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ボルボ XC60 T6 SE AWD新車試乗記(第571回)

Volvo XC60 T6 SE AWD

(3.0L 直6ターボ・6AT・599万円)

♪ ボルボよ、止まれ
渋滞のよそ見の中で

2009年09月11日

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キャラクター&開発コンセプト

自動ブレーキで低速での追突を防ぐ「シティセーフティ」を標準装備


新型ボルボXC90
(photo:ボルボ・カーズ・ジャパン)

欧州では2008年秋、日本では2009年8月29日に発売された新型「XC60」は、XC70やXC90に続くXCシリーズの第3弾。アウディQ5などの登場で目下激戦区の「コンパクト・プレミアムSUV」市場にボルボが満を侍して投入したモデルだ。

注目すべき点は、低速走行時の追突事故を自動ブレーキで防ぐという、世界初の安全技術「シティセーフティ」の標準装備化だ。ボルボが自社で開発したもので、世界中で販売されるXC60の全生産車に装備される。

価格帯&グレード展開

直6ターボの1グレードで599万円


ボディカラーは計13色を用意。試乗車は微妙な色合いが美しいテラブロンズメタリック

今回日本に導入されたのは、3リッター直列6気筒ターボの「T6 SE AWD」。価格は600万円をギリギリ切って599万円だ。ちおみに同じエンジンのXC70 T6 SE AWDは624万円だからシティセーフティやHDDナビ等の標準装備を考えると、かなり頑張った値段と言える。なおアウディQ5は、人気の「2.0TFSI クワトロ」がレザー内装ではない標準仕様で569万円、「3.2 FSI クワトロ」が660万円。XC60はこのど真ん中を狙っている。


■XC60 T6 SE AWD       599万円 ★今週の試乗車
 3.0リッター直6ターボ(285ps/40.8kgm)・6AT・4WD
 10・15モード燃費:7.8km/L

「ACC」は20万円のセットオプション

ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は、追突警告や車線逸脱警告などとセットの「セーフティパッケージ」(20万円)に含まれる。シティセーフティを備えたXC60にこれを装備すれば、ほぼ全速度域で追突防止あるいは被害軽減に対応できるので、ぜひ欲しいところ。

他にオプションは、キーレスドライブ、車載心拍センサー(車内への侵入を感知して100メートル以内にいるオーナーに知らせる)を備えた「PCC」(パーソナル・カー・コミュニケーター)、全ウインドウの合わせガラス化といった防犯機能をセットにした「セキュリティ パッケージ」(15万円)、電動サンルーフ(20万円)、電子制御ダンパーを制御してシャシー設定を3種類から選べる「FourーC」(コンティニュアスリィ・コントロールド・シャシー・システム)、560w・Dynaudio製12スピーカーのオーディオシステムなどがある。

パッケージング&スタイル

クーペとSUVを融合したデザイン。ボディサイズはQ5と同等。

最近出たSUVの中ではベストデザインと言いたくなるXC60。フロントの「アイアンマーク」は大型になり、その左右にはLEDのポジションランプも付いたが、ボルボらしく威張って見えないのがいい。また強く張り出しながら、フロント側にかなり傾斜したショルダーラインやサイドウインドウ後半部の絞り込みによって、クーペのような強い前進感もある。

後ろに回れば、24個のLEDを連ねたS字型のリアポジションランプが目に麗しい。ハイマウントストップランプをルーフスポイラー上部に配するのも珍しいパターン。

 

ボディサイズは全長4625mm×全幅1890mm×全高1715mm。前後オーバーハングが短い分、V70よりちょうど20センチ短く、またSUVとしては背が低いせいもあって割とコンパクトに見えるが、横幅はV70と同じで1890mmもあり、かなりワイドだ。しかしアウディQ5(全長4635mm×全幅1900mm×全高1660mm)も似たようなサイズであるし、XC90より一回り小さいのも確かなので(全幅は一緒だが、全長が20センチほど短い)、まあ許容範囲か。

