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ホンダ アヴァンシア新車試乗記(第92回)

Honda Avancier



1999年09月24日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

ポストRVとして、ホンダが提案する”新しいカタチの上級車”は上級な5ドアハッチ?

ホンダもこのところ、RVブームにのってミニバンやワゴンに力を注いできた。しかし「もう3列シートは必要ではない」というRVを卒業する中高年ユーザーもそろそろ増えてきており、そうした層に向け、ミニバンからの代替え需要に対応するクルマが必要となってきている。いわゆるポストRVだ。RVなみのゆとりある室内空間を持った新しい乗用車の必要性。そうした背景から生まれたのがこのアヴァンシアだ。

30代以上のクルマ好きならアヴァンシアのスタイルを見て、10年ほど前のアコードエアロデッキを思い起こすのではないだろうか。エアロデッキは評価の割に販売が不振だっただけに、ホンダとしては、このアヴァンシアにリベンジの意味を込めているのかもしれない。

ホンダはこのクルマをセダンでもワゴンでもなく、「4ドアの新たな可能性をひらく”新しいカタチの上級車”」と主張する。新しいカテゴリーの高級車なのだと。じつにホンダらしいチャレンジ精神が込められた言葉だが、実車を目の当たりにすると”背の高い上級5ドアハッチ”、マツダ流にいえば”大型ショートワゴン”といったところに思えるのがやや残念。エアロデッキの衝撃はない。

車格はアコードの上級の位置にあり、インスパイア/セイバーのワゴン版と考えると分かりやすい。ベースはUSアコードなのでいわば「USアコード・エアロデッキ」。

排気量は主力が2.3リッターで、3.0リッターV6も用意。前者は4AT、後者は5ATが組み合わせられる。車格を考えると、2.3リッターではなくインスパイア/セイバーに搭載される2.5リッターが欲しいところ。

価格帯&グレード展開

価格帯は223.5~269.5万円、弟分にあたるアコードワゴンとほぼ同プライス

2.3リッター車の「L」(223.5万円)、その4WDの「L-4」(249.5万円)、3リッター車の「V」(269.5万円)と、計3グレード構成。

何と、アコードワゴン(同じ2.3リッターエンジンを搭載している)の229.5万円よりも安い!

新しいカタチの上級車だけにライバルは不在。敢えて挙げるなら、日産・ルネッサとしておこう。また実際の商談ではスバル・フォレスターといったSUV、トヨタ・マークIIクオリスといったステーションワゴンもライバルとなるだろう。

パッケージング&スタイル

USアコードをベースとした日本ではやや中途半端なサイズのボディ

ベースはアコード。アコードといっても国産ではなく、それよりふた回りほど大きいUSアコードのもの。故に、堂々の3ナンバーとなり、上級車としての車格を身につけている。ちなみにアヴァンシアは国内専用モデルで、3リッターのエンジン以外は全て国内で生産される。

3ナンバーの車格感、5ナンバー並の全長、ミニバン並の室内高を成立しようとしたアヴァンシアのボディサイズは、全長4700mm×全幅1790mm×全高1515mm。国産アコードよりも65mm長く、95mm広い。またホイールベースは2765mm。全長が140mm長いインスパイアが2745mmだから、20mm長いことになる。

さらに同車格のステーションワゴンと比較したとき、マークIIクオリスを例に取ってみると、全長は70mm短いが全高は45mm高い。なお、クオリスはルーフレール付きの数値なので、実質的な背の高さはその数値以上のものだ。

以上のように今までにないサイズ。オーバーハングが極端に切り詰められたワンフォルム風のシルエットは、カッコイイとは言い難いが、新しい上級車の提案としては十分おもしろいといえよう。

確かに今までにない”画期的な”デザイン、ただし街中ではアコードワゴンよりも格下に見られそう

次に”クラブデッキ”と命名されたデザインに関して。まず、顔つきはアコードを少しヌメリとさせた感じ。やはりホンダ顔をしており、グリルも控え目で押しは強くない。ルーフは後端にかけてタレ落ちていくというもので、あまり荷室のサイズは考えていないようだ。また、それに合わせてウインドウグラフィックスも絞り込んであり、バックドアは天井の一部までガラスで覆う、独自の手法が見られる(昔のエアロデッキみたい)。いずれにせよ、ギトギトした高級感はなく、全体にはスッキリとした印象だ。

