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三菱 eKクロス新車試乗記(第844回)

Mitsubishi eK X

(0.66L直3・CVT・141万4800円~)

三菱・日産のジョイントモデルが
6年ぶりにフルモデルチェンジ!
水島工場が津々浦々に贈る、
ベスト・オブ・軽自動車に試乗!

2019年05月10日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

6年ぶりに全面改良。そして新型クロスオーバーを投入


新型三菱 eKクロス

2013年に発売された三菱「eKワゴン」および「デイズ」は、三菱と日産の合弁会社「NMKV(Nissan Mitsubishi Kei Vehicleの頭文字)」が初めて企画、開発、生産したモデルだった。日産自身はそれまで軽自動車の開発・生産を行った経験がなかったため、開発は三菱が担当。生産についても、1943年に操業開始し、第二次大戦中は一式陸攻や紫電改、戦後はランサーや軽自動車を生産していた三菱の水島工場(岡山県倉敷市)で行われた。

 

新型 三菱 eKワゴン

そして2019年3月28日、三菱はeKワゴンを6年ぶりにフルモデルチェンジし、同時に派生モデルでSUVテイストの新型クロスオーバー「eKクロス」を発売した。同時に日産も、その兄弟車である「デイズ」「デイズハイウエィスター」をフルモデルチェンジしている。

 


新型 日産デイズ / デイズ ハイウェイスター

今回の新型では、日産が企画・開発に大きく関わり、同社の先進技術を投入。プラットフォーム、エンジン、CVT(無段変速機)、電装系といった主要コンポーネントを刷新した。つまり、日産にとっては初めて自社で開発した軽自動車となった。

新開発エンジン、マイルドハイブリッド、「マイパイロット」を採用

見どころの一つは、抜本的に改良されたパワートレインで、具体的にはロングストローク化された新型エンジン、小型軽量化を図った新開発のジヤトコ製CVT(無段変速機)、eKクロス/デイズハイウェイスターに採用された新開発のマイルドハイブリッドシステムなど。

また、日産が普通車で展開している高速道路同一車線運転支援技術「プロパイロット」を、軽自動車に初めて搭載。その三菱版である「MI-PILOT(マイパイロット)」も注目のポイントになる。いわゆるACC(アダプティブクルーズコントール)が停止維持まで行う全車速対応である点や、車線維持を行うのため操舵支援システムは、軽自動車では初となる。これら先進安全装備を採用するため、新型eK/デイズには日産の新電子ネットワークが採用された。

月販目標はeKシリーズが4000台(2019年度)、デイズシリーズが8000台。生産は引き続き水島工場で、普通車のRVR(主に輸出向け)と共に混流生産される。

 

価格帯&グレード展開

eKワゴンが129万6000円~、eKクロスが141万4800円~

eKワゴンは自然吸気エンジンのMとGの2グレード構成。eKクロスは自然吸気エンジン(マイルドハイブリッド仕様)のMとG、ターボエンジン(同)のTと、3グレード構成になる。

価格は、eKワゴンが129万6000円~137万7000円、eKクロスの自然吸気が141万4800円~155万5200円、ターボが163万6200円。4WD車はそれぞれ12万9600円高。

なお、日産デイズは127万3320円からと、価格がeKシリーズと若干異なるが、これはグレードや装備設定の違いによるものだ。

マイパイロットは全車オプション

車両価格は一見手頃だが、欲しい装備の多くはメーカーオプションになる。まず、売りであるマイパイロットと電動パーキングブレーキのセット「先進快適パッケージ」が7万0200円。そしてデジタルルームミラー+マルチアラウンドモニターの「先進安全パッケージ」が9万1800円。タン色内装のプレミアムインテリアパッケージ(合成皮革&ファブリック)は5万4000円、2トーンのオプション塗装は8万1000円、ルーフレールは2万7000円。

