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日産 エクストレイル 20X “エマージェンシーブレーキ パッケージ”新車試乗記(第717回)

Nissan X-Trail 20X “Emergency Brake Package”

(2.0L 直4・CVT・4WD・252万7350円)

ソチオリンピック開幕記念!
エクストリームなSUV、
エクストレイルが向かったのは
「世界」だった!

2014年02月07日

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キャラクター&開発コンセプト

3代目はクロスオーバーSUVへ


新型 日産エクストレイル。名古屋モーターショー2013にて

日産 エクストレイルは、トヨタ RAV4やホンダ CR-Vに対抗して2000年にデビューした2リッタークラスのSUV。「ガンガン使えるタフギア」を合言葉に、悪路走破性を重視した電子制御4WD「オールモード4×4-i」、無骨な外観デザイン、防水処理を施した内装など、道具感のある作りが幅広い層から支持され、2001年から10年間、国内で最も売れたSUVになった(2011年はジュークにその座を譲った)。2007年には2代目(T31型)にモデルチェンジしている。

今回の3代目(T32型)は、海外では2013年9月のフランクフルトショーでデビュー。日本では12月11日に発表、16日に発売された。欧州ではキャシュカイ(日本名デュアリス)の3列シート車「キャシュカイ+2」として、米国ではローグ(日本未導入)の2代目として販売されるモデルで、これら3モデルを一つに統合すべく、スタイリッシュなSUVになっている。

また。新型エクストレイルは、ルノー・日産グループで車両の構成要素を共有化する新戦略「CMF(コモンモジュールファミリー)」を導入したモデルの第一弾でもある。

緊急自動ブレーキシステムや自動駐車システムを新採用


好評の防水シートや防水ラゲッジは、新型でも継続された
(photo:日産)

日本仕様はひとまず2リッター直4・直噴ガソリンエンジンとCVTの組み合わせ。アイドリングストップ機能も採用され、燃費(JC08モード)はFF車で16.0km/L、4WDで16.4km/Lと先代を大きく上回る数値を達成している。

新技術としては、日産では初採用となる低速域での緊急自動ブレーキシステム「エマージェンシーブレーキ」や「踏み間違い衝突防止アシスト」を採用。インテリジェントパーキングアシスト(自動駐車システム)付のアラウンドビューモニターも新設定されている。一方で、歴代エクストレイルで好評だった防水シート、防水ラゲッジといったヘビーデューティな仕様は継承された。

世界190ヶ国で販売されるというグローバルモデルゆえ、生産拠点は世界9ヶ国にあるが、日本向けはこれまで通り日産自動車九州(福岡県)。なお、発売当初はUK製を輸入していたデュアリスは途中から同工場製に変わったが、すでに国内向けは生産終了。つまり新型エクストレイルは、国内ではデュアリスの後継でもある。

国内の販売目標は月間2500台で、発売後3週間の初期受注は4倍超の1万1000台に達したとのこと。

 

販売が継続される先代(T31型)エクストレイルのクリーン・ディーゼル車(GT)
(photo:日産)

なお、2リッターディーゼルターボ仕様に関しては先代ベースが継続販売されるが、その代わりに1年後には、日産独自の1モーター・2クラッチ+CVT方式のハイブリッド車が追加される予定。

■過去の新車試乗記【エクストレイル関連】
2代目(T31型)日産 エクストレイル 20GT(ディーゼル) (2008年10月)
2代目(T31型)日産 エクストレイル 20X (2007年10月)
日産 デュアリス 20G (2007年6月)
初代(T30型) 日産 エクストレイル (2000年12月)

 

価格帯&グレード展開

全車2リッター・CVTで、224万9100円からスタート


日産 エクストレイル 20X
(photo:日産)

全車2リッター直4ガソリン(147ps、21.1kgm)のエクストロニックCVT(無段変速機)仕様で、MTはない。駆動方式は4WDのほか、FF(20万0550円安い)を中間グレードにだけ用意している。

ラインナップは大きく分けて、上級装備を省いた「20S」(4WDのみ)、アルミホイール、オートエアコン、スマートキー等を標準装備した「20X」(FFおよび4WD)、そして20Xにアンダーカバー等を装着して外観をスタイリッシュにまとめた「エクストリーマーX」(4WDのみ)の3つ。価格は224万9100円~279万7200円。

 

日産 エクストレイル 20X エクストリーマーX
(photo:日産)