インテリア&ラゲッジスペース

新デザインの内装とセンタースタック


試乗車の内装カラーは外装のテラブロンズメタリックとセットのソフトベージュ/エスプレッソブラウン

インテリアにも従来のボルボ車から一歩踏み出したスポーティさが感じられる。裏側が空洞になった薄型センターコンソール「センタースタック」は今までと違って運転席側に少し斜めになり、それに合わせてダッシュボードもS字を描いた左右非対称のデザインとなった。ステアリングやシートのデザインもかなりスポーティで全体とよく調和しており、なおかつ北欧デザイン特有の暖かみも感じられる。試乗車のセンタースタックに張られたオークのウッドパネルは販売店オプションで付け替え可能なものだが、こういうのがすんなり似合ってしまうのもボルボの大きな魅力。

 

なお電動パーキングブレーキのスイッチは配置場所や「引いて解除」という操作方法が新型レガシィと同じだが、スイッチ自体はレバーと呼びたくなるほど大きく、明らかにボルボの方が使いやすい。

サイド&バックモニターも完備。ナビは汎用を組み込んだもの

センターコンソール上部の6.5インチ液晶モニターには、ドアミラーに内蔵した広角カメラで左サイドの死角をかなり広範囲まで映し出す。またバックモニターも予測進路の軌跡に加えて、障害物への距離感を表示する優れものだ。

 

一方で指摘しなければいけないのは、ボルボで初めてセンターコンソールにビルトインされたHDDナビの操作性についてだ。操作スイッチが見あたらないので、前々回試乗記のジャガーXKRと同様、タッチパネルかと思いきや、モニターを指で押してみても動かない。実はこのHDDナビ、汎用のアルパイン製を組み込んだもので、コントロールは別体のリモコンで行う。

いつも通り安全性を最重要視


前半分がチルト&スライドするパノラミックルーフはオプション

リアシートは余裕のある室内高を活かしてアップライトな着座姿勢とし、足もとの広さもまずまず確保している。アウディQ5と異なり、シートの前後スライド機能やリクライニング機能はないが、特に不満はない。

 

XC60のインテグレーテッド・チャイルド・クッション(オプション)
(photo:ボルボ・カーズ・ジャパン)

またXC60ではボルボお得意のインテグレーテッド・チャイルド・クッションをオプションで選択できる。これはチャイルドシートを卒業した子供のためのもの。座面を2段階で持ち上げることで、身長95~140センチ、体重15~36kgまでの子供(日本人ならだいたい4歳から10歳くらいまで)に対応可能だ。

 

さらに、これまたいかにもボルボらしいのだが、中央席にはやたら立派なヘッドレストを備える。ロックを外して引き上げて使うものだが、これくらいしっかりしたものじゃないとむち打ち防止にはならないのかも、と思わせる大きさだ。

トランク容量は495~1455リッター

電動テールゲートを開けて現れるトランクは、容量495リッター(床下収納を含む)。ゴルフバッグを4つ積んだ状態でトノカバーを閉じられる、というのが売りだ。V70のように、床を一部跳ね上げて買い物袋などを固定できるグロサリーバッグ・ホルダーも備えている。

 

最大拡大時の容量は1455リッター。リアシートの背もたれを畳むには、左右のリアドア側に回ってロックを解除しなければいけないが、ヘッドレストが自動的に折り畳まれるので操作そのものは簡単だ。背もたれは3分割なので、真ん中のアームレスト部だけ倒すこともできる。

 

フロア全体を跳ね上げてアクセスする床下収納は39リッター。かさばらないものはここに入れると転がらなくて便利だ。その下にはスペアタイヤの収納スペースがあるが、日本仕様ではパンク修理キットとなる。

基本性能&ドライブフィール

パンチと高級感を備えた直6ターボ

「T6」は3リッターの直6ターボ仕様。V70やXC70にも設定のあるエンジンだが、ボルボの中では例のヤマハ製4.4リッターV8に次ぐ高性能エンジンだ(と思ったら、XC90やS80にあったそのV8はすでに国内では販売終了。残念)。

