新車試乗記 第151回 日産 エクストレイル Nissan X-Trail



日時: 2000年12月09日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
     
     
     

    キャラクター&開発コンセプト

    トヨタがミニバンでbBなら、日産はライトSUVで対抗。若者マーケティングを鵜呑みにしたライトSUV

    ターゲットを20代の若者に絞り、徹底的に市場調査を行い、ニーズを的確に把握する。日産が行ったこの完璧なマーケティングマネジメントに基づいて生まれたのがライトSUV、エクストレイルだ。日産が若者に「今イチバン欲しいクルマは?」とリサーチしたところ、最も多かったのが「ヨンク」だったという。でもヨンクに憧れを持っているものの、「価格が高い」「燃費が悪い」「使い勝手が悪い」といった点に不満を持っているらしい。ならばと、そうしたネガティブポイントをすべて潰しましょう、と作られたのがエクストレイルというわけだ。

    コンセプトは「4人が快適で楽しい、200万円の使える四駆」とわかりやすい。日本では若者向けのクルマという打ちだし方に絞っている一方で、アメリカを除く各国で売られるということも注目すべき点。要するに世界戦略SUVでもあるのだ。ここで数を稼ぐ計算だろう。

    搭載エンジンは2リッターのNAと280馬力ターボの2種で、ミッションは4ATのほかに廉価版には5MTも用意。また、駆動方式は4WDが中心となるが、NAのみFFも併設される。乗車定員は5名。

    価格帯&グレード展開

    「200万円だったら買いたい」という若者の願いを叶えた価格を実現

    グレードはベーシックグレードの「S」、上級グレードの「X」、280馬力ターボエンジンを搭載するスポーツグレードの「GT(2001年2月発売予定)の3タイプ。それぞれの価格は4WD・ATで「S」が公約どおりジャスト200万円。「X」が220万円。「GT」が282.5万円。

    また「S」「X」に併設されるFFモデルは、4WDモデルより15万円安い。ということは日産の技術の結集であるハイテク4WDシステム「オールモード4×4」のお値段、たったの15万円ということ。これはムチャクチャ安い。

    ライバルであるRAV4やCR-Vと比較してもエクストレイルの価格は15万円ほど安い。さらに4WDシステムの贅を考えれば、エクストレイルの割安感はもっと際立つ。文句ナシにお値打ちだ。ただ、「200万円ポッキリ! 」とその安さで話題を振りまいたものの、数日後に発売となったトリビュートがさらに安い199.8万円を提示。たかが2000円であるが、皮肉。潔くイチキュッパ(198万円)とすれば良かったと日産は地団駄踏んでいる?

    パッケージング&スタイル

    「機能こそ最大のファッション」という若者トレンドにマッチした直線基調のデザイン

    モノコック構造に横置きFFベースのパワートレーンを持つプラットフォームは、日産がいうところの「MSプラットフォーム」。つまりサニーがベースだ。徹底したマーケティングによって生み出されたボディは、「ヨンクはやっぱ、カクでしょ! 」といった若者の声を反映してか、直線を基調としたもの。顔つきは同社のサファリかステージアに近く、特に新しさはない。しかし、デザイン的に凝ったクルマが反乱するようになった今、妙な新鮮味はある。「リアは縦長でしょ」と若者が言ったかは定かではないが、CR-Vに似たリアのほうは、逆に個性に乏しい。

    ちょっとだけならぶつけても安心。ペコペコの樹脂製フェンダーパネル

    目新しいところでは、フロントフェンダーが挙げられる。なんと樹脂製。樹脂製といえばサターンのドアパネルだが、現行モデルで樹脂製フェンダーというのはエクストレイルだけ。ペコペコと復元力があるので、軽い接触でも心配なし。またスチール製に対して5kgほど軽いというのもメリット。逆にデメリットは年月が過ぎると塗装が他の部分と目に見えて劣化する(と思われる)こと。日産の技術担当者もそれが心配だといっていた。

    車内は水洗いOK!? タフに使える広い荷室と汚れに強いシート

    ボディサイズは全長4465mm×全幅1765mm×全高1675mm。ホイールベースは2620mm。注目は全長の長さだ。スペック上で一番長いライバルは4480mmのCR-Vで、エクストレイルは2番手となる。しかし、ここで注意しなければならないのはCR-Vが背面タイヤ込みの数値であるということ。背面タイヤを除けば4385mmとなり、エクストレイルの全長はブッチギリで一番となるのだ。

