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ヒュンダイ XG 300新車試乗記(第178回)

Hyndai XG 300

 


2001年06月30日

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キャラクター&開発コンセプト

コストパフォーマンスが最大の武器。ヒュンダイのフラッグシップセダン

今年1月、日本市場に本格的に参入を果たした韓国ナンバーワン自動車メーカー、ヒュンダイ。創業は1967年と比較的新しいメーカーでありながら、低価格戦略による大躍進により、今や技術提携関係にあった三菱自動車を追い抜いて、販売台数で世界第7位を誇るビッグメーカーとなっている。グループとしてはダイムラークライスラ一家の一員だ。

そのヒュンダイのフラッグシップサルーン「XG」が日本で発売された。「高品質、高性能をリーズナブルな価格で提供する」という同社のコンセプトに基づき、コストパフォーマンスに優れた最新の高級車に仕上げられている。

高級車としての伝統といったイメージ戦略はないものの、乗れば室内は広くて快適。そして装備も極めて充実している。3.0リッターV6+5ATのパワートレーンをはじめとするメカニズムにおいても、日本車を脅かすだけの競争力は十分。駆動方式はFF。ATシフトはフロア式のマニュアルモード付きで、パーキングブレーキは足踏み式を採用。なお、ハンドル位置は右で、ウインカーレバーを右側に変更するなど、日本仕様へのキメ細やかな対策が施されている。

価格帯&グレード展開

クラウンよりも100万円安い

グレードは2タイプ。標準仕様の「300」と、本革シート、助手席パワーシート、自動防眩ミラー、スーパービジョンメーター(トヨタで言うところのオプティトロンメーター)、16インチタイヤなどが加わる豪華仕様の「300L」。「300」でも十分高級車らしい装備を備えており、安全装備ではデュアル&サイドイエアバッグ、EBD付きABSが全車に標準装備される。価格は「300」が239.9万円。「300L」が279.8万円。車格や装備はクラウン並でありながら、価格はマークII並というわけだ。

国内でXGと最も近い関係になるのは、提携している三菱のディアマンテだろう。同じ3リッターV6を搭載しており、装備内容も近い。安さにも定評がある。そんな日本一コストパフォーマンスに優れるディアマンテでさえ、価格は最低でも326.8万円。値引きを考慮したところで、XGの安さには全く歯が立たないのだ。3.0リッターV6が欲しくても値段が高すぎて、仕方なくこれまで2.5リッターを選んできた人なら、かなり食指が動くのでは。

パッケージング&スタイル

東洋と欧米のテイストをミックス

窓枠のないハードトップボディのサイズは、全長4865mm×全幅1825mm×全高1420mm。血縁関係と思われる三菱のディアマンテより一回り大きく、それぞれ+60mm、+40mm、-15mm。ホイールベースは+30mmの2750mmとなっている。また日本の代表的な3リッターサルーンであるクラウン(マジェスタ)と較べると、全長-35mm、全幅+30mm、全高-35mm、ホイールベース-50mm。世界市場をターゲットとするだけあって、絶対的にハバヒロなのが特徴だ。

エクステリアデザインも国産車とは一線を画す。フロントビューはメッキグリルをギラつかせたアクの強いもの。リアビューは一転して、テールランプを小さく両脇に配したシンプルなものだ。その印象は韓国車というよりアメリカ車的。前後のオーバーハングが長く、ロー&ワイドのスタイリングはやや時代遅れの感もするが、存在感は十分。特にテールランプ上端と結ぶ彫りの深いショルダーラインは、このクルマの個性を最も象徴している。「東洋のアルファロメオ」とまではいかないまでも、なかなかに個性的で独創的なデザインといえよう。

贅沢装備てんこ盛りの室内

室内はまるで日本車のよう。インパネはスイッチや計器類のレイアウトこそオーソドックスだが、最近流行の上下ツートーン配色によって広がり感が強調されている。革シボ風の樹脂パーツは、日本のユーザーでも納得できるレベルだ。日本車の一部モデル並の質感は十分保っている。

