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オペル ザフィーラ 2.2 CD新車試乗記(第406回)

Opel Zafira 2.2 CD

(2.2リッター・4AT・269万円)



2006年03月11日

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キャラクター&開発コンセプト

3列目を床下収納にしたパイオニア

初代ザフィーラは1999年に登場。3列目シートを脱着式ではなく、欧州車で初めて床下収納にした「フレックス7シートシステム」が画期的だった。また、ポルシェがチューニングしたというハンドリングも大きな特徴だった。日本には2000年に1.8リッター車が上陸。2001年からGMタイ工場で生産された2.2リッター車が「スバル・トラヴィック」として販売された。初代シリーズの販売台数は2005年10月時点で合計140万台という。

新型アストラベースでアップデート

2代目ザフィーラは2005年に欧州でデビュー、2006年1月に日本で発売された。ベースは初代同様に同世代のアストラ。先代より一回り大きくなったボディで居住性と衝突安全性を高め、好評だったシートアレンジをさらに使いやすく改良。走行性能に関しては上級グレードに、電子制御ダンパー「CDC」とスロットル、ブレーキ、AT、パワステ等をLAN回線のような高速データ通信で結び統合制御する「IDS plus」シャシーを採用。先代に続いて新型もドイツの「ゴールデン・ステアリングホイール賞」を受賞している。

価格帯&グレード展開

269万円と299万円

日本仕様は全て2.2リッター直4で、今回試乗した「CD」(269万円)と「スポーツ」(299万円)の2種類。両グレードの違いは主として、アルミホイールや電子制御ダンパー(を含む制御システム全体の「IDS plus」)で、パワートレインに違いはない。

パッケージング&スタイル

短くてワイドな欧州風サイズ

先代より全長で150mm、幅で60mmほど大きいが、少なくとも全長は十分にコンパクトだ。いわゆるDセグメントカー(コンパクトセダン)と占有面積はそう変わらない。最小回転半径は5.6メートルで、実際の体感「取り回し度」も悪くない。ただ、1805mmの幅は狭い場所では多少気を使うし、傾斜した右Aピラーはやや視界をさまたげる。

デザインは新型アストラを大人しくした感じで、欧州では風景の中に溶け込みそう。ミニバン百花繚乱の日本では少々地味だが、レッドやブルーといったビビッドな色を選ぶと印象も違ってきそうだ。CD値は0.31とミニバンとしては優れている。

シフトレバーの位置を改良

現行オペルに共通のカチッとした樹脂のインテリア。先代の、妙に低くて手が届きにくかったシフトレバーや角度の寝たステアリングホイールは自然になった。ハンドブレーキは現行ルノー・メガーヌのものを大きくしたようなU字型の操縦桿タイプで、見た目は面白いし操作力も軽い。

助手席シートの背もたれを前方に折りたたむと、ちょっとしたテーブルに変身。小物が固定できるネットもあって便利だ。

オペル得意のリムジン風リアシート

最近のオペル車は後席にこだわっている。基本的な居住性が良いのに加えて、ザフィーラでは中央席を倒すとドリンクホルダー付きのアームレストになるなど、作りが凝っていて楽しい。飛行機の座席のように、カップホルダー付きのテーブルもあるが、安全性からだろう、強い力を掛けるとパタンと下に畳まれてしまうので、パソコンなど重めのものは恐くて置けない。

今回の試乗車には付いていないが、2.2スポーツで選べる「パノラマルーフ・システム」(AFS機能付きバイキセノンヘッドランプとセットで27万3000円)は、やはり飛行機の荷物入れのような天井収納の両脇に、計4枚のガラスサンルーフがあるもの。ガラスは固定だが、室内側には電動式のシェイドが付く。

クッションは薄いが、意外と使えるサードシート

サードシートの折り畳み方は基本的に先代と同じで、座面や背もたれは薄いが、空間的には余裕が増えてかなり楽になった。特に腕回りはアームレスト状に大きくえぐれていて、単に広いだけより安心感がある。

1シーターから7シーターまで簡単に

1人乗りから7人乗りまで自由にシートアレンジできるのがザフィーラの得意技だ。「7シーター」時の荷室容量は140リッターに過ぎないが、「5シーター」では645リッター(先代比+45リッター)、さらにセカンドシートを最前端へスライドさせれば1820リッター(同+120リッター)になる。これはラージサイズのステーションワゴンより広い。

