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ボルボ XC90 2.5T新車試乗記(第273回)

Volvo XC90 2.5T

(2.5L・直5ターボ・5AT・615万円)

2003年06月21日

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キャラクター&開発コンセプト

ボルボ初の「本格」SUV

2002年の北米デトロイトショーで発表され、日本では2003年5月8日に発売されたボルボ初の「本格」SUV。ボルボにはこれまで、ステーションワゴンをベースに地上高を上げたXC70というモデルしかなかったが、XC90は同社の最上級セダンのS80のプラットフォームを基本としながらも、ほとんど全てが専用設計だ。「XC」はクロスカントリー(舗装路から未舗装路まで、あらゆる路面を走破)を意味し、一方でオフロード、つまり道路を外れて自然に踏み込むのは対象にしていないという。アウディ風に言えば、あくまでもオール「ロード」ということだ。

安全性の新基準を持ち込む

主な特徴は3列シート・7人乗りであること、北欧デザインを持つ初のSUVであること、そして高い安全性だ。特に最後の安全性については、北米で問題になっているSUVの横転死亡事故を防ぐため、各種の電子制御システム、ボディのセーフティケージ構造、3列目までカバーするカーテンエアバッグ等で万全を期す。安全技術に早くから取り組んできたボルボらしく、新カテゴリー進出にあたっても高い志を強くアピールする。

価格帯&グレード展開

3グレード、2エンジンで、555~695万円。

XC90は「XC90」(555万円)、「XC90 2.5T」(615万円)、「XC90 T-6」(695万円)の3グレード構成。前の2つは同じ2.5リッター横置5気筒ターボ+5速AT。T-6だけ、S80と同じ2.9リッター横置6気筒ターボ+4速ATとなる。価格とキャラクターで言えば、国内ではBMW・X5 (599~1070万円)やホンダ・MDX(485万円)がライバルだ。

レザーシートやキセノンヘッドランプは「2.5T」以上なら標準装備。T-6には最新のドルビーサラウンド・プロロジックII・システムのオーディオ(305W、11スピーカー)や17インチホイールが標準で付く(他はオプション)。DVDナビは全車オプション。助手席エアバッグがボルボ全車でオプション(1万円)である理由は、子供が助手席に乗った場合、エアバッグが逆に凶器になるという見解からだ。

パッケージング&スタイル

ハリアー < X5 < XC90 < MDX

「小山のよう」というのが実物の第一印象。全長4800mm×全幅1900mm×全高1780mmは、ハリアーよりぐっと大きく、X5より少し大きく、意外にもホンダ・MDXよりわずかに小さい。しかし、実際の存在感はXC90が一番だ。

やっぱりスウェディッシュ

インテリアには北欧デザインらしい落ち着いた高級感がある。ツヤを抑え、木目がまっすぐ通った流行りの仕上げのウッドパネル、他のボルボ車と共通の機能的スイッチなど、他のSUVにはない雰囲気だ。質感やタッチもいい。数日後、比較のため乗ってみた現行ハリアーはAピラーの傾斜が強く、助手席ドアが近くて、はるかにコンパクトだった。クーペのようなパーソナル感を狙ったハリアーに対して、XC90は重厚で、骨太な雰囲気が特徴だ。

残念なのはナビが全車オプションなこと。600万円という価格やクルマの性格を考えると、やはりナビは標準装備であって欲しい。ダッシュ中央にビルトイン式のDVDナビ(ボルボの上級車種と同じもの)がディーラーオプションで装着できるらしいが、かなり高額なようだ。同じフォード傘下のジャガーはナビをXタイプにすら標準化するなど積極的だから、ボルボも頑張ってほしい。

オーディオに驚嘆

クルマの本質とは関係ないが、驚いたのは試乗車に装備されていたドルビーサラウンド「プロロジックII」システムのオーディオ。FMラジオですら、異様に良い音がする。オーディオマニアではないので「気のせいかなあ。それにしても良い音だ」と思っていたが、あとで別のスタッフも同じ感想を持ったことが判明。ボルボの担当の方にも後で、「オーディオ、すごく良い音だったでしょう?」と尋ねられた。メーカー標準装備のものとして、今のところこれ以上のものはちょっとないかもしれない。

子供は後席に

40:20:40に分割する2列目シート中央は、子供用クッション付きの独立スライド式で、284mm前後に移動する。ボルボによれば、この2列目中央が「車内で最も安全な位置」だそうだ。一番前に出せば「前席に座ったご両親と近付いて座ることができます」とカタログにある。欧米では普通、両親は前席、子供は後席というケースが多いからだろう。さらにチャイルドシートを装着する場合は、後席左右に「必ず後ろ向きに」と注意がある。徹底的だ。

