Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > トヨタ アルテッツァ

トヨタ アルテッツァ新車試乗記(第53回)

Toyota Altezza

 

1998年12月11日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

「操る、走る」心地良さがキーワード、2リットルNAエンジンの新世代FRスポーツセダン

「速さを競い合うことよりドライビングそのものを楽しむこと」をコンセプトとして、エンジン、ボディ、シャシーのベストバランスを重視し、ワインディング、高速道路はもとより、低中速走行主体のタウンドライブ、あるいはサーキットでも「操る、走る」心地良さを堪能できる新世代のFRスポーツセダンとして開発されたのがアルテッツァだ。

大人4人が快適に乗車できるパッケージング、新しいトレンドを示唆するショートオーバーハング&トールスタイル、クロノグラフタイプの新感覚メータークラスター、新世紀を見据えた環境への配慮と高い安全性で、トヨタの提唱するセダンイノベーションの新たな方向を示す力作だ。

もともと「FRセダン」というのは、クルマの古典的な様式であり、クルマに興味のない人にとって、今さらそれを復活させたからといってなぜ大騒ぎするのか不思議に映るかも知れない。しかしアルテッツァは、セダンの形をした「FRリアルスポーツ」。故にこれだけ騒がれるのだ。来年はホンダS2000も出るしFRの年になるかも。

トヨタにはマークIIブラザーズのツアラー系などFR4ドアスポーツはあるにはあるが、それはあくまで瞬発的なパワーを誇るのみ。アルテッツァが期待される理由は、全長4400mmというコンパクトなボディをスポーティに振り回せるのでは、ということだろう。ビッグボディには望めないライトウエイト(実際はかなり重いが)的な走りが期待できる。

価格帯&グレード展開

207万円から254万円、個性の違う2つのエンジンを用意

タイプはふたつ。4気筒の3S-GEエンジンを搭載する「RS200」と、6気筒の1G-FEエンジンを搭載する「AS200」。スポーツ志向の「RS200」には6MTまたはステアシフトマチック5ATが組み合わせられる。一方の「AS200」はラグジュアリー志向ということもあって4ATのみとなる。また、TRC、17インチタイヤ、CDオーディオなど装備を充実させた「Zエディション」(10万~30万円高)が全グレードに用意される。

ちなみに現在の一番人気グレードはRS200・6MT、人気ボディカラーはシルバーメタリック、スーパーホワイトIIとなっている。来年早々にもホワイトパールが追加される噂もある。

発売後1ヶ月で1万5000台を受注するほどの大ヒットとなったアルテッツァだが、あまりにもの人気ぶりに早くも中古車オークションの一部会場では、新車価格を上回った価格で落札されたという。量産車でプレミアが付くのはバブル期以来のこと。ただ、この事態に備えて作り置きもかなりあったようで、車種を選ばなければ年内納車すら可能らしい。

パッケージング&スタイル

ベストサイズFRセダン、走りを凝縮した4400mmのコンパクトボディ

運動性能に優れ、かつ4人がしっかりと乗れるキャビンスペースを確保するために、ホイールベース内に重量ユニットを集中させ、オーバーハングを切り詰めた新しいパッケージング。例えば長い直6エンジンでさえ重心の中心点が前車軸よりも後ろにあり、燃料タンクやバッテリーもできるだけキャビン側に配置するなど、車両重心をクルマの中心に近づけ、ヨー慣性モーメント(首振り運動など、回転運動における物体の慣性の大きさ)を限りなく小さくしている。また、ボディデザインだけでなく、揚力を低減させるアンダーフロアカバーを装着(Zエディションのみ)するなど、徹底した空力向上を図っている。格好から作っているのでなく、機能を突き詰め、真面目にパッケージングを追求した結果の形がこれだ。基本プラットフォームは「小さな高級車」プログレだが、ホイールベースは100mm短く、ダブルウィッシュボーンサスペンションの専用チューンなどにより、到達点は全く違うものとなった。