    その恩恵に授かった荷室は当然広く、定員乗車の場合、後席を倒した2人乗車の場合ともにクラストップの室内長を確保する。魅力はそれだけでない。180㎝以上あるので車中泊も可能。あえて内張りをカーペットではなく樹脂素材にしたことで、汚れを気にせずに使えるようになっている。さらにそのフロアは脱着可能。車外に持ち出して、水であらえるという寸法だ。また、シートも撥水加工が施されているから、雪や雨のとき、そのまま乗り込んでも水気が拭き取れる。もちろん、これもリサーチの結果。この広さと使い勝手は、若者を含めたレジャー派に喜ばれること請け合いだ。

    ドアもすべて樹脂張りで、汚れに強く、コストダウンにも貢献している。見てくれもそんなにチープでないのがいい。初期型ステップワゴンも樹脂成形で汚れの強さを強調していたが、マイチェンで安っぽい絨毯になった。この潔さをいつまでも保持してもらいたいところ。

    そのドアだが、サイドシル一番下までをカバーしており、雪道でボディが汚れても、サイドシルは汚れないしかけ。その結果、乗り降りでズボンが汚れない。このあたりもよく考えられている。

    日産初のセンターメーター。その根拠は?

    エクストレイルは乗用車に近いパッケージングを狙ったため、全高はクラスで一番低く、ヒップポイントも低め。ドライビングポジションは足を投げ出し気味となる。一応、1265mmの室内高はクラストップとなるものの、フロントガラス上端が目線のちょっと上までしかきていないので、頭上の圧迫感は感じられる。とはいえ、角張ったデザインなのでボンネットの見切りもよく、車両感覚がつかみやすいというのは確か。

    インパネは極めてユニーク。なかでも日産初、そしてSUV初となるセンターメーターは注目の的。センターメーターといえばトヨタであり、その当方の目的は視認性の向上。しかし、エクストレイルの目的は大きく異なる。なんでも、乗員のすべてがドライビング情報を共有させたい、というのが狙いだそうだ。その意図はよく分かる。でも、あまりにも芸がない。運転席の前にあった従来のメーターをそのまま中央にずらしただけ。他の乗員が水温計まで気にするのだろうか。これもリサーチの結果なのか? まあ見やすいことは認めるし、センターメーターの良さはトヨタ車が実証している。この方向がさらに進むことに期待したい。

    最も気に入ったのはオーディオの両脇に設けられた横置きのドリンクボックス(一般的なドリンクホルダーは左右の上部に引き出し式が別に設置されている)。エアコン風による保温・保冷対応になっているのだが、ボックス内のスリットを上下逆にすると送風がストップされ、小物入れとしても使えるようになっている。ローテクであるが、そこが逆に感心させられた。

    また、本来メーターがあるハンドル前には大型の蓋付き収納スペースが設置されているのだが、そこにもきめ細やかな配慮が見られる。内部には12ボルト電源が取れるソケットが付いており、フタを閉めても配線の穴が小さく設けられている。あとは携帯電話ホルダーがあれば文句なし。ちなみに助手席側はエアバッグが収まる。

    基本性能&ドライブフィール

    技術力に対する日産の自身が現れるメカニズム。でも280馬力というのはちょっとやりすぎか

    搭載されるエンジンは2種。150馬力/20.4kgmを発生する新設計2リッター直4エンジンはQR型と呼ばれる次代日産の主軸となるエンジンだ。一方、世界初のVVL(可変バルブリフト&タイミング)とターボをドッキングさせたSR型2リッター直4エンジンは280馬力/31.5kgmを叩き出す(このクルマの走りは想像するだけで怖いものが・・・発売は2月だ)。ミッションは4WDのSグレードに5速MTが用意される他は、4速ATが組み合わせられる。足回りは新開発の前後ストラットで、クラス初の4輪ベンチレーテッドディスクを採用したブレーキが自慢だ。ここも割安感を感じるところ。

    4WDシステムの「オールモード4×4」は、テラノで定評のあるシステムを、FF用に発展させた新開発システムだ。走行状態に応じてリアに必要な駆動トルクが適切な分だけ伝えられる、というのはライバルと同じであるが、電子制御というのが肝。制御が非常にきめ細かく、しかも予知制御まで行うのだ。雪道発進時はタイヤが滑ってから4駆になるという一瞬のタイムラグがないため、安定しているという。タフな状況に対応するLOCKモード(57対43の直結となる)に加えて、燃費に配慮した2WDモードを持つのも電子制御の強みだ。もちろんインパネのボタン一つで切り替わる。

    走り出しの俊敏さを重視したセッティングで、街乗りが快適

    エンジンのスペックは馬力、トルクともにRAV4とほぼ同じ。車重は1400kgと軽いものの、1310kgのRAV4には劣る。となるとRAV4のほうが空力もいいから加速面ではエクストレイルが不利。のはずなのだが、体感的な力強さではエクストレイルが間違いなく上。吹け上がりも軽快で、150馬力とは思えないトルク感がある。特にスタート時はすっと力強く、パワー不足感がない。2WDモードにして、ハンドルを切りながらフル加速すれば、タイヤが暴れ出すほど。もちろんAUTOモードすれば、そのような不安に陥る走りは一切しない。

