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ジャガー XKR クーペ新車試乗記(第569回)

Jaguar XKR Coupe

(5.0リッターV8 スーパーチャージャー・6AT・1550万円)

新開発5リッターV8直噴
「環境」エンジンで
この世の「贅」を味わう!

2009年08月28日

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キャラクター&開発コンセプト

新型5リッターV8直噴エンジンを採用。内外装を小変更


今回試乗したのは510ps/63.7kgmを誇るスーパーチャージャー仕様「XKR」

2006年にデビューしたジャガーのXKシリーズがビッグマイナーチェンジを受けて、2009年4月に日本国内で発表、6月から正式に発売された。

メカニズム面のニュースは、「AJ-V8 Gen III」と呼ばれる新開発の5リッターV8直噴ユニットを採用したこと。このエンジンは従来の4.2リッターV8に比べて、自然吸気で81ps増(304ps→385ps)、スーパーチャージャー仕様で90ps増(420ps→510ps)となる歴代ジャガー最大のパワーを誇る。同時に今年2009年から施行されるユーロ5排ガス規制をクリアする低燃費・低CO2排出エンジンでもある。

同時に内外装も小変更し、特に内装はシフトレバーをダイヤル式とした「ジャガードライブセレクター」をXFに続いて導入。シャシー面でも電子制御デフ「アクティブ ディファレンシャル コントロール」(XKRのみ)を採用するなど様々な改良が施されている。

価格帯&グレード展開

NAは1350万円。XKRは1550万円。コンバーチブルは100万円高

販売継続される4.2リッターモデル(外観はリニューアルされたが、ドライブセレクターは未採用)と合わせて、新型XKのラインナップは以下の通り。新しい5リッターモデルは自然吸気の「XK ポートフォリオ」とスーパーチャージャーの「XKR」があり、それぞれにクーペとコンバーチブルが用意される。本国仕様も含めて全車6ATで、ハンドル位置は左右両方ある。

【4.2L V8(304ps/42.9kgm)+6AT】  10・15モード燃費:6.9km/L
■「XK Coupe」        1150万円
■「XK Convertible」     1250万円

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【5.0L V8(385ps/52.5kgm)+6AT】  10・15モード燃費:7.0km/L 
■「New XK Portfolio Coupe」      1350万円
■「New XK Portfolio Convertible」   1450万円

【5.0L V8 スーパーチャージャー(510ps/63.7kgm)+6AT】  10・15モード燃費:6.6km/L 
■「New XKR Coupe」       1550万円 ★今週の試乗車
■「New XKR Convertible」    1650万円

パッケージング&スタイル

外板は変わらずとも、凄みはアップ


XKRのボディカラーは全16色。写真はアルティメットブラック(メタリック)

試乗したXKRのボディカラーは「アルティメットブラック」なるメタリック塗装で、強い光が当たると雲母が妖しく青光りするもの。まさに獲物を狙う黒ヒョウ(ジャガーもヒョウの一種らしい)のような凄みがある。

「ずいぶん迫力が増したなあ」と思ったが、ボディサイズは従来のXK/XKRとまったく同じ全長4790mm×全幅1915mm×全高1320mm。要するにボディ外板は従来のまま。前255/35、後ろ285/30という極太20インチタイヤも、以前からXKに設定のあったものだ。

 

LED式となったリアコンビランプは意匠も若干変更された

どうやらこの凄みは塗装の他に、XKR特有の金網グリル、新しく加えられたバンパー開口部などの相乗効果のよう。分かりにくいが前後ライトレンズのデザインも小変更されている(リアコンビはLED化された)。もちろんジャガーらしい伸びやかなスタイリングや上品さはドイツ系ライバル車にないもので、相変わらずクラシカルな魅力が感じられる。

XFに続き「ドライブセレクター」を新採用

インパネのデザインもほぼ従来通りのようだが、質感はずいぶん高まった印象。試乗したXKRは「1550万円もするのだから当前」と言ってしまえばそれまでだが、ダッシュボード等に張られたレザー、赤のステッチ、ウッドパネルなどの造りはいかにも英国車らしい。