良くいえばグラマラスな、悪くいえばずんぐりむっくりな確かに今までにないデザインだが、地味な印象は否めない。また、ただでさえカテゴリーが分かりにくいこのクルマを、保守層の多い中高年層にアピールするのなら、もう少し分かりやすい高級感の演出も必要だと思う。せめてでっかいメッキグリルを付けるとか。

ホイールハウスの隙間が広く、車高が高く見えるのも気になる。

ホンダ初のインパネシフト、巧みなデザインセンスで高級感を演出した内装

大人4人がゆったりと座れるリムジン空間とパーソナル感覚に満ちた演出という相反する発想を両立した室内は、ミニバン的な広さの新感覚溢れるもの。

居住空間は抜群に広く、特に室内高はわずかではあるがオデッセイより上回っている。つまりフロア高はセダン、室内高はミニバン並ということだ。

シート高はミニバンよりセダンのもので、アイポイントは乗用車そのもの。後席は6:4の分割で、座面の前後スライドによってリクライニングする仕掛けとなっている。ヘッドクリアランスはミニバン並。最大70mm前方にスライドさせても、足が余裕で組めるほど広いニースペースを確保する。2人なら確かにリムジン気分だ。

photo_3.jpgハリアーやグランディスと同様のインパネシフト(ゲート式)を採用したことで、前後左右のウォークスルーが可能。その他、フロントシートテーブル、リアシートテーブル、ルーフコンソールボックスなどを装備し、使い勝手もミニバンと変わらない。ファブリックで覆われたインパネ下部、合成革とファブリックを組み合わせた斬新な意匠のシート、木目のレイアウトなど、きめ細かなディティールのデザインは巧みで、コストを抑えながらも上質な演出をしている。

メーターナセルはセド/グロに似た、7インチ液晶モニター一体型。モニターはナビ機能(オプション)とドライブ情報が内蔵される。、ナビ非装着の場合はマルチインフォメーションディスプレイとなる。

荷室はステーションワゴンの3分の2といったところ。ゴルフバック4個を積むことができるものの広くはない。しかし、ターゲットとなる中高年層のレジャーならこれぐらいで十分だろう。ヒンジが前方に設置されていて開放口も広い。ただし、バンパーレベルが高く、開口部と荷室フロアはかなりの段差がついているので、重い荷物の搬入は多少骨が折れそうだ。

基本性能&ドライブフィール

エンジンはオデッセイやアコードワゴンにも搭載される2.3リッター直4SOHCのVTEC(最高出力150ps/5800rpm、最大トルク21.0Kgm/4800rpm)と、オデッセイ・プレステージに搭載される米国ホンダ製の3リッターV6SOHCのVTEC(最高出力215ps/5800rpm、最大トルク27.7Kgm/5000rpm)の2タイプ。どちらもLEV対応となっている。

ギアボックスは2.3リッターが4AT、3リッターはホンダ初となる5ATが搭載される。

2.3リッターのみに用意される4WDはホンダ自慢のデュアルポンプ式を採用。通常はほぼFF状態で走行し、走行状況に応じて後輪にも適切な駆動分を配分するというものだ。コンパクト&軽量かつ低コストがウリだ。

試乗したのは3リッターモデル。豊かなトルクがあるが、出足のアクセルレスポンスがやや過敏なため、加速が唐突になることがあった。とはいえトルクステアがでないのは立派。パワーは十分なのでターゲットユーザーに合わせてもう少しゆったりとした感じにしてもいいだろう。

パワーの伸びは、さすがにホンダ。回せばグイグイとスポーティーな走りッぷりを見せる。対してステアリングフィールや乗り心地は、上級車らしくどっしり落ち着いたもの。特に乗り心地は、インスパイアよりも長いホイールベースとしたのが功を奏しているのだろう。サスのストロークが長く、段差の突き上げも上手く吸収しており、荒れた路面を走っていても細かい振動が気にならない。車体価格、車格以上の快適な走りといっていいだろう。