特に感心させられるのは装備の充実さ。本革内装、メモリー機能付きパワーシート、オートライト、木目調パネル&ステアリングなど、高級車必須のアイテムは一通り揃っている。デュアル&サイドエアバッグも全車に標準装着。またオートエアコンは外気の汚れを感知すると自動的に内気循環になるという優れモノ。これらが全て付いて279.8万円。コストパフォーマンスという点では完全に国産車を凌駕している。なお、ナビの設定はないが、オーディオスペースが2DINサイズなので、カーショップでの後付も容易に可能だ。

何より嬉しいのが、ワイパーレバーとウインカーレバーが国産車と同じ位置にあること。些細なことだが、これは売れ筋の輸入車でもかななかみられない配慮だ。左だとシフトレバーに手を伸ばしたときウインカーレバーが操作できないわけで、何かと不便。右にあると国産車からの乗り替え層に対する違和感解消だけでなく、現実に有り難い配慮といえる。

強いて不満を挙げるとすれば、イマイチ絶対的な高級感に欠けることだ。高級車作りに不慣れなのか、どうも最高級車という印象はうけない。一応、木目調パネルやメッキパーツを多用してあるものの、よく見れば木目調パネルなどは「調」であることがバレてしまう。2リッターセダンのエラントラあたりとは比較にならない出来とはいえ、フラッグシップとしてはさらなる高品質感を追求して欲しいところだ。

室内空間はボディが大きい分、当然広い。後席の足下スペースも余裕たっぷりだ。ただ、後席の頭上空間は拳1個分とやや不足気味で、乗降性もあまり良いとは言えない。全高の低さとシートポジションの低さが災いしているのだろう。また前席の座り心地も気になるところ。調整箇所が多く、ランバーサポートも付いているのだが、なぜか腰の収まりが悪い。運転していると、お尻がズルズルと前にずれそうになる。まぁ、これは一部日本車にもあることなのだが…。品質面で日本車に追いついた今、このあたりは欧州車を徹底的に研究して欲しいところだ。

基本性能&ドライブフィール

国産高級車なみのテクノロジー。シーケンシャルモード付きの5速ATを搭載

エンジンは可変吸気システムを備えた3リッターV6。最高出力192ps/6000rpm、最大トルク26.5kgm/4000rpmを発生する。これに「HIVEC(Hyundai Intelligent Vehicle Electronic Control)」と名づけられた学習機能をもつ5段ATが組み合わせられ、マニュアル感覚のシフトチェンジができるシーケンシャルシフトを採用する。

足回りは前がダブルウィッシュボーン式、後ろがマルチリンク式で、ショックアブソーバーはガス封入式が採用されている。タイヤサイズは「300」が205/65VR15、「300L」が205/60VR16だ。

走行中の車両全体の制御は「CAN-BUS SYSTEM」にゆだねられている。これはEBD(電子制御制動力分配システム)付きABS、ECU(エンジン・コントロール・ユニット)、「TCU(トランスミッション・コントロール・ユニット)」、「TCS(トラクション・コントロール・システム)」といった車両各部のセンサーがキャッチした情報を一括管理するというハイテクシステム。道路状況の変化とアクセル開度などドライバーの意志を瞬時に把握して車両を常に最適な状態に制御するというものだ。

路面が良ければマイルドな乗り心地

試乗したのは「300」。H型ゲージとガングリップ式のノブを持つATシフトといい、今、何速で走っているのかを常時表示するシフトインジケーターといい、三菱車の技術がいたるところに反映されている。ミッションのギア比、ファイナル比も三菱のディアマンテと全く同じだし、恐らく「HIVEC」も三菱の「INVECS」に倣ったものだろう。また排気量が全く同じところをみると、エンジンブロックなどは直噴になる前の三菱製のものを使っている可能性もある(このあたりは確認していないのであくまで推測だが)。