今流行りの直噴ではないため圧縮比は9.3と低めで、ターボラグも若干感じられるが、最大トルクは1500回転でBMWの3リッター直噴直6ターボと同じ400Nm(40.8kgm)もあり、低速トルクは十分。そのままアクセルを踏み抜けば5600回転で285psを発揮し、7000回転手前まで「クアァーーン」とスムーズに回りきる。さすが直6という感じだ。車重は1.9トンもあるが、走らせればアウディQ5の3.2(自然吸気のV6で270ps/33.7kgm)より明らかにパンチがあり、2.0TFSIに張る感じ。スムーズさやゆったり感に関しては、やはり直4の2.0TFSIより、直6のXC60に分がある。

予想を覆すスポーティなハンドリング

足まわりはボルボ車としてはかなり硬めだが、ドイツ車基準で言えば十分にしなやかで乗り心地はとてもいい。ねじり剛性がXC70比で15%上がったボディの剛性感も高い。

そんなボディのおかげか、ワインディングでのスポーティな走りにも驚いた。ボルボと言えば、石橋を叩くくらい徹底的に安定サイドに振ったハンドリングが定番だが(もちろんスポーティなモデルもある)、XC60は乗っているクルマが何だったか分からなくなるほど、ハイペースで山道を走り続けられる。XCシリーズらしからぬ?ピレリ・Pゼロロッソのグリップ感は、車重のせいかそれほど高くはなかったが、今までのボルボ(少なくともXCシリーズ)とは段違いに舵が効くため、思い切りコーナーに入って行けるし、AWDのおかげで脱出時もクルマがスッと前に出る。これなら電子制御ダンパーで足まわりのセッティングを変えるオプションの「FourーC」も面白そうだし、ボルボの高性能シリーズである「R」モデルの設定もあり得るな、と思わせられる。

また今回は試さなかったが、カタログには悪路走破性についても触れられている。235mmの最低地上高はランクル200系と同等だし、アプローチ22度、ランプブレークオーバー22度、ディパーチャー27度という走破アングルもクロスオーバー車としてはまずまず。急勾配の降坂時に4輪個々のブレーキを自動制御するヒル・ディセント・コントロールも装備している。

試乗燃費は6.5~7.9km/L。10・15モード燃費は7.8km/L

今回も大体いつものパターンで約200kmを試乗。試乗燃費は一般道と高速をまじえた区間(約90km)で6.5km/L。一般道を無駄な加速を控えて走った区間(約60km)で7.9km/Lだった。10・15モード燃費は7.8km/Lだが、スピードを抑えて走れば落ち込みは少ないという印象を受けた。他メーカー同様、ボルボもずいぶん燃費は良くなってきた。もちろん指定燃料はハイオクとなる。

シティセーフティについて

【シティセーフティ】 その1 概要編


(photo:ボルボ・カーズ・ジャパン)

「シティセーフティ」は渋滞中などの低速走行時に、よそ見などの不注意による追突事故を防ぐ自動ブレーキシステムだ。エンジンを始動する度に自動的にオンとなるが、実際に作動するのは4~30km/h以下の低速走行時のみ。フロントウインドウ上部にある赤外線レーザーセンサーによって約6メートル先の停止車両や先行車を監視し、追突しそうになると自動的にブレーキを掛ける。

その場合、前方車両との速度差が15km/h未満なら追突を防ぎ、速度差が15~30km/hの範囲なら出来る限り減速して追突時のダメージを軽減する。最大減速Gは0.6~0.8Gというから、かなり強めのブレーキになる(市販車の一般的な減速Gは最大1.0G程度)。

