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トヨタ ファンカーゴ新車試乗記(第90回)

Toyota Funcargo

 

1999年09月10日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

トヨタは21世紀に向けて相次ぐ新世代モデルの投入で新しいラインナップ構築に力を注いでおり、スターレット/サイノス/ターセル/カローラII/コルサ(全て生産中止となっている)のコンパクトカーの後継モデルもそっくり世代交代を図ろうとしている。その第1弾がヴィッツだったわけだが、そのヴィッツをベースとした派生モデルが、今回投入された「ファンカーゴ」と「プラッツ」というわけだ。今後もヴィッツ兄弟は増殖していくもようだ。

さて、今回採り上げるファンカーゴは、一言でいえばヴィッツのハイトワゴン。日産のマーチとキューブの関係と同じといってもいいだろう。ただ、コンセプトは全く異なっており、ファンカーゴは「夢と遊びを広げる空間」をテーマとしている。つまり、多用な用途に対応する室内空間のアレンジにより、前席より後ろの空間を「部屋」として提案しているのだ。エンジンはヴィッツが1リッターをメインとしているのに対し、こちらは1.3リッターと1.5リッターとなる。

他メーカーが確立した新ジャンルに、トヨタが出来のいい後発モデルで攻勢をかける。これは毎度のこと。デミオやキューブなどのヒットモデルとの対決が楽しみだ。

なお、ファンカーゴはヨーロッパに、プラッツはアメリカにも輸出されるワールドワイドカーだ。

価格帯&グレード展開

・FFが124.8~148.8万円、4WDが146.8~166.8万円、オススメはFFの最上級グレード、そのワケは?

グレードのラインナップは価格順に廉価なものから「J」「X」「G」の3タイプで、それぞれにFFと4WDが用意される。また、FFの「J」「X」は1.3リッターエンジンのみの組み合わせとなり、他は全て1.5リッター車となる。

主要安全装備の他、ABSに電子制御配分システムを加えたEBDも全車標準となる。「J」と「X」は装備の違いによるもの。カラードバンパー&ドアミラー、CD付きオーディオ、キーレスエントリーが「X」の主なプラス装備なわけだが、価格差はわずか5万円。従って「J」の存在価値は薄い。一方、FFの「X」と「G」は主にエンジンの排気量の違いによるもの。この他、装備面ではリアヘッドレスト、リアスピーカー、格納ミラーなど、機能面ではステアシフトマチックの有無が関係してくる。4WDも同様なのだが、FFの価格差が19万円に対して、4WDは15万円となっている。ということは排気量差はわずか4万円。

以上をまとめてみると、お買い得感の最も強いのは、ズバリ、1.5リッターの「G」。しかもこのGにはマニュアル感覚のステアシフトマチックがついている。これだけでも買う価値アリ。

ライバルは日産・キューブを筆頭に、マツダ・デミオ、ホンダ・キャパといった只今絶好調のコンパクト・ハイトワゴンたち。この他、スズキのワゴンRプラス(←発表会の席でトヨタが公言しなかったのが、ちょっぴり悲しい)も仲間に入れてもいいだろう。

パッケージング&スタイル

斬新なデザインにはトヨタのアグレッシヴな姿勢が表現されている

ファンカーゴはヴィッツのプラットフォームを後部フロアまで流用し、その後方を新設して、最終的にはホイールベースが130mm延長され、2500mmとしている。この辺りは単に背を伸ばしただけキューブとは大きく異なる点だ。外寸もヴィッツより、250mm長く、30mm広く、180mm高く、結果ボディサイズは全長3860mm×全幅1660mm×全高1680mm。