また、ナビゲーションシステムは販売店オプションとなり、売りの大画面9インチタイプは22~23万円。この場合は、マルチアラウンドモニター(移動物検知機能付)の映像をデジタルルームミラーだけでなく、ナビディスプレイにも表示可能になる。

 

パッケージング&スタイル

「パジェロミニ」ならぬ「D:5ミニ」

「ダイナミックシールド」と呼ばれる三菱独自のフロントデザインを採用したeKクロスの外観は、新型デリカ D:5に通じるもので、いわば「パジェロミニ」ならぬ「D:5ミニ」。サイドウインドウからのラインが収束する独特のCピラーデザインもユニークだ。デザインコンセプトは「キュート・ビースト」、つまり可愛い野獣とのこと。なるほど確かに。

 

ヘッドライトのように見える鋭い目は、新型デリカ D:5同様にLEDポジションランプであり、その下に並ぶ縦型3灯式LEDが本物のヘッドライト。上2段がロービーム、その下がハイビームなのは、この方が路面状況を把握しやすく、対向車の眩しさも抑えられるから、らしい。

 

全高は1640~1685mm(ルーフレール装着車を含む)で、スズキ ハスラー(1665m)やダイハツ キャスト(1600~1640mm)とほぼ同じ。

なお、試乗車(ターボ4WD)は、オプションでルーフレールやカラーパネル、デカール等が装着した仕様。ボディカラーのサンドイエローメタリック/ホワイトソリッドルーフは8万1000円のオプション塗装だ。

 

インテリア&ラゲッジスペース

豊富な小物入れや9インチナビを用意。エアコン操作はタッチ式

今や下手なリッターカーより質感が高い軽自動車ゆえ、eKクロスのインテリアも凝っている。ダッシュボード中央には大画面9インチナビ用のスペースを確保し、オプションのマイパイロットとセットで電動パーキングブレーキも用意。エアコン操作パネルは、タッチパネル式だ。さすがにダッシュボードやドアトリムはハード樹脂だが、ステッチ(縫い目)を模したシボまで入る。ティッシュボックスが入る引き出し式トレーなど、収納スペースも充実している。

 

また、eKクロスならメーカーオプションでタンカラーの合成皮革と、ざっくりしたファブリックのコンビとなる「プレミアムインテリアパッケージ」を選ぶこともできる。

ステアリングにテレスコ(前後調整機構)がないのは少し残念だが、ドライビングポジションはおおむね問題なし。足元は広く(先代からの大きな改良点の一つ)、視点も高く、視界も広い。フロントウインドウの視野角は先代に比べて横方向に4.7度拡大されたという。

 

ただし、オプション装備のデジタルルームミラーは、昼間だと角度によっては反射が激しく、少なからず見にくかった。特に老眼などで近いものが見にくい人の場合は、一度試しておくのがいいだろう(もちろん、一般的な鏡モードにもワンタッチで変更できる)。

抜群に広い後席。ただしフロアは少し高め

先代よりホイールベースを65mm延長し、後席のニースペースを70mm拡大。おかげで後席フットルームは、ライバル車と比べても広々。リアシートは前後スライド式で、一番前に寄せた状態でも余裕で足が組めてしまう。

気になった点を一つ指摘するなら、フロアが全体的に高めな割に、後席の座面は相対的に低く、足を前に投げ出すような着座姿勢になってしまうこと。子供や女性など小柄な人を想定したようだが、空間そのものが広いこともあり、ここはちょっと惜しい部分。

 

なお、eKクロスおよびデイズハイウェイスターには、前席真下の床下にマイルドハイブリッド用の小型リチウムイオン電池が埋まっている。スズキのエネチャージ車と違って、リチウムイオン電池は露出しておらず、フロアの盛り上がりも知らなければ気付かないくらい微妙だ。

 

ワンタッチで荷室スペースを調整可能

荷室スペースは、後席を一番後ろにスライドした状態でも、スーパーの買い物程度なら十分。後席スライドは左右別々ではなく一体型だが、リアゲート側からでもレバー操作で軽くスムーズにスライドできる。これは便利だ。

