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スズキ エブリイ新車試乗記(第63回)

Suzuki Every

 

1999年02月24日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

新規格対応のエブリイは商用車を越えた質感が魅力

衝突安全性を強化した新規格軽の第2弾として1月、2月にキャブオーバータイプの商用車を発表したのは、スズキ・エブリイ、ダイハツ・アトレー、三菱・ミニキャブ、そしてスバル・サンバー。これでホンダのアクティを残し、規格変更はほぼ完了することになる。どれも10月に登場した軽自動車と同様に、50km/h前面衝突基準をクリアし、普通車並の衝突安全性を確保しているのが大きな特徴だ。ボディサイズも同様に、全長で100mm、全幅で80mm拡大され、各車様々なデザインながら、それぞれショートノーズを持ったスタイルとしている。

エブリイもエンジンをフロントミッドシップ搭載とするなど、新開発のプラットフォームが与えられた。とりあえず4ナンバー商用車だが、エアロバージョンなど商用イメージを払拭させたグレードもあり、走りや居住性、使い勝手にいたるまで、ファミリーカーとしての資質も十分に備えた軽1BOXだ。

価格帯&グレード展開

軽商用なのにエアロバージョンもあり、価格は79.9万~149.8万円

10月に登場した軽自動車が価格をほぼ据え置きとしたように、新型エブリイをはじめとする商用車もこれと同じ価格戦略で、事実上値下げといえるものだ。エンジンは従来型と同じ660cc・直3ユニットを搭載。50ps、6.2kg-mのNAと、60ps、8.5kg-mのターボエンジンの2タイプで、ミッションは5MTと3AT。価格帯は標準ルーフが79.9万~91.9万円。主力のハイルーフが81.8万~149.8万円。この中にはエアロバージョンも含まれている。商用車としてみるとあまり割安感を受けないが、乗用ミニバンとしてみれば納得の価格か。

パッケージング&スタイル

ショートノーズをプラスし衝突安全性を向上

ハイルーフ車のボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1870mmで、従来型より全長100mm、全幅80mm、全高5mm拡大している。デザイン上で大きく変わったのはフロント部だ。従来のワンボックスタイプにショートノーズをプラスして、衝突安全性を引き上げ、ミニバンに近いフォルムとなった。フロントタイヤはオーバーハングをほぼゼロにし、従来型よりホイールベースを350mm延長している。リアドアは従来通り左右スライド式だ。
 
最上級モデルの「ジョイポップ・エアロターボ」ともなると、商用車のイメージが見事に払拭される。しかし、乗用ミニバン的なデザインとしてみるとジウジアーロが担当したダイハツ・アトレーの方が数段上と、誰もが思うだろう。こちらは顔つきだけでなく、フェンダーラインもキレイにまとまっている。エブリイは、ほとんど変わらなかったスバルサンバーとアトレーの中間に位置する。どっちつかずともいえるが、商用車として数を売るという点ではうまい作りだ。

タイヤはボディ前方に移動、エンジンはシート下に搭載

photo_3.jpg従来型はシートの下にあったタイヤを、足元へ移動。代わりにシート下にエンジンを搭載する(従来型のエンジンは後輪軸のすぐ前にあった)。足元前方の空間が増えて広くなり、ステアリングシャフトの取り付け角が寝て、乗用車的な運転姿勢がとれるようになったのは嬉しい限り。助手席側の圧迫感のないインパネデザインも商用くささが抜けている。

一方、タイヤハウスが張り出し、ペダルも中央寄りにオフセットしてしまったのは気になるところ。これでコラム式シフトにでもすれば、ウォークスルーも楽々となり、乗用、商用問わず多くの人に喜ばれると思うのだが。エンジンが床下にあるためにシートは高く、乗り降りでは依然として「よっこらしょ」と声がでてしまう。頭上空間は手を伸ばせるほど広く、開放的と言えば開放的だが、商用目的でない人にとってみれば、ただやみくもに高いだけ、に思えるかもしれない。

ミニバンと同等のシートアレンジ

後席を倒した荷室寸法は、有効なクラッシャブルゾーンを確保するために150㎜も短くなってしまったが、それでも前席、後席の居住空間は十分な広さを確保している。試乗車の後席にはヘッドレストもアームレストも付いており、座り心地は上々だ。でもこれは、あくまでも軽商用車としての条件付きでの話。フラットな座面はサポート性にかけているし、背もたれの角度も立ちすぎと言える。

