新車試乗記 第255回 トヨタ ウィッシュ X “S パッケージ” Toyota Wish X "S Package"

(1.8リッター・FF 189.8万円)

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日時: 2003年02月09日

     
     
     

    キャラクター&開発コンセプト

    トヨタ版ストリームではあるが・・・・・・

    2003年1月20日に発売されたウィッシュは、5ナンバーの7人乗りマルチパーパスカー。ミニバンではなくワゴンに近いもの、ミニバンを越えたものとされるが、現行イプサムが上級移行してぽっかり空いた5ナンバーミニバンの穴を埋めるべく登場したものだ。

    しかしどう見てもウィッシュは遅ればせながら投入された「トヨタ版ホンダ・ストリーム」。全長4550×全幅1695×全高1590mmは、奇しくも?ストリームとミリ単位で一緒。数字の一致は偶然? かもしれないが、ホンダにしてみれば「そこまでやるか」だろう。

    発売して10日ほどで4350台を販売し、この数字で1月の販売ランキング15位に登場した。2月は間違いなくトップテンに入ってくるはずだ。

    カローラ→アリオンと続くNCプラットフォームを使用

    ウィッシュのテーマは文字通り「Wish Comes True」。特徴は5ナンバーサイズで7人乗りであること。シートアレンジにも工夫を凝らす。エンジンはとりあえず1.8リッター「1ZZ-FE」(★★★超-低排出ガス仕様)だが、今春には2.0リッターが追加される。基本プラットフォームはカローラのものの発展版であるアリオン/プレミオだが、7人乗りとなって各部に補強とリアサスのコンパクト化が図られた。

    生産はプレミオ/アリオンと同じ堤工場(愛知県豊田市)。目標は月間7000台。ストリームは当初の月間1万台ペースから、最近は5000台程度に落ちている。トヨタの販売力と「後出し」で有利な商品力、そしてCFの「宇多田効果」をもってすれば、ストリームを追い越すのはたやすいだろう。

    価格帯&グレード展開

    158万8000円~189万8000円。がっぷり四つに組む価格設定

    基本的に「X」のみのモノグレードだが、いつものように廉価版“Eパッケージ”と豪華版“Sパッケージ”の用意がある。その意味では実質3グレード。価格は158万8000円~189万8000円と、ストリーム(1.7リッターで158万8000円~184万8000円)へのライバル意識は明らか。4WDは25万円アップ。

    新生ウィッシュvs.ストリーム特別仕様車

    “Eパッケージ”はオーディオやキーレスエントリー、細々とした室内の便利アイテムが省かれるので、主力は「X」(168.8万円)か「X “Sパッケージ”」(184.8万円)。一方、ストリームは年明け早々にHIDヘッドランプなどを標準装備した特別仕様車で、ウィッシュに対抗。メーカーにこだわらない人は、装備と価格をじっくり見比べることになる。

    パッケージング&スタイル

    イルカvs.「メタルカプセル」

    「メタルカプセル」をテーマにした外観は最近のトヨタデザインを踏襲。ボンネットは短く、フロントガラスの傾斜は強い。メーカーを問わず、いろいろなクルマの要素をかき集めたようにも見える。デビュー当初、「これがミニバン!?」と驚かせた「ドルフィンフォルム」のストリームに対して、ウィッシュは手堅くまとめた感が強いいが、それゆえにまとまりはよく見える。

    リアテール&ストップランプは豊田合成が手掛けたLED。エスティマハイブリッドなどで採用されているが、このクラスでは初となる。最大のメリットは省電力(通常の1/4~1/5)である点で、寿命も圧倒的に長い。デメリットはもちろんコストであるが、これから普及してゆくのは間違いない。

    プレミオ/アリオンのシャシーを改良

    ボディサイズは全長4550mm×全幅1695mm×全高1590mmと、ストリームとまったく同じ。ホイールベースはベースのプレミオ/アリオンより50mm長い2750mmで、ウィッシュ用に手が入ったことが分かる。実際、大幅に補強が入り、トーションビームのリアサスは張り出しを抑えるため新設計とのことだ。