シティセーフティがユニークなのは、レーダークルーズに使われる高性能のミリ波レーダーではなく、性能は低いがコストは10分の1程度と言われる赤外線レーザーセンサーを使うこと。ボルボの調査によれば衝突事故の約75%は30km/h以下の低速で発生し、その約半数はわき見運転などのためノーブレーキであるという。そのため、まずは低速度用かつ低コストのシステムの方が事故を減らすには有効、というわけ。

 

なお、シティセーフティに付随して、ボルボでは初めて「プリ・プリペアード・レストレインツ・システム(Pre-Prepared Restraints=PRS)」も搭載している。これは衝突の危険を察知するとエアバックやロードリミッター付シートベルトの作動準備を始めるというもの。PRSはシティセーフティと異なり、全速度域で作動する。

なおオプションのACCは時速30km/h以上でセット可能。もちろんこれもブレーキ制御付なので、つまりACCを装備すれば高速域からシティセーフティ作動領域まで、ある程度シームレスでカバーすることになる。ただしエンジンを始動する毎に常時オンとなるシティ・セーフティと異なり、ACCは設定可能速度に達してから毎回セットしてやる必要があり、なおかつ普通のクルーズコントロール同様、ブレーキを踏むと制御がいったん切れることになる。

【シティセーフティ】 その2 体験編


シティセーフティの体験デモンストレーションにて。上の写真は自動ブレーキで止まった瞬間で、車体が大きくノーズダイブしている

ボルボ・カーズ・ジャパン主催のデモンストレーション会場で、実際にシティセーフティを体験してみた。先行車に見立てたのは、空気で膨らましたクルマ型のバルーンで、後ろにリアコンビランプやリフレクターの代わりとなる反射テープを貼ったもの。赤外線レーザーセンサーは人や自転車、オートバイには反応せず、あくまで乗用車(4輪車)以上のサイズの車両のみに反応するという。

まずはクリープより少し勢いを付けた15km/h程度で接近。するとかなり目の前に来たところでガツンとブレーキが掛かり、バルーンまで20センチくらいのところで停止した。レーダークルーズのようにジワジワ減速はしないので、ブレーキをクルマ任せにしようとは決して思えない。これはドライバーがシティセーフティを過信しないように施された意図的な設定だ。

明らかにスピードを出しすぎた時はもちろん止まらないが、さらにドライバーが積極的にステアリング、アクセル、ブレーキを操作した場合も、シティセーフティは作動しない。これはドライバーが前方車両を認識していてステアリング操作などで避ける場合もあるからだ。

【シティセーフティ】 その3 今後の展開

ボルボが日本の国交省から認可を得るためのプロジェクトは2008年1月に始まり、2009年の5月にようやく低速時のオートブレーキに関する技術指針が制定されたという。結果的には、同様のシステムが日本でもOKとなったことで、今後は国産メーカーからも同様の装備が続々と登場するだろう。先に説明したように、シティセーフティは技術的には決して高度なものではなく、ミリ波レーダーなどに比べればコストも安い。

またスイス、イギリス、ノルウェー、スペイン、オランダ、ベルギーなどの欧州各国では、保険料が最大25%安くなるというが、日本でも目下保険料の割引に関しては検討中だという。

ここがイイ

シティセーフティ、スタイリング、内装、走りなど

もちろんシティセーフティの採用。自動ブレーキをより安く、より広く、より役に立つ方向で開発し、諸外国と同様に日本でも発売にこぎ着けたボルボは偉い。広告コピーは「安全革命。自ら止まってくれるクルマ」。ちょっとエキセントリックだが、クルマが売れないこのご時世では、これくらいのコピーでないとインパクトは出ないだろう。とはいえ、まだまだ広く一般に知られるまでには至っていないから、もっともっと出稿して世間にアピールしてもらいたいもの。

日本という環境では大柄、大味に見えた新型V70に対して、すんなり溶け込みそうな引き締まったスタイリング。ボルボのいうとおり「史上最も美しいボルボ」かどうかは意見が分かれるところだが、まあベスト5には入る素晴らしいスタイリングだと思う。こうなると次期S60にも期待できそう。