実際の走りは、良くも悪くも日本車的。車重が1630kgと、大柄なボディの割には比較的軽く、なかなか軽快な加速を披露するのだが、低速域のトルク感が薄いので、速く走りたいなら3000回転以上を頻繁に使うことになる。マニュアルシフトチェンジの際、滑りの領域が長いのも気になるところだ。

快適さを重視したマイルドな乗り心地も大きな不満こそないが、やはり細かなところで気になる点も。しなやかさが足りず、段差を乗り越えた際のショックが一発で吸収しきれていないのだ。“日本人は柔らかめがお好き”とチューンを変えたのか、全体的にブヨブヨとした印象がのこる。ヨーロッパ車というよりアメリカ車的。ヒュンダイは硬い乗り味を好む欧州でも支持されているのだから、本来はもっと引き締まった乗り味だと思うのだが。

パワステは軽めながら、ロック・トゥ・ロックは2.8回転と、スポーティーカー並のクイックな設定。一見、高級車には似つかわしい設定だが、これが実際運転すると、大きなボディを持て余すことがなく、なかなか便利なことに気付かされる。また、フロントヘビーなFFということで高速コーナーを抜けようとすると強いアンダー傾向になるのだが、「アンダーかな? 」と思った時点でちょっとアクセルを戻せば、キレイに曲がってくれる。古典的なFF的なハンドリングで、それを意識していれば、それなりにワインディングを走らせることができる。いずれにせよ、走りを追求するクルマにはなっていない。

最も感心させられたのは、静粛性の高さだ。アイドリング時はさほど静かでないものの、走行中は発生する耳障りな騒音が抑えられており、エンジン音だけでなく、ロードノイズや風切り音に至るまで、日本車となんら変わりない快適さを作り出している。100km/h巡航のエンジン回転数も1800回転と低くめだ。正直、この遮音技術の高さにはちょっと驚き。

ここがイイ

高速走行の快適性はたいしたもの。150km/hでも3000回転回らないので、たいへん静かで、快適なクルージングを楽しめる。ステアリングも重めになり直進性もいい。3リッター高級車を買ってよかったと思える瞬間だ。

ここがダメ

きついことを言えば、異常にクオリティが上がっているトヨタ車などと比べると、すべてにおいてやや下まわった感じがしてしまうこと。価格の安さからすれば健闘しているが、とにかく高級車慣れした(贅沢におぼれた)多くの日本人には、贅沢なクルマには見えないだろう。また運転席に乗り降りするとき、サイドシルがやや角張っていて足にあたり、ズボンが汚れるのが気になった。

総合評価

同じヒュンダイのサンタフェは、RVゆえ無国籍な「道具としてのクルマ」と言うアイデンティティが保てたが、XGの場合、世界にライバルの多い「高級車」なので、やはり長年の高級車作りに長けたメーカーのクルマと比較すると弱い部分が散見される。どこが、と言われると困るが、見て、乗って、使ってみると、3リッターの最高級車という印象より、2リッタークラスの高級車と言う感じがするのだ。これにはブランド的な弱さもあるかもしれない。正直、かなり質感の落ちた南アフリカ産のベンツCクラスと比べて、品質面でそう劣っているようには思えないが、Cクラスの場合ベンツのブランド的なオーラが七難を隠している。高級車は排気量やサイズだけでなく、このオーラが価格の大きな部分を占めているわけで、ウン百万円のブランド高級車からこのブランド代を引くと、ヒュンダイXGになるということだ。つまり無駄なブランド代を払わず、ハードとしての高級車が欲しいなら、XGは悪くない選択ということになるだろう。

ヒュンダイ車は欧米の衝突テストでは評価が高い。XGに関してはまだテストされていないようだが、おそらく悪くないはずだ。このことは追記しておきたい。

 

公式サイトhttp://www.hyundai-motor.co.jp/

 
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