肉付きのいい、グラマラスなスタイルはショーカーのイメージを色濃く残すもの。凹凸がはっきりしており、塊感、立体感が強調されている。

よくよく考えてみると、このクラスのハイトワゴンは皆、4隅まで角張らせたボクシーなムードが強かったが、有機的なデザインを持つファンカーゴはかなり突き抜けた個性を漂わせている。高効率パッケージを犠牲にせず、かつコンパクトな枠内でここまで個性を主張できるデザインセンスは非常に上手いと思う。デザイン自体は欧州のデザイン拠点EPOCのもの。また、オプションのエアロを装着すれば、ワルっぽい姿にも変貌し、ストリート族にも大ウケしそうだ。

オリジナリティあふれるヴィッツ譲りのインパネ

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低いフロアに、前席がヴィッツより50mm高めにセットされたシートを持つ室内は、天井も高くヴィッツより確実に広いと実感させられるもの。コラムAT+足踏み式パーキングブレーキの採用で前後左右のウォークスルーも可能だ。シートも専用でフランス車っぽい座り心地だ。タオルのような生地は、面白い試み。

センターメータのインパネは一見、ヴィッツだが、実は流用部分は下半分だけで、上半分はオリジナル。2DINサイズのオーディオは、配置が上の方に移行し、使いやすさは向上している。収納スペースの数もグンと増えており、37箇所もあるのだとか。全体的にはコッテリとした印象だ。

センターメーター内もヴィッツのデジタル表示からアナログ表示に変更されており、タコメーター&スピードメーターの2連メーターとなっている。目盛りの数字は大きく、基盤はホワイト、ファッショナブルだが、ゴチャっとした感じで視認性は必ずしも優れているとは言えない。

前席+ロフト空間、夢が広がる新パッケージは小さな小さなキャンピングカー?

内装地の変更や利便性の向上で、ヴィッツとは確かな違いを実感させられるわけだが、これはほんの序章。ファンカーゴの最大の魅力は、後席&荷室にある。まず後席の中央が脱着可能。これで、前席と後席間だけでなく、荷室へのウォークスルーも可能としている。

荷室スペースは特筆もので後席収納時で、ヴィッツより+680mmの1780mmを誇る。ホイールベースはヴィッツ比+130mmなのに、なぜか? これは「リトラクタブルシート」と名付けられた後席の収納方法に秘密が隠されている。なんと、後席を外すことなく(ヘッドレストも)足元のフロア下にスッポリと入ってしまうカラクリを採用しているのだ。

もちろんフロアは真っ平らというか前下がり。荷室長1780mm×幅1020mm×高さ1290mm。このスペースは、ライバルと比較してもブッチギリの広さ。これがファンカーゴが「走るロフト」といわれる所以だ。寸法内におさまる人なら寝ることもできるわけで、トヨタはさらに「このスペースを部屋として使って下さい」と提案しているのがミソ。バックドアから降りられるように、バックドア内側にドアハンドルを、荷室左側には携帯電話やパソコンなど、AC100V/100Wまでの電気製品が使用できる電源ソケット(オプション)まで設けてある念の入れよう。さらには、「ホームセンターなどで売られているパイプ(イレクター)を使って、あなた好みの部屋を作りましょう」というパンフレットまで用意されているほど。そこに紹介されているのは、オフィスだったり、オープンカフェであったり、パーソナルシアターだったりと、その数、12パターンに及ぶ。 「一度部屋を作ってしまったら元に戻すのが大変」「部屋にものを置いていたら、走行中は危険」などの指摘もありそうだが、実際、部屋を作らなくとも、このクルマを見ただけでいろんな想像がかき立てられるのは、非常に大切なこと。ヴィッツカーゴの真の魅力はそこにあるといっても過言ではないだろう。

とはいえただでさえ低いフロアの下にシートを収納するため、後席のシートは妙にチャチで、薄っぺらい。背もたれの丈も寸足らず。真ん中のシートを外すと、乗員は自ずと両脇に強いられるわけで、ロングドライブには向いていない。ま、それ以上のご利益が得られるのだから、これもご愛敬として受け止めるべきだろう。

