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キャデラック XLR新車試乗記(第366回)

Cadillac XLR

(4.6リッターV8・5AT・1200万円)

2005年05月21日

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キャラクター&開発コンセプト

キャデラックの超高級スポーツ

創業100周年を迎えた2002年を境に、キャデラックは“アート&サイエンス”と題して改革を始めた。その象徴がコンセプトカー「エヴォーク」の市販バージョンとして、米国では2003年秋に発売された「XLR」だ。GMの超高級スポーツカーとして狙うのは、6~7万ドル以上の「ウルトラ・ラクシャリー」市場。ライバル車はジャガーXKシリーズ、電動メタルトップのメルセデス・ベンツSLクラス、あるいはレクサスSC430といったところ。日本では2004年3月に発売された。

価格帯&グレード展開

孤高の1200万円

完全にモノグレードで、2005年モデルの価格は1200万円。他のキャデラック車が800万円台までなのを考えると、かなり孤高の存在だ。ライバルのメルセデス・ベンツSL350(1113万円)とSL500(1386万円)のほぼ中間となる。なお、米国では「0-60マイル/h 5秒以下」を謳い文句に、スーパーチャージャー付V8で440psを得る「XLR-V」が間もなく発売される。

パッケージング&スタイル

ステルス戦闘機かバットモービルか

全長4520×全幅1850×全高1290mmのボディサイズはコルベットに近く、ホイールベースの2685mmもまったく同じ。それもそのはず、実はこの2台、シャシーの基本構造を共有する。アウターパネルも同様に樹脂製で、ボンネット、ドア、トランクリッド、ルーフはグラスファイバー強化ポリエステル製(いわゆるFRPの一種)。また前後バンパー、フロントフェンダー、クォーターパネルはポリウレタン製となる。

スタイリングは写真で見るより、ずっと迫力がある。まさにステルス戦闘機かバットモービル、もしくはダースベイダーの愛車という感じだ。歌手のマドンナが乗っているという噂もあったが、XLRには確かにそんなダークヒーローが似合う。Cd.値は0.31。前後重量配分は50:50を謳うが、電動トップとトランスアクスルのおかげで車検証記載値では48:52とややリアヘビーだ。

ウッドとレザーのインテリア

エンジン始動ボタンも電気ドアオープナーもコルベットと同じだが、ユーカリウッドとレザーの室内にはキャデラックらしい高級感が漂う。「ブルガリ」と共同でデザインしたというアナログメーターは、「 BVLGARI 」と例の文字が誇らしげ。リモコンキーも「デザイン by ブルガリ」だ。とはいえメーターの質感は今ひとつだったりもする。

クーラー機能付シートやBoseの9スピーカー

電動シートはヒーターだけでなくクーラー機能付き。キャビン室温よりおおよそ8度Cほど低い空気で、シートの背もたれと座面に内蔵したセラミックディスクを冷やすという。また、標準装備のBOSEサウンドシステムはシート内蔵を含む計9スピーカーで構成される。

ヘッドアップディスプレイとレーダークルーズも

GMが得意とする「ヘッドアップディスプレイ(HUD)」の表示は、コルベットよりずっと鮮明。レーダーで前走車との車間距離を保つ「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」も標準装備。前方の物体を感知して危険だと判断した場合は、警報を発してHUDにグラフィック表示する。このあたりもまるで最新鋭の戦闘機のようだ。

凝りまくったカラクリ

トップの開閉はセンターコンソールのスイッチを押し続ける必要があるので自分でその様子を見ることは出来ないが、開閉時には凝りまくったカラクリが展開される。

 

まず、トランクフードが高々と持ち上がるので(写真上)、天井の低いガレージでは要注意。それからフロントウインドウ上部のロックが自動的に解除され、屋根とリアウインドウがトランクに収納される。この時、リアクォーターの3角窓が折り紙のように横に倒れて格納される様子が面白い(写真右)。

 

カタログによると開閉にかかる時間は30秒未満とのことだが、実際にはもっと速く、26秒でできた。信号待ちでも楽勝で操作できるが、この手の電動トップの中でも一番「サンダーバード発進!」的な大掛かりなアクションで、かなり気恥ずかしい。

大荷物は積めない

電動収納式ハードトップと独立式トランクを備えるため、コルベットに大きく劣るのがトランク容量だ。トランクリッド自体も電動だが、オープン時には荷物がほとんど積めないし、クーペ時でも天地が浅くて余裕がない。室内に小物入れはいくつかあるが、大物を積むスペースは助手席以外、ほぼ皆無と言える。

