アメリカンクルーザーの「ビクトリー」にチョイ乗り!
「ビクトリー」ってバイク、知ってる?
日本では、ある程度のバイク好きですら、「聞いたことはあるけど・・・・・・」くらいの認識だと思われる「ビクトリー」。そういう自分もついこの前まで知らなかったくらいなので、偉そうなことは言えない。創業は1997年と割と最近だが、V型2気筒エンジンのクルーザー(いわゆるアメリカン)やツアラーなどの高級モデルで成功を収め、海外での知名度はすでに高いらしい。
今回はこのビクトリーを日本で取り扱う株式会社ユニオート(岐阜県羽島郡)で、最新モデルにチョイ乗りできた。日本での正式発売はまだだが、せっかくなので簡単に紹介したい。
エンジンはオリジナルの空冷Vツイン・SOHC
ビクトリーの親会社は、スノーモービルやATV(4輪の小型オフロード車)で有名なポラリス社。富士重工業の子会社である「ロビン」が長年ポラリス向けにエンジンを供給していたので、日本でも知っている人は多いんじゃないだろうか。
ビクトリーもポラリスも、本社はアメリカのミネソタ州にある。アメリカ中西部の北の端、カナダ国境に接するところで、行ったことはないが冬はそうとう寒そう。確かにスノーモービルの開発には良さそうだ。
エンジンはハーレーのような空冷V型2気筒(Vツイン)だが、OHVではなく、モダンなSOHCの4バルブ。バンク角もハーレーの45度とは異なり50度で、要するにハーレーの亜流ではなく、完全オリジナル設計になる。
排気量は1998年に発売されたファーストモデルの場合、1510cc(92ci=キュービックインチ)だったが、2010年現在は、1634cc版(100ci)と1731cc版(106ci)の2本立て。創業以来、それらを載せたクルーザーをはじめ、大型スクリーン付のツアラーやマッチョなスタイリングのカスタム風モデルなど各種バリエーションを徐々に増やしてきた、というのがこれまでのおおまかな流れだ。
【チョイ乗りインプレッション】ネス・ジャックポットに試乗
前置きが長くなったが、今回ユニオートで試乗したのは、「カスタムクルーザー」と呼ばれるシリーズの「ネス・ジャックポット」(2010年モデル)というモデル。クルーザーの「ジャックポット(Jackpot)」をベースに、バイクカスタム界の大御所アレン・ネスの息子コーリー・ネスがカスタムを手がけたもので、確かにホイールやグラフィックの意匠などが“ネスっぽい”。極太250サイズのリアタイヤも迫力だ。仕上げは非常に良くて、完全に量産車レベル。高級感もハーレーやホンダの上級モデルに匹敵するか、上回るくらいと思われる。
排気量は1731cc。燃料供給装置はインジェクションで、専用端末につなぐと燃料噴射量をパワー寄りにしたり、燃費寄りにしたりと簡単にコントロールできるらしい。正確な諸元は不明だが、最高出力はおおむね90ps台、最大トルクは14kgm台あたりか。ミッションは6速で、最終的な駆動はハーレーと同じベルトで行う。
……といった前知識はその時点では全くなく、いきなりまたがってエンジンを掛ける。さすがに1シリンダーあたり865ccもあるのでクランキングは重めだが、火の入りは早く、アイドリングもすぐに安定した。4バルブのSOHCであるせいか、エンジン音はハーレー風の揺らぎのあるドコドコではなく、スパ!スパ!スパっと歯切れがいい。音量は排気量相応に大きめだが、騒音規制はもちろんクリアしているとのこと。トゲトゲしさがまったくなくて、聞いていて心地がいい音。マフラーのせいもあるが、やはりこのあたりもエンジンの特性だろう。
身長166センチ程度の自分でも、当然ながら足つきは全く問題なし。フォアコン(フォアードコントロール)のペダルとシフトレバーが遠目だったが、足を伸ばしたら届いたので一安心。1速にシフトすると、コツンッとホンダ車みたいに軽くギアが入る。クラッチも軽く、気を使うところは全然ない。
走り出した後も、排気音は相変わらずスパ!スパ!スパ!とカツレツがよく、車体は軽々と加速する。さっそく調子に乗ってアクセルをワイドオープンすると、音量が2段階高まると共に、一つ一つの爆発感覚が短くなってズバババババ!と豪快に加速。ギアリングが高いせいか、加速の息の長さはこれまで経験したことがないほど長い。回転の伸び感は、普通の空冷ハーレーを断然上回るんじゃないだろうか。
アメリカではゴールドウイングと競る?
実はこの試乗の直前、同じくユニオートが取り扱う米国のカスタムメーカー「サクソン」の最新モデルにも試乗。こちらはハーレーのカスタムエンジンで有名S&S製エンジンをオリジナルフレームに載せた、いわゆるボバータイプのカスタム車。乗り味も見た目どおりハーレーのカスタム車という感じで、リアリジッドの方はOKだったが、フロントのスプリンガーサスの動きがちょっと気になった。ハーレー乗りなら、また違った印象もあると思うが、いずれにしてもツーリングというよりは、ダイレクトな刺激やスタイルを楽しむという感じだ。
一方、ビクトリーのサスペンションはまったく問題なく、ブレーキもよく効く。エンジンも一般道で6速トップに入るくらい、すごくフレキシブルで、振動は空冷の大排気量ツインとは思えないほど、無い。アメリカ人の中にはビクトリーのツアラーモデルをハーレーのツーリングファミリーはもちろん、ホンダのゴールドウイングあたりと比べて選ぶ人もいるんじゃないだろうか、と思ったくらいに「洗練」されている。スクリーンやカウルがあれば日帰り600km以上のハイウェイツーリングも楽勝でこなせそうに思えた。
ちなみに燃費はインジェクションの設定次第でかなり上下するようだが、悪くはないらしい。ジャックポットの場合、燃料タンク容量は17リッターある。
日本発売が楽しみ
そんなわけで、ローテク感が味の?ハーレーとは一線を画す、完成度の高さに驚かされたビクトリー。日本での正式な発売はまだ少し先みたいだが、今のところ未定の価格は、ハーレーの上級モデル並みか、やや上の300万円台かな、と思われる。
ちなみにこれを書くにあたって、日本のメディアではほとんど詳しい記事を見つけられなかったが、オートバイ専門誌の「バイカーズ・ステーション」(2010年9月号)には、米国人ライターのインプレッションが掲載されていた。同じ号に今年日本に上陸した新生インディアンの翻訳記事もあるので、気になる人はバックナンバーを手に入れてみるといいだろう。
とはいえ、正式発売された暁には、日本でもいろいろな専門誌で取り上げられると思う。どんな風にこのバイクが評価されるか、早めに味見した者としてはちょっと楽しみだ。(DAYS 丹羽 圭)
■ポラリス>米国ビクトリー公式サイト(英語)
■ウイキペディア(英語版)>ビクトリーモーターサイクル