低速域での衝突回避・軽減ブレーキや「進入禁止標識検知」を備えたエマージェンシーブレーキ パッケージ装着車は、わずか7万7700円高なので、一番の売れ筋は、20Xの4WDでエマージェンシーブレーキ パッケージ付(252万7350円~)あたり。出来ればさらに、オプションで、ステアリング操作を自動で行ってくれるインテリジェントパーキングアシスト(日産では初)付きアラウンドビューモニター&日産コネクトナビ(31万8150円)やLEDヘッドランプ(7万3500円)を装備したいところ。諸経費込みで300万円前後という感じだ。

なお、SUVらしいタフなイメージを強調した「エクストリーマーX」もベース車(X)の19万9500円高で設定。フロントオーバーライダー、アンダーカバー、大型フォグランプ、アルミホイールなどが装着される。

ボディカラーは、歴代エクストレイルのテーマカラーであるバーニングレッド、新色のチタニウムカーキなど全7色。初期受注の人気はダイヤモンドブラック(35%)、ブリリアントホワイトパール(23%)とのこと。

7万円高で7人乗りにできる


新型にはエクストレイルでは初の3列シート車が設定された
(photo:日産)

新型のもう一つの売りは、7万0350円高でサードシート付の7人乗りになること(20Sを除く)。サードシートはあくまでエマージェンシー用で、荷室の床下に格納可能。また、使用の際に3列目のフットルームを確保すべく、セカンドシートに前後スライド機能が追加される(5人乗り仕様は固定)。このあたりは、同じく7人乗りも選べるトヨタ ヴァンガードや三菱 アウトランダー(PHEVは除く)などとおおむね同じ。ただし、車重は70kgほど増えるほか、スペアタイヤが省略されるので、どちらにするかは必要次第だろう。

■20S(4WDのみ)      225万9600円
■20X(FF/4WD)    224万9100円~/244万9650円~
■20X エマージェンシーブレーキ パッケージ(FF/4WD)  232万6800円~/252万7350円~※今回の試乗車
■20X エクストリーマー X (4WDのみ)   264万9150円~
■20X エクストリーマー X エマージェンシーブレーキ パッケージ(4WDのみ)  272万6850円~

 

パッケージング&スタイル

クロスオーバーSUV風に変身


今回試乗したのは20X “エマージェンシーブレーキ パッケージ”

「タフギア」をキーワードに、四角くて無骨なスタイルを売りとしてきたエクストレイルだが、新型はフロントウインドウとバックドアを寝かせ、ボディサイドに複雑な抑揚をつけるなど、すっかり今風のクロスオーバーSUVに変身。欧州では2代目キャシュカイ+2として販売されるように、デュアリスの後継と言われればすんなり納得できるのだが……。日本でも案外早く定着するかもしれないが、今のところは、戸惑っている人が多いという状況だと思う。

 

ボディサイズ的には、このクラスのほぼド真ん中。先代よりホイールベースが75mm伸び、全長と全幅も少しずつ大きくなったが、意外にも全高はあまり変わっていない。ぐっと低くなったように見えるのだが、それはどうやらデザインによる錯覚らしい。また、CX-5がショート&ワイドの典型的ヨーロッパスタイルだとすると、エクストレイルはロング&ワイドの米国スタイル。このあたりは、米国向けのローグから来た設計要件だろう。

 

ヘッドライトはハロゲンが標準だが、オプションでLED(ハイ/ロー)を用意。LEDポジションは全車標準

バックドアは樹脂製で、7kg軽量化。ルーフレールは全車オプション

ホイールベースは先代より一気に75mmも伸びた。Cd値(空気抵抗係数)は0.35(先代比-0.01)
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB
(mm)
最低地上高(mm) 最小回転半径(m)
マツダ CX-5(2012~) 4540 1840 1705 2700 210 5.5
先代 日産エクストレイル
(2007~2013)
4590 1785 1685~1770 2630 200 5.3
スバル フォレスター(2012~) 4595 1795 1695 2640 220 5.3
新型 日産エクストレイル(2013~) 4640 1820 1715 2705 205 5.6
三菱 アウトランダー PHEV(2013~) 4655 1800 1680 2670 190 5.3
トヨタ ハリアー(2013~) 4720 1835 1690 2660 175~190 5.3~5.7
 

インテリア&ラゲッジスペース

意匠は変わるもの、エクストリームらしさは不変


室内幅は先代比+85mmで、センターコンソールも幅広くなった

インパネデザインは道具感のあった先代に対して、質感重視に変更。無骨な感じが好きな人は残念かもしれないが、一方で歴代エクストレイルで好評だった防水シート、防水加工フロア、防水ラゲッジといったヘビーデューティな仕様は継承されている。その点でエクストレイルらしさは不変だ。

