクファーソンストラット式で、後ろがトーションビーム式。ダンパーとスプリングをソフトにセッティングしてある。 搭載エンジンは吸気側に連続可変バルブタイミング機構VVT-iを採用する1.3リッター直4「BEAMS」ユニットを踏襲する。88PS/6000rpmの最高出力はヴィッツと同じで、最大トルクは0.2kgmマシの12.5kgm/4400rpmとなっている。なお、1lエンジンの設定はない。とうのもヴィッツより80kg程度重く、非力と判断されたためだ。
加速性能は必要十分といったところで、市街地、郊外で普通に走らせる分には不満はない。これまでヴィッツは1l、ファンカーゴは1.5lに試乗したが、それぞれの印象は、かなり異なるものだった。ヴィッツ兄弟が同じ味付けにはなっていないあたりは、トヨタの巧さだろう。Viの場合、ハンドルとアクセルは随分軽くて、乗り心地はいたってマイルド。全体にゆったりした動きで、ハンドルに気を取られることもないので、おしゃべりに夢中になれるだろう。また、タイヤが大きいにも関わらず、段差を乗り越えても特別ゴツゴツした感じもない。女性向きの快適な走りといえるだろう。ハンドリングを楽しむクルマではないので、ロールの大きさは指摘してもあまり意味ないないが、シートがサポート性のないベンチタイプなので、コーナーでは足で踏ん張らなければならない。
静粛性はアイドリング時、低回転時なら静かな方。ただ、アクセルが軽いのでついついアクセルを踏みがちになってしまい、自ずとエンジン音が高まることもある。そして全体的には平均レベルにある仕上がりの中、唯一、不快だったのが高速巡航での風切り音のうるささだった。
ここがイイ
ついにクルマがクルマでないものになったこと。WiLLViは、クルマというよりグッズでしょう。ブランドグッズの一つ。クルマとしてはまったく真面目に作られていません。パッケージングはメチャメチャ、騒音や空力も無視。しかし、そうした従来のクルマという商品追求から離れて作られたことが、このクルマの最高にいいところ。もうクルマはクルマである必要がない、ということを21世紀を前についに宣言してしまったことは凄いことです。
ここがダメ
従来のクルマの概念からすれば全てダメでしょう。できそこないのカボチャの馬車だ。
総合評価
もはやクルマは、性能を追うことは無意味で、それよりルックスが命であることを証明したのがWiLLVi。今や消費者はクルマを性能では買わない。クルマの持つ夢を買うのです。これはブランド品と同じ発想。「クルマなど性能は大差ないから、オシャレなのがいい」単純明快これだけでしょう。WiLLViはそれを何のてらいもなく全面に打ち出したわけで、これは凄いことだ。
また、かつてのような訪問販売や、現在主流のショールーム呼び込み販売が行き詰まりつつある現在、クルマを売るためにはクルマ自体のインパクトが最重要課題だろう。クルマにインパクトがあれば、ディーラーのショールームでなくても売れるはず。セールスマンもいらない。WiLLViの場合、初期受註の1割ほどは東急ハンズやメガウェブなどのビスタ店以外で売れたとのこと。これって、一種のメーカー直売ということなのでは? トヨタは巧妙に従来の販売網を自ら破壊しつつあるようだ。
WiLLVi自体はインパクトが続かなくなった時点で売れ行きが落ちると思うが、その功績は後年高く評価されるだろう。あのクルマから変わったんだったな、と。
公式サイトhttp://toyota.jp/