愛知県ITS推進協議会「産・学・行政交流会」を開催

カテゴリ:講演・セミナー / 2019年04月25日

 
 
 

産・学・行政交流会

テーマ:「ITSを活かした交通事故低減に向けた取組について」

愛知県ITS推進協議会は2019年4月24日、愛知県の交通安全対策の現状や将来について議論することを目的に、「ITSを活かした交通事故低減に向けた取組について」をテーマに、産・学・行政交流会を安保ホール(名古屋市中村区名駅)で開催した。

前半の基調講演では、日本自動車工業会(以下、自工会) およびトヨタ自動車 コネクティッドカンパニー ITS推進室にて、ITS関連の研究開発に取り組む菅沼 英明氏が登壇。後半のパネルディスカッションでは、進行役に早稲田大学 環境総合研究センターの石 太郎氏を、パネリストには菅沼氏のほか、愛知県立大学 情報科学部教授の小栗 宏次氏、名城大学 理工学部 教授の中野 倫明氏、国土交通省の池田 裕二氏を迎えて意見を交わした。

菅沼氏「ITSを活用した安全運転支援サービスの紹介と自工会の描くモビリティ社会の将来像」

菅沼氏は、基調講演の冒頭で、ITSサービスは1990年代に主に渋滞緩和を目的として始まり、VICS、HELP(緊急通報システム)、ETCなどが登場したが、2000年代に入ると安全運転を支援する社会インフラとして期待されるようになったと説明。その代表的な例として、2015年10月にトヨタ自動車がサービスを開始した「ITS Connect」を紹介。ITS Connectの搭載によってドライバーの運転行動が変化した例として、今までは直進車に気付かず右折していたドライバーが、ITS Connectによる注意喚起によって、安全に右折できるようになったケースを挙げ、出会い頭事故や右直事故、左折巻き込みなどについては、路車間通信や車車間通信などのITSが有効であることを示した。

また、同じくすでに市販車に搭載されている、車車間通信を利用した通信型レーダークルーズコントロール「C-ACC」(CはコミュニケーションのC)についても紹介。C-ACCにおいても、通常のACCが正常に作動していることがベースであり、通信はあくまでも補助情報として利用するという考え方を説明。C-ACCだけでは制御しないという点がポイントとして紹介された。なお、トヨタのITS Connect設定車種は、2019年3月末時点で17車種、販売台数は約14万7000台である。

そのほか、ITS JAPANが関連省庁に対して行ってきた様々な提言や、自工会が行っている自動運転実証実験などの取り組みのほか、2030年をマイルストーンとした自工会の中長期モビリティビジョンについても紹介された。

パネルディスカッション

後半のパネルディスカッションでは、コーディネーター役の石氏が冒頭で、愛知県が交通事故死者数 全国ワースト1位から脱却できない現状を紹介。昨年2018年の県内の交通事故死者数は、前年より11人減少して初めて200人を切ったものの、189人で全国ワースト1位。なお、2位は千葉県、3位は埼玉県、4位は神奈川県、5位は兵庫県だった。

菅沼氏は「事故は主に、ドライバーの人的ミスで起きる」としつつ、「その原因の追究は、その時にドライバーが何を考えていたか、というところまで行ってしまう難しいテーマ」と指摘。その上で、ITS Connectのような注意喚起を例に挙げながら、「日常の中にちょっとした変化点を入れて、ふだん気付かないことを気付かせるだけでも安全運転支援になる」と語った。

ドライバーの疲労検知や居眠り検知などのドライバーモニタリング技術の研究開発に長年取り組んできた小栗教授は、地域に根ざした事業として「交通事故ゼロチャレンジ」をテーマにした授業を大学で行っており、近年の「自動運転」というキーワードの盛り上がりも追い風だとした。しかし一方で、学生のクルマに対する関心の低さや、AI人材を欲する企業側の需要に対して、大学側の人材育成体制が整っていない点を課題として挙げたほか、今後は自動運転になると事故は本当に減るのか、自動運転車と人はどう共生していくのか、という議論も必要だとした。

さらに小栗教授は、「どんな野球の名手でも、穴ぼこだらけのグラウンドではミスが出る。自動運転になるからこそ、道路に目に向けよう」と「知的道路」の重要性にも言及。自動運転や運転支援において要求される車線認識レベルを上げるため、車載カメラ情報によるビッグデータを活用して、道路の白線情報を収集・管理し、塗り替えなどの道路維持管理計画に活かすなど、事業化も含めた可能性について語った。

HMI(ヒューマン マシン インターフェイス)を専門とする中野教授は、愛知県の地域特性として、自動車の保有台数が多い、自動車への依存度が高い、道路の総距離が多い、などの点に触れながら、さらなる事故低減を目指すには、運転マナーなどに表れる交通心理が重要であり、免許取得前の若年層を含めた交通教育が重要ではないかと指摘。

ただし、同じ高齢者でも人によって身体能力や運転特性は多種多様であり、「『人間』というのは本当に難しいなという思いでやっている」と語った。

自動運転については、レベル3(特定の場所では自動運転し、緊急時はドライバーが操作)の実現は難しいが、レベル4(特定の場所ではすべて自動運転)であれば、過疎地域における交通手段の維持に有効だとした。

その上で、通常のクルマについては、少なくとも当面は「万一の時に助ける運転支援だけでいいのではないか」とし、自動ブレーキや誤発進抑制装置が、うっかり事故を減らす上では有効であり、同時に安全運転するための教育や訓練が大切だとした。そして今後は、主に高齢者と、自動ブレーキ等を装備した安全運転サポート車(サポカー)を対象にした「サポカー限定免許」や、視力低下の影響を受けにくい「昼間限定免許」などを設定してもいいのではないかと語った。

長年ITSに取り組んできた国土交通省の池田氏も、道路側の工夫だけでは減らなかった追突事故が、今後は自動ブレーキなどクルマ側の機能によって劇的に減る可能性があることや、将来的に自動運転が実用化されれば、過疎地域などで今よりも人件費のかからない公共交通的な役割が期待できるとした。一方で「自動運転は、得意分野と不得意分野がある」とし、「すべての道路で自動運転が可能にはならないだろうし、すべてのドライバーが自動運転を使うようにもならないだろう」と予想した。また、ITSについては、今後はETC2.0の情報を活用し、車速のほか、車線変更の頻度などの情報を収集して、安全教育や保険料率などに活かすということも可能ではないか、と語った。

 
 
 

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