 

全車標準の電動レザーシートは、座面の長さや背もたれサイドサポートのホールド性も調整可能。さらに電動エア式ランバーサポートは、張り出し具合に加えて上下調整も出来るし、メルセデス・ベンツ風にドア内側に配した調整スイッチも操作しやすい。またシートヒーターは当然として、背もたれと座面から冷気が吹き出すベンチレーション機能もあるなど、車両価格にふさわしいシートとなっている。

 

もちろん一番の見どころは、XF譲りのダイヤル式シフトセレクター「ジャガードライブセレクター」だ。エンジン始動ボタンを押すと、鋳造アロイ製のダイアルがグィーンとせり上がり、シフト操作はこれを軽くつまんで回すだけ。慣れると(というかすぐに慣れる)、とても使いやすい。もちろんパーキングブレーキも電子制御式だ。

唯一の弱点はナビゲーション等の操作インターフェイス

装備面で唯一弱いのが、タッチパネル式で行うエアコンやオーディオ、DVDナビゲーションシステム等の操作性だ。まずそのセンターコンソールの奥まったところにある7インチ液晶モニターの角度が直立気味で少々見にくく、またモニターサイズももう少しワイドであって欲しいと思ってしまう。

またタッチパネル操作が前提という点も、他メーカーの遠隔操作インターフェイス(BMWのiDrive、アウディのMMI、メルセデスのコマンドシステム、レクサスのリモートタッチなど)の完成度が高まってきた今、すでに時代に乗り遅れ気味。将来的にはジャガーも新しい操作インターフェイスを開発する必要がありそうだ。

もちろん後席はプラスツー。300リッターの実用的なトランク

典型的な「+2」のリアシート。それでも試しに座ってはみたが、首から上が完全に天井につかえてしまい、前を向けないのが辛かった。ハンモックのような座面形状からも分かるように、ここはあくまで手荷物スペースだ。

 

一方、荷室はリアゲートがガバッとリアウインドウごと開くもので、容量も300リッターとハッチバック車並み。この手のスポーツカーの中では、抜群に実用的だ。

 

床下にはパンク修理キットではなく、19インチの巨大なテンパースペアタイヤが収まる。重量配分上、リアをこれ以上軽くしてもメリットはないのかも。

基本性能&ドライブフィール

歴代ジャガー最大の510ps/63.7kgmを発揮

新型XKRのエンジンは新開発の5リッターV8直噴ユニット(385ps/52.5kgm)にスーパーチャージャーを装着したもので、「AJ-V8 Gen III R」と呼ばれる。そのスペックは歴代ジャガー最大の510ps/63.7kgmという途方もないものだ。

センターコンソールでドキンドキンと(音はしないが)赤く明滅するスタートボタンを押すと、XKRは例のドライブセレクターを上昇させながら「バオン!」と咆哮を放って目覚める。早朝の住宅地だと、お出かけの時間が近所にばれてしまいそう。ドライブセレクターを回してDレンジにセット。電子制御パーキングブレーキも自動でリリースされる。このあたりはずいぶん近代的で、XKRの他の部分とのミスマッチ感が楽しい。

普段は草食系だが、踏むと肉食系に変身

6AT(ZF製6HP28)ということもあって、街中での運転は基本的にイージー。ステアリングの操舵感や足まわり、ボディの剛性感なども全体にマイルドで、超高性能スポーツカーに乗っているという緊張感はそれほどない。

とはいえ、そのパワーは510ps/63.7kgm。これは現行のポルシェ997ターボ(もうすぐ旧型になる3.6リッター仕様)の480ps/63.2kgm(オーバーブースト時は69.4kgm)、あるいは日産GT-Rの480ps/60.0kgmを上回るもの。しかもこれらが電子制御4WDであるのに対して、XKRはごくごくシンプルなFRの2WDに過ぎない。