サードシートにもプリテンショナー

パッケージング上の特徴は、3列シートを備えた点。5人乗りのX5やハリアーに対して、MDXと同じ7人乗りとなる。MDXの開発者も言っていたが、SUVの3列シートは北米で好評らしい。ただし3列目は「身長160cmくらいまでの人」と断わりが付く。実際に座ってみると、足元こそ厳しいが、横方向と頭上の窮屈さは感じない。シートベルトは3点式で、しかもプリテンショナー付きだ。もちろん、クッションは薄く、座面高も足りず、乗り心地もそれなりのはずなので、長時間は辛いだろう。それよりも3列目の収納方法がスマートで感心した。座面は折り畳むのではなく、後方奥にスライドさせる。

基本性能&ドライブフィール

大きさを感じるボディ

試乗車は中間グレードの2.5T。1900mmの幅は確かにワイドだが、今やハリアーで1845mm、BMWのX5で 1870mm、ホンダのMDXに至っては1955mmもあるから、特に大きくはない。が、ボンネット先端と左前方の見切りが悪いので、狭い道では少なからず緊張する。最小回転半径は6.0メートル(T-6では6.3メートル)と大きいが、エンジン縦置きのX5でも6.1メートルだから重大な欠点とは言えないだろう。

ゆったり、どっしり

横置5気筒のターボユニット(209ps、32.6kgm)はS60やV70の2.5Tと同じもの。ターボは低速からしっかり過給するタイプで、知らなければターボであることに気付かないかも。車重は2090kgなので、パワー・ウエイト・レシオはちょうど 10kg/psと「過不足なし」の境界線上。実際の加速感も数字通りで、豪快な加速や軽快感はない。

レッドゾーン手前の6000回転までスムーズに回るが、回すと駆動系のノイズがかなり高まる。割とローギアードで、2速では 90km/hくらいが上限だ。おおむね、1500~3000回転くらいでゆったり走る時が一番しっくり来るし、そういった時は静かで快適。マニュアルモード「ギアトロニック」もあるが、頑張ってエンジンを回す意味はない。

一に安全、二に安全

コイル&ダンパーの足まわりはソフトな設定。分かりやすく言えば、アメリカンSUVのような少し船っぽい乗り心地だ。もちろん姿勢変化は現代のクルマらしく抑えられている。試乗車のタイヤはコンチネンタル製のマッド&スノーだったが、トレッドパターン自体はそれほど「オールシーズン」風ではない。駆動系ノイズが少し大きいせいもあるが、ロードノイズはほとんど聞こえない。

スローなステアリングのせいもあって、山道では飛ばす気にならない。これもボルボが意図した、安全のための設定なのだろうか。謳い文句通りの「低重心」という印象は受けなかったが、重めのステアリングや、どっしりした挙動で安心感は高い。

当日は雨でDSTC(ダイナミック・スタビリティ&トラクション・コントロール)の作動は頻繁だったが、警告灯を見なければ気付かないほど介入は自然で、走りはスムーズ。ためしにDSTCオフでも少し走ってみたが、その時は強めのアンダーが出た。つまり、DSTCがうまく機能している、ということが言えると思う。

2重、3重の電子制御システム

予防安全対策はこれだけではない。最後の守りは、車両の傾きを感知して「あらかじめ設定された危険水準」に達すると作動するRSC(横転安定性制御)という別系統のトラクション・コントロール・システムだ。具体的には故意に強いアンダーを出してロールオーバーを防ぐようだが、ひょっとするとDSTCオフで走った時の強アンダー、あれはRSCの仕業だったのかも。

走行系でもう一つの注目ポイントは、スウェーデンのハルデックス社製となる電子制御4WDシステムだ。ハルデックス式の4WDはアウディTTクワトロなどがすでに採用。通常はほぼFFで、前後タイヤに回転差が生じると後輪にトルク配分を行う。電子制御ならではの素早い反応やDSTCなどとの連携制御が可能な点が特徴となる。フルタイム四駆と言うよりは、電子制御で高度化させたオン・ディマンド四駆、と考えれば分かりやすいかもしれない。今回の試乗ではほとんど意識に上らなかった。

参考までに、新車から300kmしか走っていない試乗車の車載コンピューターが表示した生涯燃費は4.6km/L。実際に満タン法で計測した高速5割、街乗り5割の燃費もそれに近かった。なお、他のボルボ車と同じく、XC90も「スモッグイーター」ラジエイターを採用。これは特殊コーティングしたラジエイターで、通過する空気中の有害オゾンの75%を酸素に分解するというもの。その他、低排出ガス化やリサイクル性などで、ボルボらしい環境性能の高さを訴えている。

ここがイイ

飛ばす気にさせないところ=安全ということ。ほどほどの性能で、もう走り云々とは言いたくなくなる。それより素晴らしい音質のオーディオ(ここまでいい音のオーディオは今までになかったと断言できる)で、優雅に転がすのが向いている。

クルーズコントロールでの高速巡航が心地いい。日本車のように110㎞/h以上で効かなくなるということはなく、道路事情に合った実用的な速度で巡航できる。これは輸入車の最大のメリットだと思う。