ボディサイズは全長4400mm×全幅1720mm×全高1410mm。大径タイヤによって全幅が広がり、3ナンバーとなる。しかし、アルテッツァを目の前にすれば、誰しもがそのコンパクトさを好ましく思うはず。細かいディティールは、いかにもトヨタという優等生ぶりのデザインで、特にフロントグリルは見飽きた感もあるが、全体としてはどのクルマにもないダイナミックな雰囲気を漂わせるもの。切り詰めたオーバーハングも、決して「寸足らず」という印象ではない。ただきれいにまとまったスタイルに装着される15インチホイールのデザインだけはかなり情けないものがある。17インチタイヤを履けば解決するものの、乗り心地重視のユーザーのためにも、ぜひとももう少しましな15インチアルミを用意して欲しい。ひょっとしたらオプションにも用意されていない16インチがベストタイヤなのかも知れない。ちなみにディスチャージヘッドライトの設定もない。

室内のクオリティはまずまず。遊びすぎのインターフェイスは好み次第

photo_3.jpg室内は黒をベースにシルバー(というより灰色に近い)でアクセントを施した硬質感のある雰囲気となる。変な木目がないのも潔い。グリップ部にシルバー色をあしらったステアリング、円形の両脇エアコン吹き出し口、チタン調シフトノブなど普通の4ドアセダンとすればちょっと遊びすぎだが、性格を考えればこれでもいいのだろう。 「オモチャっぽい」「瞬読性に欠ける」と何かと指摘のあるクロノグラフ調メーターだが、独創的なスポーツマインドを演出したという点では評価したい。ただどうせならタコメーターを真ん中に持ってきたいところ。これも行政指導があるのか、自主規制なのか、日本では実現したことがないが。

しかし、質感そのものはあまり高いとはいえずこれはちょっといただけない。波打たせたダッシュボード表皮やシルバーアクセントなど、限られた予算内でいろいろ試されているようだが、どうにもちょっと安っぽさが感じられてしまう。価格の安さとトレードオフだと納得するしかないだろう。

4人構成のファミリーユースでもとりあえず安心

セダンとして評価できるのが後席の居住性とトランクの広さ。前後席ともにきちんとした姿勢で座れ、サンルーフ付きでも前席の頭上高は拳1個以上の余裕はある。後席はドアの開口部が小さく、乗降性には注文をつけたくなるが、頭上にリアウインドウが迫ることもないし、ニースペースも十分だ。カップホルダーも前席用2つ、後席用2つと抜かりはない。トランクスペースは402リットルとゴルフバッグ4つを楽々飲み込むスペースを確保している。セダンとしての実用性も十分に考慮された、ベストパッケージングといえるだろう。

基本性能&ドライブフィール

エンジンは直列の4気筒と6気筒の2種類。4気筒の方はセリカやMR2に搭載されているスポーツエンジンの3S-GEユニットで、6MTには210PS/22.0kgm、シフトマチック付き5ATには200PS/22.0kgmが与えられる。6気筒の方は、マークIIやクラウンなどにも搭載される1G-FEユニットで、160PS/20.4kgmを発生する。一般的には6気筒の方がグレードは上だが、アルテッツァは逆で、用意されるミッションも4ATのみ。しかし、これはけして4気筒が上級グレードというわけでなく、4気筒はスポーツ志向、6気筒はコンフォート志向の性格を持つと考えた方がいいだろう。今回は乗っていないが、多くの試乗記を読むとバランス的な仕上がりは6気筒が上、という意見が多いようだ。

エンジン音は大きいが演出効果は大、ドライバーの意志に忠実なフィーリングは文句なし

試乗したのは4気筒モデルであるRS200の5ATと6MT。まず乗り始めて感じたことは、静粛性が向上しているセダンの中では珍しくエンジンの音が大きいということ。100km/h以上のクルージングになると、エンジン音、こもり音、ロードノイズなど、今時のセダンとしては珍しいくらいにやかましく、同乗者の声が聞き取れないほど。とはいえ4発エンジンならではの荒い音質が、かえってドライバーを刺激する演出効果があるのも確か。軽めのクラッチ、やはり軽めのパワステは、変に硬派スポーツを主張しておらず、好感が持てるもの。乗り心地はやや硬めながら、17インチタイヤを履いている割には悪くなく、同乗者から苦情が出ることもないだろう。