    機能的だが華がないインテリア

    インパネもやっぱりストリームそっくり。使いやすいゲート式インパネシフトや足踏み式パーキングブレーキ、ウォークスルーなど、機能性は(ストリーム同様に)抜群。しかし、エモーショナルな面となると? 黒一色の内装は無難だが物欲に訴えないし、シフト周りの素材も高級に見えない。日産デザインが新しい試みをバンバン打ち出している今、トヨタが出遅れている感じは否めない(確信犯かもしれないが)。ダッシュボード上面はなぜか低い。

    熟成のシートアレンジ、使える3列目

    セカンドシートはダブルフォールディングで折り畳めるほか、スライドもする。サードシートは「ワンタッチチルトダウン機構」で、簡単に折り畳み可能。自動的に座面が沈み込んでセカンドシートとツライチになる動きが凝っている。

    座面に金属のS字バネを使って乗り心地に配慮したというサードシートは、空間も大人が体を曲げずに座れるだけを確保されている。長時間乗車はやはりきつそうだが、同じカローラベースのスパシオより圧倒的に良く、ストリームよりも良質。ストリームより60mmも長い室内長のため、広さもそこそこあり、そんなに不愉快な思いはしないだろう。乗り降りもしやすい。

    基本性能&ドライブフィール

    ミニバンではなくステーションワゴンをねらう

    シャシーはプレミオ/アリオンに近いウィッシュ。ドライブフィールは意外にスポーティだ。これもひょっとしてストリーム譲り? と言うより、剛性感のある走りは現行カルディナを思い出す。「軽快で気持ちの良い走り」を目指したという説明は納得できる。一名乗車ならパワーも十分だ。

    しかし、FFで1300kgの車重はアリオン/プレミオより100kg以上重く、カルディナよりも重い。それを132psの1.8リッターで引っ張るわけだから、多人数では少しツラそう。カルディナの中核エンジンは2.0リッターで、しかも定員は5人。まして100kgさらに重くなる4WDを選ぶなら、2.0リッターの発売を待った方がいいだろう。

    一人でも空しくない

    シートはホールド性があり、座り心地は良好。座面は固め、乗り心地もやや固めとなる。シートのせいもあるが、ソフト一筋だった先代イプサムとかなり印象は異なる。ロールが少なく、電動パワステもそれと気付かないくらい自然で、一人の時はけっこう飛ばせる。重心はけして低くないと思うが、ミニバンの腰高なコーナリング姿勢ではなく、乗用車風だ。

    騒音・振動対策も行き届いていて、このクラスの4気筒モデルとしてはかなり静か。ベンチマークのストリームを越えるように、入念に対策したのだろう。

    Cd値0.30は伊達じゃない

    主に高速道路中心に700kmほど、一般道を100kmほど走行して、付属の平均燃費計は14.9km/Lという驚異的な数字を表示した。満タン法による計測では11km/L程度だったが、それでもすごい。空力がモノをいう状況ゆえウィッシュには好条件だったと言えるが、1.8リッターで1300kg、7人乗りができるクルマとしては悪くない数字だ。

    100km/h時は3000回転ほどで、実にのんびりとしたもの。そこから加速していくとだんだん騒々しくなるが、150km/h巡航は快適にこなせる。実際には130km/hあたりで走るのが一番バランスがとれており、走っている実感があっていい。その意味では120km/hあたりが制限速度になるという第二東名(完成するなら)向きのクルマに仕上がっているといえる。

    ここがイイ

    やはり日本で使うなら5ナンバーサイズだ。実際には3ナンバーサイズであっても使用上ほとんど問題はないのだが、5ナンバーサイズは「心理的」に安心感がある。これは特に女性に顕著なようで、旦那の3ナンバーミニバンを乗り回すのには抵抗があっても、これなら大丈夫だろう。実際の所、年輩向けのセダン「プレミオ」のサイズなのだから。こうなると2代目イプサムの(国内での)低迷原因が、サイズアップにあったことはまちがいないと思えてくる。

    シートアレンジ、後席の広さ(アンダートレイも実用的)、荷室の広さ(フラットな荷室は車中泊もできそう)、前席だけでカップホルダーが5つあるほどの室内ユーティリティのよさ、ゲート式インパネシフトの使い良さ、疲れない運転席シート、カーテンシールドエアバッグやブラインドコーナーモニターの用意、コンソールトレイにティッシュボックスがピタリと収まること。このあたりは総じて不満なし。