基本性能&ドライブフィール

4.6リッターV8+5AT

コルベットと同じように、ドアを開けてエンジンを掛けるまでは電気仕掛けで、キーに触れる必要は一切ない。Dレンジに入れると、自動的に駐車ブレーキが「バタン」と解除される。ボディ骨格はコルベットと同じだが、パワートレインは異なり、XLRには同じV8でも4.6リッターDOHC「ノーススター」エンジンが搭載される。オートマチックは5速だ。

上品に速い

乗った感じはコルベットとまったく異質だ。XLRのV8はシュワーンと軽快に回るユニットで、アメ車的に「大トルクでドロドロ」という感じや、コルベットのようにダダダッと地面を蹴る感覚はない。低回転の力感はないが、スリップが大きめのトルコンはポンポンと高めのギアにシフトアップしてゆくので、マニュアルモードであえて低いギアをキープするとシャープなレスポンスが味わえる。324ps、42.8kgmで引っ張るボディは試乗車で1700kgと意外に軽く、コルベットの200kg増しだが、SL500より150kgも軽い。0-1/4マイル加速は、メーカー発表値で14秒3だ。

ウルトララクシャリーな快適性

ショックアブソーバーはGMお得意のマグネティック・ライドコントロール、リアサスペンションはコンポジット板バネ+ダブルウイッシュボーン、タイヤは18インチのミシュラン「ゼロプレッシャー」ランフラットと、コルベットと似たような形式の足回りだが、乗り心地はXLRの方がはるかにいい。油圧と電磁気力で制御する「マグナステア」パワーステアリングもずっと軽くて滑らかだ。このあたりは確かにウルトラ・ラクシャリーな雰囲気がある。

回頭性はコルベット同様で、アメ車らしからぬ軽快感はあるが、ワインディングではコルベットのような楽しさを感じるまでには至らない。これはやはり足のソリッド感の差だろう。試乗した日は天候が途中から崩れ、強大なパワーを発揮させることはとても出来なかったが、キビキビ走る新世代アメ車であることは確認できた。

アメリカンな速度が心地よい

高速道路では100㎞/h前後のアメリカンな速度域が心地よい。速度を上げても何ら問題はないが、面白いとか、すごいとかいった感情はわき上がってこない。淡々とスピードを上げていくが、特にフラットライド感があるわけではないし、それより低回転のクルージングを楽しむタイプのクルマだろう。

雨のせいでオープンでは高速を走れなかったが、一般道路を80㎞/h程度で走ってみた限り、風の巻き込みは少ない。北米の制限速度程度なら快適にオープン走行を楽しめると思う。サンバイザーが上部視界をやや遮るのが残念。

ここがイイ

何といってもそのスタイリング。クルマの多くは曲線で仕立ててあり、その艶(なま)めかしさを愛でる人は多いわけだが、ひたすら直線で出来たXLRはそうした人々の感性から遠く離れ、チョイワル、いや、かなりワルなカッコよさを強烈に主張している。欧州の、あるいは他の各国のスタイリングに対する強烈かつ見事なアンチテーゼだ。

オーバーアクションな電動メタルトップ、完全キーレスエントリーとタッチパッドのドアノブ、いろいろな情報が得られる虚像式ヘッドアップディスプレイ、アクティブクルーズコントロール、前方警告レーダー、タイヤ空気圧モニター、見やすい位置のタッチ併用式カーナビなどなど、ハイテクの充実ぶりは素晴らしい。クーラー付シートも見識だ。

スムーズなエンジン。そしてランフラットタイヤにもかかわらず、良い乗り心地を実現していること。BMWの5シリーズはパンク後250㎞走行を可能にした代わりに乗り心地を失ったが、こちらは80㎞と標準的にしたことが、乗り心地に貢献している模様。パンクしたら捨てることになるタイヤだから(修理できるとしても)、80㎞で十分でしょう。

ここがダメ

現地価格は7万6650ドルだ。室内の質感などから、感覚的に750万円くらいなら納得できるが、今年の日本価格1200万円はいくら何でも高いと思う。メルセデスも高いから大丈夫でしょう、というのは分かるが、本質はもう少しリーズナブルなクルマだと思う。

シート位置のメモリーボタン(ドライバー1、ドライバー2、などと設定できる)に左足が当たって、「ドライバー2」の位置へ突然動き始めてしまって驚いた。シートポジションそのものは小柄な人でもとりやすいが、体は残念ながら馴染まなかった。シートはコルベットの方がいいと思う。

