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オペル ザフィーラ新車試乗記(第120回)

Opel Zafira

(1.8リッター・4AT・288万円)


2000年04月21日

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キャラクター&開発コンセプト

オペル初のコンパクトミニバン

欧州ではミニバン市場は今後最も大きな成長が期待できるマーケットとして注目されており、サイズの大小問わず、これからどんどん新車が投入されていくという。そんな市場にドイツのオペルが投入したのがザフィーラだ。今回、欧州より一足先にブームとなったミニバンの本場、日本のマーケットにもこのクルマが投入された。

新世代のヨーロピアン・コンパクト・ミニバンと位置づけられ、手頃なボディサイズ(プラットフォームはアストラ)と独自のシートアレンジを持つ7人乗り3列シートを採用している。ドイツ製のコンパクトミニバンということで大いに注目されるが、ヨーロッパでは昨年春から発売されており、走行性能の高さと利便性が話題になっているという。

価格帯&グレード展開

装備充実の1グレードのみ。価格は288万円

約1年前から発売されている欧州では1.6リッターと1.8リッターのガソリン、2.0リッターディーゼルの3タイプがあり、ギアボックスもATとMTとがある。しかし今回日本に導入されたのは1.8リッター+4速ATの1モデルで、グレードは本国では最上級にあたる「CDX」のみ。価格は288万円で、この価格は同仕様の本国価格よりも若干安いとのこと。かなり戦略的な価格といえる。

欧州製の7人乗りミニバンとしては納得できる価格だが、国産ミニバンと比較してしまうとやはり割高な感じは否めない。とはいえさすがに装備は充実しており、ルーフレール、サイドエアバッグ、トノカバー、キーレスエントリーは標準装備となる。欧州車でライバルをあえて考えると、5シーターとなるがルノー・セニック(249~279万円)となるだろう。

パッケージング&スタイル

色気のなさが、かえってドイツ車らしい

全長4315mm×全幅1740mm×全高mm1675mm、ホイールベース2695mmのボディサイズは、幅は広いがスパシオ以上イプサム未満。日産ティーノぐらいのサイズと思っていいだろう。ヨーロッパでも日本でもまずまず使いやすいサイズだ。

顔つきはアストラから始まったオペルの新しいアイデンティティを表現したもの。シンプルながら好感が持てる。全体にはごくオーソドックスなミニバンスタイリングながら、0.32というスポーティーセダン並のCd値(空気抵抗係数)を誇る。質実剛健イメージの強いドイツ車らしい仕上がりは、日本人なら抵抗なく受け入れられるだろう。

革新的な床下収納式サードシート

短い全長ながら、効率よく2-3-2掛けの3列シートを配置した室内空間は、「フレックス7」と呼ばれる独自のアレンジシステムが自慢。助手席の背もたれが前方へ水平に倒れたり、セカンドシートが300mmロングスライドできたりと、多用途性はよく考えられた国産ミニバン並。その動作のすべてが正確で、カチッとした感触は実に気持ちがいい。

なかでもハイライトとなるのが左右独立して床下に折り畳めるサードシートだ。発想自体はファンカーゴのリアシートと同じ。操作はラゲッジ側から、背もたれの上部にあるレバーを押し、シート全体を前方に倒しながらセカンドシート床下の収納スペースに押し込む、という簡単なものだ。収納されたシートは、フロアとキッチリ、フルフラットになっており、荷室幅はクラス最大の1017mm。荷室容量は最大(2名乗車時)で1705リッターにまで拡大する。

手間なのは、セカンドシート下のフロアを使うために、事前にセカンドシートの座面を跳ね上げて最前端にセットする必要があること(最大スライド300mmがここで生きる)。このあたりはオデッセイのような収納方式の方が手軽だ。しかし、スペアタイヤ(フルサイズ)の配置など、何かと制約が厳しい短い全長で、サードシートがキレイに収納できるというのは、革新的といってもいいだろう。

おもしろいのはシートを外す仕掛けにしなかったのは、欧州では路上駐車が多いからという理由だ。「ガレージのない路上駐車だと、シートを外しても置くところがないから、室内にしまえるようにした」というメーカーの説明は、欧州と日本のクルマ文化の違いを示すおもしろい話。路上駐車に対して異常に厳しいのは日本だけ、ということのようだ。

できればコラムシフトが欲しい

photo_3.jpg新設計されたインパネは地味なデザインで、ATシフトレバーは一般的なフロア式を採用する。シートはドイツ車の定石通り、張りがあって硬いもの。アップライトなポジションで、乗降性も良い。欧州ではMTが主流だから仕方ないが、やはりこの手のクルマならコラムシフトが欲しいところ。同様にウォークスルーも一切考えられていない。

セカンド、サードシートはそれぞれ前シートとフロアの間の空間が広い(フロントシートはアストラより88mmも高くなっている)ので、足元の余裕は見た目より広々とした印象を受ける。おざなりになりがちなサードシートでも3点シートベルトを採用しており、ヘッドレストも大きくスライドして頭部までしっかりカバーする(さすがにシートクッションは薄く、背もたれも立ち気味だが)。その他、レバーやフックといった細部のパーツなど隅々まで、きっちりと造り込まれているが印象的だ。しかし、ステアリングの角度が、なぜかかなり寝かし気味なのは気になった。