ここがダメ

「ここがイイ」と矛盾するが、もう少し軽快感が欲しい。ボディの大きさもあってか、イメージとして「重い」のだ。同様にパワートレインにももっと洗練された軽快感が欲しい。

絶対的に高価なのに、オートライトじゃない、ナビがオプションなど、装備面がやや弱い。高級車なのだからもうちょっと充足感が欲しいところ。いい音のオーディオも下のクラスではオプションだし。

シート高が高く、小柄な人は乗車時によじ登るような感覚を強いられる。またセカンドシート中央にチャイルドシートがあるため、セカンドシート左右はかなり狭い。もちろんサードシートも広くはないので、7人乗りにもかかわらず、広くて快適なのは大人2人と子供1人ということになる。子供のいない家庭もあるからチャイルドシートはレスオプションとしてほしいところだ。

総合評価

北米市場はSUV一辺倒。各ブランドは競って新型SUVを投入しており、ボルボもその流れに遅れまじとXC90を投入した、ということだろう。なぜ今、北米ではSUVか、は知られた所なので今回は書かないが、まだ自然が多く残っている北米にはふさわしいタイプのクルマかもしれない。

ひるがえって日本では、10年ほど前の四駆ブームの時に、こうした大きな「四駆」は大衆の欲望の中で消費されつくしてしまい、「いまさら」感が強い。XC90のライバルとなるハリアーの例でいけば、米国市場では日本市場の4倍の台数が売れる。市場規模が2倍あるにしても、米国人の欲求は日本人の倍の強さということになる。

では一昔前、四駆は日本でなぜあれほど売れたのか、あるいはなぜ皆が欲しかったのか。それはバブルの余韻で大型車に対する憧れがあったこと、さらには空前の余暇ブームで、アウトドアレジャーがもてはやされたためイメージがよかった、などがあげられるだろう。四駆に乗って友人や子供とアウトドアに出かけることが、一種のステイタスだったわけだ。

しかし日本には分け入っていけるオフロードもなく、また高価なクルマを危ないオフロードへ入れる人もなく、ほとんど本格四駆の性能は必要とされなかった。スキー場ですらが四駆でなくても大丈夫なのを謳い文句にしていたのだから。実際のところ、せっかく大金を出して買った機能を使うステージもなく、トラックベースのでかくて快適でないクルマ(大半が振動の大きなディーゼル車)で、黒煙を吐き散らしながら走るしかなかったわけで、これはブームが去れば消え去る運命だったのも納得できる。

この頃の印象のせいかどうか、日本では今、米国ほどSUVが流行らない。ゆえに、このXC90などのような快適なSUVにも、あまり喜ばしい事態とはなっていない。XC90も、ファーストカーとして買う人は限定されるだろう。まあ、その限定感がステイタス感を維持していることも確かだが。

日本では大型車といってもいいXC90ゆえ、毎日の足にするには心理的に抵抗があるが、米国ならこのサイズはごく当たり前。毎日乗る愛車とするには手頃なサイズなのだろう。女性にも優しい大きさといえる。売れているわけはそのあたりにもある。そういえば日本でも四駆ブームの後、女性を中心に四駆のカタチをした小型車(代表はRAV4やパジェロジュニアあたり)が一世を風靡したものだ。サイズ感に関して、日米の差は大きい。

お金に余裕があれば、この手のクルマが一台欲しいと思う人は多いだろう。もちろん、セダンやスポーツカーがあることが前提だが。昔の四駆とはまったく異なる運動性能、快適性、安全性を持ち、乗り込んでしまえばアイポイントが高くて運転がしやすい。荷物も人も乗るから、日常で使うにはセダンよりずっといい。ヘビーデューティでありながら高級感もあって、利用価値が高いのだ。乗ってみると日本でも意外にサイズは苦にならない。アメリカ人的な感覚でクルマを捉えられる人なら、XC90は満足のいくクルマだ。

試乗車スペック
ボルボ XC90 2.5T
(2.5リッター5気筒ターボ・5AT・615万円)

●形式:LA-CB5254AW●全長4800mm×全幅1900mm×全高1780mm●ホイールベース:2855mm●車重(車検証記載値): 2090kg(F:ー+R:ー)●エンジン型式:B5254●2521cc・DOHC・4バルブ・直列5気筒ターボ・横置●209ps(154kW) /5000rpm、32.6kgm (320Nm)/1500-4500rpm●10・15モード燃費:7.7km/L●駆動方式:電子制御式4WD●タイヤ:225/70R16(コンチネンタル製 4×4 Contact M+S)●価格:615万円(試乗車:631万円 ※オプション:プレミアムサウンドオーディオシステム 5万円。メタリックペイント 10万円、助手席エアバッグ 1.0万円) ●車両協力:ボルボ・カーズ千種 (株式会社クリエイト)

公式サイト http://www.volvocars-jp.com/html/xc90/

 
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