後席は独立可倒式で、前席と合わせてフルフラットも可能。ミニバンとほぼ同等のシートアレンジとしている。もともと「ミニバン」とは、アメリカでの小さいバンを指す。そういう意味では軽商用車こそが日本での真の「ミニバン」なのかもしれない。

基本性能&ドライブフィール

3速ATはファミリーユースに役不足

試乗したのは「ジョイポップ・エアロターボ」。「Si(スーパーインテリジェント)ターボ」と名付けられたエンジンは、過給圧を抑えて過給特性を滑らかにし、中低速での運転しやすさと高出力をうたう。スズキは新規格軽自動車の開発にあたり「1部品1gの軽量化」を目標としたが、その結果エブリイの車両重量も880kg(エアロターボの2WD)に抑えられており、見た目ほど重くはない。ただ、ATが全車3速(もちろん5速MTもある)というのはちょっと考えもの。ファミリーカーとしてなら4速は欲しいところ。今後、5ナンバーの乗用車になる可能性があるだけに、その時に期待したい。

ビジネスユースなら大きな不満はないが

エンジンを前席真下に搭載するので、シートを通してその振動がかなり伝わってくる。反面、音はまずまず静かだ。ステアリングのロック・トゥ・ロックは4.5回転もあるが、しっかり感は十分。エンジンの吹け上がりは軽く、ローギアードでもあるため、車重を感じさせない加速をみせる。ただし、それは60km/hまで。それ以上は2速にキックダウンしても音ばかりが先行する。逆に言えば、近場だけの運搬用には最適といえるだろう。

車高が高いためにロールは大きい。さらに一度ロールすると、ユラユラと2、3回揺り返しがある。路面の荒れたところや横風に対しても、こうした傾向がある。いずれにせよあまり快適なものではない。それでも、このクルマでコーナーを攻める人もいないだろうから、ひとまずこれで十分でもあり、商用車としてなら立派なもの。路面からの突き上げをマイルドに吸収してくれて、乗り心地の良さはなかなかのものだ。

エンジンの回転数は80km/hで約5000回転。100km/hではなんと6000回転を越える。後席ではやかましく感じるだろう。回転数から分かるとおり高速巡航はちょっとつらい。7000回転のレッドゾーン手前で110km/hを超えたが、80km/h巡航が無難なところ。パワーは十分なだけに、4速ATがあれば、と思わずにいられない。

ここがイイ

エンジンはNAのようなフィーリングで、力強く軽快に走れる。加速に全く不満なしだ。64馬力ドッカンターボよりずっと好感が持てた。大きなサンルーフがついていたが、閉じるときにサンシェードがいっしょに締まるのが便利。カップホルダーも2段になっていて、チビ缶でもぐらつかない。荷室は簡単にフルフラットになり、1695×1340×1205(mm)の出っ張りのない空間が出現。その広さはやっぱり素晴らしい。日常生活で使うには、軽ミニバンより便利。田舎のジイさんが軽トラに乗るワケが分かった。

ここがダメ

このSiターボを載せると3ATがセットでついてくるらしく、この組み合わせがコスト的には一番メリットがあるそうだ。このクルマで高速を走る人が少ないのは確かだが、ちょっとした地方道でも80km/hくらいで流れるときがあり、やっぱり4速が欲しい。このエンジンと4ATならベストマッチだと思う。また、タイヤハウスの出っ張りが昔の軽自動車を思い起こさせてしまった。新規格の軽乗用では消えてしまったタイヤハウスの出っ張りが、ここで復活するとは思わなかった。かなり残念。いつものようにエアバックもついてません。

総合評価

photo_2.jpgアトレーは限りなくミニバンに近づこうとしているようだが、エブリイは商用車の進化型に止まっている感じ。スズキの場合、圧倒的人気のワゴンRがあるので、さほどミニバンを意識してないようだ。商用車として毎日使うクルマとしては、かなり快適になっているので、きっと喜ばれるはず。反面ここまでのお金を出して、エアロモデルを買う必要があるのか。というとちょっと? だ。セカンドカー、あるいはサードカーとして、中間グレードを原付き感覚で使うと、こんな便利なものはないだろう。そしてそれこそ、軽自動車本来の姿ではないだろうか。

 

公式サイトhttp://www.suzuki.co.jp/dom4/lineup/every/

 
 
 
 
 

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