    乗り味は一見、ドタバタとした硬めの印象を残す一方でカーブでのロールは若干大きめ。それでもクロカン四駆の比ではなく、安定した乗用車ライクのコーナリングとなる。贅沢な4駆システムを採用しているだけあって、タイヤの接地感がはっきりと把握でき非常に安心感が高い。むろん四駆で走ればアンダーステア強めに出るが、四駆の接地感を知ってしまうと2駆で走る気にはなれないだろう。2駆は高速走行での燃費稼ぎモードと考えるべきだ。

    パワステはRAV4より重く、トリビュートよりも軽めといったあたりの絶妙な味付け。ハンドリングもその両車の中間的なスポーティーさで、違和感のない反応を示す。RAV4では不足感、トリビュートでは過剰感を感じてしまったが、その意味ではこのクラスでは最も好印象だ。

    気になったのは、ガサガサとしたエンジン音がやや大きいこと。バランサーシステムで6気筒並の静粛性を実現したと資料にはあるが、決して静かな方ではない。このあたり改良されれば、日産の次世代を担うに相応しいパワーユニットになるはずだ。ただし、低回点での高速巡航では、かなり静かな室内を保てることは記しておきたい。

    高速巡航は150km/hが快適(もちろんやかましいが)。150km/hがきつかったトリビュートの4気筒と比べるとやはりエンジンの差は大きい。

    ここがイイ

    本格的なオフロードでなく、少し凸凹のきつい林道も走ってみたが、やはりセダンでは走れない道を楽々こなすSUVは、レジャー中心の用途では無敵のクルマだ。汚してもいい仕様の室内や荷室などよく考えられているし、結果として安い素材ですむので車両価格も下げられる。若者でなくても、セカンドカーとしてちょっと欲しいクルマだ。

    室内のユーティリティもたいへんよろしい。リアの座面を外すと完全な樹脂のフラットフロアになるし、助手席シートバックポケットが2段で、携帯とかを放り込んでおきやすいのもいい。カップホルダーがいっぱいあるのもいい。

    ここがダメ

    室内で唯一不満なのがセンターウォークスルーができないこと。ライバルのトリビュートやCR-Vはできる。荷室への移動にも便利なのだが。それから売り物のセンターにあるドリンクボックスの運転席側は、500ccのペットボトルを入れるとコラムレバーに干渉する。まあ入れなきゃいいんだが。

    総合評価

    発表時には今さらSUVでもないでしょう、と思ってしまったが、後できくと、若い女の子にはチェロキーが人気とか。自分で乗るのでなく彼氏に乗ってもらいたいクルマの筆頭らしい。それしか知らないからだろう、とは思うが、街の声はやはり無視できないところ。そうした声を反映したのがこのクルマだろう。セリカの販売がボロボロなように、スポーツカー的なものはやはりウケないわけで、日産の救世主がSUVというのはどうやら正解のようだ。四角いカタチというのも、かたくヒットがねらえるところ。

    日産開発陣ですらがこれでいいのか、と一瞬思ってしまったという戦略的な低価格も、今後のクルマ業界を示唆するものだ。ユニクロの洋服が象徴する「そこそこの品質でどんどん使える安いもの」というのは今後のヒット商品の重要要件。スペシャリティなハレの日のクルマはもはやヒットすることはない。毎日使う「道具としてのクルマ」と考えれば、エクストレイルは「そこそこの品質でどんどん使える安いもの」のわけで、ヒット商品の要件を満たすたいへん良くできたクルマだ。ウンチクを語りたがるクルマ好きにはなんにもおもしろくないクルマだが、えてしてこういうクルマがバカ売れするものなのだ。

    ということで、今後はこうしたクルマが増えてくるだろう。新車車両価格はデフレ傾向となり、そのあおりをうけて中古車市場も下落傾向へ。安いクルマはどんどん増え、ますます手に入れやすくなるが、その結果、みんなが同じものを所有する一億総ユニクロ化がクルマでも進むだろう。それが21世紀? それってちょっとつまらない気がするのだが・・・

    公式サイトhttp://www.nissan.co.jp/X-TRAIL/

     
    • このエントリーをはてなブックマークに追加 
    • mixiチェック
     
       
       


       
      Google

      トラックバック

      このエントリーのトラックバックURL:
      http://www.motordays.com/days/adm_tools/mt/mt-tb.cgi/625

       

       

      現在の位置:ホーム > 新車試乗記 > 日産 エクストレイル