 

エクステリアも素敵だが、インテリアのオシャレさはさすが。試乗車の2トーンシートの趣味の良さ、センタースタックの控えめな木目(ノルディック・ライトオーク)、アクセント的に使われるシルバー素材、ドア内張に張られた革の肌触りの良さなど、感触面もふくめてユーザーは500万円超のクルマを買った満足感を得られるはず。オーディオの音も素敵だ。

ややターボラグは感じられるものの、走りは十分にスポーティで楽しめるし、ランドローバー譲りという本格的なオフロード性能も併せ持っているという点で、マルチパーパスなスーパーカーだ。ボディサイズは日本で使うのにギリギリセーフといったところだが、やはりSUVは視点が高くて見晴らしが良い分、サイズの割に取り回しは楽。

ここがダメ

標準装備のナビ、ACCをオプションとしたこと

パネル裏のスペースが使えないセンタースタックによって、オーディオ周辺のローカライズが効かないボルボの事情は分かるが(その意味ではセンタースタック自体に問題があるとも言えるが)、いかにも社外品然としたHDDナビ(本体はグローブボックス内)は、XC60で唯一残念な部分。他のメーカーが純正ナビに関してはかなり進化してきているだけに大きな不満だ。ただこれがネックとなってXC60が売れないのはもっと残念なのでフォローしておくと、どうせ後から付ける社外品が最初から付いていると考えれば納得できる。まあそうであればPNDなどを含め、オプションとして選択肢をいろいろ増やしておいて欲しかったところ、ではあるが。

残念なのはACC(いわゆるレーダークルーズ)がオプションとなっていること。シティセーフティとセットになると、自動ブレーキによる停止が全速度域で一連の流れとなってしまい、それを意図的に嫌った(あるいは役所に遠慮した)もののようだが、現実的にはかなり残念。ACCの他、車間警告、追突警告、車線逸脱警告、集中力低下警告といったハイテクがセットになった「セーフティパッケージ」はわずか20万円のオプションだが、これらは安全を標榜するボルボであれば、当然標準装備すべきもの。同様に、車内への不審者侵入を検知するなど、セキュリティ系のハイテクがパッケージオプション(15万円)となっているのも残念。「自ら止まってくれるクルマ」とまでうたうのであれば、ハイテク系は当然コンプリート装備とすべきだろう。

総合評価

必要最低限の自動停止装置

追突しそうになった時にクルマが自動的に停止する、なんてことは未来のクルマにとって当たり前のことと、昭和30年代から思っていた。それから半世紀、昭和も遠くなった今、やっと「それらしい」クルマが登場したことは、素直に喜ぶべきだろう。

雨の日、雪の日は無理、といった自然の影響は受けるものの、赤外線レーザーで前方車両の反射板をとらえるという比較的簡単な仕組みで成り立ったボルボのシステムは、必要最低限の自動停止装置というべきもので、渋滞中などの軽い「うっかり」追突(これが実は追突事故の多くを占めるという)を防いでくれる。この速度域での事故の場合は、大きな人的損傷はないと思うが、事故処理や修理代などを含めて心理的な傷を防いでくれるという点で、まさに人に優しい、素晴らしい装置と評価していいと思う。

これを機に一気に変わってもらいたい

そして今回、何より評価すべきは、ボルボが日本のお役所を寄り切ったことだろう。クルマが勝手に止まる→クルマに依存して運転がズボラになる→かえって事故が増える、という図式で、この手の装置をなかなか承認しなかったお役所には、これを機に一気に変わってもらいたいもの(政権交代もあったことだし)。昔、ドアミラーは見にくいということでフェンダーミラーしか承認しないという時代があったが、今時そんなことを言ったら笑われてしまうだろう。しかし今でもSUVの場合、フェンダーにミラーをつけることが必要とされ、XC90のようにほとんど役に立たないフェンダーミラーをつけなくてはならない(XC60ではその代わりにサイドビューカメラとディスプレイが用意されるが、これは大いなる無駄に思えてならない)。また昨今は当たり前になってきたカーナビディスプレイの上段取付(XC60もそう)も、許されない時代が長く続いた。