 

アラウンドビューモニターには、人などの動きを検知して警告するMOD(移動物検知)機能が備わる
(photo:日産)

新しい技術としては、日産では初採用となる低速域での緊急自動ブレーキシステム「エマージェンシーブレーキ」や「踏み間違い衝突防止アシスト」を採用するなど、安全装備を充実。また、インテリジェントパーキングアシスト(自動駐車システム)付のアラウンドビューモニターも新設定されている。

 

フットルームは先代比+90mmで、座面長もしっかり確保した大柄なリアシート。2列シート車は固定で、3列シート車は前後スライドする

「セルクロス」を使った防水シートは標準(一部グレードでクロスシートも選択可)。シートヒーター(20S以外に装備)も強力

大容量コンソールには、保温・保冷機能付の大型ドリンクホルダーを装備
 

新型では2枚のボードで荷室の間仕切りができるフレキシブルラゲッジ機能を採用。荷室高は先代より上がり、容量は若干減少したようだ

後席背もたれはシングルフォールディングに変更され、畳んでも少々かさばる。試乗車は5人乗り仕様で、床下には155/90R17という超大径テンパースペアを搭載

ハンズフリー機能付きリモコンオートバックドアをオプションで用意。インテリジェントキーを携帯していれば、手や物をバックドアのセンサーにかざすだけで電動バックドアが開く。ボディが泥だらけでも、手を汚さずに済む
 

基本性能&ドライブフィール

CVTっぽさはあるが、動力性能はとりあえず十分


新型で直噴化されたガソリンエンジン「MR20DD」はセレナと基本的に同じ

試乗したのは初期受注の70%を占めるという「20X "エマージェンシーブレーキ パッケージ"」の4WD。車両本体は252万7350円だが、試乗車は日産コネクトナビなどのメーカーオプションやフロアマットなど販売店オプション込みで302万4000円。

走らせての第一印象は、ざっくり言えば、自然吸気の2リッターエンジンにCVT(無段変速機)を組み合わせたモデルに共通するもの。直噴化された「MR20DD」はセレナと基本的に同じエンジンで、最高出力は147ps(先代比10ps増)、最大トルクは21.1kgm(先代比0.7kgm増)を発揮する。トルク感はそこそこだが、これはこれで特に不満なし。丁寧にアクセルを踏めば、CVT特有のスリップ感は少ないし、深く踏み込むとマニュアルモードみたいにステップ感のある変速をするのが面白い。

また、中回転から高回転にかけては、2リッターという排気量ならでのパワー感がある。しかも回せば、けっこう速い。エコモードを切った方が反応はいいが、エコモードのままでもアクセルを踏み込めば活発さが増すので、特に不満なく走れる。

アイドリングストップや先進安全装備はさりげなく


ステアリングの右下に「エコ」スイッチがある。走行中は押しにくい

アイドリングストップ機能は、1月の寒さを勘案しても、あまり積極的に作動しないという印象を受けたが、始動・発進はごくスムーズで、ほとんど意識しないほど。システムはセレナ譲りで、再始動の時にはスターターではなく、ACジェネレーター(発電機)で直接クランクを回すタイプ。道理でスムーズなわけだ。

日産初採用のエマージェンシーブレーキは、単眼カメラによる画像解析で測距を行うもので、衝突回避が可能なのは30km/hまでとのこと。一度警告までは作動したが、これもそれほど(例えばボルボやスバルのものほど)積極的には作動しないので、試乗中はほとんど意識しなかった。ただし、エマージェンシーブレーキ装着車に付いてくるLDW(車線逸脱警報)はかなりの頻度で作動するため、正直なところ途中でオフにしようかと思った。

 

車重は先代の同等装備車より60kgほど軽量化され、試乗した4WD(2列シート車)で1500kg。パワーウエイトレシオは10.2kg/ps

踏み間違い衝突防止アシストについては、バックする時、駐車場のそばにあった草に反応し、スロットル制御および「ググッ」とブレーキ制御が入った。これは、ドライバーによるブレーキ操作がない場合や、ドライバーが誤ってアクセルを踏んでいると車両側が判断した場合に作動するらしい。障害物の検知はパーキングセンサー用の超音波センサー(前後4つずつで計8個)を使っている。