 

段差は少々残るものの、後席の背もたれはほぼ水平に畳むことができる。逆に言えば、後席の座面クッションがやや平板で、高さも抑えたのは、背もたれを水平に倒すためなのかもしれない。

また、荷室の床下にFF車なら54Lもの大容量収納スペースがあるのも、新型ek/デイズのセールスポイントだ(4WD車は11L)。

 

基本性能&ドライブフィール

ロングストローク化とマイルドハイブリッドでトルク増強

試乗したのはeKクロスのターボ4WD車。オプションなしで176万5800円、オプション込みで200万円オーバーの「eKクロスで、いっちゃんいいやつ」である。

ボタンを押してエンジン始動。eKクロスは全車マイルドハイブリッドなので、モーターだけで静かに発進、かと思いきや、そんなことはなく、割と普通に発進する。よくよく諸元表を見ると、駆動用モーターの最高出力は2.7psと原付の50ccエンジンにも及ばない性能であり、メーカーの資料にも「加速時はバッテリーに蓄えた電力を利用し、モーターが駆動力をアシスト」とある。主役は基本的にエンジンだ。

しかし、このモーター、最大トルクは40Nm(4.1kgm)もあるし、少なくともアイドリングストップからの再始動と発進はスムーズ。さらに、ときどきヒューン!とエレクトリックな音もする。ちなみに助手席下に搭載されているリチウムイオン電池は、負極にチタン酸リチウムを採用して諸性能を向上させた東芝製の二次電池「SCiB」だ。

新型エンジン「BR06」型は、まったくの新開発ではなく、日産が海外向けのダットサンブランド車に搭載している800ccの3気筒エンジン「BR08」型の排気量縮小版である。ボア×ストロークは、先代の「3B20」型エンジンのようなスクエア(65.4mm×65.4mm)から、今風のロングストローク(62.7×71.2mm)に大変身した。ロングストローク化のメリットは、単純に言えばトルクアップであり、トルクが上がれば走りはよくなり、低回転でも走れるので燃費も良くなり、静粛性も上がり、といいこと尽くめ。ということで、今どきのエンジンのほとんどは、ロングストローク型になっている。

ちなみに現行の軽自動車用エンジンで、最もロングストロークなのは、2代目N-BOX用のS07B型で、60.0mm×77.6mm。BR06はこれに次ぐロングストローク型であり、ダイハツのKF型(63.0x70.4mm)、スズキのR06A型(64.0×68.2mm)が続く。R06A型もデビュー当時はすごいロングストロークだと思ったものだが、昨今の軽自動車が進化するスピードはおそろしく速い。

ライバルはもはや軽ではなく、1~1.3Lクラスの普通車

さて、このBR06型ターボエンジンは、圧縮比9.2で、最高出力は64ps、最大トルクは100Nm (10.2kgm)を発揮。車重はこの4WD車で950kg(オプション込み)だ。その動力性能は、端的に言えば、トルクについては不満なし。電気モーターのアシストもあってか、街中や郊外の国道を流れに沿って走る限りは、1.0~1.3Lクラスのコンパクトカーに遜色ない余裕がある

一方、高速道路での速度の伸びについては、950kg/64ps=14.8kg/psというパワーウエイトレシオ相応に、頭打ち感が早めに出る。新東名でも120km/hで巡行し続けるのはつらいかなぁという感じ。とはいえ、動力性能一つとっても、もはや軽の尺度では測れないレベル。少なくともターボ車のライバルは軽自動車ではなく、1~1.3Lクラスのコンパクトカーだ。