試しにパドルを引いて1速か2速を選べば、すかさず「ファン!」とブリッピングしてシフトダウン。アクセルを踏み込むやいなや、トラクションコントロールの介入を受けつつ285/30ZR20の極太リアタイヤを微妙に空転させながら、ビッグバイクのような瞬間移動的加速を開始する。この時のいかにも「後ろ脚で蹴ってます!」という感じが、獲物に襲いかかる肉食獣のようだ。

XFRに比べて150kg軽いアルミボディ

加速時に気付くのが、従来同様イートン社製のルーツ式でありながら、新型のスーパーチャージャーから「ミャーン」というノイズが聞こえないこと。またスーパーチャージャーにありがちなレスポンスの重ったるさもなく、乗っているうちに過給器付きであることを忘れてしまう。

むしろV8特有のドロドロとしたサウンドといい、トルクフルかつ「スバン!」とレブリミットまで一気に吹け上がるところといい、最新コルベットのV8・OHV(これも素晴らしいエンジンだ)にも似た印象だ。ちなみに2006年にモーターデイズで試乗したコルベットZ06は、7リッター自然吸気V8で511ps/64.9kgmと、XKRとほぼ互角の数値を叩き出している。

なおXKRのボディはもちろんXKシリーズ共通のオールアルミ製。車重は同じエンジンを積む新型XFR(こちらのボディはスチール製)の1960kgに比べて150kgも軽い1810kgで、パワーウエイトレシオは3.55kg/psだ。前後重量配分は54:46(980kg+830kg)とややリアが軽い。

電子制御デフを採用。絵に描いたようなFRハンドリング

なにぶん510psの2WDということで、ハンドリングはDSCオンのまま味見程度にとどめたが、その領域でもFRらしい素直な操縦性は十分に満喫できる。最近、流行りの電子制御デフがXKRにも採用され、そのせいかアクセル操作でリニアに後輪をコントロールできる(というか、できそうな)感覚も強い。要するに絵に描いたようなFRスポーツのハンドリングだ。

一方、高速域では(当前だが)日産GT-Rのような底なしの安定感はなく、そもそもそれ以前に「FR、510ps、1550万円、特に空力デバイスなし」といったことが頭をよぎり、自制心が先に働いてしまう。最高速はリミッターで250km/hに制限されるようだ。ただ、オプションのACCが装着されていた試乗車の場合、国産車では設定できない速度にセットしてレーダークルーズできるのはやはり便利だ。

試乗燃費は5.5~5.8km/L。10・15とJC08モード燃費は6.6km/L

今回もいつも通り200km程度を試乗。いつもの一般道・高速を交えた区間(約90km)では5.8km/L。一般道で無駄な加速を控えて走った区間では5.5~5.8km/Lだった。なお10・15モード燃費は6.6km/Lだ。もちろん雑に加減速を繰り返せばすぐに5km/Lを割ってしまうが、その怒濤のパワーを思えば、良好と言えるのでは。

その証拠に、輸入車では珍しくJC08モード燃費も公表しており、こちらも10・15モードと同じ6.6km/Lを達成。大排気量スポーツカーはおおむねこういう傾向にはあるが、実用燃費の落ち込みが小さいことを証明している。

ここがイイ

スタイル、ドライブセレクター、乗りやすさ、シート、贅沢なパワー

妙にカッコいい。デビュー当初の印象がウソのよう。エレガントで精悍なジャガーらしさが表現されていて、独自の存在感がある。ドライブセレクター+パドルシフトや電子制御式パーキングブレーキを含めて、近代化が図られている操作系も素晴らしい。設定上限速度の高いレーダークルーズも実用的に使うことができる。

 

小回りが効くことやパーキングアシストなどの装備、スポーツカーにしては良好な視界などによって、街乗りがしやすいこと。十分日常の足として使える。自由自在にドライビングポジションが調整できる電動シートもいい。エア式のランバーサポートなどで、必要に応じてサポート性を調整できるし、ベンチレーション機能もある。