ワインディングではデュアリスみたいに

そんな印象のパワートレインより、シャシーの方が先代から大きく変化した。先代はFFベース・モノコックボディの中型SUVとしては、悪路走破性を重視したせいか、ユサユサ感が大きめで、それがSUVらしくもあったが、一方で新型のシャシーは完全にクロスオーバーSUV風で、滑らか、フラット、シャッキリした走りになった。デュアリスみたいになった、と言ってもいいかも。こうした変化に対して寂しく思う人がいるかもしれないが、一般的には間違いなく進化だ。

ワインディングで負荷をかければ、腰高感はそれなりに高まるものの、意外によく曲がるし、ヒヤッとする動きも出ない。液晶モニターの前後駆動配分を見る限り、舗装路では発進時を除いて、ほとんど前輪駆動のまま走っている感じだったが、オールモード 4×4-i の4WDオートモードでは、前後の駆動力配分を100:0~50:50の範囲で積極的に変更することで、コーナーでの操縦安定性を高める制御も付いている。

 

オールモード 4×4-i の操作ダイアル。2WDモードのほか、50:50のLockモードも選べる(低速走行時のみ)。左のヒルディセントコントロールは、Lockモード選択時のみ作動

また、コーナーやブレーキング時にCVTのギア比を制御してエンジンブレーキを掛ける「アクティブエンジンブレーキ」や、積極的にブレーキ制御を行ってコーナリング時の安定感を高める「コーナリングスタビリティアシスト」も黒子として安定感ある走りに貢献しているようだ。

ただ、エンジンとブレーキを制御することで、凸凹道での車体振動を低減すると主張される「アクティブライドコントロール」については、車体との兼ね合いもあるので、それ自体の効果はよく分からなかった。

高速道路ではロードノイズが少し気になる


メーター中央に「アドバンスド ドライブアシスト ディスプレイ」を装備。様々な車両情報を表示できる

高速巡航時のエンジン音や風切り音は静かで、多少高い速度域でも、ノイズレベルが変わらないのはいいところ。乗り心地や直進安定性も良く、この点での不満はない。

ただ、オールシーズンタイアからと思われるロードノイズは、やや大きめ。ホイールハウスの裏には入念に吸音用のフェルト(不織布)が貼られているが、少なくとも高速道路ではもうちょっと静かだったら、という感じ。タイヤをサマーに替えれば良くなるかも。

なお、試乗車にはメーカーオプションの日産コネクトナビとセットで、斜め後ろの車両を検知してドライバーに注意を促す「BSW(後側方車両検知警報)」も装備されていた。ただし、クルーズコントロールは従来通りの手動式で、追従機能はなし。スバルのEyeSightやミリ波レーダー式のACCなどが、すでにライバル車で手に入ることを考えると、ちょっと物足りない。

試乗燃費は9.0~11.8km/L。JC08モード燃費(4WD・2列車)は16.0km/L


指定燃料はもちろんレギュラー。燃料タンク容量は60リッター

今回はトータルで約200kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)で9.0km/L。また、一般道で大人しく走った区間(30km)が11.8km/Lだった。走行モードは、ほとんど4WDオートのエコで走った。2WDモードでも走行抵抗はほとんど大差ないはずなので、実燃費も大差ないのでは、と思う。感覚的には、街中で7km/L台、高速巡航では13km/L台で、総じて10km/L前後で推移するという印象。

なお、JC08モード燃費(4WD・2列シート車)は16.0km/L。指定燃料がレギュラーなのは嬉しいところ。これは先代4WD車(JC08モード11.8km/L)より約36%いい数値。モーターデイズ的には、6年前に乗った先代20Xの試乗燃費が6.5~9.5km/Lだったので、実質2~3割アップかな、という印象。

 

ここがイイ

防水インテリアの継承、操縦安定性の飛躍的アップ、カメラやセンサーを駆使した安全装備の充実、燃費性能のアップ

すっかりクロスオーバーSUV風にはなったが、防水シートや防水ラゲッジなど、エクストレイルらしい機能性は継承されていること。これは海外仕様にはなく、日本専用。試してはいないが、オフロード性能も一般的なドライバーには十分なはず。7人乗りが選べるようになったことも、案外大きなメリットだと思う。

スタイリングがガラッと変わったように、操縦安定性も先代とは別物のように良くなった。とくに「アクティブエンジンブレーキ」や「コーナリングスタビリティアシスト」が働くワインディングでは、4WD的なオン・ザ・レール感を超えて、ものすごくよく曲がる、という新感覚の走り。CVTの段付き加速感も新鮮。