基本性能&ドライブフィール

搭載されるエンジンはヴィッツが1リッター(4WDは1.3リッター)に対して、1.3リッターと1.5リッター。

前者は従来スターレットなどに搭載されていたユニットをベースに新開発したもので、最高出力88PS/6000rpm、最大トルク12.5kgm/4400rpmを発生する。10・15モードでkm/lというクラストップレベルの燃費が自慢だ。

一方の1.5リッターの方も新開発で、プリウス用のユニットがベースとなっている。恐らく現在のトヨタ車の中で最も汎用性が大きいと思われる。最高出力110PS/6000rpm、最大トルク14.6kgm/4200rpm(FF。4WDは105PS、14.1kgmとなる)。

足回りは基本的にヴィッツと同じで、前がマクファーソンストラット式、後ろがトーションビーム式(FF。4WDはトレーリングアーム)となる。重量増加分と車高上昇分のために、専用チューンは当然のごとく図られている。また、積載用途の多いキャラクターということで、積載荷重の変化に応じて制動力を電子制御するEBDも標準装備される。これはヴィッツには設定されていない。

もちろん全車コラムオートマのみ。またあまり大きく採り上げられていないが、1.5リッター車の最上級グレード「G」には、マニュアル感覚のシフト操作を楽しめる「ステアシフトマチック」が標準されているのも注目すべき点だろう。

試乗したのは1.5リッターを搭載する4WD。今回、実は全く距離を走っていないのでチョイ乗りの印象のみを記載する(もう一度9月20日に試乗するのでその後レポート追加予定)。第一印象では、4WDということを差し引いても、ヴィッツのような軽快さは損なわれているという感じ。全体に重い、重心が高い、フワフワするという印象で、加速感も物足りない。シフトのショックが大きめなのもやや気になるところ。300kg近い重量増加はかなり走りをスポイルしている感じだ。

ここがイイ

ヴィッツも悪くないが、スペース効率を考えればワゴンに分があるのは明らか。移動の道具だけでなく、工夫次第でプライベートルームとしても活用できるというのはプラスαの大きな価値だろう。それを4m未満の全長で実現してしまったところが凄い。また、低いフロアに後席をスッポリと収納してしまう技術力も感心させられてしまうところ。

ここがダメ

走り込んでないので分からないが、チョイ乗りの印象のままの走りならちょっと残念。このあたりは後日レポート。

総合評価

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10数年前のライトエースに、フルフラットシートというのがあった。ファンカーゴ同様に床下に折り畳むと全くのフラットフロアが出来上がるというもの。当時は全く注目されなかったが、ここにいたってついに同じ発想の商品が売れる時代になったわけだ。遊びを提案するRVは数多く発売されてきたが、荷室スペースを運搬用としてだけでなく、「部屋」として使う発想はなかったはずだ。ファンカーゴは大人4人が快適に座れるコミューターというよりは、「前席+部屋」のコミューター。つまり「走る小部屋」と考えるべきだろう。そう考えれば、ペラペラな後席でも納得できる。でも、実際は荷室を部屋として使う人は多くはないはず。だってかなり面倒。イレクターパイプにしても、発想はおもしろいが、あれで思いどおりのものを作るのは結構大変です。

今後、どこまでヴィッツベースのコンパクトカーが増殖を続けるのかは不明だが、ハッチバック、セダン、ハイトワゴンとフルラインナップが確立された今、スモールカー市場でさらなる猛威を振るうことは間違いないだろう。やっぱり何よりカタチがいい。キューブと比べると正直比較にならない新しさ、センスの良さがある。スターレットやタコ2という手垢の付いた名前をキッパリ捨て、若者から年寄り、金持ちから貧乏人までがまさにクラスレスで乗れる小型車(ヴィッツ3兄弟)を作り上げたトヨタのマーケティングには脱帽せざるを得ないだろう。

 

公式サイトhttp://www.toyota.co.jp/index.html

 
 
 
 
 

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