    ここがダメ

    いつものことだが、ノーマル状態ではタイヤが小さく、リアはツライチじゃない。特にSパッケージはエアロパーツをつけているだけに、より足下が貧相に見える。イストもそうだったが、みてくれはもうちょっと何とかして欲しいところだ。

    ボディデザインはエスティマと同じラインで開発されたらしい。なるほど、よく見ればエスティマとイメージが通じるデザインだが、あの感動的なまでのインパクトはない。いや、それどころか、そうとう地味。このデザインを見ている限り、トヨタのデザイン力が若干低下しているような危惧を覚える。

    総合評価

    乗る前と、乗ってからでこれほど評価の変わったクルマは久しぶり。発表会で見る限り、ストリームつぶしのでっち上げカーという印象だったが、乗ってみると、これがたいへんいいクルマだった。

    まず、5ナンバーサイズゆえの取りまわしの良さは前述のとおり。遠くに出かけて狭い路地に迷い込んでも気にならないし、最小回転半径5.3mもうれしい。シートの高さは600mmで、ミニバンのようなよじ登り感やセダンのような腰を落とす感じがなく、スッと座れるため特に老人にはたいへん喜ばれた。確かにエスティマの助手席は70才過ぎの人には乗りづらい。老人を含めたファミリーのためにミニバンを買うなら、ウィッシュが喜ばれるはずだ。

    デイズではミニバン所有歴は長いが、その間フルに乗車したことは数えるほど。ほとんど一人か二人しか乗らず、常に大きな空間を背負って走るカタツムリ状態だったが、ウィッシュでは感覚的にはワゴン。空間を背負うというより、広い荷室を空にして走っているという程度の感覚で、無駄な気がしない。セカンド/サードシートの居住空間も不満なく広いから、多人数乗車用のクルマが欲しいなら、今後はこの路線だろう。ストリームのサードシートがあまりよくなかったせいで、この手のクルマに対して悪い先入観を持っていたことは否めない。

    走りは速くないけれど必要十分、電動パワステには違和感がないし、4速オートマにはシフトショックがない。最新トヨタ車らしく快適な走りに関しては、全く不満がない。元気よく走ることを目的にしないなら、ストリームよりこちらでしょう。内装の質感は一言で言うと、イスト並み。もちろん別に不満はない。なにせ価格は200万円を切り、DVDナビやブラインドコーナーモニター(もちろんバックモニターも)をつけても220万円程度。デイズの9年落ちになるエミーナは新車当時CDも取り付けずにそれくらいの価格だったので、ウィッシュの割安感はかなりのものだ。

    海外でも売れるような大きくユッタリした室内の3ナンバーサイズミニバンは、今後も日本の主流でいられるはずはない。チマチマとしたサイズを上手く工夫して、7人が快適に乗せる空間を作り出すことこそ、日本の得意とするところであり、それを受け入れちゃう(買っちゃう)ことが日本人らしさでもある。その意味ではウィッシュ(のようなもの)こそがまさに今日的国民車であり、ゆえに販売ランキング入りを果たすのだろう。トヨタの望みと国民の望みは一致した。一致してないのはクルマ好きというちょっとへそ曲がりな人たちだけなのかも(デイズのスタッフもそうなのかも)。

    試乗車スペック
    トヨタ ウイッシュ X“S パッケージ”(1.8リッター・2WD)
    (1.8リッター・FF 189.8万円)

    ●形式:UA-ZNE10G-HPPNK●全長4550mm×全幅1695mm×全高1590mm●ホイールベース:2750mm●車重:1300kg(F:-+R:-)●エンジン型式:1ZZ-FE●1794cc・DOHC直列4気筒4バルブ・横置●132PS(97kW)/6000rpm、17.3kgm(170Nm)/4200rpm●10・15モード燃費:14.4km/L●タイヤ:195/65R15(グッドイヤー GT 065A)●価格:189.8万円(試乗車:232.4万円 ※オプション:サイド&カーテンエアバッグ 9.5万円、DVDナビ 33.1万円)

    公式サイトhttp://www.toyota.co.jp/Showroom/All_toyota_lineup/wish/index.html

     
       
       
       
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