コーナーでの踏ん張りもたいしたもので、終始ナチュラルな挙動を示す。面白いとか、スポーティとかいうコーナリングではないが、安定した姿勢でハイスピードで駆け抜けられるので、どんどん先へ行きたくなってしまうのだ。コーナリングをしている実感があり、これは他の高級車ではあまり感じられない感覚だ。

インパネシフトも使いやすい。Dの位置から左に寄せると3速、そのまま下げると2速で1速には入らない。従ってコーナーなどでは2速、3速を自在に操れ、エンジン回転を楽しみながらトルクに乗った走りが可能。ちなみに5速だが一般走行での変速ショックはほとんど無く、5速を意識せず走れる。

高速道路ではこの5速ATが生き、100km/hでは2000回転回らない。そこからの加速もトルクに乗った力強いもので、150km/hあたりでも大変リラックスしていられる。もちろん静粛性、直進性、振動などに不満を感じることなく、快適。高速クルーザーとしては100点を付けられる。

ここがイイ

インパネに一体化されたディスプレイは大変見やすい。日産セドグロに次いで、ホンダも採用したことで、いよいよこれが主流になってくるだろう。今のところは高級車向けだが、やがて全てがこうなるはずだ。

コラムより使いやすいインパネシフトは、前述のように走りにメリットあり。位置が絶妙で、室内に張り出してないのが良い。結果、ウォークスルーもしやすくなった。FFである以上、どんなクルマもウォークスルーにすべきだ。あって何ら不便はない。このための折り畳みサイドテーブルやシート連動折り畳みアームレストも大変よろしい。さらに肌触りの良いファブリックをインパネIIまで用いたセンスのいいインテリアがいい。シートも合皮がいいアクセントになっており、デザイン優先に思えるが、座ってみるとキチッとポジションが決まる良いシートだった。

ここがダメ

乗ってみると大変いいクルマなのだが、地味めのスタイル、分かりにくいコンセプト、高級感が感じられないグリルなど、損な部分の多いクルマだ。TVCMもちょっと主役がジジイすぎて、このクルマの本質を表現できてない。もっと新しいタイプのクルマであることを、どんどん前に出すべき。惜しい。

総合評価

photo_2.jpgポストRV需要は確かにこれからの市場としてかなり大きなものがある。RVを一度味わってしまうともう狭苦しいセダンには戻れないものの、必要が無くなってRVを降りようと思っても、代わるクルマがないというのが現状だ。そこを上手くついたのがアヴァンシアだが、その出来の良さはなかなかのもの。広さ、快適さ、ユーティリティ、走りの高級感まで、次はこれだ、というだけのものを十分備えている。にもかかわらず、その登場は実に控え目。そして街を走っていても誰も気づかないほど地味。何とか華が欲しかった。

このクルマは40代以降の団塊の世代に売ることが要となるが、ホンダはアコードの上に輸入物のインスパイア/セイバーしかなく(レジェンドはさらに上だから)、意外に売れるような気がしないでもない。そろそろオデッセイの代替えも始まることだし。ホンダらしい先進性を秘めているだけに、「わかっている」ホンダファン(あるいはクルマ好き)が買えば満足度は高いはずだ。

このクルマの成功、失敗にかかわらず、これからこうしたワゴンとセダンの中間的なクルマは次々に表れるだろう。地味な登場だが、「21世紀のクルマのあるべき姿の一つ」が現実のものとなったことを、高く評価したい。

ただ最近ホンダはS2000、インサイトと話題のクルマは作るものの、ヒット作に恵まれていない。そんな情況で、このアヴァンシアの発売。月間目標販売は3000台。さて、ホンダの目論見どおり、オデッセイユーザーやアコードユーザーがこのクルマに乗り換えるだろうか、このあたりが興味深いところだ。

公式サイト http://www.honda.co.jp/AVANCIER/2003/index.html

 
 
 
 
 

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