新車試乗記 第79回 日産 ウィングロード Nissan Wingroad




日時: 1999年06月18日

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    キャラクター&開発コンセプト

    その実体は2リッター+ハイパーCVTを頂点に、エアロルックで若返りを図ったサニーワゴン

    3年前の96年にデビューした初代ウイングロードは「サニーカリフォルニア」「ADワゴン」のビッグマイナーチェンジによって統合されたモデル。すなわち商用メインのバンをワゴンムードに仕上げたモデルだ。よってフルモデルチェンジは実質7年ぶり。2代目となった新型ウイングロードのベースとなったのは、新世代M&Sクラスプラットフォームを使ったサニー。”走る、使える、スタイリッシュ・コンパクト”を開発テーマとし、若者層をターゲットにした「エアロシリーズ」と、それ以外の購入層をターゲットにした「ベーシック」をラインナップした。

    エンジンは1.5/1.8/2.0リッターで、特に2.0リッターには6速マニュアルモード付き無段変速機「ハイパーCVTーM6」を組み合わせることにより、スポーティな走りを実現している。

    ライバルはどれも魅力薄、厳しい状況下でどこまで若者にウケるかがキモ

    この小型ワゴン市場はマツダ・Sワゴン、三菱・リベロ、スズキ・カルタスワゴンなど、どれも販売は好調とはいえない状況だ。トヨタ・カローラワゴン(カロゴン)は一応健闘はしているものの、設計が古すぎる。それだけに全て一新されている新型ウイングロードは、”売れて当たり前”という条件下にあるといってもいいだろう。またCFにも「MJC」(無理しない、自分らしく、いま選びたい、という意味らしい)というキャッチコピーで、20代の支持拡大を目的に大幅な若返り作戦を実行している。「クルマなんてあんまり興味ない」という若者を引っ張ろうとする日産の目論見どおりに若者が反応するか、興味深い。

    なお、新型ウイングロードの発表翌日には、これをベースとした商用バン「ADワゴン」もフルチェンジされている。エンジンは1.3/1.5/1.8/2.2ディーゼルの4本立てとなっている。

    価格帯&グレード展開

    139.8~220.7万円という若者に魅力的な低価格ゾーン、実用面から見ても買い得感強し

    グレード構成はエアロパーツで武装した「エアロシリーズ」と、機能性を重視した「ベーシックシリーズ」に大別される。フラッグシップの「ZV」(220.7万円)は2リッター+6速マニュアルモード付きCVTを組み合わせ、走りのイメージを強調。主力となる1.8リッターモデルは4WDも設定(168.0~205.0万円。1.5リッターモデルは充実した装備でありながらも買い得感の高い価格設定(139.8~176.8万円)だ。

    ライバルはカローラワゴン、リベロ、ファミリアSワゴン、カルタスワゴン。ハードを考えれば間違いなくウイングロードの安さが光るが、ライバルはどれも値引き幅が大きいものばかりというのがちょっと引っかかる。とはいえ、いよいよ1車種日産全チェンネル販売がスタートしており、かなりなりふり構わぬ販売が行われることが予想される。

    パッケージング&スタイル

    サニー譲りのボディは従来比約2倍の剛性、これを商用バンにも流用

    現行サニーをベースに開発された新型は、先代より全長95mm、全幅25mm、ホイールベース135mm拡大。全長4400mm×全幅1695mm×全高、ホイールベースmmの5ナンバーサイズだ。切れ味の良さを感じさせるウェッジの効いたボディは”ウイングシェイプキャビン”と名付けられ、見るからに20代の若者ユーザーを強く意識していることが感じ取れる。ひと回り大きくなり、ひと回り上質になり、そしてひと回り若くなっている。そのスタイルには新しい提案こそ見つけだすことはできないが、積載性重視の商用バン(ADバン)と共通しなければならない宿命ということを考えれば、よく健闘したデザインといっていいだろう。

    豊富な収納スペースや買い物フックを装備しているが、ヤング層を意識している割には素っ気ないインテリア

    インパネは基本的にサニーのものを流用。ただしサニーのように上質な空間ではなく、ややスポーティー…、というよりかサニーよりはちょっと格下ぽい。全体のカラーは黒調となっており、メーターをホワイト基盤にするなどスポーティーさを狙っているようだが、若者ウケはやや期待薄。品質は安っぽくてもいいから、もう少し実際の若者の感覚を反映して欲しいところだ。例えば、スケルトン(透明)素材を使うとか(まだどこもやってません。今がチャンス!?)。

    クラス最大の荷室スペースはライバル蒼白、リアシートを倒せば畳一枚が水平に入る

    スタイリッシュな見た目に反して、頭上空間は余裕あるものだ。後席にはリクライニング機構がついているものの、試乗したZにはなぜかヘッドレストが付いていないのがマイナス評価(ZV・Xエアロ・Xには装着される)。荷室は、商用バン(ADバン)もラインナップするクルマだけに、クラス最大の広さを確保している。居住性や積載性といったワゴンの基本性能は高い。特に床の広さを最優先しており、それを犠牲にするような仕掛けには凝っておらず、後席を倒せば、畳を水平にして積めるのだという。荷室は一畳。一般的な畳のサイズは横90cm×縦180cm、すなわちたいていのカップルはふたりでゴロンとできるのである。しかもほぼフラット。これは強力なアピールポイント!