基本性能&ドライブフィール

1.8リッター+4ATに、ニュートラルコントロールをプラス

エンジンはアストラで先行搭載された”ECO TEC”と呼ばれる1.8リッター直列4気筒DOHCで、最高出力115ps/5400rpm、最大トルク17.3kgm/3400rpmを発揮する。ECOTEC(エコテック)とはエコロジーとエコノミーとテクノロジーを組み合わせた造語で、低燃費と低公害を高いレベルで両立させたオペルの最新エンジン群の総称だ。この1.8リッターは 2200~5300rpmの幅広い回転域で最大トルクの90%以上を発揮するという柔軟性の高さが最大の特徴という。

ギアボックスはエコノミー、スポーツ、スノーの3つのプログラムを持つ4速ATで、「ニュートラル・コントロール」機能が採用されている。これは、クルマが停止中にブレーキペダルを踏むと、ギアが自動的にニュートラルような状態となり、放すと再びギアが入るというもの。これにより燃費は約2~3%低減できるとのこと。とりわけストップ&ゴーの多い日本では嬉しいメカだ。

足回りはアストラの前/ストラット、後/トーションビームをベースに、ミニバンの性格に合わせたチューニングを施したもの。ドイツ車らしい硬質な走りと快適な乗り心地をもち、「乗ってみれば他のミニバンとの違いがはっきり分かります」とメーカーは主張する。リアサスはコンパクトで荷室への張り出しは見事に最小限に押さえられている。

走りの質はまさにドイツ車。アンダーパワーが唯一の不満

実際に走らせてみると国産ミニバンのようなナヨナヨとした感じは一切なく、その主張通り引き締まった走りが味わえる。基本的には、硬質な乗り心地に重みのあるハンドリング、というドイツ車の定番に沿いつつ、女性でも苦にならないように軽快な操作感を与えている。その加減は日本人にはちょうどよく、どんなクルマから乗り換えても運転に戸惑いを覚えることはないだろう。トレッドの広さは、高速コーナーでの安定性に貢献しており、アストラよりずっと高い重心も感じさせない。この足なら人や荷物の積載量に関係することなく、常にビシッとした走りが望めそうだ。シフトショックもきわめて少なく、また、「ニュートラル・コントロール」の制御もその存在を忘れてしまうほど違和感がない。

今回は高速巡航はできなかったが、恐らくそのケースでの安定性、快適性は同クラスの国産ミニバンを大きく上回るものだろう。ただし、セダンと同じスペックのエンジンに、+160kgの重量増ともなれば、さすがにパワーで不満を感じるのも確か。低回転からトルクが出るためストップ&ゴーの多い市街地では目立たないが、坂道になると力不足が如実に現れる。先回のフォーカス、その前のゴルフ同様、同じギアをギリギリまで使いこなそうとしてなかなかキックダウンしないのもその印象を強める一因。スポーツモードにすれば、少しマシになるが、高回転でのパワーの伸びはあまり期待できない。ワインディングでは足のしっかり感にエンジンが完全に負けているという感じ。やはり2リッターくらいの排気量が欲しくなる。

ここがイイ

そう高級感はないが、全体にきちっと作り込んであるドイツ車らしさが一番の売り物だろう。パズルのようにサードシートを畳み込んだ後の荷室などは、隅から隅まで定規で測ったかのようにビシッと作り込んであり、見ているだけで快感だ。サードシート用のシートベルトの金具がプラプラしないように収める位置があるなど、芸が細かい。

カップホルダーも6つきちんとある。サンルーフは運転席の上がスライドして開き、セカンドシートの上にはなくて、サードシートの上がチルトアップ式だ。この運転者重視の設計は他では見たことがない。

ここがダメ

アクセルをベタ踏みした途端、がっくりしてしまうパワーのなさ。7人乗ると厳しそう。基本的には4人乗りで、いざというとき7人乗りという使い方だろう。Aピラーは空力重視らしいが、太く前に伸びており、右コーナーの視界をかなり遮るのが気になった。シートポジションもリフターがついているのだが、寝ているステアリングに合わせようとすると最高に上げなくてはならない。そうすると頭上空間に余裕がなくなる。身長が高い(当然、座高もある)欧米人向けのポジションのようで、これは最後までなじめなかった。チルト機能がぜひ欲しい。そしてこのクルマもカーナビの位置が困りそう。オーディオを入れ替えれば何とかなるとは思うが。

総合評価

photo_2.jpgこれまで輸入車には日本人に馴染めそうなコンパクトミニバンがなかっただけに、輸入車ファン、特にドイツ車好きのヤングファミリー層にとっては待望の1台となるはずだろう。地味目の外観、手頃なサイズと時代に合っているのも高得点。国産ミニバンと比較してしまうと確かに価格は高いが、そもそも輸入車を買おうという人にとっては、ある程度は覚悟していることであり、大きなマイナス点にはならないはず。アストラやゴルフに乗ってきたヤングカップルが子持ちになって、ミニバンの必要にせまられたとき、このクルマの存在は心強いだろう。必要だけど今さら国産ミニバンには乗れない、また、これからの時代はエステートワゴンじゃないでしょう、という人には、このクルマの誕生は朗報だ。オペルというブランドはまだ弱いが、フォルクスワーゲンにはないクルマだけに、オペルとしてはイメージと販売を伸ばすチャンスだ。GMグループとしては久々の日本でのヒットとなるだろう。

公式サイト
http://www.opel.co.jp/models/zafira/

 
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