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ダイハツ YRV新車試乗記(第145回)

Daihatsu YRV

 

2000年10月27日

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キャラクター&開発コンセプト

ホットハッチの再来か? ショーモデルから1年、「ヤンチャミニバン」遂に市販化

昨年の東京モーターショーが初披露の場となったYRVは、これまでのコンパクトワゴンとは一線を画す、ニュージャンルのハイトワゴンだ。スペース効率や使い勝手のよさばかりが強調されてるコンパクトクラスの市場で、YRVは“カイカン”をテーマに「走る楽しさ」「持つ悦び」を追求。その象徴ともいえるのが、1.3リッタークラス最強の140馬力を叩き出すターボエンジンだ。もちろん、ハイトボディのパッケージは、大人4人乗っても大きな不足のないもの。それでいて価格はリーズナブル。広くて便利なだけじゃ物足りない、カッコいいルックスと元気な走りも欲しい…という若者たちのために開発された。

搭載されるエンジンは1.0、1.3、1.3ターボの3タイプで、駆動方式はFFのみ。ギアボックスは全車に4ATとしたほか、ターボ車以外には5MTも用意される。なお、車名の由来は「若々しいスタイリング(Youthful)」、「たくましいボディ(Robust Body)」、「ヴィヴィッドな運動性能(Vivid Performance)」の頭文字からとったもの。若者のRV(レクリエーション・ヴィークル)とでも理解した方がいくらか覚えやすい。

価格帯&グレード展開

価格帯は99.9~155.4万円、小さなボディでも装備は超充実

グレードは価格順に廉価なものから1リッターモデルが「CG」、1.3リッターNAモデルが「標準仕様」「Sパック」「エアロSパック」、1.3リッターターボモデルが「ターボ」「ターボ・パノラマパック」の計6タイプ。フルタイム4WDは1.3リッターNAモデルの全グレードと「ターボ」に15.5万円高で用意される。5MTと4ATの価格差は約8万円だ。

「CG」はデュアルエアバッグ、エアコン、前席パワーウインドウだけが標準化されているぐらいで、ほとんど商用車ライク。いや、これで99.9万円(5MT)なのだから、ヴィッツ5ドアの「Bビジネスパッケージ」87.0万円(5MT)を買った方がマシか。正直、「CG」の存在理由が見つからない。

「標準仕様」は1.3リッターの中では最も廉価なグレードとなるが、ルーフスポイラー、サイドスカート、アルミホイールといった外装の装飾品が装着されないぐらいで、内装品はほぼフル装備だ。ドアハンドルとドアミラーもボディ共色となるので見た目にもチープさはない。価格は118.9万円(4AT)。

「Sパック」は「標準仕様」をベースにスモークガラス、CDオーディオ、パノラマガラスルーフが追加される。価格はわずか5万円アップの123.9万円だから、最もプライスバリューが高いグレードいえる。さらに8万円高となる131.9万円(4AT)の「エアロSパック」は、先に挙げたエアロパーツが追加され、パノラマガラスルーフがオプション設定となる。

「ターボ」の装備はほぼ「エアロSパック」に準じており、シート表皮が変更される他、専用装備としては後席の150mmスライド機構、フラットデッキボード、ステアシフトが奢られる。価格は139.9万円(4AT)。「エアロSパック」の8万円高だから、これはお得、オススメだ。で、結局、上級グレードになるほどお買い得感が高くなる寸法で、そうして選んでいくと最終的には149.9万円の看板グレードとなる「ターボ・パノラマパック」に落ち着いてしまう。名の通り「ターボ」をベースにパノラマガラスルーフを追加したもので、その他、ルーフアンテナ、シートソニックウーハーが追加される。コンパクトカーとしては決して安くない価格だが、エンジン性能、快適&安全装備の内容は価格以上に充実しているのは確か。  なお、トヨタへのOEM供給の予定はいまのところない。

パッケージング&スタイル

スタイリッシュでスポーティーなコンパクトミニバン

ボディサイズは日産キューブと似ており、全長3765mm×全幅1625mm×全高1535mm。ホイールベースは2370mm。このクラスとして数値的に際立った部分はなく、とりあえず立体駐車場の使用は十分に配慮されているのが嬉しいポイント。