    基本性能&ドライブフィール

    2リッターは特別仕様。基本は1.5リッターのリアサストーションビーム仕様

    新型ウイングロードに搭載されるエンジンは、1.5リッター直4DOHC(105PS/6000rpm、13.8kgm/4400rpm)のリーンバン仕様とLEV仕様、1.8リッター直4DOHC(120PS/5600rpm、16.4kgm/4400rpm)のリーンバーン仕様、そしてエアロシリーズの2WD「VZ」グレード専用としてワンクラス上のプリメーラやアベニール同様の可変バルブタイミング&リフト機構を採用した2リッター直4DOHC(190PS/7000rpm、20.0kgm/6000rpm)が設定される。都合4本立てだ。ギアボックスは4速ATと5速MTで、2リッターモデルには6速マニュアルモード付き無段変速機(ハイパーCVT-M6)が与えられる。

    足回りは前がマクファーソンストラット式、後がZVと4WD車にマルチリンク式、その他の2WD車にトーションビーム式トレーリングアーム使い分けた。前者はアベニールと同じもので、ウイングロード用にチューンしたもの。このクラスとしては贅沢な足回りだがイメージリーダー的な存在と考えれば納得できる。また、後者は荷室効率、バンへの流用つまりコストを考えた上での選択肢といえるだろう。

    また、新開発の「オートコントロール4WD」にも注目したい。通常は2WDに近い状態、必要に応じて必要な分だけ後輪にトルクを配分するという、スタンバイ4WDだが、小型化かつ従来システムに比べ約45%の重量低減を達成したという優れモノだ。燃費向上にも貢献している。試乗車の1.8リッターは不足のないパワー感。

    乗っていないが1.5リッターでも十分かも

    試乗したのは1.8リッター+4ATモデル。剛性の高さはサニーベースだけにお墨付き。エンジンはレスポンスよく、吹け上がりも軽い。ステアリングもちょうどいい重さの設定だ。何の不足もない走りは、「クルマにはお金をかけたくない」「クルマはこんなもんでいい」「クルマは遊びに行くための道具」という発想のキャラクターそのものだ。ただ、エンジン音が雑で、ほんの3000回転も回すとちょっとうるさいのは困りもの。音楽鑑賞や会話がはずまなくなってしまう。また、ちょっとした段差を乗り越えただけでも、リアの振動の納まりが悪く、ややバタバタした乗り心地になってしまうのも気になるところ。走りの質感という点ではもう一歩レベルアップが望まれる。ただ足まわりのしっかりさ(堅さ?)はワインディングではスポーティーさに変身する。コーナーでの安定感はアベニール以上にも感じられた。高速走行でもずっと安定した感じが続き、小さいクルマという印象はない。150km/hくらいでも直進性には全く不満がないが、元気なサウンドを響かせてくれるので、適度な緊張感が持続できるだろう。

    市街地では何ら不満がない、逆に言えば採り上げるほどのことのない平凡な走りではあるが、それがこのクラスの必然性。走りに味や刺激を求める人には不満がでるだろうが、そもそもそういう人は買わないはず。普通の人に普通に喜んでいただけるという当初の目的は十分果たしている。

    中でも最も優秀と感じたのが、市街地での機動力。つまり取り回しの良さだ。最小回転半径が4.6m(2WD)とライバル車の4.8~5mを大きく引き離している。これは片側一車線の道でも、広い路肩があれば、一発でUターンができる数値だ。ただし車幅は5ナンバー枠一杯で、乗っていてさほど小さいクルマという感じはない。

    ここがイイ

    最近の日産車らしく、まじめで、どこにも破綻がなく、ハードウエアとしては非常に良くできている。小物入れやカップホルダーは多いし、コンビニフックはフロントシートと荷室の二カ所にあるし、その気になればカーナビはいいところに付くし。リアシートは荷室側から倒せるし、リアはリクライニングするから乗ってて楽だし。特にリアのサスの張り出し部分が水平になっているのがいい。細かいところまで使い勝手がよく考えられていると思う。

    ここがダメ

    気に入らないところを一つづつ書き出すのは難しい。それより、気に入らないという人は全体が気に入らないんじゃないか。今の若者って、これなんだろうか。カロゴンがうけたのは、シャコタンにすると丸っこいボディがアメ車みたいになるからだし、このクラスの他のクルマがうけないのは、欧州車風エアロになってしまうから。ウイングロードもどうも欧州っぽい。若者ねらうなら、アメ車に振るのが筋では? オーテックのカスタムバージョン「ライダー」もフロントはアメ車ぽいが、リアのウイングはいただけない。

    総合評価

    ベースのサニーにしても、全く普通でとりえがないように思われているが、販売数ではやはり常時トップ10にランクされているわけで、こういうクルマはある一定数が確実に売れるし、それはそれでいい。スタイルにしても、商用車臭を消し、何ら嫌みなくまとまっている。つまり80点主義のクルマ作りの典型だ。って、それはトヨタ車だったのではないか。いいのだろうか、日産(とルノー)。思うに日産にルノーが加わったことで、これからの舵取りが非常に微妙になった。つまり、一昔前の日産車はわりにヤンキー(米国人ではない)受けしたのだが、これからはどんどん欧州車ぽくなってしまう可能性がある。マツダなどははっきり欧州車狙いでいい感じになってきているが、その路線、日産には微妙。ヒット作キューブって明らかにヤンキー(広い意味で)ウケしたわけで、あの路線こそ、数を売る秘訣のような気がするのだけれど。欧州車はルノーに任せ、日産本流はアメ車路線を行ってもらいたいと思う。ウイングロードにはそのあたりの揺れが出ている気がする。

    公式サイトhttp://www.nissan.co.jp/WINGROAD/

     
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