今までのオペル車、というかドイツ車全般のイメージと違い、操作力が軽くなったのがポイントだ。操作手順は「最初にセカンドシートを一番前に移動させる」ことだけ覚えておけばとりあえず大丈夫だろう。

基本性能&ドライブフィール

踏めば即、加速

ザフィーラが積む2.2リッター直4・直噴「ECOTEC」エンジン(150ps、21.9kg-m)はなかなか個性的だ。速くはないが、低速からブォーとトルクを生んで、そのままドーとトップエンドまで回りきる、と書くと何だかディーゼルのようだが、耳障りじゃない独特の音や力強さはガソリン車のもの。スーパーチャージャーです、と言われれば信じてしまいそうなトルク感で、「踏めば即、加速」という感じだ。欧州で人気のディーゼルターボの乗り味をガソリンエンジンで再現しようとしたようにも思える。バランサーシャフトが2本あるせいか回転も滑らかだ。こういうわけだから、カタログスペック的には物足りない4速のATでも、乗り始めるとまったく十分と分かる。

ゴールデン・ステアリング賞を取った腕前

重厚な走りはいかにも欧州直送。ブリヂストンのTURANZAのせいか、ロードノイズは特に気にならないし、乗り心地も下手な欧州系スポーツセダンより快適だ。今回はベーシックグレードの「CD」しか乗っていないが、その限りでは「スポーツ」グレードに付く電子制御ダンパーのCDCや、マップ制御式の電動油圧パワステ(走行状況やスポーツモードに連動して制御マップを変える)は「無くいてもいいか」と思える。

ボディ剛性感は先代でも高かったが、新型ではハンドリングに影響する「ねじり」剛性で30%、快適性に関係する「曲げ」剛性で74%アップしたという。実際に山道を走ると重心の高さはさすがに隠せないが、そのがっしりしたボディと足回りのおかげでコーナリング性能は高い。最大3輪まで制御する最新のESP、アンダーステアコントロールなどの電子制御は早い段階から介入するようだが、ほとんど意識しなかった。

追越加速は速くないが、高速道路での走りっぷりも期待に背かないもの。高めの巡航速度を保ったまま、いかにもドイツ車らしく安心してアクセルを踏み続けられる。メーカー発表値の最高速は190km/h。本国には最高速225km/hの2リッターターボ(200ps)や232kmを誇る同ハイチューン版(240ps)もある。

ここがイイ

あくまで主観だが、ルックス的にはライバル達(トゥーラン、グランドセニック、307SW)よりザフィーラの方が好ましい。街乗りでも高速でも重厚な乗り味、頑丈そうなシャシー、不満のない装備。特に、先代譲りのリアシートバックテーブルは便利なもの。後部座席は航空機のよう(多少の狭さも含めて)。オプションには後席用ディスプレイもあるので、より航空機的な雰囲気を味わえる。先代よりは操作力の軽くなったシートアレンジ。

低速トルクたっぷりのエンジン。ボタン一つでスポーツモードになり、そこそこスポーティな雰囲気が味わえること。

荷室に備わるスライドレールとアタッチメント(フレックス・オーガナイザー・システム)は道具好きをワクワクさせるもの。シートアレンジなど、全体的にうんちく好きには好まれるはず。

ここがダメ

前席にはちゃんと使えるドリンクホルダーが1ヶ所しかなく、これも太めのボトルだと入らない。後席や荷室のユーティリティは充実しているのに、ドライバー用の小物入れは不足気味。ドライバーは走ることが楽しみのはず、と強いられているかのよう。

旧態然とした1-2-3-Dまで一直線で、マニュアルシフトしにくいシフトゲート。発進時にDではなく、3に入ってしまうこともあるから、マニュアルシフトしなくても不便。4ATならジグザグゲートがベストだと思うが、とにかくこの一直線タイプは過去のものとしたい。

いつものことながら、オーディオやドライビングコンピューターの操作(ステアリングスイッチでも可能)が難解。特にステアリングスイッチやコラムのレバーに備わるスイッチは修練を積まないと、とても操作できない。カーナビはオプションで用意されているが、オーディオ部分とのトレードオフになる。本来一番見やすい位置に操作系のモノクロディスプレイがあるのはやはり残念なところ。優しく閉めると半ドアになりやすいバックドアにはイージークローザーが欲しい。