よく出来ている電動メタルトップだが、P(パーキング)に入れないと操作できないのは不便。ソフトトップ(幌)では5km/h程度の低速で操作可能なものが増えてきたし、最新のポルシェのように50km/hまで開閉可能なものもある。せめて「D」でも停止していれば操作OK、なら、ぐっと使いやすいはずだ。

ハイテク系ではヘッドアップディスプレイの角度がもうちょっと調整できるといい。シート位置を上げ気味にすると見えなくなってしまうのだ。また、カーナビの地図はちょっと古いようで、他社の最新カーナビでは表示する新しい道が表示されなかった。

総合評価

いろんな意味で、コルベットよりハードルが高い

発売は昨年のことだが、本国での売れ行きも良く、05年モデルになってやっと日本にも本格的にデリバリーが始まった状況。姉妹車コルベットも同様で、発売当年の今年分は、日本にはもう在庫がないとされている。1200万円もするXLRはコルベットより400~500万円ほど高いが、本当に欲しければ躊躇などしない。そういう人のためのクルマだ。

と、まあ、欲しい人、まったく欲しくない人が、分かれるクルマだが、正直なところ、同じプラットフォームを使って、しかも1年新しいコルベットの方が、よりスポーツカーらしい走りが楽しめるし、素直に出来がいいと思う。パッと見のスポーツカーらしさもコルベットにはあるし、コルベットに乗れば明るく素直なアメリカンスポーツカー好きに見える。伝統も知名度もあるゆえ、周囲からは好感を持って受け入れられるはずだ。価格も手ごろだし。

というわけで、この超個性的なボディライン、走行性能、そして様々な機能を分かりやすく人に伝えることはしごく困難なことだ。「よく見ればブルガリ」というスピードメーターを、助手席の女の子に好意的に理解してもらうためには、乗る人の「カッコ良さ」が相当高いところまで昇りつめていないとムリ。流行のチョイ不良(ワル)オヤジ、コヤジが乗るクルマとしては、メルセデスよりコルベットが上だが、XLRの場合はそれより相当上のレベルのチョイ不良オヤジでないと、とても乗りこなせないだろう。逆に言えば、そこまで「特別なコヤジ」なら、このクルマは異常にかっこよく乗りこなせるはずだ。

ダークサイド・オブ・コルベット

姉妹車のコルベットが明るく陽気なアメリカを象徴するクルマだとすれば、XLRはハイテクと犯罪が混在するアメリカのもう一つの面を象徴するクルマと言えるだろうか。ハイテク満載、どこにもない形のXLRは、ステルス戦闘機のようにかっこいいのだが、悪魔的に強く、理解されにくい存在でもある。明るいと暗い、その両面を持つアメリカ社会の姿が、GMの兄弟車に反映しているのがおもしろいところだ。XLRはダークサイド・オブ・コルベット、あるいはルーク・スカイウォーカーに対するダースベイダーではあるが、そっちの方が好きな人はけして少なくはない。価格差を考えなければ、コルベットよりこっちの方がオリジナリティ、革新性、そして機能(走りではない)の面で魅力は大きい。

まさにアメリカそのものがXLRだが、GMの苦境を象徴する部分でもある。アメリカでしか受け入れられない、それでいて数も出ないクルマはGMを救わないだろう。コルベットもXLRも、いくら売れてもGMを救うところまではいかない。ではキャデラックのスピリットを生かして小さなキャデを作れば爆発的に売れるのか。そんなことはあり得ない。V8こそがアメリカ車であり、それを打ち出すほどに苦しくなる、そこにGMの苦悩がある。

試乗車スペック
キャデラック XLR
(4.6リッターV8・5AT・1200万円)

●形式:GH-X215●全長4520mm×全幅1850mm×全高1290mm●ホイールベース:2685mm●車重(車検証記載値):1700kg (F:810+R:890)●乗車定員:2名 ●エンジン型式:4M●4564cc・V型8気筒DOHC・縦置●324ps(238kW)/6400rpm、42.8kgm (420Nm)/4400rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/68L●10・15モード燃費:7.1km/L(メーカー測定値)●駆動方式:後輪駆動(FR)●タイヤ:235/50ZR18(Michelin MXM4 Zero Pressure) ●価格:1200万円●試乗距離:約130km

公式サイト

http://www.cadillac.co.jp/lineup/xlr/index.html

 
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