エマージェンシーブレーキ、踏み間違い衝突防止アシスト、車線逸脱警報、後側方車両検知警報、ふらつき警報、進入禁止標識検知、アラウンドビューモニター+インテリジェントパーキングアシストという先進技術の搭載。エマージェンシーブレーキ パッケージとアラウンドビューモニター(日産コネクトナビなどとセット)装着車に限るが、単眼カメラに加えて、前後左右にある4つのカメラ、前後8個の超音波センサー(パーキングセンサー)をフルに活用し、走行中や駐車時などの安全性を高めている。特に、駐車時のうっかり自損事故を自動ブレーキで防ぐ機能は新しいが、今後必須になっていくと思う。また標識検知も、画像解析を行うカメラならではの機能。今のところは進入禁止だけだが、今後の発展が期待される。

実用燃費がおそらく2割は良くなりそうなことも、この手のクルマでは実利の大きい進化。ガソリンエンジン車の進化はまだまだ続く。

ここがダメ

今までのイメージとのギャップ、ロードノイズなど

スタイリングは確かに今風になったが、従来モデルの無骨な感じがなくなったのは、少なくとも日本ではやや残念なところ。「日本のオヤジカーでもある」と先代の試乗記で書いたように、その支持は広い層で高く、先代の販売は終盤まで好調だった。そして今回のフルモデルチェンジ、スタイリング変更だが、これはあくまでもCMFを軸とする新しい世界戦略の中で行われたもの。エクストレイルという車名で培ってきた従来のイメージが大きくリセットされる形になったのは、ちょっともったいないと思ったりもする。

エマージェンシーブレーキは単眼カメラを使ったもので、今後の発展性を考えると面白いが、現状の性能は、このクラスの最新装備としては物足りない。すでにミリ波レーダーや、スバルのEyeSightのようなステレオカメラ方式が普及しつつある今、追従走行が可能で、もっと高い速度域まで対応するシステムにバージョンアップして欲しいところ。

高速走行時のロードノイズは、エンジン音や風切り音が静かなだけに、少し惜しいと思った。オールシーズンタイヤを標準とした意図は分かるが、日本ではサマーが標準でも良かったかも(冬はスタッドレスを履くだろうし)。

プラスαの余裕を求めるなら1年以内に追加されるというハイブリッド車に期待が集まる。車両価格は間違いなく上がるので、お得かどうかは微妙だが。クリーンディーゼルを国内で販売する予定は今のところないようだ。

総合評価

先代は最後まで売れていた

2014年1月の国内車種別販売ランキング(登録車)によると、エクストレイルは6616台で堂々の8位。それより上位はフィットやアクアなどのハイブリッド車やコンパクトカーが大半だ。日産は5位にノート、6位にセレナが入り、エクストレイルの次が28位のマーチだから、エクストレイルの健闘が光る。

ちなみに昨年トータル(1~12月)で、エクストレイルはモデル末期にもかかわらず25位。SUVで一番売れたCX-5が前年比+8.7%で18位(月平均3210台)、新型フォレスターが前年比+182%(約2.8倍)で19位(同2930台)だったが、先代エクストレイルも1月から11月まで月平均2236台も売るなど、大健闘していたわけだ。

 

つまり先代エクストレイルは、最後までものすごい支持を得ていたクルマということになる。日産は今、日本ではノート、セレナ、マーチ、そしてエクストレイルが売れているメーカーだと言えるのだ。先代の試乗記では、『コンセプトを徹底的に絞り込んだエクストレイルは、国産で唯一といってもいい「道具としてのクルマ」』『日産が考えたのは、50代と20代から30代前半(の親子)にエクストレイル、30代・40代のミニバン嫌いの都会派にデュアリスというマーケティングなわけで、これは絶妙。(中略)日産はこの2台で相当利益を上げるのではないか。』と書いたが、どうやらそのとおりになったようだ。

 

(photo:日産)

その屋台骨となるモデルのフルモデルチェンジは果たして……。いかにも無骨な、日本ウケするヘビーデューティスタイルが、先代までのエクストレイルが売れた大きな理由と思われたが、新型の立ち上がりは好調なよう。大きくイメージを変えたが、それは受け入れられた、ということのようだ。実際のところ、新型のスタイリングは今っぽく、今後はさらに一般受けすると思う。また先代、先々代からの代替え客から見ても新鮮だろう。それでいてタフさはちゃんと残っているので、ジュークのようなクロスオーバーとはきっちりユーザーが分かれる。それは、1月のランキングですぐ下につけるホンダ ヴェゼルとも一線を画せるということ。国内では同じくSUV色の強いフォレスターを睨んでさえいればいい。