総合評価

言うまでもないがオペルはGM系の会社だ。GMの業績不振に伴い欧州事業が再編される中、2004年末にはオペルでも1万人の解雇が発表され、現実に数千人が解雇に応じているとされる。GMは2005年2月にはフィアットとの提携を15億5000万ユーロ支払って解除し、10月には富士重工、そして今月(2006年3月)はスズキと、次々に提携先との関係を見直している。とはいえ、欧州のGMの拠点はオペル。これだけは決して揺るがないだろう。

イタリアのフィアットや日本のメーカーが外されつつあることに3国同盟時代の亡霊を感じなくもないが(韓国大宇がアジアの拠点となりそうだし)、GMとしては、もはやせっぱ詰まっているのは明らかだ。以前と比べれば相当緻密なクルマになってはいるGM車だが、日本車のかゆいところに手が届く出来の良さと比べれば、いかにも大陸的。イタリアや日本といった狭い国で乗るには違和感がやはりあるし、北米市場でも壊れない日本車に優位性があるのは間違いない。そこが現在の苦境の原因だと思う。今後、中国という「大陸」で売れるようになると形勢逆転の目がないわけではないが。

GMグループでもドイツのオペルの場合、大陸的な部分と、欧州車らしい緻密さがうまく融合している。GM車よりはきちんと作り込まれていて、欧州車好きには無理なくなじめる。そして高級路線へシフトしつつある国民車(フォルクスワーゲン)と比べると、ドイツらしい質実剛健さではオペルの方が今や上。無国籍風味になってきたVWより、オペルは旧来からのドイツ車好き向けのクルマといっていいだろう。日本で乗ると、いかにも輸入車という感じがする。

実はここが重要なポイント。単なる3列シート車を選ぶなら、おそらく国産車にもっと日本の事情に合ったクルマがあるに違いない。実際、シートアレンジは直感的と言うより論理的で、誰にでも簡単とは言えない。それでもあえてこのクルマを選ぶ人は、「輸入車」であることに価値を見いだしているはずだ。ザフィーラは「輸入車」の3列シート車であることにこそ、その存在価値がある。「国産車のファミリーミニバンにだけは乗りたくない」が「ムルティプラでは冒険がすぎる」というお父さんの選択肢は、トゥーランかザフィーラか、というところになるだろう

舶来信仰はもうほとんどの人に無いと思うが、輸入車派か国産車派かという線引きは今も歴然とある。ブランド地位の上下や、高級か否かという区別ではなく、輸入車か国産車かという差は大きい。たとえポンコツ中古車を買うとしてもこれは然り。高いか安いかではなく、何が何でも輸入車でなくてはダメ(理由は詳しく書かないが、クルマ好きなら何となくわかるはず)な人は今も確かにいる。レクサスが予定数売れていないのはこのせいだろう。どんなに高級で、どんなに質がよくて、どんなにサービスがよくても「輸入車ではない」ことが理由となり、ベンツから乗り換える人は少ないわけだ。

先代ザフィーラのスバル版トラヴィックが売れなかったのは、スバルという国産ブランドになってしまったせいだろう(タイ製であったことも厳しかった)。スバルトラヴィックでなく、オペルザフィーラをスバルディーラーでも売っています、とすればもう少し売れただろう。何が何でもという輸入車派は、微々たる勢力だが確かにいる。改善が進んだ新しいザフィーラはそんな輸入車派のファミリーに、先代より少しだけ大きな幸せをもたらしてくれる仕上がりとなっていた。

試乗車スペック
オペル ザフィーラ 2.2 CD
(2.2リッター・4AT・269万円)

●形式:GH-AH05Z22●全長4465mm×全幅1805mm×全高1635mm●ホイールベース:2705mm●車重(車検証記載値):1560kg(F:-+-)●乗車定員:7名●エンジン型式:Z22●2198cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・直噴・横置●150ps(110kW)/5600rpm、21.9kg-m (215Nm)/4000rpm●カム駆動:タイミングチェーン●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/58L●10・15モード燃費:12.2km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:205/55R16(ブリヂストン TURANZA ER300)●試乗車価格:275万3000円(含むオプション:メタリック塗装 6万3000円)●試乗距離:180km ●試乗日:2006年2月

公式サイト
http://www.opel.co.jp/lineup/zafira/

 
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