先代eK/デイズの場合、トランスミッションはジヤトコ製のハイ/ロー2段の副変速機付CVT(無段変速機)だったが、新型では同じジヤトコ製でも、軽量コンパクトさを重視して副変速機を廃止した新開発のCVTが採用された。そう言えば、ジヤトコ製副変速機付CVTを早くから軽自動車に採用してきたスズキも、最近は現行スペーシア(2018年~)あたりから副変速機のないアイシンAW製に変更し始めており、少なくとも軽自動車の場合は、動力性能やカバーすべき速度レンジから言って、副変速機はなくてもいい、という流れなのかもしれない。実際、副変速機がなくなったことによるデメリットは、まったく感じなかった。

なお、ターボ4WD車の乗り心地は、がっしりと硬め。姿勢変化を嫌ったせいか、自然なロール感や重厚感のようなものは薄目で、もうちょっとゆったりユルい感じでもよかったかな、という気も。ここまで走りのレベルが高いと、軽自動車ゆえのトレッドの狭さがアンバランスな気もしてくる。

街乗りならNAでもぜんぜんOK

自然吸気エンジン(NA)の新型eKワゴンにも短時間ながら試乗してみた。こちらはマイルドハイブリッドもなく、普通のアイドリングストップ機能が備わるだけ。圧縮比は12.0で、最高出力は52ps、最大トルクは60Nm (6.1kgm)だ。

スペックだけ見ると大したことはないが、実際に試乗してみると、これがなかなかトルクフルでよく走る。街乗りであれば静粛性もターボ車に遜色なく、それに何より穏やかな乗り心地やアクセルレスポンスに走り始めた瞬間から癒される。いい意味で、これぞ日本の軽自動車、という感じ。アイドリングストップからの再始動も素早く、スターターノイズも比較的静か。「街乗りならNA(自然吸気エンジン)で、ぜんぜんOKじゃん」というのが率直な印象だった。しかも、このeKワゴンにもマイパイロットをオプションで装着可能で、試乗車にもしっかり装備されていた。

とはいえ、マイパイロット/プロパイロットがあるなら、高速道路でその恩恵を受けたいところで、となるとやはりターボエンジンが欲しくなる……というあたりが大いなるジレンマではある。

4WDはビスカス式。どちらかと言えば舗装路重視か

4WDシステムは、軽自動車やコンパクトカーで一般的なビスカス式。これは、回転差が生じるとリアデフ直前にあるビスカスカップリング内の流体クラッチが受動的に締結され、後輪に駆動力が伝わるというもの。2WDと4WDを切り替える必要がないため、20~30年前にはパートタイム4WDに対して、ざっくり「フルタイム4WD」などと呼ばれていたが、センターデフを持つタイプや、各種の電子制御式4WDが登場してきた現在は、そういうアバウトな表現はされなくなっている。メリットは、構造的にも制御的にもシンプルなこと、そしてコストが比較的安いことだ。

 

一方で、ビスカス式4WDのデメリットは、前後輪で回転差が生じないと一方の駆動輪(主にリア)に駆動力が伝わらず、絶対的な駆動力に欠けるところ。それが生活の足に十分という意味で「生活四駆」と呼ばれる所以だが、ここ10年ほどは低価格車にもESPなどの横滑り防止装置が普及してきたことで、ビスカス式4WDでも以前より高い悪路走破性を発揮するようになっている。eKクロスの場合も、雪道などで片輪が空転した場合に、その車輪をブレーキ制御することで反対の車輪に駆動力をかける「グリップコントロール」が、FF車を含めて標準装備されている。

ちなみに、オフロード走行で気になる最低地上高は、普通のeKワゴンと同じ155mm。ハスラー(FFで180mm、4WDで175mm)と比べると低めで、なるほど、だから「SUV」ではなく、「SUVタイプのクロスオーバー」なのか、と腑に落ちる。タイヤもハスラーの165/60R15に対して、165/55R15(15インチ仕様の場合)とハイトの低いものが選ばれている。