6MTのシフトタッチは小気味よく、一般道では2~4速を駆使してファンなドライビングが堪能できる。低回転域からトルクが十分に出ているので、一般道をトップで流せるし、渋滞路ではルーズなシフトチェンジも可能。

パワー感はあまりない。逆に言えばその分アクセルをかなり踏みこめるということで、アクセル開度に応じた走りというものが楽しめるわけだ。操作系は軽い印象で、回頭性はさすがに高く、ステアリングを切っただけ簡単に向きをかえる。FRの挙動は顕著で、単純な安定感という点ではFF車の比ではなく、まさに不安定。荷重移動、ブレーキング、アクセルのオンオフ、ステアリング操作などで、いくらでも挙動が変わってくる。つまり腕のあるドライバーなら非常に楽しく走れるわけだが、未熟なドライバーが不用意にオーバースピードでコーナーへつっこめば、まず体制は立て直せないだろう。

このようにまさにドライバーの意志(あるいは腕)に忠実なフットワークが、アルテッツァの真骨頂。うまい人なら低めのパワースペックをクロスした6速ギアで使いきって、十分な速さを感じながら、スポーツドライビングが楽しめるだろう。実際、乗ってるとアルテッツァは本当に楽しいクルマだ。ただし、楽しいということはそれだけリスクもあるということだ。

レッドゾーンは6400回転からとやや低め。欲をいえば、回転の落ちにもう少し鋭さがほしい。おそらくフライホイールが重くしてあるのだろう。まあ、セダンの性格を持つアルテッツァなら、この抑え気味の現状セッティングが一番望ましいものといえるのかも。

ここがイイ

回頭性の素晴らしさ、程々のパワーのバランスの良さ、走りの楽しさ(挙動の危うさ)。シフトフィーリングもいいし、クラッチも程々の踏み応えがあって扱いやすい。セダンだから普段の足にも使えるし、トヨタのコンセプトには諸手をあげて賛成せざるを得ない。若者からオジサンまで、世代を超えて愛好できそうなクルマというのは、今までになかったのでは。しかも、クラスレス。クルマに対する虚栄心を捨てて、純粋に「好き」だけで選べ、しかも誇りを持って乗れるクルマは他にあまりない。何よりトヨタ車嫌いの人でも、理由無しにアルテッツァを無視はできないはず。その意味ではトヨタのイメージの新しい次元を開くエポックとなるだろう。

ここがダメ

テレスコピックステアリングが欲しい。エンジン回転のアップダウンの更なる鋭さを望む(通常の乗りやすさを確保するため、回転のダウン側がおそらく意図的にダルくしてある)。誰もが指摘するとおり、ノーマルのホイールとグリルのデザインはあんまりだ。

総合評価

photo_2.jpg難しいクルマだ。もちろんアルテッツァの走り、スタイル、実用性など、すべてにおいて文句なく満点を与えたい。実際、久々に欲しくてたまらなくなったクルマだ。ただ、アルテッツァは見るからにスポーツカーではないだけに、ごく普通の運転能力しかないドライバーが購入して乗ることもあるだろう。ところが走り出せばFFのような安定感はなく、未熟なドライバーにはある意味非常に危険な挙動を示すことにもなる。分かっている人がそれなりに乗ればこんな面白いクルマはないが、安全という観点から見れば、かなり時代に逆行しているようにも感じられる。100%誉められないのはこの点につきる。ドライバーが技量に応じて楽しめるサーキットなどの走行施設がない限り、誰にでもすすめるわけにはいかないという点が、非常に難しいクルマという理由だ。発売1ヶ月で1万5000台が売れており、おそらく年間10万台近いクルマが売れるだろう。しかし10万人もの人間が、このクルマを乗りこなせるのだろうか。くれぐれも安全に走ってもらいたい。そして、こんなクルマを作るのなら、もっと走れる施設も作るべきだろう。三河の山の中に、ドライビングパークをぜひ!

 

公式サイトhttp://toyota.jp/

 
 
 
 
 

トヨタ 最新の試乗記10件

最近の試乗記一覧