外観デザインで最大の特徴となるのが、“ダブルウェッジスタイル”と呼ばれるウインドウ下端のラインだ。前後ドアでウェッジラインの切り替えが異っており、軽快感、躍動感を強調している。ヘッドライトは流行のツリ目で、クリアのテールランプはアルテッツァ風。コンパクトワゴンにありがちな「箱」という印象はなく、YRVのウリであるスタイリッシュ&スポーティーが表現されている。これは誰もが認めるところだろう。ただ、それが今流のカッコ良さに結びついているかというと「?」だ。若者を意識したのは分かるが、今の若者って本当にこういうラインをカッコイイと思うのだろうか。「若者はこういうのが好きだぞ、きっと」という視点がどこかオヤジっぽいような気がしてならない。

走りの意欲をかき立てるスポーティーなインパネ。豪華な装備群だが不満箇所もある

順手で握れるコラムシフト(正確にはインパネシフト。MT車はフロア式)と足踏み式パーキングブレーキを採用した室内も、外観に負けじとスペシャリティムード満点だ。インパネはディンプル処理。メーターフード下は、3つの計器類、2つエアコンルーバー、アナログ時計(ターボ車はオプションでブースト計を用意)で、6連メーター風。その周りは巨大な金属調パネルで覆われている。フロントウインドウとの連続感を強調した巨大なガラスサンルーフ「パノラマウインドウ」(パノラマパック装着車のみ)も魅力的なアイテムのひとつだ。また、サイドエアバッグやカーテン状エアバッグ、クラス唯一となる横滑り防止機構DVSなど、上級車種並の安全装備をこのクラスにオプション設定した姿勢も大いに評価できる。

残念なのは、ハザードランプがコラム上に設置されていること。ムーヴもそうであったが、YRVはスペース的に余裕があるのだからなんとかして欲しいところ。また、Dレンジ時のATレバーがオーディオ操作の妨げになるのもマイナス。ナビだと視認性にも影響がでる。雰囲気重視のインパネといえるだろう。

前席は左右の隙間を埋める座面とアームレストの採用によりベンチ風にアレンジされている。シートポジションの地上高は、同社のムーヴと同じ585mm。走りをウリにするクルマの割にはサポート性に疑問が残るところだが、乗降性も含めて座り心地はいい。ベンチシートというより独立シート同様のホールド感がある。

後席の広さはボディサイズを考えれば合格だ。シートアレンジも多彩で、5:5分割可倒機構、150mmスライド&リクライニング機構に加えて座面は脱着が可能(片側1.6~1.9kgとメチャ軽い)。シートを最後端にセットして座ると、シート下の出っ張りがふくらはぎに当たるのが気になる。つまり足下が狭い。これはプラットフォームがストーリアと同じのため。ここはガソリンタンク位置になり、さすがに床形状が変えられなかったからだ。

荷室は全長が短いこともあって広くない。カタログにも大きく触れていない。が、後席可倒時の段差を埋めるフラットデッキボードが付いており、後席座面を取り外せば前席直後まで荷室として使える仕組みだから、かなりの活躍が期待できるだろう。問題は外した座面をどこに片づけるかだ。

基本性能&ドライブフィール

注目の140馬力1.3リッターターボは、パワーウエイトレシオ6.7kg/PS

搭載されるエンジンは3タイプ。1 ストーリアでお馴染みの1.0リッター3気筒で、スペックは64馬力/9.6kgm。 2 超軽量・超低公害・超低燃費をテーマに開発された新世代の1.3リッター直4で、スペックは90馬力/12.6kgm。「良-低排出ガス車(★2つ)」に認定されている。このエンジンにインタークーラー付きターボをドッキングさせたのが 3 1.3リッター直4ターボだ。スペックはクラス最強を誇る140馬力/18.0kgm。車重は940kgだからパワーウエイトレシオは、6.7kg/PS。ここまでパワフルな数値は、スポーツセダンでもごく限られている。それでいて10・15モード燃費はNAモデルの17.4km/lに対して15.6km/lと優秀だ。なお、3 に組み合わせられるギアボックスは4ATのみで、ハンドル上のスイッチでシフトチェンジができるステアシフトが用意される。

足回りはストーリアと基本的に同じで、前がストラット式、後ろがトーションビーム式(4WDは3リンクコイル式)。タイヤサイズは175/60R14(ターボ車)。このクラスでは稀少となる横滑り防止機構DVSが設定されているのも見逃せない点だ。