ほぼ文句なしのマイパイロット。充実の安全装備

新型eK/デイズにとって一番の武器は、何と言っても日産言うところのプロパイロット、三菱言うところのマイパイロット(MI-PILOT)だ。いわゆる、自動運転レベル2を実現したとする高速道路同一車線運転支援技術である。

平たく言えば、全車速対応のアダプティブクルーズコントロール(ACC)と車線維持支援機能(LKA)を組み合わせたものだが、プロパイロット/マイパイロットがユニークなのは、この手のものでは一般的なミリ波レーダーやステレオカメラを使用せず、主に単眼カメラで先行車や歩行者の検知を行う点にある。

実際のところ、マイパイロットは、最新の輸入車や日本車に搭載されているACCや、スバル アイサイト(最新のバージョン3)にまったく遜色なく、粘り強くスムーズに制御し続けてくれる。特にステアリング制御は、日産の現行セレナなど初期のプロパイロット装着車にあった、ぎごちなさがなくなり、ほぼ問題なしと言えるほどスムーズになった。

なお、新型eK/デイズの場合、プロパイロット/マイパイロットの設定上限速度は115km/h。国産車でも、新型車のACCは135km/h以上になってきたが(新型デリカD:5のミリ波レーダー式ACCも135km/h)、軽自動車の場合は、まあこれで十分だろう。軽自動車ゆえ、最高速は140km/h弱でリミッターが作動するはずだ。

 

「マルチアラウンドモニター」(移動物検知機能付)

あと、試乗車には、真上から見下ろすような映像をルームミラー内にあるモニターやナビ画面に表示する「マルチアラウンドモニター」(車両の周囲を歩いている人や自転車を検知してモニター表示と警報で注意を促す「移動物検知機能」付)や、軽自動車で初採用の「デジタルルームミラー」がメーカーオプションで装備されていた。

マルチアラウンドモニターは、すでに多くのメーカー、モデルで採用されているもの。正直なところ、ルームミラーの映像は小さすぎて役に立たないが、移動物検知機能は、幼児などの万一の見落としを防いでくれそうでアリだろう。むしろそちらの方が機能としては本命かもしれない。

デジタルルームミラーについては、後部座席の人やヘッドレストなどで視界が遮られることなく、夜間や雨天でも鮮明な映像で後方確認できるのがメリット。夜間モードにすると、後続車のヘッドライトの眩しさも軽減される。

一方で今回気になったのは、昼間だとルームミラー液晶画面への映り込みが激しく、角度を調整しても見にくさが完全に解消されなかったこと。日産リーフのデジタルルームミラーは昼間でも鮮明だった印象があるのだが。

そのほか先進安全装備としては、「衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM)」、昨今話題の「踏み間違い衝突防止アシスト」(前進だけでなく、後退でもブレーキ制御を行う)、「車線逸脱警報システム(LDW)」、オートマチックハイビーム(AHB)」、そして車線から逸脱しそうになった時、車線内に戻す方向に制御力を短時間発生させ、車両を走行車線内に戻す操作を支援する「車線逸脱防止支援機能(LDP:Lane Departure Prevention)」を新たに採用。さらに6エアバッグも全車標準装備。これからの軽自動車はこうでなくては、と思わせる充実ぶりだ。

試乗燃費は12.3~20.0km/L。WLTCモードは16.8km/L

今回は約220kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、一般道や高速道路などいつもの区間(約80km)が12.3km/L。一般道を普通に走った区間(約30km×3回)が18.0km/L、18.5km/L、20.0km/Lだった。車重950kg(試乗車の場合)の660ccターボ・4WD車としては、驚いてしまうほど燃費が良かった。

なお、WLTCモード燃費は16.8km/L(ターボ・4WD車)~21.2km/L(自然吸気エンジン・FF車)。JC08モード燃費は同様に22.8~29.8km/Lだ。