クルマが進化する手段や方向の見事なサンプル

性能に関しては本文で書いた通り、このクラスのSUVとしては不満ないもの。特にSUVならではの使いやすさ、これはやはりセダンタイプの比ではない。デイズのある名古屋は雪もほとんど降らないし、都市部にいる限り、オフロードもほとんどない。しかし雪が降り、道がぬかるむ土地も、まだまだあるだろう。であればやはりSUVがいい。いや、都会でも高いアイポイントは運転しやすく、クルマ止めや坂でアゴをヒットすることもない。気軽に乗れるという点ではSUVが一番だなあと実感する。

ということで、より都会的なルックスを手に入れた3代目は、エクストレイルとデュアリスのユーザーを両取りして売れるはずだが、それでもライバルのフォレスターにはEyeSightがあるので、その対策は欠かせない。今回、日産の持てる衝突安全系装備の総てを、SUVにもかかわらず、これでもかとこのクルマへ投入してきたのは、そういうわけだ。この部分で新型エクストレイルが圧倒的にリードしたとは言えないものの、互角までは持ち込んでいると思う。特に多くのクルマが装備する超音波センサーを利用した踏み間違い衝突防止アシストは、今後の展開も含めて面白い。

 

アラウンドビューモニターの機能を使ったインテリジェントパーキングアシスト(自動駐車システム)
(photo:日産)

ただ、アラウンドビューモニターを使ったインテリジェントパーキングアシストは、位置決めなどの使い方にかなりの慣れを必要とする上、車両が自動で動く速度はかなり速く、どうにも今ひとつうまく使えなかった。2代目プリウスに同じようなシステムが搭載されてから、すでに10年が経とうとするが、今回も10年前と同じような感想になってしまった。バックモニターに頼りすぎる運転は、人の運転能力(運転の勘)を削ぐようにも思える。自動運転がITS(高度交通システム)の最重要テーマとなっている昨今、今回の搭載はデモンストレーション的な意味合いもあるように思えるが、やはりこの技術は現時点で意味のあるものなのかどうか、再検討が必要だと思う。もしこれで事故が多発すると、自動運転自体への向かい風になりかねないことを危惧する。

 

東京モーターショー 2013の日産ブースにて

今回のエクストレイルは、ルノー・日産グループのCMF(コモン・モジュール・ファミリー)戦略の落とし子なわけで、VWのMQB同様、そのおかげもあって安全系装備を充実させることができたとも考えられる。今後、クルマが進化する手段や方向は、こういうものなのだな、という見事なサンプルに見えてくる。ある意味、実に日本的だった先代とは違い、日本という小さな世界を横目に、グローバリゼーションの流れに乗って世界で売れるクルマが作られ、その恩恵もあって安全でエコなSUVが登場した。日本での最高というより、世界での最高を目指すものになったわけだ。ちょっと残念な気もするが、パソコンやテレビ事業を止めるソニーのようにならないためには、それもありだろう、とも思う。

 

試乗車スペック
日産 エクストレイル 20X “エマージェンシーブレーキ パッケージ”
(2.0L 直4・CVT・4WD・2列車・252万7350円)

●初年度登録:2013年12月●形式:DBA-NT32 ●全長4640mm×全幅1820mm×全高1715mm ●ホイールベース:2705mm ●最小回転半径:5.6m ●車重(車検証記載値):1500kg(890+620) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:MR20DD ●排気量・エンジン種類:1997cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・横置 ●ボア×ストローク:84.0×90.1mm ●圧縮比:11.2 ●最高出力:108kW(147ps)/6000rpm ●最大トルク:207Nm (21.1kgm)/4400rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/60L ●JC08モード燃費:16.0km/L

●駆動方式:電子制御多板クラッチ式4WD ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイルスプリング/後 マルチリンク+コイルスプリング ●タイヤ:225/65R17(Yokohama Geolander G91)

●試乗車価格(概算):302万4000円 ※オプション:LEDヘッドランプ 7万3500円、日産コネクトナビ+アラウンドビューモニター+インテリジェントパーキングアシスト+BSW(後側方車両検知警報)+ふらつき警報+クルーズコントロール 31万8150円、リモコンオートバックドア 5万2500円、ルーフレール -円、ベーシックセレクション 14万5688円など ●ボディカラー:バーニングレッド ●試乗距離:約200km

●試乗日:2014年1月 ●車両協力:日産プリンス名古屋

 
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