フェンダーミラーにせよ、ナビにせよ、結局最後は役所側が折れているわけで、その間の目に見えない「損失」は、巡りめぐって国民が負担していることになる。薬害エイズ事件のように分かりやすく役所に過失があると証明できればいいが、クルマにまつわるこの手の話は分かりにくいため、いつもうやむやのままだ。民主党政権には高速道路無料化だけでなく、このあたりも何とかしてもらいたいと思うのだが、どうだろう。また国内メーカー各社も、今回のボルボのようにがんばってもらいたいもの。特に低速追従機能付きのレーダークルーズコントロールは、ほぼシティセーフティ並の能力を持っているわけで、これをボルボのように「自ら止まってくれるクルマ」とうたえるよう、がんばってもらいたい。それにはブレーキを踏んでもクルーズコントロールが解除されないようにする必要があり、なかなかハードルは高いのだが。

今後のクルマは学習が必要

クルマが勝手に止まると運転が散漫になるから危険、という考え方は否定はしない。しかしそれによって救われることもあるだろうから、まあ五分五分と考えるべきではないか。XC60のテールゲートは電動だが、これは挟まれる危険があるからダメ、とはいわれない。つまり求められるのは、ドライバー教育だろう。シティセーフティのような最新の自動車装備の話を含め、有意義なドライバー教育を行える機会を行政はもっと用意すべきだ。交通違反をして免停講習へ行ったら、案外ためになったという声もけっこう聞く。そんな講座をゴールド免許取得者にも行うべきだし、そのための税金なら使ってもいい。手っ取り早くやるなら免許の更新時に全員に対して免停講習並みの講義を行うこと。安全に幾分かは寄与するから、けして無駄ではないと思う。

実際のところ、シティセーフティは作動してみないとドライバーにはなんだか分からないものでもある。その意味では購入前の体験試乗は絶対必要だし、レーダークルーズなども体験してみないとその良さや存在意義(あるいは操作方法すら)は分からないだろう。インテリジェント化する今後のクルマは、学習が必要な乗り物となりつつある。そろそろクルマは誰もが乗れるものではなく、乗る前に学習しなくてはならない乗り物としていくべきではないか。それによってさらに安全で快適な乗り物にできるのではないかと思う。クルマが進化するばかりで人が進化しないのはアンバランスだ。XC60に乗っていると、クルマの進化に伴って運転する人間側ももっと進化していく必要があると思わずにはいられなかった。

試乗車スペック
ボルボ XC60 T6 SE AWD
(3.0L 直6ターボ・6AT・599万円)

●初年度登録:2009年8月●形式:CBA-DB6304TXC ●全長4625mm×全幅1890mm×全高1715mm ●ホイールベース:2775mm ●最小回転半径:5.8m ●車重(車検証記載値):1950kg( 1160+790 )※サンルーフ装着車。標準車は1930kg ●乗車定員:5名

●エンジン型式:B6304T ● 2953cc・直列6気筒・DOHC・4バルブ・ターボ・横置 ●ボア×ストローク:82.0×93.2mm ●圧縮比:9.3 ● 285ps(210kW)/ 5600rpm、40.8kgm (400Nm)/ 1500-4800rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/70L ●10・15モード燃費:7.8km/L ●JC08モード燃費:-km/L ●駆動方式:フルタイム電子制御式4WD ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット/後 マルチリンク ●タイヤ:235/60R18( Pirelli P Zero Rosso )

●試乗車価格:619万円( 含むオプション:チルトアップ機構付電動パノラマ・ガラスサンルーフ 20万円 )●試乗距離:約200km ●試乗日:2009年8月 ●車両協力:ボルボ・カー 尾張一宮

 
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