燃料タンク容量は27Lと小さめだが、街乗りでも不安なく300km程度は走れるはず。高速道路でマイパイロットを使って淡々と走れば、400kmオーバーも可能だろう。

ここがイイ

軽の枠を打ち破るマイパイロット&マイルドハイブリッド

普通のeKワゴンとeKクロス(のターボ車)で、乗った感じはかなり異なるが、いずれにしても現時点では、ベスト・オブ・軽自動車と言える走行性能や安全装備を備えていること。特マイパイロット/プロパイロット(なんで名称をいちいち分けたのだろう? 面倒だ)の装備は、ホンダ、スズキ、ダイハツを焦らせるキラーアイテム。

マイルドハイブリッドに関しては、スズキがSエネチャージで先行しており、それに続くもの。ホンダ車(N-BOX)とダイハツ車に対しては、はっきりと優位に立つ。アイドリングストップを嫌う人は今でも多いが、マイルドハイブリッド化すれば、そのネガはほとんどなくなる。軽自動車も数年以内には、マイルドハイブリッドが当たり前になるだろう。

また、剛性感の高いボディや、特に後席や荷室が広々としたパッケージング、トルクフルになったエンジンや燃費の良さなど、基本性能もすべてクラストップレベルになった。これらは当然ながら、日産のデイズも同様だ。

ここがダメ

目立ってしまった軽ゆえの枠。「先行車発進お知らせ機能」の不備。後席の座り心地。デジタルルームミラーの映り込み

本文でも触れたように、ここまで走りや装備がいいと、軽自動車ゆえに制約されている部分が気になってしまう。「排気量が800ccくらいになればNAでも十分走るようになるのに」とか、「トレッドがあと5センチか、10センチ広ければ、乗り心地や操縦安定性は完璧になりそう」「しかもほとんど同じ生産コストと価格で」などと考えてしまう。ものすごく高機能なものが、小さな箱にギューギューに押し詰められている。

先回試乗した新型デリカD:5同様、この新型eKにも「先行車発進お知らせ機能」は付いていない。ドライバーのよそ見を促すような装備はつけない、という見識ゆえの判断かもしれないが、すでにトヨタ、ダイハツ、ホンダ、スズキなどで広く採用されている機能なので、採用してしまってもいいと思うのだが。

後席に関しては、足もとのフロアが高めで、かつ後席の座面クッションがやや平板なので、座り心地に少々落ち着きがない。後席の背もたれがフラットに畳めることより、座り心地を優先する、という判断があっても良かったと思う。このへんは、いずれ登場するリア電動スライドドア装備車との差別化もあるかもしれないが。

本文で触れたように、デジタルルームミラーの映り込みは要改善点。あればあったで便利だが、メーカーオプション装備でもあるので、現時点では普通の鏡式ルームミラーとバックモニターだけで十分かな、という気がした。

総合評価

「新車5台のうち2台は軽」の時代

直近の2019年4月だけで、軽四輪車の新車販売台数は14万7733台だ。同月の新車販売全体は37万8687台だから約39%、5台に2台は軽ということになる。数年前は3台に1台くらいだったから、軽の比率は今も確実に増えている。それはそうだろう、軽自動車の性能(走りに限らず、ユーティリティも含めて)は、ここ10年で飛躍的に向上し、もはや登録車(いわゆる普通車)にそう劣ることはない。モーターデイズでも8年前の2011年に乗ったスズキ MRワゴンを「クルマはもうこれでいい…」とした。

高速道路で何百kmもクルージングでもしない限り、日本のクルマは現行の軽自動車で十分だ。MRワゴン(NAエンジン)に7年間乗っている知人に聞いても、ほとんど不満はないという。高速道路での移動も結構多いそうだが、気になることはないとのこと。当時総額130万円くらいで買っているはずだから、10年間、つまり120ヶ月乗ると、月1万円ほどで不満のない生活の足を確保できるわけだ。これに任意保険が月1万円くらい、車検やメンテ費用として月5000円くらい加えたとしても、合計月2万5000円。毎日乗るなら一日850円ほど。他にガソリン代も必要だが、公共交通機関が不便なところでも、このくらいのコストで自由な生活の足を確保できるわけだ。