扱いやすさも加味されたハイパワーは大きな魅力

試乗したのは1.3リッターターボモデルで、DVSは未装着。ターボに期待を膨らませて、発進からいきなりアクセル全開。ATのせいもあって出足は大人しく、ちょっともたつく感じ。ターボの効きは3000回転あたりから。そこから上は非常にパワフルでレッドゾーン手前の6800回転までスカッと吹け上がる。その速さはまさに「かっ飛び」。勢いに任せて120、140…と、なんか軽く180km/hに届きそうな気配。

最近のターボはラグをなくす方向へ向かっていることが多い中、YRVはドッカンターボとまではいかないものの、かなり意識させらるものに仕上げられている。個人的にはメリハリがあって印象に残る走りだと思う。かといって決して扱いにくいわけでない。低速のトルクが十分にあるから、3000回転以下の領域で市街地を穏やかに走ることもできる。コンパクトならではの小回り性も優秀で最小回転半径4.3mと軽自動車並に抑えているのも見逃せない点だ。

ステアシフトの切り替えスイッチはインパネ右隅にあるスイッチで行うのが独自。他にもリアワイパー、フォグランプ、デフォッガーなどのスイッチが漠然と並んでいるので、手探りで押すと、何が作動するのか分からない。運転しながら押すケースが多いので、ステアシフト切り替えスイッチぐらいは識別性を高めて欲しいところ。ステアリング部のスイッチは+/-とも表面。8時20分の位置にあり、この手では使いやすい部類だ。少なくともトヨタの裏表ボタンより数段使いやすい。

選択したギアは完全固定式。2速~4速でロックアップするという本格派だけあって、MTに限りなく近いダイレクトなシフト感覚が味わえる。ハード的な完成度は高い。ただ、空間重視のファンカーゴにも4段のステアシフトが搭載されているぐらいだから、ここは差を付けるためにも5段が望まれるだろう。

ターボ車というだけで存在価値はある、というのが現状の評価だが…

乗り心地は、コンパクトミニバンという性格を重んじたのか、これといってハードなセッティングに振っていない。走りの質感はヴィッツに若干劣るものの快適さはまずまず。ただ、その中途半端な味付けがワインディングで仇となる。重心の高さと相まってロールだけが大きく、素直にトレースを描いてくれない。タイヤもすぐに鳴って、粘りがない。恐怖感ばかりが先走り、それ以上、アクセルを踏む気になれない。つまりワインディングでは140馬力をフルに発揮できない。足回りの完全な熟成不足だ。やはり自衛手段のDVSの装着は必要不可欠だろう。スポーツカーのようにじっくりと熟成させれば、日本を代表する面白い存在になる資質は十分ある。

ここがイイ

ホットハッチ全滅の現在、それに変わるものとしての提案は評価したい。直線走りの充実感は、小型車でもこれくらい走れば文句なしといったところ。ターボ領域の力強さは当然だが、低回転でのトルクはなかなかいい。しかもゆっくりアクセルを踏めば、あまりターボを意識しない加速が得られる。リッターカーに乗っていると、どうしてもチンタラした走りになるが、これならシャキっととばせる。シートもベンチのくせにけっこうホールド感があるので、マル。

ここがダメ

アンダーは相当出る。というか、コーナリングは古典的なホットハッチみたいだった。まさかそれをねらったわけではないだろうが、走りたいなら足はちょっと固めたいところ。インパネのメタル風カバーは湾曲もあり、何だかチープ。ウッドやチタン風への交換を迫られそうだ。

総合評価

ハードウェアやコンセプトはなかなかいい。よく走る小さなミニバンが欲しいという需要は確かにあるだろう。ウチにはヴィッツがあるが、走りに関してかなり不満がある。だが、問題はスタイル。正直、このカタチがカッコイイという若い人は多くはないと思う。正統派のミニバンルック、ムーヴの拡大版的なデザインで出した方が固いはずだ。

でもそうするとbBと住み分けができなくなるか。そのあたりが今後のダイハツの難しいところ。トヨタグループの中で、ダイハツがどういうスタンスで行けるか、がこのクルマの売れ方で占えそうだ。

 

公式サイトhttp://www.daihatsu.co.jp/yrv/


 
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