ものすごいパワーだが、911のようにそれを使い切るようには出来ていないこと。普通のクルマなら「ダメ」というべき部分だが、これぞ高級スポーツカーならではの贅沢。

ここがダメ

ナビゲーション等の操作インターフェイス

本文でも触れたように、ナビやオーディオ、エアコン、車両設定などのコントロールを基本的にタッチパネルで行うが、これが少々面倒。モニターも小さく、角度的にも見にくくて残念な部分。トヨタ(レクサス)のリモートタッチのようなナビ操作系とドライブセレクターが組み合わされていたなら、絶賛できるのだが。

総合評価

優雅に乗れる500馬力

こんな高いクルマに、「これ、なかなかいいじゃない」というのは失礼な話だが、まさにそんな感じ。正直、様々な「過激モデル」がひしめくこのクラスで、話題性でも、現実の売れ行きでも、あんまり注目されているクルマとは言えない。幸い今回は試乗できたが、試乗しなければ通りすぎてしまう類のクルマかもしれないのだ。インドのタタがブランドを手に入れたという3面記事的な話題はあっても、ジャガーブランド自体が今ひとつ話題に上らないのは、やはりフォードとの提携時代に、印象を悪くしたことが大きい。しかしフォードと離れて以降、新しい展開が見られるようになったのは紛れもない事実。こうなると、最近のメーカー各社にある様々なゴタゴタも、全て悪くなるばかりではない、と期待したいところだ。

乗ってみれば500馬力オーバーという巨大なパワーがありながら、全くそれを感じさせないという点で、真のグランツーリスモだと思う。現実的にはちゃんと走らせるために、パワーが走行シーンごとにセーブされまくっているようにも思えるが、公道上ではこのほうがジェントルだし、危なくない(事故ばかりでなく免許の方も)。優雅に乗れる500馬力というキャラはライバル達と一線を画しているから、サーキットで勝負でもしない限りは、全てのクルマを相手にせず、軽くいなせるだろう。大人の余裕を見せられるクルマといえる。

 

変速機は流行りのDCTではないけれど、パドルシフトがなかなか使いやすいから、ドライビングも十分楽しめる。CO2排出量も292g/kmと、300g/km台が普通のこのクラスではかなり優秀な方だ。スタイリングはデビュー当初と比べてずいぶんかっこよくなっているし、ポルシェターボの対極といえるラグジュアリーさはこのXKRならでは。奥様だって乗れるから、購入したらこっちの方がトータルに幸せになれるかも。日本車より実用的なレーダークルーズを使って淡々と流せば、乗り心地も良くて本当に気分がいい。

ライバル車のネガ部分を挙げれば、GT-Rはなんだか子どもっぽいし、プレミアム感不足。ポルシェ911ターボは外観派手すぎで、ラグジュアリー感不足。コルベットの場合はいろんな意味で乗る人を選んでしまう、というあたりか。そしてそれらを凌駕するのがこのXKRだ。ナビ機能に重きを置かない人には、完璧なクルマと言える。

試乗車スペック
ジャガー XKR クーペ
(5.0リッターV8 スーパーチャージャー・6AT・1550万円)

●初年度登録:2009年7月 ●形式:CBA-J43YB ●全長4790mm×全幅1915mm×全高1320mm ●ホイールベース:2750mm ●最小回転半径:5.3m ●車重(車検証記載値):1810kg( 980+830 ) ●乗車定員:4名●エンジン型式:508PS ● 4999cc・V型8気筒・DOHC・4バルブ・スーパーチャージャー・縦置 ●ボア×ストローク:92.5×93.0mm ●圧縮比:9.5 ● 510ps(375kW)/ 6000-6500rpm、63.7kgm (625Nm)/ 2500-5500rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/71L ●10・15モード燃費:6.6km/L ●JC08モード燃費:6.6km/L ●駆動方式:後輪駆動(FR) ●サスペンション形式:前 ダブルウイッシュボーン/後 ダブルウイッシュボーン ●タイヤ:前 255/35ZR20、後 285/30ZR20 ( Dunlop SP Sport MAXX ) ●試乗車価格:-円( 含むオプション:-円 ) ●試乗距離:200km ●試乗日:2009年8月 ●車両協力:株式会社 渡辺自動車 ジャガー名古屋中央 TEL 052-242-7631

 
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