さらに、軽自動車税は、新車の場合で年1万0800円。昔の7200円よりは上がったものの、1000cc未満ですら2万9500円以上する普通車より、まだそうとう安い。今後、シェアリングや自動運転などで、自家用車のない世界(あるいは老人に免許を返上させる世界)を目指すなら、最終的にはこれ以下のコストで新しい移動サービスを提供しないといけないわけで、果たしてそれができるのか、といつも思ってしまう。また、そういったシェアリング車や自動運転車のベースには、コストを下げる意味で日本なら軽自動車を検討すべきではないか。

経済性以外でも、いいこと尽くめ

話がそれたが、販売が伸びていることからも分かるように、「もう軽自動車でいい」という人が増えているのは、経済的なこと以外にも、軽自動車に魅力的な部分が多いからでもあるだろう。まずなんと言っても、その小ささによる取り回しの良さは何物にも代えがたい。個人的には新型ジムニーに乗って半年ほどたつが、久々に軽自動車を日常的に乗り回していると、圧倒的に楽なことに気づく。狭い道、狭い駐車場といったシチュエーションでは当然として、軽専用という駐車スペースもあったりするから、こうしたところに駐められるのもありがたい。

そして、これまでも多くの試乗記で紹介してきたように、限られたスペースを最高に活かして知恵を尽くしまくっているパッケージングの妙は、広すぎるほど広い空間を生み出すに至った。軽は狭くて嫌だ、などという人は、もうおそらくいないはず。動力性能も、昨今のモデルであれば不満のある人はほぼいないはず。高速性能にしても、最近のゆっくり流れている多くの高速道路であれば、まったく問題ないだろう。

もう一つ言えば、多くの人気軽自動車は、買取価格も高めに推移している。中古車が良い値で売れるから、買い取りも高いという好循環がある。また、軽自動車は走行距離が少なめなこともあって、乗り換えも比較的しやすい。そこを含めた経済性ではやはりダントツに優位にあるから、軽自動車はどんどん売れることになる。さらに、昔は「軽なんか」という差別的な感覚もあったものだが、そんな風潮は、最近では煽り運転をするような輩の中くらいにしかないのではないか。

軽自動車こそ、自動運転化されるべき

そんな軽自動車でも、先代デイズ/eKは、ちょっと周回遅れ感があったのは否めない。ダイハツやスズキが先行した「よくできた軽」を、ホンダや三菱(日産)が追うという現実はあったと思う。しかしホンダはNシリーズを投入、改良することで、すでに追いついているし、三菱(日産)もここに来て、ついに完全に追いついた。eKクロスは、もはや何も不満はない「よくできた軽」といっていい。そして、マイパイロットによって他車を引き離した。前述のMRワゴンユーザーに何も不満がないのはマイパイロットを知らないからで、これを知れば買い替えたくなるだろう。ということで、どれもが「よくできた軽」となった今後は、先進安全装備や運転支援機能が、販売面でのポイントになるだろう。

と書いてはみたが、軽自動車においては、まだまだ難しい話かもしれない。マイパイロットを含む先進快適パッケージとデジタルルームミラーなどの先進安全パッケージのオプション価格は、計16万円ほど。純正カーナビをつけると、さらに20万円ほどかかる。軽は価格が重要だし、「なんかよく分からないから、そんなものはいらない」という女性や高齢者もいそうだ。今やナビもスマホで十分だから、ナビすらいらない、ということも(バックモニターやマルチアラウンドモニターを表示するディスプレイは欲しいところだが)。いわゆる高級車では先進装備がセールスポイントの一つとなるが、軽自動車の場合は必ずしもそうではない。メーカー・ディーラーの丁寧な周知活動が重要だが、それより他の装備を削ってでも、先進装備を全車標準にするという方向に行かないものだろうか。

 

そして、ここまで良くなった軽ならば、もうちょっと幅を広げて、もうちょっと排気量を上げて、世界で売れないものだろうか、と思ってきたが、やはり世界のニーズとは違う商品だ。例えばイケイケの中国で、こんな小さな「ガソリン車」が今さら受け入れられるとも思えない。「よくできた軽」を作れる技術は今後、自家用車を求める途上国などで生かされると思うが、となると今もやはり、かつてのガラケーの姿とダブって見えてしまって心配になる。「ガラ軽」というやつだ。

ガラ軽にならないためには、この優れたハードウェアが、社会的なインフラに昇華する必要があるのではないか。クルマとしては今でも社会インフラになっていると思うが、いわゆるハイテク系の装備を満載した移動体の、低コストなベース車両にならないものか。地方の足である軽自動車こそ、自動運転化されるべきだし、すでに所有欲とはちょっと別のところにある存在ゆえ、シェアだってしやすいはず。そうした方向に行くのであれば「よくできた軽」は世界でも生きるような気がする。ゴーン事件以降、日産・三菱がどこへ向かうのかはいまだ見えないが、日産・三菱にはプロパイロット/マイパイロットで見せた技術をさらに進めて、ガラ軽じゃない軽の姿を世界に示して欲しい、などと願うのだが、ビジネス的には困難が伴う話ゆえ「それはムリ」なのだろう。自動車会社の舵取りは、本当に難しい時代になった。

 
 

試乗車スペック
三菱 eKクロス T(4WD)
(0.66L直3ターボ・CVT・4WD・176万5800円~)

●初年度登録:2019年4月
●形式:4AA-B38W
●全長3395mm×全幅1475mm×全高1660mm
●ホイールベース:2495mm
●最低地上高:155mm
●最小回転半径:4.8m
●車重(車検証記載値):950kg(-+-)
●乗車定員:4人

●エンジン型式:BR06
●排気量:659cc
●エンジン種類:直列3気筒DOHC・4バルブ・ターボ・横置
●ボア×ストローク:62.7×71.2mm
●圧縮比:9.2
●最高出力:47kW(64ps)/5600rpm
●最大トルク:100Nm (10.2kgm)/2400-4000rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●アイドリングストップ機能:有り
●使用燃料:レギュラーガソリン
●燃料タンク容量:27L

●モーター形式:SM21
●モーター種類:交流同期電動機
●最高出力:2.0kW(2.7ps)/1200rpm
●最大トルク:40Nm(4.1kgm)/100rpm

●駆動用バッテリー種類:リチウムイオン電池
●トランスミッション:CVT(無段変速機、ジヤトコ製)

●JC08モード燃費:22.8km/L
●WLTCモード燃費:16.8km/L
●市街地モード(WLTC-L):14.3km/L
●郊外モード(WLTC-M):17.8km/L
●高速道路モード(WLTC-H):17.4km/L

●駆動方式:フルタイム4WD(ビスカスカップリング式)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):トルクアーム式3リンク+コイルスプリング(4WD車の場合。FF車の場合、リアはトーションビーム式)
●タイヤ:165/55R15 (Bridgestone Ecopia EP150)

●車両本体価格:176万5800円
●試乗車価格(概算):214万4987円(オプション込み)
※オプション合計(概算):37万9187円
※オプション内訳:先進安全パッケージ(デジタルルームミラー+マルチアラウンドモニター) 9万1800円、先進快適パッケージ(MI-PILOT+電動パーキングブレーキ) 7万0200円、オプション塗装 8万1000円、ルーフレール 2万7000円、エクステリアガーニッシュパッケージ 3万8016円、デカールパッケージ 5万1386円、ユーティリティマット(オールウェザー) 1万9785円
●ボディカラー:サンドイエローメタリック/ホワイトソリッド

●試乗距離:220km
●試乗日:2019年4月
●車両協力:西尾張三菱自動車販売

 
 
 
 
 

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